IRON MAIDEN.


<2006年10月25日: 日本武道館>

ひょっとして去年のジューダス・プリースト以来になるんですかね、日本武道館は。
これだけライブに行っておきながら、せいぜい年に一度くらいしか足を向けることがないってとこから
鑑みるにやっぱ武道館のステータスって凄いんだなって、界隈でも本当にトップクラスのアーティスト
しかプレイすることを許されない特別な場所なんだなあって。道すがら、そんなことを考えつつサバス、
ジューダスと並ぶビッグ3の一つ、アイアン・メイデンのライブを見に、九段下まで行ってきたという
寸法なわけですが。

指定座席が2階の、しかもP列(!)というかなり後方の位置だったんで、正直ライブを楽しむには
相当微妙な環境じゃないかなと思って覚悟してたらこれが意外や意外、距離が遠いことだけを除けば
ほぼステージ真正面の超ベストポジションであることを知り、ちょっと得した気分になりました。
武道館の2Fって「東」「南東」「南」「南西」「西」と5つのエリアで分けられているんですが、
これ、断然「南」がベストって始めて知りましたよ。ヤフオクでチケを落とすときの豆知識として今後
きっちり有効活用していきたいですね。

そして開幕の合図を示す"Doctor Doctor"のSE終了と同時にいよいよメイデン本体が登場。
新譜「戦記」のオープニングを飾る"Different World"のイントロが粛々と流れ出すとともに、ブルース
がモニター上を開口一番ジャーンプ!これ!メイデンはやっぱしこれですよ。ジューダス象徴の一つがロブ
繰り出すカクカクしたロボットアクションにあるとするならば、ステージ上をところ狭しと駆け回るブルース
のこのバイタリティ溢れる動きこそがメイデン・ライブの真骨頂ですよ。そこへドンピシャのタイミングで、
ハリスを筆頭とするデイブ、エイドリアン等、弦楽器隊チームによるお馴染みのトリプル・フォメーション
が炸裂ときた日にゃ、もうそれだけでカタルシス全開という、ね…! ダサさの底を突き破ってグルっと一周
回ってきたようなこのカッコ良さこそいわばメタルの精神そのものと言っても過言じゃないかもしれません。
ああメイデン、彼等がいなかったらメタルに未来はなかった… 

ヤニックは端っこの方で、ギター弾かずに振ってました。


それにしてもブルースの動きは、いつものことながら抜群に際立ってましたね。若々しさ溢れる滞空時間の
長いジャンプ連発に加えて、セット上部の狭い通路部分を全力疾走&急速停止の繰り返しとか。挙句の果て
にゃ歌の途中でどこかしらのクルーの(メタル・ヘッドバンガーズ・ジャーニーのサム・ダン監督らしい)
カメラを取り上げる余裕まで見せるというね。その所作たるや失礼ながら、まんまバナナをねだってるサル
そのもの。もう流石にお歳なんで運動量は減ってるんじゃないかなと思いきや全然そんな様子は伺えませんで、
まずは一安心。そのアクティブ極まる動きと相変わらずの歯に衣着せぬ言動でもって、今後もシーンを積極的
にリードしていってほしいと切に思いましたね。(まあ、元気が余りすぎて、時にはオズフェストのような
トンデモ事件を引き起こしちゃったりもするんだけど)

ヤニックは端っこの方で、ギター弾かずに回してました。


突然だけど、なぜなにメタルマン
 〜かの「オズフェスト事件」について: とあるコミュより抜粋〜
 
 発端はディッキンソンがケラング誌に「俺たちは『オズボーンズ』 みたいなリアリティーショウは必要ない、
 金儲けのための再結成バンドでもない、生粋のブリティッシュヘビーメタルだ!」云々と語ったことだった。
 全てが始まったのはその日の午後、シャロンとケリーが サイドステージの舞台裏を訪れ、「みんなでMAIDENに
 卵を ぶつけましょう」と提案、中でもBURY YOUR DEADのメンバーと その友人たちは、嬉々として参加を表明、
 幸いにも大多数の バンドは怒りも露わにその提案を拒否。

 その夜MAIDENがステージに現れると、BLACK LABEL SOCIETYの取り巻きで珍走団くずれのビッグ・デイブが
 サウンドボードを乗っ取りPAから「オジー」コールでイントロを妨害。MAIDENが演奏を始めるや否や最前列に
 陣取るオズフェスト参加パスを持ったバンダナを巻いたオジーの親衛隊が一斉に卵やビール、唾を浴びせる。
 だが依然としてMAIDENはプロに徹し演奏を続け、2曲目の「TROOPER」でブルースが独立戦争時代の赤いコートを
 羽織って英国旗を振ると、裸の上半身に「オジーを舐めるな」と書いたBLACK LABEL SOCIETYのメンバーが星条旗
 を持ってステージに乱入を試み、彼はMEIDENのクルーによって取り押さえられ、ステージの外へ放り出される。
 「TROOPER」が終わるとブルースは持ち前の威勢のよさで客席に「オジーのファンに訊きたいんだけど…」
 そして大声で「どうしてオズフェストの連中のトコから3ダースもの卵が飛んでくるんだ?」 と冷酷な反撃。
 彼は次の曲について「お前らの地元のクソラジオ局じゃ放送されないだろう。MTVでも流れないだろう。特に
 あのクソったれな『オズボーンズ』では!」と語ると場内は怒号に包まれた。

