Angra & Blind Guardian.


2007年2月2日: 渋谷公会堂(C.Cレモンホール)

知る人ぞ知る南米の秘宝から今や世界の至宝へとここ数年で大きく羽ばたいた感のある
ブラジルはサンパウロ出身のメロディック・パワーメタル「アングラ」と、今やハロウィン
と並ぶジャーマンメタルの重鎮であり、ドラマティックなパワーメタルをやらせたらもはや
右に出るものなしとまで評されるようになったドイツ出身の「ブラインド・ガーディアン」。
メロパワ界隈を代表するこの二大バンドが豪華にも程がありすぎるよもやのカップリングを
組んで日本縦断ツアーしてくれるだなんて…ねえ?これに触手動かさないメタルもんなんて
いないでしょとばかり、当日とっとと会社をフけた僕は、花金の夕暮れで賑わう雑踏の中を
すり抜けつつ、渋谷はCCレモンホールへといそいそ向かったのでありました。


アングラ

今回はダブルヘッドライナーってことで、日ごとにトリが入れ替わる形式だったんですが、
この日はそれがアングラ→ブラガで、どちらかと言えば単独・去年のLPと既に2回見てる
アングラより、まだ未見なブラガの方を幾分重視していた自分としては願ったりかなったり
の順番。ということで先行のアングラは若干流し気味に見るつもり満々だった筈がいきなり
"Carry On"・"Nova Era"という彼ら最大のキラーチューンをたて続けにいれられ、予想外
の喜びに満ち溢れてしまったミーは先ほどの予定を早々と破棄せざるをえなくなりました。
後半ソロがカットのメドレー形式だったことは若干残念だったけど、でも連発だったぶん
勢いに溢れてたし、前回は無惨極まりない出来だったエドゥの声もちゃんと出ていたしで、
申し分のないスタートだったんじゃないかなと。と同時にこんなに早く切り札使っちゃって
後半大丈夫なの?とも思いましたけれど。

そこから続いた序盤ハイライトは、抜群のメロ心と哀愁を誘うドラマティズムの融合が実
に感動的な"Waiting Silence"における、ねっとりと全身に絡みついてくるようなキコの
情感ソロ。普段はそのバカテク故、わりとドライな速弾きばかりがクローズアップされがち
なキコだけど、実は「味」勝負な叙情フレーズ弾かせてもかなりイケてるんですよねこの人。
その辺りの器用っぷりが特に顕著に表れていたのが次曲の"Wings Of Reality"。勇壮度の
強いクサメロ好きな人には堪らないマトス時代の名曲なんですが、これの中間ソロにおける
シェンカーばりの泣きフレーズから炸裂したタッピングプレイがこれまた凄まじく神。

(ROCKCITY)

哀愁・勇壮という二つの異なる美を存分に味わせてくれた後は、それまでのミドルな流れ
から一転して疾走系の"Z.I.T.O."へと繋げ、ここで一気に高速展開へとシフトアップ。
ギターとキーボードによるスリリングなユニゾンとそれに絡むこれまた鬼ッ速のベースに
まず耳を奪われ、それだけハードな指使いをしているにも関わらず微塵も優雅さを損なって
いないその立ち振る舞い(指元まるで見ないのな)に今度は目を奪われてしまうというね。
その様たるや例えるなら湖面上を軽やかに舞う白鳥ですよ、水面下における足のジタバタっ
ぷりを決して感じさせないとこがポイント。その最たるものを"Nothing To Say"のド疾走
プレイにてまざまざと見せつけられた瞬間が、今日のアングラのベストショットかなと。

それにしてもこの曲といい先ほどの"Z.I.T.O."といい、初期1st/2nd辺りに作られた楽曲群
の出来の良さは、早15年近いアングラ史においても確実に際立ってますな。それに比べ新譜
からのチョイスが、技術的に凄いのは分かるんだけどちと曲としてはまとまりに欠けるような
気がしちゃうのは、僕が「疾走あらずんばメロに非ず」を旨とするただのメロスピ厨だからで
しょうか?そう、もっとーもっと速く〜(と頭の中で叫びつつ、そのまま気をヤる)
というわけで前回のLP時にエドゥと極悪PAが下げまくってくれた株を一気に取り戻した
本来のアングラらしい、力強さ溢れるライブだったと思います。

