伊豆アンディランド

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※入館.

伊豆半島は下田近くの川津駅近くに立地する、世にも珍しい「亀専用」水族館の
「伊豆アンディランド」が2012年8月20日をもって営業終了するとのことで、
これは水族館マニアとして、閉館前に何としても見ておかねばならないだろうと、
夏真っ盛りの猛暑の中を赴いてきた。
その手のマニアから妙な味がある水族館と言われてきたこの「伊豆アンディランド」だが、
なるほど、入り口付近に建つ「亀の塔」からして変テイスト全開な感がある。



そしてその付近におもむろかつ脈絡なく飼われているヤギとポニー。
この施設の主目的たる「亀」とまるで関係ないところが更にその変テイストを惹きたてている。



流石に「亀専」とうたうだけあって、本館前を飾るオブジェにはそれっぽいものがあった。
が、本来なら主目的を明確に指し示す筈のその手のものにおいてすら、どこかこうファニーな
趣きを感じてしまうことを否定することが出来ない。
このような趣きを愛してやまないミー的には、入館前からこれだけ期待させてくれる水族館も
そうはないんじゃないかとも思ったり。


本日の推しメン.

雷が鳴っても離さないことと美味なことでその名を馳せる「スッポン」コーナーが入口近くに
あったので、いくつか目立ちどころを取り上げてみる。



左はこのコーナーの目玉、「インドハコスッポン」のアルビノ、ここじゃ白変種というらしい。
んでその短い足を最大限に伸ばして開脚トカチェフ気取ってる右のは北米じゃ最大種の「フロリダスッポン」。



次、巨体系いってみよう。アフリカはナイル川流域に棲む左のそれは「ナイルスッポン」。
甲長1メートル超えの個体もいるらしく世界レベルで最大種だそう。
そして右のどこかパンケーキを想起させるフォルムのそれは「ヒガシトゲスッポン」。
北米はミシシッピ川より東側に分布、甲羅の縁にトゲがあることがこの名前の由来だとか。


レッツ・ミー・エンターテイン・ユー.

ここで亀レース開始前のアナウンスがあったので、館内散策を一時中断して中庭へと向かうことに。



見ての通り、所々に障害物が配置されたフィールド上を亀達が悠然と歩くのを眺めるという、
ただそれだけの事なのだが、スタート前に選択する亀券の存在がこの催しを多分に面白くさせていた。



フィールド上を右往左往し、時にはゴール方向への直進すらままならぬ亀達を萬膳と見やりつつ、
子供連れの親御さん達がむしろ子供そっちのけで「そのままー!真っ直ぐー!」等、エキサイトして
いる様を眺めていたら、こっちもそのテンションに引っ張られて幾分アガり気味になったり。
それにしてもだ、無軌道に歩行する亀達が醸し出すカオスっぷり、この収拾のつかなさっぷりは
ただ事ではない。最終的には飼育員さんという名の人の手の介入をもってして、このレースはギリで
成立し… いや、させられることとなった。


※館内散策.



再度館内に戻って散策再開。甲羅の中央部にある突起がスーパーチャージャー的な何かを思わせる
左の亀はインドの「ベニマワリセタカガメ」、サイズ的には小さいがどこかパワフルな印象がある。
右はアフリカ南部の湿地帯に生息する「オカバンゴハコヨコクビガメ」、てか名前長すぎだわ。
ペットとして飼育されることもあるそうだが世界的にも流通例は少なく、かなりのレア物だとか。



こちらの左は南米を中心に生息している「ヴァンデルヘーゲカエルガメ」。
分類もその生活史も何もかもが研究途上という、学問的には完全に正体不明な亀界のUMA。
で、その右のいかついのは同じく南米出身「スジオオニオイガメ」。
その名の通り、危険を感じると四肢の付け根にある臭腺から臭い匂いを発す亀界のカメムシ。



続けていこう、こちらの左は中国出身の「コガネハコガメ」。
癌の特効薬と信じられてきたことや高級食材としての乱獲がたたって個体数激減中とのこと。
その煽りをうけてペット用としての流通も制限され、今ではほとんど入荷がない幻の亀だとか。
で、いつモンハンの元キャラ・デザインとして採用されてもおかしくない程、凶悪な面構えを
しているこちらのインパクトNO1な右の亀はアフリカ東部に生息する「パンケーキリクガメ」。
甲羅が平たく柔らかい為、空気を吸い込むことにより膨らませることが可能だとか。それにより
膨れ上がった甲羅を外壁に引っ掛け、敵から身を守るらしい。もう何から何まで規格外な亀だ。



ここらで陸亀部門を2点ほど。
左は主にタイやインド周辺国に生息する「エロンガータリクガメ」、繁殖期のオスはメスに
体当たりを繰り返す行動をとるとか。随分とラテン的な求愛行動に秀でた亀だと思う。
そして右はアフリカ東南部右側に位置するマダガスカル島出身の「ホウシャガメ」。
ペットとしての人気が高すぎて乱獲が続いた背景があってか、今じゃワシントン条約における
最高ランクの保護対象になっているとか。トンガ王宮で飼われていたそれは180年生きたと
いう伝説も残っているらしい。



こっちの左は南米出身「モンキヨコクビガメ」。甲羅のツヤツヤ塗装が非常に目を惹いていた。
さて、館内散策編の最後はここアンディランド屈指のレア亀で締めくくってみる。
こちらの右はベトナム出身の「アンナンガメ」。その生態・分類ともに未だ研究途上の亀であり、
流通に関しては稀にある程度だとか。これは更にアルビノ個体であるが為、ここでは「幻の白亀」
とされ、開運・招福の象徴として奉られていた。


本命を叩き込め.

