TOTO.


<2006年5月7日: 東京国際フォーラム

商業ロック。

今は商業ロックっていえば、まあボンジョビとか、新しいところを上げればニッケルバックとかに
なるんでしょうかね。安い(音が)うまい(メロ作りが)早い(飽きるのが)、とものの見事に
三拍子揃ったその特徴を揶揄するべく作られたかのようなこの言葉ですが、そういった反メジャー
気質を差し引けば、とにかくキャッチーで聴きやすいその音作りは、確かに聴いていて悪くない…
というより素直にこれいいなと思ったりすることも多々あるわけで、そればっかしじゃなんだけど、
でもロック好きなら、受けやすいメロというものを知る為にも、他バンドとの比較の為にも、常に
チェックしておくべき一ジャンルではあると常々思っていたりするわけなんですよ、これが。
(訳:ミーハーもの、大好き!)

というわけで、ジャーニーと並び評される、80年代商業ロックの代表格、TOTOのライブを
見に有楽町は東京国際フォーラムまで行ってまいりました。お目当てはもちろん凄腕ギター職人:
通称ルークことスティーヴ・ルカサーのソロタイムだけど、その他にも、セッション業界にその名を
轟かす名ドラマー、サイモン・フィリップスのスティック捌きとか、数年前に復帰したという初代
ヴォーカリスト:ボビー・キンボールのオリジナルに忠実な歌声とか、そこら中に見どころが満載
だったんで自分の守備範囲外ライブにしちゃ見る姿勢にかなり気合入ってましたね。

だけど出だしの2曲が、新作からのフュージョン調な曲だったんで、完全に出鼻くじかれて
(前期4枚辺りの楽曲から入ると思ってた)、あ、今日はそういう流れでいくのねと、すっかり
椅子に座りこんでまったりモード全開で聴いてたら(寝オチ寸前)、いきなりお気に入りナンバーの
"Pamela"やられたもんで、体が急についていけず、思わずビクゥってなっちゃいました。
で、ここから一気にアゲていくのかと思いきや、次曲がポリス以降のスティングを想起させるような
これまたまったり曲の"Bottom Of Your Soul"だったもんでまたもや椅子に深々と座り込むことに。
その後やったデビュー当時のゴールデンコンボ、"Make Believe"〜"Hold The Line"辺りにゃ再び
体が起き上がったものの、まったりモードの余韻が抜け切る前にそのままアコスタイムに入っちゃった
もんだから、こりゃもうライブで盛り上がるというよりはリラクゼーションしにきた気分で淡々と聴き入る
しかないべやと、まったりを超えた夢想モードでいろいろ思いめぐらしつつ茫然と見てたらあら不思議、
いつのまにか寝オチしてそこから"Rosana"のイントロが鳴り出すまでの間の記憶を完璧になくすことに
なりました。TOTOを環境音楽代わりにしちゃうっていう随分とブルジョアジーなことしちゃったけど、
まあ、滅茶苦茶きもちよく寝れたし、ここ最近たまってた疲れもなんとなくとれたような気がするし、
こういうのもたまにはアリかなと。

で、ここからが僕にとってのライブ本編。
隠れた名曲といわれる"Isolation"の幻想的メロディといい、出だしのアレンジを弄って客に「アレ?」
と思わせてからオリジナル演奏に戻した"Rosana"の演出といい、旧作からの曲におけるその素晴らしさは
言うに及ばず、フュージョン色が強いと思っていた新作からの"Let It Go"や"Taint Your World"などの
曲も思ったよりハードにロックしている上にコード進行が複雑なもんだから妙に前衛的に聞こえちゃって、
その辺りのフィールがかなり気分をハイにさせてくれましたね。
今ライブ一番のお目当てだったルークに関しちゃ、動きすぎ、前に出すぎ、MCやりすぎ、つまりは
でしゃばりすぎなところへもってきて、いきなりボビーキンボールと相撲に興じ始めたり、TOTO屈指の
泣きバラード"I Won't Hold You Back"をそのあまりにドヘタなVOで台無しにしてくれたりともう
やりたい放題。ジェフ・ポーカロ亡き今、現TOTOのリーダーはミーだと言わんばかりなその俺様っぷりにゃ
若干呆れましたが、すごく難解そうなコードをそうと感じさせない余裕の弾きっぷりでもって聞かせる、
まさに「流麗」というに相応しいソロプレイにゃ、ただただ感嘆するしかなかったですね。

ちなみに今日一番の僕的ハイライトは本編最後にやった"Girl Goodbye"。
この分かりやすさ満点のリフ、そしてキャッチー度抜群メロ、そしてこれぞキング・オブ・商業ロックと
言わんばかりのこのクサさ…! これ、これですよ、超一流の凄腕ミュージシャンを何人もメンバーに
擁していながらその技術をあますことなく無駄遣いして、LA辺りのアイドルバンドがいかにもやってそうな
キャッチー度MAXのダサダサ曲を威風堂々とプレイしてしまえるこの気取らなさっぷり!これこそがTOTOの
素晴らしさですよ。元メガデスのマーティも「あそこまで凄いメンツであのアマチュアっぽいリフってところが
もっと凄いよねー」って番組の中で言ってましたけど、まさにその通りだと思いました。

だけどそれのみならず、時にはプログレのような超絶技巧曲、また時にはジャズっぽくジャムったり、
フュージョンっぽく流したりと、場面場面に応じて様々なタイプの曲を使い分けられる懐の深さ、確かなる
技術によって裏づけされたその引き出しの多さこそがTOTOというバンドの持つ本質、そしてその魅力なのかなと、
ドラマチックに展開されていくラストの"Africa"を聴きながら、そんなことを考えたりしてました。


<今日の一枚>

 「TURN BACK」 / TOTO

デビュー:宇宙の騎士、2枚目:ハイドラと順調にアルバムをリリース、セールス的にも上々と、
十分に下地を蓄えたところで、満を持して出された3作目。
当時のリーダーであるジェフ・ポーカロの卓越したメロディメイカーっぷりが存分に発揮され、
前作よりもよりハードによりメロデックに練り上げられたその内容はほぼ捨て曲ナシ、長い歴史を
持つTOTOのキャリアの中でも最高傑作といっていいほどの珠玉な仕上がりっぷりになっていると思われ。
玄人受けする内容では断じてないけれども、聞く人を選ばないその聞きやすさと分かりやすさは、
商業ロックの歴史を知る上でも一聴の価値あり。


<今日の駄目T>



#TOTOというバンドが持つイメージらしからぬ派手な前面に比べ、背面は地味そのもの。
 この相反する明暗コントラストの中に、我々は何を感じとるべきなのでしょうか?



<セット・リスト>

01:Falling In Between
02:King Of The World
03:Pamela
04:Bottom Of Your Soul
05:Caught In The Balance
06:Make Believe
07:Hold The Line
08:Stop Loving You (accoustic)
09:I'll Be Over You (accoustic)
10:Cruel (accoustic)
11:I Will Remember (accoustic)
12:〜 Greg solo 〜
13:Rosanna
14:Let It Go
15:Endless
16:Isolation
17:Gift Of Faith
18:Kingdom Of Desire
19:Luke solo 〜 The Pump
20:Simon solo 〜 Hydra
21:Taint Your World
22:I Won't Hold You Back
23:Girl Goodbye

24:Home Of The Brave
25:Africa


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