 01:Unfinished Allegro〜Carry On
 02:Nova Era
 03:The Voice Commanding You
 04:Waiting Silence
 05:Wings Of Reality
 06:Z.I.T.O.
 07:Ego Painted Grey
 08:Angels And Demons
 09:Crossing
 10:Nothing To Say
 11:Rebirth
 12:The Course Of Nature
 13:Spread Your Fire


ブラインド・ガーディアン

アングラ終了後、20分程のセットチェンジを経て、いよいよ本日のお目当て:ブラガ登場。
バックドロップなしにしょぼいドラムキットという前アクトのアングラと比べるとまるで
飾りっけなしのステージセットを見てまず「あれあれ?」、更にはとあるプロデューサーを
して「ロックスターにあるまじきルックス」とまで言わしめたその風貌を眺めて「おやおやー」
と思ってしまったそんな僕の浅慮を、"Born In A Morning Hall"におけるハンズィの圧倒的
シャウト力でもって地平の彼方まで吹き飛ばされ、いきなり目を白黒させていたところへ、
追い討ちとばかりオーケストレーションかつシアトリカル極まりないサビメロを叩き込まれた
その結果、僕は出だし2曲で早々と心をわし掴まれてしまうことに。



更には、ここまでの「動」展開から一気に「静」へと転じ、そのケルト・エッセンスでもって
ゴシックやバイキングなどの各種メタルルーツをほのかに垣間見させてくれた次曲"Nightfall"
の荘厳美を前にほぼ完全屈服させられたところで、"Valhalla"にてブラガのライブ一番の特徴
である「観客との掛け合いシンガロング」をあますことなくフル堪能させられたその1分後には
自らも似非バードと化してともにコーラス部分を熱唱しだすという醜態を晒すことに。
いや、噂には聞いておりましたけれども、よもやね、ここまで強力な一体感・連帯感を感じさせ
てくれるステージだとは思ってもみませんでしたよ。


<なぜなにメタルマン>
 唐突でごめん、なぜなにメタルマンのお時間でーす。
 で、今日はブラガのライブにおいて必要不可欠な存在とされる「バード」について簡単に
 ご説明。「バード」=「吟遊詩人」の意味で、ブラガのそれにおいては曲のサビパートや
 コーラスをともに歌ってくれる熱烈なファンのことを指しています。
 はいそこ、「なんだ、単なるシンガロングかよ」と侮ることなかれ。まずバンド自体が積極的
 にコーラス参加を促してくれる上に、その曲自体がバード達の存在を前提に作られてるんじゃ
 ないかと思うくらい合唱パート多めの構成になっているので、これなしとありとじゃまるで
 盛り上がりが違ってくるんですねー、というわけで自分の練習用という意味合いも含めて、
 下記に代表的な曲コールを抜粋してみました。

 <Born In A Morning Hall
 ・サビ部分:ボーレド、モーレン、ホール〜♪
 ・サビ直後:ハンズィ「アザサイ〜」の絶叫に続けて「アザサイ〜♪」

 <Valhalla
 ・サビ部分:ヴァーハーラ〜♪ デリーヴァランス
       ワイブ エバー フォガーットゥン ミ〜ィ〜♪ 
       ×3

 <Welcome To Dying:サビ部分>
 ・サビ部分:ウェルカム、トゥ〜〜(引っ張る)ダイング〜♪
       ウェルカムトゥ、ダイング〜♪(上げる)
 ・曲の出だし:「ウェルカム」のシャウトに続いて「ダイング!」のコールを繰り返す。

