TOOL.


2007年2月12日: 川崎クラブチッタ

何一つ才能というものを持ち合わせていない平々凡々極まる存在であるにもかかわらず、
それを認められないあまり、必死こいて他者との差異を見つけ出そうとうすら寒い自己
探求をさんざ行ったその結果、メジャー受けするものをほぼ全てクソだと思うようになって
しまった挙句、場が見えてないにも程がある自己論理をむやみやたらと撒き散らかすように
なってしまった通称「分かっちゃってる君」を、今もっとも大量排出していると言われる
プログレ臭強めのヘヴィロックバンド「トゥール」が来日するとのことで、キモスパー系
分かっちゃってる君のはしくれとして、また元祖B'z氏ね死ね団の熱狂的団員として、彼ら
の音のどこに、元は単なるノーライフノーミュージックだった人畜無害な人々を「あ、分か
っちゃったー」と思わしめる力があるのかを知っておく必要があると常日頃から思っていた
ミーはこらいい機会だとばかり早速、川崎はチッタへと潜入調査に赴いたのでありました。

そんな、どこまでが本気でどこまでが冗談なんだか分からない意味不明極まる前振りは
とりあえずおいとくとして、場内入ってまず気になったのは、やけに物々しい周辺警備と、
通常なら1回流して終わるはずのモッシュやダイブ禁止アナウンスが幾度となく、しかも
日本語のみならず英語に訳したバージョンまでもがわざわざ流されていたことでして、これ
事前情報によると、来日初日でいきなり職業軍人っぽいスメル漂わせたキチ外人どもが
空気読まずに暴れ狂い、モッシュ嫌いのメイナードを死ぬほど不快にさせた事に端を発して
いるそうで、以下にその所業の一部をコピペ。

 ・どうやら外人のマナー最悪だったらしい
 ・メイナードが静かにしろって二回も言ってんのに… 外人やかましいわ。
 ・携帯のカメラが原因で外人2人が殴り合いの大喧嘩になってた
 ・つか、外人のテンションの高さは異常。
 ・聴き入ってる時に横から思いっきり突っ込んでくるからたまったもんじゃない
 ・あからさまに格闘技やってるっぽい体つきだよね。ありゃ絡まれたら死ぬわ。


そいや今日も外人率高めだなぁと少々顔を曇らせ始めたそんな僕の横をすかさず陣取って
くれたのが、よりにもよって全盛期のパトスミにクリソツすぎる筋肉隆々のドレッド外人さんと、
ライブ前の空気に興奮しすぎて明らかに自分を見失ってしまってるっぽいメイドインジャパン製
の先走りビッチ女という、思いつく限り最悪の組み合わせ。まだ開幕前だというのに僕は早速
ブルーこの上ない気分にさせられる羽目となりました。

そんな僕のドン底テンションに蜘蛛の糸を垂らしてくれたのが、開幕前のSE群の数々。
クラフトワークやマッシブアタックなどのトランス系も良かったけれど、何よりも演奏開始の
3曲ぐらい前にかかっていたテクノっぽい曲が最高に良かったですね、重低音ビートのテンポ
が徐々に上がっていく感じの…これなんて曲だったんだろ、ものすごく気になってます。
(もしご存知の方いましたら情報いただけないでしょうか?)

というわけで外人ショックからすっかり立ち直ったところで、オープニングの"Stinkfist"
からいきなり轟音グルーヴ浴びて、早々とその世界観に引きずりこまれたのを皮切りに、
"46 and 2"では妙に後味の残る陰鬱なベースラインからダニーの千手観音ドラムを経て、
終了間際にゃ仕上げとばかり怒涛の畳み掛けによる音圧という名の土石流をもろ全身に
くらって、すっかりドーパミン噴出状態に。

またバンドのシンボルたるメイナードにわざとスポットを当てず、モニターからの反射光に
よるシルエット効果のみで、逆にそのオーラをより一層際立たせていたライティングが非常
に独自的かつ効果的。加えてステージ背面にドデンと控えた三面モニターから映し出される
ヴィジュアル効果もこれまた抜群、特に"46 and 2"時、絶え間なく噴出する炎をイメージした
動画をバックにイナバウアーよろしく反り返るメイナードの姿が超絶的に見栄えしすぎ。
寝ていたところを焼け出されたみたいなチリチリモヒカン頭が、コンゴ奥地の原住民辺りに
無理やり教えこんだとしか思えないようなマトリックスポーズを舞っているだけにもかかわらず、
ここまで絵になるってな一体全体どういうことでしょうか?あ、分かった。轟音による一時的
錯乱だー

