MOGWAI.


<2006年11月11日: 新木場コースト

古くはアズテックカメラ、ティーンエイジ・ファンクラブからプライマルスクリーム、ここ近年においては
フランツ・フェルディナンドに至るまで、数々のトップバンドを輩出してきたUK屈指の音楽都市グラスゴー。
その中でも特に異質な存在としてその名を知られる、驚異の轟音インストゥルメンタル集団「モグワイ」が
今年のフジロックに続いて早くも再来日をはたすというので、唯一無二と称されるその轟音ワールドを体感しに、
新木場はコーストまで行ってきました。

で、今回も前座バンドの演奏分を鑑みて、本編開始と思われるギリギリの時間に会場入りしたところ、
事前にネットで得ていた「そんなに客入りはよくない」との情報がもろガセだったことに加え、ホールの
右側にしか出入り口がないというコースト特有の構造上問題も重なって、何故か僕はホール右サイド付近で
開始5分前くらいまでやりたくもないおしくらまんじゅうにひたすら興じさせられる羽目に。でもその苦労
の甲斐あってか、やっとのことで辿り着いた左サイド奥は右と比べたらかなりスカスカでした。故に今後
コーストに行く人は鉄則として覚えとくとよいです、「なにはともあれ左奥を目指せ!」
マジで人口密度的にも空調の流れ的にも右側と比べたら二倍は快適にライブ観戦できること請合いですよ。

さて、ライブの方ですが、OPナンバーの"Xmas Steps"がかなり長い間、静寂ムードを引っ張る曲調な上に、
CDで聴いてた限りさほどの轟音も感じていなかったので、若干脱力気味に聴いてたら、5分過ぎた辺りで
早速やられました。だって、あ、徐々に音圧上がってきたかなーと思うがいなや唐突にグゴー!だもの。
普通にびっくり。音作りの二次元座標におけるX軸「静・動」とY軸「強・弱」のパラメータ振り幅が
ちょっと本気で異常すぎると思いました。けど奴等の本気はまだまだこんなもんじゃありませんでした。

それを如実に思い知らされたのが3曲目の"Travel Is Dangerous"。これ、サビの轟音展開も凄かったけれど、
背後に設置されたMYT柱(「Mogwai Young Team」の頭文字を縦に形どったと思われる)の照明効果にも相当
なものがありました。よもや轟音に三半規管をゆすられたのみならず、怒涛のフラッシュ効果に目をもやられて
視聴覚ともにダブルで強制トランスさせられることになろうとはね。これ、僕が彦摩呂なら間違いなく叫んでる
とこですよ「うわー、光と音の土石流や〜」 静寂という名の美と、轟音という名の衝撃が織り成す至高の世界、
これがモグワイ・ワールドかと。

その最たるものが本編終盤、7曲目から9曲目にかけての流れ。
まずは、巨大ミラーボールにより場内が満天の星空に変わる中、切々と流れる優しげなメロでもって包容感
溢れるまったりムードを存分に味わせてくれた"Hunted By a Freak"。そこから一変して、今度は静寂かつ
重厚、それでいて整然とした陰鬱なメロディがじわじわと圧迫感を高めていく"Mogwai Fear Satan"前半の
官能的美しさに溜め息をつかされるというね。とどめが後半。堤防の決壊を思わせるがごとき勢いと、烈火の
ごとき熱さをもって唐突に迫りくる轟音火砕流のその破壊的扇情力…! 
その激情が去った後の静寂、深くて長い余韻の先に、本日最大の轟音が"Glasgow Mega-Snake"によって
もたらされるという寸法です。服の裾までビリビリ、キターもう、荒れ狂う波間に浮かぶ木の葉がごとく、その
圧倒的音量の前になすがまま翻弄されまくりですよ。だけども、決して不快ではなく、いや、むしろ心地よく
さえある、みたいな。メガデスのムス大佐が「本当のラウドってのは耳を傷めない音のことなんだ」と仰って
いたそうですが、モグワイの轟音はまさしくそれに当たると思いました。

最後は、ノイズ系の轟音がひたすら鳴り響き、照明が「未知との遭遇」のラストシーンのごとき光の洪水を四方
八方に撒き散らす中、メンバー達が一人ずつフェードアウトしていって、ふと気づけば終わっていたという真夏
の夜の夢のような幕引き。アーティスト側が写真撮影を許可していたにもかかわらず、ほとんどの人が携帯を
構えることなく、ただひたすらステージに見入り、そして聞き入っていたということも含めて、ホール全体に
不思議な一体感が漂っていたライブでしたね。


<今日の一枚>

 Mr Beast / MOGWAI

オープニングの"Auto Rock"から"Glasgow Mega-Snake"への流れを筆頭とする、モグワイ定番パターン
の「静から動への移行カタルシス」が交互に満遍なく楽しめる良作。不自然な日本語の詩によりせっかくの
叙情的メロがダサダサになってしまってる"I Chose Horses"だけが残念だが、まあそれはご愛嬌ってことで。
そしてモグワイの本当の凄さはCDでは半分も伝わらないと思うが故、これが肌にあった方はライブにも足を
運ぶが大吉。「本当にラウドな音圧」というものを体感できること間違いなし。


<今日の駄目T>



#これまでの中じゃ、最上位レベルでまともな部類に入ると思います。
 やっぱメタル系のTのみが、他ジャンルとは一線を画す酷さってことなのかな。




<セット・リスト>

01:Xmas Steps
02:Friend Of The Night
03:Travel Is Dangerous
04:Tracy
05:Acid Food
06:I Know You Are But What Am I?
07:Hunted By a Freak
08:Mogwai Fear Satan
09:Glasgow Megasnake
10:Ithica
11:Cody
12:Two Rights Make One Wrong

13:Helicon 1
14:We're No Here


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