ケータイ伝4(回収・・なんと甘美なその響きよ)
 

拝啓ガトー様、お元気ですか?
その後おかわりないでしょうか?

ボク自身は、
やった!やった!みンな出向〜♪ やった!やった!みンな転籍♪
キミもボ〜クもレイオフさ〜♪ みン〜なみン〜なリストラさ〜♪

とか歌って、素で職場のおじさン達にボコにされたりしてる毎日です。



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ところでガトー様。
ボクにもようやく尊敬すべき上官ができました。

彼の戦闘指揮能力はすさまじく、ケータイ前線におけるライバル会社の新兵器を
ことごとく打ち砕いていきました。
冷静かつ沈着、繊細かつ大胆。
そのお美しい髭、その皺にきざまれた百戦錬磨の風格。凛とした意志をひめたるそのお顔。

ひょっとしたらガトー様と比べてもヒケをとらない程の漢かもしれませン。
その御方の名前はラルさん(仮名)です。


ところで最近のケータイ前戦はますます激しくなってきました。
戦闘がさらに激化し、戦場における新兵器の投入時期に開発スピードが追いつかなくなってきたのです。
開発スピードが追いつかないという事は、欠陥をかかえたまま戦場に投入せざるをえないという事です。
すべてはこの業界に革命的変化を起こしたジャバ式ファンネルのせいです。

ましてやジャバ式ファンネルは、ケータイメールを信じられない程の速度でバシバシ打てる
コギャル系強化戦士、もしくはアキバオタヲタ系ニュータイプにしか使えない筈なのに…
それを、そンな危険な兵器を一般兵士に対しても投入するなんて!
そンなのエゴです、偉い人にはそれがわからンのです。
このままでは、精神汚染に犯された人々をたくさン生んでしまいます。

他社も同様らしく、この業界においてはコロニー落としに等しいダメージを受ける”回収”が
最近は頻発しているのです。革命児ソ*ーがプライドにかけて送りだしてきたWM改モビルアーマ。
業界の巨人・松*が満を持して投入したi-mode型モビルスーツ503式。
これら業界を騒然とさせた新兵器が次々と回収にあい、とンでもないダメージを業界全体が受けているのです。
回収にかかるコストを仮に1台で1万円と仮定してみましょう。20万台ならなんと20億円です、
ましてやヒット機種なら70万台は投入されてしまうこの戦場においてはいったい幾らの損失!?

しかし我々は多少の回収は発生させたものの、ラル大佐(仮名)の指揮において、なンとかその損害を
最小限にく止めてきました。こうなれば他社の回収は逆にチャンスです、勝利につながります。

「他社が回収で大ダメージを受けているその間に、我々もジャバ式ファンネル付きを戦場に投入し、
 この膠着状態の前線を一気に打開・突破するのだっ!!」

今日もラル大佐(仮名)の容赦ない檄が飛びます。それに答えて我々技術陣もフル回転!そンな毎日でした。


そンなある日、遂にそのツケが我々にもまわってきました。
無茶な技術要求、さらに輪をかけて無茶な出荷期限、もっと輪をかけて無茶なコスト削減、
それらをクリアすべくフル回転してきた我々技術陣のほんの少しのほころびは、遂にダム全体を崩壊させました。

そう… おそらく史上最大の回収!

その連絡を受けたとき、いつも冷静沈着なラル大佐(仮名)の顔が真っ青になるのをボクは初めて見ました。
ラル大佐(仮名)は直後、どこかへ電話をかけて絞り出すようなお声で、こうおっしゃいました。

すまん、このランバ・ラル、闘いの中に闘いを忘れた!

そして、ボク等のほうを振り向くや… ああっボクはこのシーンを永久に忘れないっラル大佐っ!(仮名)
なンと彼は新型ジャバ式ファンネル付きを懐に抱いたまま、その身をビル最上階の人事部の中へと踊らせたのです!

闘いに敗れるという事はこういう事だああ!
(ドカーン)


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ガトー様、聞いていますかガトー様。
ボクは…ボクは…ボクはッ…!

ボクは… あのヒトに勝ちたいっ!

教えてくださいガトー様っどうすればどうすればどうすれば、ボクはあの人に勝てますか?


東南アジアにトバされてしまったので半永久的に会えないような気がするのはボクの気の迷いです、きっと。


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