PUNK SPRING.


<2006年4月1日: 幕張メッセ>

普通に考えたらね。フェスなんか行くより、単独に行った方が曲数多いわ演出も上だわで、
はるかにいいに決まっているわけですよ。それでも、何故、人はフェスに足を向けるのか?
単独の何十倍もの動員が作り出す熱気と、妙なゴージャス感が混ざり合ったカオスっぷりが
最高に面白いからですねー、更には、前でハジけて見ても良し、後ろでユルく見ても良しを、
その時間時間の気分ごとに使い分けられるというバリアフリー感覚が、ハイでもイイエでもない
その間の中庸を良しとする我々日本人の感性にぴったしマッチするからですねー、というわけ
で行ってきました、幕張はメッセまで。パンクスプリング参戦に。

で、入場後、左右に仲良く並んでそびえたっているステージ構成と、片方のステージ演奏中
にもう片方がセットチェンジを行う仕様になっているタイムテーブルを眺めて、しばし唖然
としました。だってねえ?これってつまり無理しちゃえば、今回出場する11バンド全てを
見る事が可能になるってことじゃないですか。たたでさえ大気中の酸素及び体内のブドウ糖
酵素消費量が他と比べて著しく激しいといわれるこの「パンク」というジャンルで、そんな
こと許容しちゃっていいんでしょうか?ついでにオーディエンスの頭がものすごく悪そうな
ことにかけてもピカイチのジャンルだと思われます。「ペース配分」という言葉を1ミクロン
も考えてなさそうな周囲のモヒカンさんやタトゥーさんを眺めつつ、クリマンさん(主催)も
相変わらずチャレンジブルなことなさるなあ、としみじみ思いました。


<リヴィング・エンド>



さて、ライブアクトの1発目は、オーストラリア出身のポップパンク・バンド。

〜参照情報〜
 「成功を手にしても、僕らはワーキング・クラスのために音楽を作り続ける」と公言して
 はばからないオーストラリア出身の3人組。ラウドかつアグレッシヴな演奏と泣きのメロディ
 の融合、というグリーン・デイ直系パンク・ポップを全力でぶっ放す。


フロントの1人がストレイキャッツみたいなウッドベース抱えているの見て、パンクと言う
よりはロカビリー風ロックっぽくね?とユルく構えてたら、出だしの"Second Solution"で
いきなりガツンともっていかれました。シンプルだけど気持ちよさのツボをきっちり抑えて
いるリフに、切れ味鋭いギターサウンド、そしてグルーヴ感たっぷりのボーカルと、こりゃ確か
にポップパンク、それもバリもん(極上)の部類ですね。ウッドベースから弾きだされる独特
のファンク感がかなりパンチの効いたアクセントとなって、それが、そこらによくありがちな2流
パンクとは一線を画すフィールを作り出していたように思います。
"Prisoner Of Society"の時のタテのりジャンプとか、マジで会場全体が振動してたし。
オープニングアクトということで周囲の空気も若干入れ込み気味だったとはいえ、このキャリア
にして、これだけの客を前に、最初から最後まで終始高めのテンションを維持させきったその
ステージ・パフォーマンスの高さは、本日出演した全バンドの中でも特に素晴らしかったんじゃ
ないでしょうか。

 01:Second Solution
 02:Pictures In The Mirror
 03:What On Your Radio
 04:Whos Gonna Save Us
 05:Long Live The Weekend
 06:