SLAYER.


<2006年10月16日: 新木場コースト

ラウドパーク二日連続フル参戦にゃ、思ったよりも体にキツいものがありましたね。
何せ体力・精力ともに尽き果てた末、「まるでしかばねのようだ」君と化してそのまま
ベッドに倒れこんだ挙句、ようやく目覚めたのが次の日の12時だったといいますからね。
いくら眠剤アタックかましてたとしてもお前さん寝すぎな。当然のごとく時間軸的に会社は
休む羽目となりました。が、同日夜に控えているスレイヤーには行く!みたいなね。
もうね、廃人ですよ廃人、我ながらちょっと酷いと思いました。今は反省していません。


マストドン

まずは、ラウパー中に見るつもりだったもののあまりの睡魔に負けて余裕で見逃してしまっていた
前座のマストドンを観戦。うーむ、圧倒的な手数のドラムとその上からブ厚く上塗られていくリフ
の音壁を基本とした中に、時折入る美メロと超絶技巧ソロ、更には節々で突如挿入される転調と、
こりゃ実に複雑怪奇な音徴を持つバンドだと思いましたね。メロデス要素にプログレを加えて更に
ハードコア分をも混ぜ合わせたみたいなその音楽性からは、確かに新しい何かを感じました。
少し乱暴な言い方するなら目指す方向性はドリームシアターと似ているんだけど、その切り口の角度
がまるで異なるので、すごく斬新に聞こえるとでもいうか。まあ、伝え聞いたところによるとメンバー
自身はよく比較対象として取りあげられるドリムシのことを好きじゃないらしくて「あいつらゲイだろ」
とかベースの人をチビの中国女扱いだとか本当に言いたい放題らしいので、この件にはあまり深く触れ
ないでおきますが。

まあ、曲調が猫の瞳のごとくクルクルと変わりすぎて、それが曲単体としての良さを分かりにくして
いるという本質的欠点も持ち合わせていたりするので、どこまで火が点くかはちょっと読めませんが、
"Blood and Thunder"のような分かりやすさに加えカッコ良さ抜群のキラーチューンもちゃんと作れる
バンドなので、今後もひき続きチェキっていきたいと思ってます。

 01:Iron Tusk
 02:March Of The Fire Ants
 03:Circle of Cysquatch
 04:Aqua Dementia
 05:Wolf Is Loose
 06:Crystal Skull
 07:Bladecatcher
 08:Colony of Birchmen
 09:Megalodon
 10:Blood and Thunder


スレイヤー

でもって、いよいよ本日の本命、帝王「スレイヤー」の出番ですよ。
なんかもう、開幕前の空気からして「スレイヤー」って感じでしたね。
何せ、セットチェンジの折、デンドロビウムばりの装備が施されたドラムセットが登場してきた時点で
まず「おお〜」ってどよめきが上がり、ついで新譜のジャケ絵を使用した不気味極まるバックドロップが
せリ上がってきただけでもう「ウオー!」って歓声だもの。と同時にやたらとイカつい男が前ブロック
周辺に密集しだして、なんかもうすっかり異様な雰囲気に。



始まる前からそんなでしたからね、暖気とか慣らしとかペース配分とかまるで関係なし。
OPナンバー"Darkness Of Christ"のイントロが流れた瞬間からいきなり全開レベルの悶絶モッシュ
が巻き起こって、その周辺にいる人という人を単なる「塊魂」の攻撃対象へと貶めつつ、辺り一帯を
阿鼻叫喚地獄へ叩き落とすというね。そりゃもう人が跳ね飛ぶわ弾け飛ぶわで、そのシーン見た僕は
さっそく逆シャアのラスト間際におけるサイコフレームの共振を思いだしてしまいました、いやこの場合
はむしろ共振というより「狂信」でしょうか。その光景にすっかりアテられたか、自分の隣にいた背広
ネクタイの方なんか、していた眼鏡を胸ポケにしまうやいなや「イヤッハー」ってな感じでその輪の中
に特攻していっちゃうし。案の定、ものの5分も経たないうちに、ちょっと小洒落たホームレスみたいな
姿にたちまち変えられて、その輪からよろけ出てくる彼を見て、僕は善良な市民達を瞬時にピラニアの
大群へと変えてしまう程の暴虐性を秘めたる、その音楽性の恐ろしさというものをまざまざと思い知る
のでありました。

しかしまあ単独ライブという形でこうして聴き入ってみて、改めて素晴らしいと感じたのは、
"Mandatory Suicide"や"Seasons In The Abyss"などに代表される出だしのヘイトフル
極まるリフ。それが、のちの高速パートへと繋がっていく前段階の助走となって、スレイヤーを
スレイヤーたらしめている「狂速」もしくは「凶速」とまで称されたその超絶的スピードをより一層
際立たせ、あの怒涛の発狂ソロや圧倒的手数で迫りくる重厚ストロークを、更に唯一無二のものへと
昇華させている点について。
その強弱・静動の使い分けが絶妙ゆえに、これだけ速いのに決して軽くはならないという。
その概念が20年以上前の「Raining Blood」時点で確立されていたのも凄いけど、それがいまもなお
"Cult"等における最新作の楽曲にしっかりと踏襲されているのも凄いなあって。何年経ってもどこまで
いってもスレイヤーはスレイヤーでしかない、ということを如実に実感させてくれた中盤の流れでしたね。