主要どころの亀を大体紹介し終わったところで、いよいよG級クラスのそれを取り上げてみる。



左はアフリカ全域に生息する「ヒョウモンガメ」、最大種の甲長は70センチ。
その右はガメラの元ネタにして、池や川に放置された個体が時折ニュースネタになることもある
ワニガメ」、その甲長は80センチにもなるとか。顎の力が極めて強く取り扱い要注意な
種でもある為、今では「特定動物」として飼育には地方自治体の許可が必要だそう。



で、これが最大甲長1メートル級の世界最大種の一つ、「アルダブラゾウガメ」。
正式な記録上におけるその最長飼育記録は152年であり、その巨体から想像される通り、
一日に7キロもの餌を必要とする巨食ベジタリアンだとか。



そしてこちらがもう一つの世界最大種「ガラパゴスゾウガメ」。
その名の通り、進化論で有名なガラパゴス諸島に生息する超巨大亀にして激レア種、
日本にはこの一頭とあと上野動物園に2頭で、合計3頭しかいないらしい。
そんな希少種の代表格たるこのゾウガメ君、今日はいささか猛り気味のご様子であり、下腹部に
メスらしき別のゾウガメを従えて、思う存分マウンティングなさっておられた(セ…セクース?)。
その結合部分らしきところを間近で覗き見ようとする不届きカップルがいたので、破廉恥漢及び
痴女の代表格として力一杯晒しあげておくの刑。亀王の厳粛なる営みを邪魔するでないぞよ。


変則の磯コーナー.



水族館的には最早お約束といってもいいタッチングプールという名の触れ合いコーナー。
ここアンディランドの主題は「亀」であるが故、触れ合いの場所もそれ用にアレンジされていた。



加えてゾウガメとウサギをコラボさせつつの触れ合いというこのコーナー・コンセプトも
かなり斬新なのではないかとも思ったり。いや、童話的な視点から考えれば当然と言えば当然の
帰結でもあるのか。


神への挑戦か、人類への警告か.

上記タイトルは89年に公開された深海ホラー映画のキャッチだが、ここアンディランドの
敷地内でもまた、思わずそう問いかけたくなるような謎オブジェがあちこちで確認されたり。



まずは序の口級から。
迫力満点に竹をかみ砕く亀の絵と、幼児が見たら泣くレベルで黒人化したゾウガメ。



そしてこちらがその周囲を唐突にインカ帝国化させていた謎の顔面壁像と、おそらく
「亀」という主題以外は全てがとっちらかってしまったと思われるノー着地点のマスコット達。



これは敷地内の裏庭に突如現れたる七福神達。
なぜ水族館に七福神?その疑問を持つことさえ許されないレベルの無駄に立派な造型、
本当に意味が分からない。
7つある全ての銅像の足元にちゃっかり置いてある賽銭箱の存在もなかなかに侮れない。



そして極めつけがこれである。06年に公開された「ガメラ〜小さき勇者達〜」の撮影で
実際に使われた大型模型だそうで、模型前に置かれたペットボトルとの対比でその巨大さが
お分かり頂けるかと。これを見れただけでもここに来た甲斐があったとそう思わせてくれる
レベルの代物だと思われ。


※そこにある憩い.



大方の鑑賞を終えて、館内の喫茶店で一息いれる。窓の外からはゾウガメ用の中庭と
彼らが住む南国の象徴とも言えるヤシの木、そしてその向こう側には相模湾が見てとれる。
眺望的にかなりハイランクの憩い場所だと思われ。



※総合

「亀専」水族館というのは極めてニッチなようで、小規模なものなら全国を見渡せば
 ・小笠原海洋センター(東京・父島)
 ・紀宝町ウミガメ公園(三重)
 ・うみがめ博物館カレッタ(徳島)
 ・久米島ウミガメ館(沖縄・久米島)
 ・黒島研究所(沖縄・黒島)
と、実はこれだけ存在するのだが、ここまで大規模なそれとなるとおそらく世界的にも
珍しいのではないだろうか。それだけにただただ閉館が惜しまれる。
まあ完全閉鎖というわけではなく、母体が変わったことによるリニューアルで今後は
爬虫類専門動物園「iZoo」として生まれ変わるということなので、イグアナ的な生物が
大好きな方は後に行ってみるといいのではないだろうか。

ファミリー ★★★☆☆ 意外といる
カップル度 ★★★☆☆ これまた意外と
わびさび ★★★☆☆ 謎テイスト
学術度 ★★★☆☆ ノーマル
お得感 ★★★☆☆ 普通
建物装飾 ★★★★☆ 味テイスト
水槽装飾 ★★★☆☆ 特に代わり映えなく
総合調和 ★★★☆☆ 雰囲気あり
憩い場所 ★★★★☆ ハイソ感あり
磯コーナー ★★★★☆ 独特
ペンギン度
レア度 ★★★★★ タートル的にはマックス
総合 ★★★☆☆ あくまで私的観点と個人的意見から


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