 <And Then There Was Silence
 ・後半コーラス部:「ナナナ〜♪」と合いの手コーラス

 <The Bard's Song
 ・難易度A、ハンズイの手拍子に合わせて、歌は全編バード側が対応。
  ナウ ユー オール ノ〜〜ウ
  バー ザン ゼア ソ〜ングス
  (ウェ) アワ ハブ ゴーンバイ
  アイ クローズ マイ アイズ
  (イン) ワール ファー ラー ウェイ
  (ウィ) メイ ミー ター ゲイン
  (バ) ナウ ヒア マイ ソン
  (バザ) ドーン オブ ザ ナアア〜イ
  (レッツ) シン ザ バーズ ソーン
  
  トゥモーロー ウィル テイクアサ ウェイ
  ファー フロム ホーム
  ノーワ ウィル エェーバ ノウ アワ ネイム
  (バザ) バーズソン ウィルリ メイン
  トゥモーロー ウィル テイキター ウェイ
  (ザ) フィアー トゥ デイ
  イッ トュビ ガァ〜ン
  デュ トゥワーマージー ソーン
  
 ということでブラガのライブに行くなら上記暗記は絶対ですYO!あ〜い、とぅいまってーん〜


 
ハンズィの力強いシャウト、それを引き立てるバード達のコーラスと並んで、もう一つ特筆すべき
部分がアンドレのギターソロ。インギやヴァイなどの超絶技巧派とは真逆の、地味に静かに弾きこ
なしてます的タイプなんだけど、シェンカーを代表格としてもはやドイツ系ギタリストのお家芸に
までなった感のある、丁寧でいて叙情的なプレイ、かつメロディアスという点において分かりやさ
抜群の澄んだ音まわしが、これまた実にエクセレントでした。



というわけでほぼ全編が見どころだったわけなんですが、あえてその中でハイライトをあげるなら、
壮大を超えて過剰・大仰極まりない上に長尺、なおかつ曲調展開まで目まぐるしく変わる"And Then
There Was Silence
"にて感じさせてくれた、プログレシッヴメタルをパワメロとしてのとらえた場合
における一つの解と、疾走感及び緩急美をとことん味わせてくれた"Imaginations From…"の二つが
特に突き抜けていたかなと。

アングラとのジョイント形式だったこともありコーラスの主戦力たるバード達が単独より若干少なめ
だったり、席指定のせいで盛り上がりがいまいち伝播しにくかったにもかかわらず、これだけの
臨場感を味わせてくれたわけですからね。こりゃスタンディングで単独だったらものっすご楽しい
ことになることほぼ鉄板で必至かと。それまでに僕自身も研鑽を積んでせめて中級ぐらいのバードには
なっておこうと思います。

 01:War Of Wrath〜Into The Storm
 02:Born In A Morning Hall
 03:Nightfall
 04:The Script For My Requiem
 05:Fly
 06:Valhalla
 07;Time Stands Still(At The Iron Hill)
 08:Mordred's Song
 09:Welcome To Dying
 10:And Then There Was Silence

 11:Imaginations From The Other Side
 12:The Bard's Song-In The Forest
 13:Mirror Mirror


<今日の一枚>

 LIVE! / BLIND GUARDIAN

「Tokyo Tales」以降、世界へと大きく羽ばたいたブラガ10年の軌跡、その集大成を示す
入魂の2枚組ライブ・アルバム。ほぼベスト選曲の内容に加えて、世界中に散らばったバード達
がともに織りなすコーラスによる臨場感がとにかく抜群。これほどステージ内外が一体となった
ライブアルバム、絶対他に存在しないと言いきれるだけの内容に仕上がってると思われ。
ブラガの何たるかを知りたければ、まずこれを買うが近道。


<今日の駄目T>



#アングラ+ブラガという、今回のジョイントライブを記念して作られた特製T。
 …の筈なんだけど、デザイン的には各バンド単体Tの方が独自性があって良かったんだよなー
 今後は「限定品」という甘い言葉につい釣られないよう、気をつけたいと思います。


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