更に特筆すべきは、トム・アラヤ先輩の、決して重すぎず、それでいて厭世感一杯といった感じの
吐き捨てシャウトですよ。時折見せる笑顔とのギャップがまた素敵ー!今年初頭に胆嚢摘出の手術を
受けたとのことでその体調が心配されてたらしいけど、そういったハンデをまるで感じさせない安定
したパフォーマンスを終始見せ続けてくれてましたね。MCは若干少な目だったような気がするけど、
でも「昨日来たやつどのくらいいる?」って客にふって、返ってきたその返事が「イエー!」じゃ、
そらMC意味ねーと思われても仕方ないかもね。

でもってVo兼ベースのアラヤがその場から動けないのはまあ分かるとして、帝王きっての二枚看板
たるケリーにジェフがこれまた案外に動き回らないという、しかしそれでいて、その圧倒的存在感や
威光めいたオーラだけは如実に感じとれるというこの矛盾。ほぼ棒立ち状態で演奏してるだけなのに、
ちゃんとカッコよくてステージ映えしてるってこれ普通と完全に逆ですからね?その上、赤もしくは
青の単色のみで彩られたスモークが辺りを不気味に漂って、その狂気じみた空気の濃度をいやがおう
にも増幅させていくというね。そこへかのケリーキングが誇るクワガタギターのシルエットがボウっと
浮かび上がってきたりしちゃうわけですよ、これもう反則級のオーラ。その貫禄を改めて強烈に認識
させられた瞬間でしたね。

そこへ、遂に「あの」瞬間が。キィィィンって長々と響くハウリング音と、赤単色のままゆっくりと
繰り返される照明の点燈を前触れに、皆が待ちかねていたあの瞬間がとうとうやってきてしまったと
いうわけですよ。そう、"Raining Blood"ー!
もうね、リフを聴いた瞬間、その場にいたほぼ全員が「ゾワっ」とスーパーサイヤ人化。そこへ照明の
高速ストロボ効果とデイブ繰り出す怒涛のバスドラ連打が加わって、フロアはそれはそれはもう大変な
ことに。いや、これまで文中で随分と「興奮」とか「感動」とか「絶頂」とかいった言葉を多用して
きましたけれど、その最上級活用である「スーパーサイヤ人化」を使うほど昂ぶった瞬間って、今まで
100回近く行ったライブの中でも4,5回くらいしかない筈なんですよね。で、思い出せる限りで
挙げるなら
 ・「Night Ranger」:"Don't Tell Me You Love Me"のツインリード部
 ・「U.D.O.」:"Independence Day"時の合唱
 ・「Velvet Revolver」:本編最後の"Set Me Free"全編において
 ・「Megadeth」:"Tornado of Souls"のソロ部
それの5回目が今ー! それほどまでに、漲って、昂ぶって、高まって、挙句、燃え尽きた時間帯でした。

アンコールの展開がこれまた秀逸。「不吉めいた導入リフ」という点においてならおそらく突出した出来
を誇るであろう"South Of Heaven"、そしてまさに「Slayer in Slayer」な彼等最大のキラーチューン
"Angel Of Death"を連続コンボでいれられて、完璧に仕上げられた僕は、それから一週間近く全身
筋肉痛をひきずることになったのでありました、


<今日の一枚>

 South Of Heaven / Slayer

「Reign in Blood」がスレイヤーの「狂速」面を主にフィーチャーしているとするならば、
もう一つの大きな特徴である「邪リフ」を全面に押し出しているのがこの「South Of Heaven」。
タイトル曲を筆頭として"Mandatory Suicide"や"Ghosts Of War"などなど、その不吉
めいたリフにこめられた禍々しさ満点のオーラや、そこから滲み出るヘイト分満載のカッコ良さは、
他バンドのそれとは完全に別格。ヴェノムの流れを継ぐブラックメタル入門編としてもオススメ。


<今日の無駄T>



#いかにも「スレイヤー」的な悪魔崇拝感てんこもりデザイン。
 もちろん外では絶対着れません。




<セット・リスト>

 01:Darkness Of Christ
 02:Disciple
 03:War Ensemble
 04:Blood Red
 05:Die By The Sword
 06:Spirit In Black
 07:Hallowed Point
 08:Cult
 09:God Send Death
 10:Mandatory Suicide
 11:Seasons In The Abyss
 12:Chemical Warfare
 13:Hell Awaits
 14:Dead Skin Mask
 15:Raining Blood

 16:South Of Heaven
 17:Angel Of Death


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