 「HALLOWED BE THY NAME」の冒頭たった二小節歌ったところで歌うのを止めたブルースは最前列に駆け寄り
 「おい、そこのクソ、 クルクル頭でダセー眼鏡してオズフェストのラミネートをケツからぶら下げてるヤツ、
 卵が何個あったってMAIDENは演奏やめたりしねぇぞ。お前を告訴できないかも知れないが、今から行って酷い
 目にあわせてやる、この野郎!」と言うや、騒ぎを起こした連中を何名か退場させ、より激烈なバージョンにて
 演奏を再開すると、最後の場面でPAが故意にオフに。音が出るようになるとブルースも攻撃を再開、「いつも
 たった55分しかやれないが今日は輪をかけて短くなりそうだな。だがMAIDENは最後まで演奏するぜ!」と宣言。

 一度アンプの電源を落とされたのをはじめ都合6度もPAはカットされたが バンドは一音も外すことなく演奏を再開、
 次々とクラシックを披露。 PAを切られるたびにバンドは意固地に演奏し続け、その怒りに燃えた様は正に鬼気迫る
 の一言。「IRON MAIDEN」の演奏の前にブルースは「諸君らの憲法は『我々人民』について書かれているだろうが、
 では教えてやろう、何故俺たちがこの仕打ちに耐えてるかと言えば、『諸君ら人民』のためだ。素晴らしきグレン
 ヘレン、ここ在住の大勢のファンが来てくれたんだから!」と。場内割れんばかりの大歓声。 続けて「卵なんかじゃ
 俺たちを止められない。俺たちとキミたちファンの絆を断つことは出来ない。不敬には死あるのみ、それが俺たち
 IRON MAIDENだ!」と告げると雷鳴のような拍手喝采。曲中ではエディーの登場が何かの妨害により遅らされたようで
 最後にチラッと登場。バンドが「SANCTUARY」の激烈バージョンでショウの締めにかかるとビッグ・デイブによって
 PAがカットされ、バンドがファンに別れを告げようとする間中ずっと「オジー」の大合唱。怒り心頭のファンは
 「メイデン」コールで応戦。

 彼らがステージを降りて10秒と経たないうちにシャロンが登場。慇懃無礼にMAIDENの参加に感謝の意を表しクルーと
 メンバーを誉めそやすと、最後に「でもディッキンソンは腐れチンポよ」と罵倒。激怒した観客は彼女にビアカップ
 を浴びせ「アバズレ」コール。観客をなだめようと「彼はオズフェストを侮辱したのよ!」と続けるとビールと
 大ブーイング。シャロンはマイクをステージに叩きつけると足早にステージを去る。MAIDEN見たさに高い金払った
 観客は茶番劇に萎え一斉に帰途に。SABBATH登場の頃には場内ピーク時の半分しか客が残っていなかった。



その後もステージ全域にて繰り広げられる定番アクションを楽しみつつ、きっちり曲順に演奏されていく
新譜ナンバーに聴き入っていたわけなんですが、5曲目辺りで遅ればせながらおやおや?と思いはじめましたね。
あれ?ひょっとして新譜しか演奏してない?みたいな。あ、そういや「戦記」のライナーに「できればライブで
全曲通して演奏してみたいね」みたいなブルースのコメントが書かれていたけど、あれマジでやっちゃうの? 
まさかね。これだけ多数のヒットナンバーを抱えていてかつ皆の聞きたい曲をきっちり分かってるバンドが、
そんな無謀なことしちゃったりするわけないよね? 

と信じる僕の希望は軽々と裏切られ、至極あっさり完全再現されちゃうことに。
ほぼ全ての曲がリフ・メロとも重々しい壮大さを感じさせるミドルテンポ調な上に、構成及びサビ部分が
似通ってる曲が多いせいでやたらと既視感を感じるというのもあって、ひたすら濃厚ソースのステーキを
食わされてるような気分にね。
どこを切ってもメイデン!みたいな特徴あるリフにドラマチックなメロ構成がピタッとハマった"Pilgrim"や
それに転調を絡めてどこまでも大仰かつ荘厳に仕上げた"For the Greater Good of God"などの反応は
それなりに良かったものの、その後の矢がなかなか続かない、みたいな。
更には、どことなく無理やり感漂う盛り上がりになってきちゃった場内の空気や、始まった頃にゃ狂ったよう
に頭振ってたもののライブが進むにつれて横でフテ腐れてガン座りし始めたメタル親父とかを見て、旧メイデン
ナンバーを期待してきた人にとっちゃこの選曲、とんでもない肩透かしだったんじゃないかなって、なんか
如実に不安になってきちゃったり。

