RANCID.


<2007年1月5日: 新木場コースト

バッドレリジョン、ペニーワイズに並ぶパンク専門レーベル「エピタフ」の筆頭格にして、
現役で活躍しているパンクバンドの中では数少ない「ロンドン・パンク臭」を未だに色濃く
持つことで特に重度なパンクキッズ達に圧倒的な人気を誇る、米はカリフォルニア州出身の
「ランシド」を見に、新木場はコーストまで行ってきました。

家でひたすら食っちゃ寝生活していた正月休み明けということもあり、正直テンションあんまし
高くなかったんですが、新木場駅についた途端、チェーンをやたらジャラつかせたモヒカン頭の
人々が会場の方へ集団闊歩していくのを目の当たりにしてすかさず気合が入ったのを皮切りに、
ホール入り口付近では鋲ベルトでの入場を断られた1人の若人がとんでもなく憤った末そのまま
係員にくってかかるという大変心温まる光景を垣間見させられることとなり、僕はすっかりやる
気が出てしまいました。

そんなやる気満々なホンモノさん達が何百人と集う熱気ムンムンな中へ、出だしの2曲でいきなり
"Radio"・"Roots Radicals"という初期時代の合唱系ナンバーやられたもんだから、瞬時にして
場内は狂乱のるつぼと化し、フロントじゃダイバー続出、その少し後ろ辺りにてハードコア旋風
吹き荒れ、そのまた少し後ろの集団は狂ったように「ポゴ」を繰り返すという、実にカオス極まり
ない有様に。

<突然だけどなぜなにメタルマン>
 
メタラーに「ヘッドバンキング」あるなら、生粋のパンク野郎達に「ポゴ」あり。
 直立不動姿勢のまま狂ったように小ジャンプを繰り返すこの狂態のルーツは、ギグをもっとよく
 見たいあまり、その場で小ジャンプを繰り返した70年後半のロンドンパンク達にあるそうだよ。
 執拗にリバウンドを狙うデニス・ロッドマンのごとく、周囲の迷惑まるで省みず、その場ジャンプ
 を小さく細かく繰り返すのがコツらしいね。たとえジャンプが多少斜めって左右に体がブレたと
 しても、周囲のご同輩達が力任せにブン殴ってちゃんと姿勢を元に戻してくれるので、何も心配
 はいらないね。さあ、皆も僕に続いてジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!


その後も息継ぎなしで、メロコアでもエモでもないド直球のガレージサウンドを次から次へと
演奏してくれる彼ら。高速パンクチューンの"Otherside"で絶頂にまで高まったヴォルテージを、
アクセルのオン・オフが巧みな"Side Kick"で一旦いなしてから、メロ心満点の"Radio Havana"を経て、
「Operation Ivy」時代の"Unity"へと繋いだ中盤の流れが特に秀逸。

でもってその後に続いた"Maxwell Murder"で、今度はギターと聞き間違わんばかりなマットの
高速ベースソロにとことん驚嘆させられたかと思いきや、それに負けじとティムがモニター上に
飛び乗って吠え、そこに呼応するかのごとく今度はラーズがそれ以上に野太いしゃがれ声でもって
お得意の掛け合いを被せてくるという、あまりに豪華すぎるコンビネーションが炸裂。
3人のフロントマンが持つオーラがそれぞれ違った方向へ際立ってるおかげで常に見どころが
あってなかなかステージ飽きしないという、このバンドの強みを改めて実感することに。
特にラーズ、ガッツのお父さんみたいないかつい顔つきとこれぞパンク専用って感じのダミ声が
たまらなく格好いいんスわー。これでティムがかつてのモヒカン頭だったらステージ映え的には
もう完璧だったのに。

続いてパンク好きなら誰もが知ってるであろう名曲"Olympia,Wa"のキャッチーなメロにすっかり
アテられた場内のノリが縦から横へと変化したところで、ランシド最高傑作とその名も名高い
俗称モヒカン欝アルバム「... and Out Come The Wolves」から連発で畳み掛けられた末、ランシド
の中じゃ一ニを争うほど好きな曲"Salvation"を被せられた時点で、もう楽しすぎて死ねました。
というか死んだ、この時点で持てる気力・体力の全てをロストしてあえなく後方へと一時退避。
いや、まるで力の抜きどころナシなこの流れはちょっとヤバすぎますわ。

曲中、ゾンビ・死霊のはらわたをはじめとする恐怖映画の数々や、アンドレ全盛時代のプロレス、
はたまたビル爆破シーンの映像などを早回しで映して、聴覚のみならず視覚的なパンク感をもさんざ
煽っておいて、曲終了と同時に「ランシド」の静止画アイキャッチをメリハリよくピタッと入れた
ステージ後方スクリーンの使い方もまた秀逸だったと思います。

アンコールはアンコールで、ここ近年のランシド・ナンバーの中じゃ飛びぬけた出来だと思う
"Fall Back Down"をアコス調でプレイして会場全体をジーンとさせたところで、すかさず激烈
パンクソングの"Bloodclot"をブチかますというこれまた悶絶ものの流れ。
でもって最後は「CLASH」テイスト溢れるスカ調リズムが印象的な"Ruby Soho"を観客とともに
大合唱という、これ以上ない展開でもって締め。いや、今年一年のライブ・ライフの始まりを祝う
意味での景気付けとしては、最高の内容でした。故に今年のライブ観戦テーマは「パンク強化」で
行こうと思います。(もちろんメタルもバリバリ聴くけど)


<今日の一枚>

 「…And Out Come The Wolves」/ RANCID

ランシド最高傑作と名高い1995年のサード。
ラモーンズ系、骨太ガレージ魂の中に、中期クラッシュを匂わせるようなスカ・レゲエなどの
ヴァイブを惜しげもなくブチこんだ、言うなれば闇鍋的一枚。パンクとしての矜持を確かに主張
しつつ、それでいて丸みのある音作りとその中に内包された多様性あるサウンドは、今巷に溢れて
いる第三世代パンク勢とは完璧に一線を画していると思われ。ジョー・ストラマ好きなら是が非
でも抑えておきたい、パンク名盤中の名盤。


<今日の駄目T>



#真っ赤に刺繍されたバンド名ロゴの真下にでっかいドクロという、いかにもなデザイン。
 メタルT系のそれに比べりゃかなりマシな部類だとは思うけど、外で着れないのはどちらも同じ?



<セット・リスト>

01:Radio
02:Roots Radicals
03:Nihilism
04:Journey To The End Of The East Bay
05:Black & Blue
06:Otherside
07:Side kick
08:Radio Havana
09:Unity
10:Maxwell Murder
11:You Don,t Care Nothin
12:Olympia, Wa
13:Old Friend
14:The Wars End
15:Antennas
16:Rejected
17:Salvation
18:St Mary
19:Who Would,ve Thought
20:Rats In The Hallway
21:Something In The World Today
22:Hoover Street
23:Black Derby Jacket
24:Time Bomb

25:Fall Back Down
26:Bloodclot
27;It,s Quite Alright
28:Knowledge
29:Ruby Soho


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