YES.


<2003年9月15日: 東京国際フォーラム>

マジでメンバーの誰かがそろそろ心筋梗塞かなんかで逝っちゃっても全然おかしかない年だし、
死んじゃった後に後悔しても遅いので(クイーンの時にやっちゃったのです)、とりあえず
今回のは見とかないとなあ…ってな感じの、せめて今のうちに元気な姿を一目でも、みたいな
妙な強迫観念に背中を押されちゃったまんまの勢いで、これはもう仕方ないとばかり、棺桶片足
リーチはいりまくりの爺さん達の勇姿を見に、テクテクと国際ホールまで行ってまいりました。

で、いざ会場に着いてふと周りを見てみたらもういるわいるわ、いかにも私は中間管理職です!
みたいな、お前どっちかっていうとライヴよりもゴルフだろみたいな、運動会でよーしパパも
はりきっちゃうぞーみたいな、古き良き日本のお父さん的オーラを放出しまくってる年輩の方々
がそこら中をウヨウヨしてるのに遅まきながら気づいてしまった僕は、これはもうただ事ではないな、
というその雰囲気を改めて感じとるのでありました。

そんな、待ちかねた!ってな期待と本当に大丈夫?ってな不安が入り交じったような微妙ツラしつつ、
まるで初ガキが生まれる直前の病院の廊下をウロウロするかのように、そこら辺を所在なさげに歩き
回っているオヤジ共の姿を見て、僕は実に微笑ましい気分になりました。と同時にそんなお父さん達
の口臭が大変キツいということが予測されてしまった瞬間(お前等タバコ吸いすぎ)会場内の空調は
大丈夫かなあ‥と僕はまったくいらぬ心配に心を割かねばならなくなるのでありました。

ちょっとでもそんなことを思ってしまった僕の念能力は、自分の意思にまったく関係なく自らの不安を
軽々と具現化してしまうことであり、まさかなあ‥まさかなあ‥と思った僕の席の両隣には当然のごとく、
これでもかというぐらいキッツい口臭をお持ちのおじさま方が完璧にセットアップ完了済みになって
おりまして、そんな素晴らしく過酷な現実が僕を待ち受けているのが分かった瞬間、僕は自分の顔が
みるみるうちにウォーズマンになっていくのを感じるのでありました。コーホー!くらえベアクロー!
(自分の鼻の穴にぐりぐりティッシュを詰め込みつつ)

そんなわけでライブが始まる直前まで地獄のような責め苦を味わう羽目になった僕が真剣に帰ることを
検討しはじめたその瞬間、遂に爺い共のスーパー・パフォーマンスの幕が切って落とされたというわけ
でして、1曲目の"Siberian Khatru" が始まるなり感動しすぎてちょっと頭がおかしくなってしまった
両隣りの親父共は「ウアー!」「ケヒョー!」「最高!」「完璧!完璧だ!」等の絶叫を繰り返しはじめ、
普段 自己主張しなさそうな管理職クラスのおじさん達が狂喜しつつ狂気に包まれていく様を見ていた僕
までそのテンションに引っ張られて一緒におかしくなってしまい、彼等と同じく、そのクロノトリガーを
彷佛とさせるような、あまりにも印象的かつ鮮烈なメロディに心をコナゴナに砕かれていくのでありました。
(だけど"And You And I"では、気持よすぎて意識をもっていかれる感じで、危うく寝かけた)

それにしてもジョンおじさんの、このはっちゃけぶりは一体全体どうしたことでしょうか?
"South Side Of The Sky"の前にタッタッタッと足踏みする真似なんか、マジで喜劇役者のよう。
奇人変人揃いのプログレ界の中でも群を抜いてホンモノさんと称されるジョンおじさんの道化役者
っぽい小芝居かかりまくったアクションには実に微笑ましいものがありまして、僕はそれを見ている
だけですっかり幸せになってしまいました。ついでに言うならこの人の声は相変わらず異常ですな。
そのハイトーンの伸びっぷりは、ライヴなのにまるでスタジオアルバムを聞いているかのような錯覚
に僕を陥らせるほどでありまして。え?なに?これは口パク?っていうくらいアルバムまんまの声を
ライヴでも変わらず出せるってのは、これはひょっとして凄いことなのではないでしょうか? 

他のメンバーのパフォーマンスにも申し分のないものがありまして、特に周囲をぐるっと囲むキーボード
やシンセ・電子オルガン等の機材を鬼神のごとく使いこなして弾きまくるリック・ウェイクマンさんのその
技術にはマジで鳥肌が立ちました。だけどそのプロレスラーな感じのパープルレインな衣装はどうにかした
方がいいと思います。ついでにスティーヴ・ハウの衣装はまんまラクダ色のシャツでした。ひどいです

ちなみにアンコール1曲目は"Lonely Heart"でありまして、これをベストヒットUSAで聴いた次の日に
貸しレコード屋に速攻ダッシュかました思いでのある僕としては、心の奥底の大変柔らかいところをノスタルジー
という名の槍でグサグサ突かれまくる羽目になり、そのあまりのイタさに思わず泣きそうになるのでありました。
最後の最後はオヤジ共の口臭スメルも完全に忘れて、ともにスタンディング・オベーションまでしちゃいました、
故にミュージックはスメルを超える、間違いない。やー良かった良かった。

僕が彼等の歳になるまで後10年くらい…
幾つになっても好きなものに対して完全燃焼できる、そんな彼等のような素敵なオヤジになれたらいいナァと
思いながら僕は家路につきました。(でもタバコは控えろよ、口臭キツくなるから)


そんなわけで今日の一枚。

 「
Close to the Edge」/ YES

今更っちゃ、今更すぎるくらいの超名盤。

イエスってと「
こわれもの」かコレで、どっちかといえばバッファロー66の劇中挿入曲にも使われた
"燃える朝焼け"が入っている前者の方が聴きやすいといえば確かにそうなんだけど、曲そのものが持つ
圧倒的なパワーと全体から感じる壮大なドラマ性という意味合いから考えるとたぶんこのアルバムがイエス
のベストパフォーマンスだと思います。(特にドラムに注目)
プログレ独自の難解なコンセプト感が漂いまくってる上に1曲1曲が長すぎて、正直 始めて聴くとなんだ
こりゃって感じになるかも知れないですが、3曲目の"Siberian Khatru"は分かりやすい上に超秀逸な
出来に仕上がっている曲なので、それ聴いて心動かされた方なら、イエスワールドにどっぷり浸れる素質
を持っていること間違いなし。そんな貴方のセカンド・インパクトには「
究極」をオススメ。



<セット・リスト>

01:
Siberian Khatru
02:Magnification
03:Don't Kill The Whale
04:In The Presence Of
05:We Have Heaven
06:South Side Of The Sky
07:And You And I
08:Steve Howe Solo(To Be Over/Clap)
09:Rick Wakeman Solo
10:Heart Of The Sunrise
11:Long Distance Runaround
12:Chris Squire and Alan White(Whitefish/Tempus fugit/On The Silent Wings Of Freedom/Fish)
13:Awaken

14:Owner Of a Lonley Heart
15:Roundabout


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