ただ、なかなかに潔いセットだと思ったのもまた確か。キッスしかりオジーしかりジューダスしかり、それら
大物クラスの中で、未だに新譜を完全フィーチャリングしたセット組めるのってたぶんメイデンだけですからね。
色々なリスクを考えたら普通できませんってこれ。まあ、僕は、過去の遺産よりも現在の進化を体感してほしい
的な彼等流のメッセージだと思って聴いてたので、わりとダレずにすみました。

あ、ヤニックは端っこの方で、はぐれメタルと化してました。


そんな賛否両論渦巻くジリジリ展開のせいもあってか、「戦記」パート終了後、"Fear of the Dark"出だし
が流れるや否や、旧来からのコアファンがこれまで溜めてきた鬱憤が一気に爆発。一斉に沸き起こった曲頭の
シングアロング「オー、オオオ、オオオー」における超絶的なテンションの高まりっぷりに、その全てがこめ
られてました、まさに武道館全体が完全に一体となった瞬間だったと思います。
更には、その勢いをまんま引き継いでブルースが「スクリーム・フォー・ミー!ブドーカン!」とお馴染み
の気合一発、と同時にかの名曲"Iron Maiden"のあのリフが刻まれはじめた瞬間が本日のクライマックス。
更に更に、ただでさえ昂ぶるサビ部分で駄目押しとばかり、ステージ後方から巨大戦車がせり上がってきて、
中から巨大エディがそのご尊顔をひょっこり覗かせるという大仕掛け(動画後半参照)も加わった日にゃね、
そら隣の親父も興奮しすぎて、過呼吸起こす寸前ばりの絶頂ツラで喉をゼハゼハ言わせたりしますわ、実際。

ヤニックは端っこの方で、ギター弾かずに投げてました。


あと、前来日じゃやってくれなかった"2 Minutes to Midnight"をアンコールの頭でプレイしてくれたのには
いたく感動。当然のごとく「ツー、ミニッツ!」の後に続けて喉も枯れよとばかり「ミィィッ〜ナイ〜」の連続
スクリーム。ついでに腕を振りすぎて、これを書いてる今も右肩の付け根をピキピキいわせる羽目に。
そこから続けた2曲目が"The Evil that Men Do"という、これまたもっとも聴きたかった曲の一つだったり
した日にゃ、もうこの時点で相当幸せな状態になってましたね。本編の新譜曲連続でジラされまくってただけに
その喜びもひとしお。隣の親父なんかその切なげな悲哀リフ聴いた瞬間、みなぎりすぎて、口からビールという
名のエクトプラズムを放出させてましたからね(その後、酸欠おこして床上で悶絶)。そしてメイデン節全開の
二段サビにのせて舞台端からノッシノッシと登場してきたるは、もちろんあのジャンボマックス型エディー。

でもヤニックは戦ってくれませんでした。(←これが一番残念)


最後が"Run To The Hills"じゃなくて"Hallowed Be Thy Name"というのは、ちょっと意外でしたが、
名曲揃いなメイデンレパートリーの中でも特に際立った荘厳さとスケール感を感じさせてくれる曲だけに、
壮大感溢れる「戦記」をフィーチャーしたライブの最後を締めくくるには相応しい選曲なんじゃないかと
妙に納得したりも。

まとめると、プレイ内容、パフォーマンス、ステージ構成からその選曲に至るまで徹頭徹尾、メイデン「らしさ」
というものを感じさせてくれたと同時に、ダイハードなファンであればあるほど不満を隠せずにはいられない内容
でもあったんじゃないかと。20年来もの歴史を持つメイデンならではの、新と旧を併合させることの難しさ、
みたいなものが垣間見えたライブでしたね。


<今日の一枚>

 A Matter Of Life And Death / Iron Maiden

メイデン14枚目の最新作。
ほぼ全曲が壮大かつ重厚な上に大仰で長尺という、どこをきってもメイデン節炸裂な内容。
まさにメイデンのメイデンによるメイデンの為のアルバムといった感じの仕上がりなのだけれど、
どの曲もテンポ・構成ともに似通っているだけに、クドすぎて聴き疲れする感も否めない。
個人的にはもう少し「第7の予言」や「死の舞踏」的なバランスのひねりが欲しかったかも。


<今日の駄目T>



#メイデンのTシャツは、海外のメタル野郎にゃ大人気だそうで。
 ちなみに彼等は普段着としても愛用しているそうですが、えー、でも、これ… 無理だろー




<セット・リスト>

01:Different World
02:These Colours Don't Run
03:Brighter Than a Thousand Suns
04:The Pilgrim
05:Longest Day
06:Out of the Shadows
07:Reincarnation of Benjamin Breeg
08:For the Greater Good of God
09:Lord of Light
10:Legacy
11:Fear of the Dark
12:Iron Maiden

13:2 Minutes to Midnight
14:The Evil that Men Do
15:Hallowed Be Thy Name


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