と、ほぼ仕上がり済みになりかけてたこの至福状態をブチ壊してくれたのは、案の定先程の
ドレッドさん&ビッチさんなモスト・デンジャラス・コンビでした。まず"Right In Two"の
静寂美をじっくり噛みしめていた僕のケツに対して、ビッチ女の方がいきなり自分の股間
をとんでもない圧力でなすりつけてくるという完全強制恥女プレイに興じ始めたのを皮切りに、
その後もまあケツや背中を押すわ叩くわ押し付けるわともうやりたい放題。その常軌を逸し
すぎた行動目的を察するに、どうも僕が陣取っていた仕切りバー前という好ポジションを
パーフェクト売女たるこの私に譲り渡せ的な勘違いアピールらしかったので、当然のごとく
完全黙殺。したら今度はドレッドさんの方が仕切りバー越しの超至近距離にて仁王立ちして
きたのみならず、ステージの方に背を向けての強烈ガンたれまで仕掛けてきやがったので、
僕は内心「これはもう駄目かもしれんね」と猛烈に青ざめる羽目と相成ったのでありました
はわわわー、お願いメイナード先生、この人も背負っちゃってー(動画注意)

そんな僕の切なる願いが届いたわけではないでしょうが、雨上がりの路上に出来た水溜り
におけるプランクトン観察よりも一億倍は不毛かと思われたこのにらめっこ対決にようやく
飽きてくれたのか、彼は突如僕にプイっと背を向けて前列集団の方へ空気が読めないにも
程がある強引ダイブを敢行し、そのまま眼前から消え去ってくれたので、僕は死ぬほど胸
を撫で下ろしたのでありましたラッキー あ、その後、前列の方にて唐突に飛び交い始めた
「Shut up!」「Shut the fuck up!!」等の応酬については聞こえなかった方向で。
ついでに彼の後を慌てふためきながらペチペチとホーミングしていったビッチ女の健気さに
若干萌えかけたのはここだけの話でよろしくです。

再びライブをエンジョイ出来る環境を取り戻して以降の後半ハイライトは「ここまで!?」
っていうくらい湿気たっぷり粘着質に焦らしまくってくれた"Wings PT.1"を爆縮効果に
使っての"10,000 Days"。静寂なる前半を経ての轟音ギャップ、物憂げかつ陰鬱なメロが
解き放たれたかのごとく爆発し、そして再び収束していくその宇宙ヤバい的スケール感にゃ
どこかモグワイの"Mogwai Fear Satan"におけるフィールとカブるものがあったかなと。

加えて、後半におけるドラマティズム溢れる曲調の高まりがモニター上の鎖が渦を巻いて
いく視覚効果と見事にシンクロしきって会場全体にうねるようなグルーヴを波及させていた
"Laterarus"と、生々しくも重々しいイントロを引っ張りまくってとことん場内の圧迫感を
高めておいてから本編へと突入した瞬間の"Vicarious"にゃ、なんていうか、思わずうわー
ってのけぞっちゃうくらい圧倒させられました。

終了後も妙に音が後をひくというか、なにか頭の中に強烈な余韻を残されたとでもいうか、
宇宙人にさらわれてインプリンティングされちゃった人ってこんな感じになるのかなー的
地に足がついてない感覚とでもいうか… あえて文字にするならキーワードは抑圧と解放? 
ただ一つ確かなこととしては、CD聴いただけじゃ絶対分からないような何かを強烈に
体感させてくれるバンドだと思う故、彼らの音をフルで楽しもうと思ったらまずライブに
足を運ぶが前提かなと。まだちょっと量りかねてるところが多々あるんで、これ次来日も
必ず行くと思います。


<今日の一枚>

 10,000 Days / TOOL

今や本国アメリカじゃ1000万枚超を売り上げるモンスター級にまで成長を遂げたトゥール、
満を持しての4枚目フルレンス。無気味な世界観、陰鬱かつ重厚なリフ、複雑怪奇な曲調という
トゥールらしさはそのままに、リフのうねり強化、静動コントラスト美の強調など分かりやすさ
を盛り込んで、一般市場へと歩み寄った姿勢を打ち出したと思われる、いわば熟年期の一枚。
ヘヴィロック進化の過程を知る上で避けては通れない一枚と思われ。あとモグワイ好きは必聴、
絶対気に入る筈です。


<今日の無駄T>



#フロントのロゴが多少大きめなことと、バックの絵が多少キモめなことを除けば、
 まあ、どうにか着られそうな代物。ってかメタルT的には超オシャレさんな部類に入っちゃう
 (それほどメタ系は酷い)希有な一枚かと思われるので、大事に使おうと思います。



<セット・リスト>

01:Stinkfist
02:Swamp Song
03:46 and 2
04:Jambi
05:Schism
06:Right In Two
07:〜 Drum and Bass solo 〜
08:Sober
09:Wings For Marie,PT.1
10:10,000 Days(Wings,PT.2)
11:Laterarus

12:Vicarious
13:Aenima


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