DEFTONES.


2007年2月18日: ZEPP・TOKYO

ブラックサバスを軸としたメタル・オリジネイターを基に、パンテラを筆頭とするモダンヘヴィネス、
アンスラックスを起点としたミクスチャーなどの派生種をブレンド、はたまたその中にグランジやデス
などのアンダーグラウンド臭をも取り込んで、今や正統派ヘヴィメタルとはまた別の大樹にまで成長を
遂げた感のある「ラウドロック」なるジャンルの代表格「デフトーンズ」のライブを見に、お台場は
ゼップまで行ってきました。元々去年のサマソニで見て何となく気になっていたところに加えて、先週
のトゥールが存外に良かったもんで、もうちょっとこのジャンル、深く掘り下げてみようと思い立ちまして。

でもって序盤、イメージしていたよりは遥かに静かな曲調の中に時折挟まれる特濃シャウトを聞きつつ、
その中に「なんとなく」なクールさは感じるんだけれど、でもやっぱし分かりにくいわーと如実に思う
自分がいたわけで。正直どこが良いんだかさっぱりなんだけど、でも何か惹き付けられるものを感じ
てしまうというこの矛盾。リフが攻撃的とかソロがバカっ速とか、そういった明確な長所をうまく言葉
に出来ないもどかしさにジリジリしつつ、何故こういった小難しい音楽性が今や正統派のメタルを飛び
越えて主流たりえるのかと真剣に悩み始めたところで、"My Own Summer"の「ショビッ!ショビッ!」と
いうスクリームにあわせて巻き起こった突発型モッシュに体ごと吹き飛ばされ、そこで僕はようやく現実
世界へと意識を向けることを許されたのでありました。

その後、"Knife Party"に"Feiticeira"というこれまた落ち着いた曲調の、でもその中にジリジリと
押し潰されていくような圧迫感を感じつつ、着実に密度を増していく音圧という名の空気に身を任せて
ユラユラ揺れてたら今度は妙な浮遊感まで感じ始めてしまうというね。そのタイミングで繰り出された
"Digital Bath"により次に感じたのは心地よい陶酔感。その情感こめまくりの激情シャウトに見たのは
スケール感のあるダイナミズムと確かなるロマンチシズム。こりゃ歌というよりむしろポエムですね。
要するに叫ぶ詩人の会、いや、ステージ上で雄叫ぶチノの体型をも併せて鑑みるに導き出された解は
どう見ても哲学するブタ。そこまでお笑い要素満載であるにも関わらず、それでいて「っぽい」カッコ
良さは微塵も失っていないというこのギャップ。なるほど?ようやく言葉に出来そうな長所を二つ発見
しました。「洗脳感を伴う叫び」と「恍惚感を呼ぶ音のうねり」、まずここはガチでしょう。

一度掴んでしまえば、後は入りこむのにそれほど努力を要しませんでした。静からの轟音バッキング&
激情シャウトという基本トランス路線に加えて、マイクを床にゴンゴン落としたり「ギャオー」と虎の
鳴き真似したりマイク振り回した末に自らそのコードにひっかかってアンプに激突しそうになったりと
いったチノの意識的かつ天然要素アリアリな多種多様パフォーマンスも手伝って、"Engine Number 9"
辺りからもうすっかりエンドルフィン分泌状態に。特に重量・重圧感ともにそれまでより一つ上のスケール
で放たれた"Bored"と、そこから"7 Words"の「Suck」連呼祭りに至るまでの、哀愁と激情の攪拌が
生み出した暑苦しさすら感じる程の音像密度はまさに圧倒的の一言でした。

「Cure」のカヴァーから始まったアンコール以降の、美旋律溢れるメロウ曲を挟んでラップメタル
で畳み掛けるという、これまでとはうって変わった分かりやすさ抜群の流れに新鮮な感動を覚えた
ところで、こういったキャッチー路線だけでも十分やっていけるにかかわらず、あえて本編でみせた
ような小難しさやねじくれた閉塞感を演出するのがデフトーン流なのかと妙なところに感心。うむ、
かなり分かりかけてきたぞよと1人満足げに頷いていたところへ、火事場から焼け出された直後
みたいな髪型したマッチョ外人からモッシュという名のボディランゲージを脈絡なく強要され始めた
僕は、ラウドロックはともかく、そのファンとは到底分かりあえそうにないというこの現実を如実
に思い知るのでありました。("Change"でモッシュってありえないだろ)


<今日の一枚>

 Adrenalin / Deftones

ヘヴィメタルの開祖たるサバス、「暗い」「重い」「遅い」の基本三原則上に、
ラップ、オルタナ/グランジ等のエッセンスを加えて出来上がった新ジャンル「ラウドロック」、
そのあり方・方向性を明確に指し示した歴史的名盤。不安・不満・不信、ありとあらゆる「不」、
つまりは「負」のエネルギーを抑圧、圧縮、更に凝縮して無理やり封じ込めたような、いわば
パンドラの箱的な一枚であるからにして、ゆめゆめハッピーな時にこれ聞くことなかれ。
世の中が憎くて仕方なくなった夜とか、超重度の便秘を患っている時とかに聴くといいかも。


<今日の駄目T>



#微ッ妙にエロいっスね。しかもなんか間違った方向へ。
 当然のごとく外に着ていくような気にはまったくなりません。



<セット・リスト>

01:Beware
02:Be Quiet and Drive
03:My Own Summer
04:Knife Party
05:Feiticeira
06:Digital Bath
07:Korea
08:Nosebleed
09:Engine Number 9
10:Hole In The Earth
11:Xerces
12:Passenger
13:Cherry Waves
14:Bored
15:Minerva
16:Root
17:7 Words

18:If Only Tonight We Could Sleep(Cure:Cover)
19:Back To School
20:Change (In the House of Flies)
21:Headup


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