ケータイ伝1(何が悲しくてエレベータかっ!)
 

ボクの現在の仕事は、携帯電話のソフト開発です。
ボクの担当は、主に無線部分(プロトコル)というところですので、ユーザーの皆様が
どこぞの事業者様に「ここ電波悪いよ!」とか「切れたよ」とか文句をおたれになりますと、
大抵1週間後くらいに、死ぬ程イヤな電話がボクのところにかかってきます。

いわゆる「はい、なンとかして〜」というヤツです。

事業者様とメーカーとの関係は、殿様と非人なみですので、まず「イヤだぴー」とか言えません。
泣く泣く現場へ向かう事になります。

断っておきますが、ボクは別にソフト開発というお仕事がイヤなのではありませン。
製品を改良・改善して、よりよいものをつくる努力がイヤなのでもありませン。
半径3キロ以内に民家もないような山中に半監禁状態でデバッグさせられたり、時速100キロで
スッとばしている車の中でシコシコとプログラミングさせられたりするのが死ぬ程イヤなだけなのです。
以前、関西地方に一月程 監禁された時はホントに精神崩壊の一歩手前までいきました。

そもそも無線レベルの問題を解決する為には、

(1) 問題が発生している現場でログ取りして、データ集め。
(2) 集めたデータログを分析して、問題点、改善点を見つける。
(3) 最も効率の良い方法で、ソースを改良(プログラミング)。
(4) 現場でデバッグ。改善結果を確認。

と、最低でも上記のようなフェーズを踏んでいかねばならないのですが、いざ問題が発生すると、
事業者様は各代理店からビシバシ突き上げをくらいテンパりまくったあげく、それらすべての怒りを
おかしなエネルギーに変えて思いっきりメーカーに浴びせかけてくるので、たいていの場合、
上記フェーズを全部その場で行わなくてはいけない羽目に陥ります。

経過時間に比例して事業者様の機嫌もどンどン悪くなっていきますので、呑気にログ取りもしてられません。
超高速でスクロールするログ情報をキチガイのように見つめ、問題が発生した瞬間をリアルタイムにキャプチャー
する事に全力を費やします。これほど”無駄な努力”という言葉があてはまる状況、そうはありませン。
巨人の星かなンかで”走っている電車の中から駅名を読み取る”などというシーンがあったような気がしますが
今のボクには何故かその能力が備わっていると思います。マジいらねえけどなそンなもン。

そもそも問題が発生する場所というのは、たいてい携帯電話を使うのに適していないところなので、
たいがいろくでもない目にあいます。
「高速走行で切れた!」とかで、東名130キロスッとばしてる中でのプログラミングとか、
「電波弱いよココ!」とかで、広島県のむちゃくちゃ山奥のダムの中に放置されてのデバッグとか、
ホントにもうどうでもいいカンジですサイコー。
あ、高速走行の時はマジでゲロ吐きました。でも爬虫類のような目で睨みつけられるだけなので、
今はもうノみます、たまった怒りも抑圧された悲しみもあとついでにゲロももう何もかもイエー!!

でもね、まさかエレベーターの中で調査やらされるとは思いもしなかったよ。
それも高層ビル、3時間ノンストップで。
エレベータが開閉する度に乗りこンできた人達から、何か汚いものを見るような視線を浴びせられるのが
死ぬ程ツラいよ!そりゃそうだエレベーターの中でPCと携帯をつなげて狂ったようにキーを打ってるヒト見たら
ボクはたぶん唾はきかけたくなるもの。でもそれはやめてお願いっ守って!(守護月天っ)
あ、最上階ついた時に、ボクがおりると思って気を使ってボタンおしっぱにしてくれてるお姉さんへ。
ボクはそのままフォールダウンするから気遣いは御無用さわかるだろ、このままアップ・ダウンを
繰り返すのさ、いいかえるならこの状況は類似空間ってわけサ、これこそ人生ってもンだろハニー?





3時間後、そのビルの35階トイレの一番奥の個室は30分程固く閉ざされたままだったそうで。
中から、ときおり「うげごふっ」とか「ぐぐぐう…!」とかいう呻き声がしてたそうです。


#故にボクの前で「このケータイ電波わるいよね〜」とか言わないでください。
 マジ条件反射でビクッビクッて芋虫のようにのたうちまわるので。


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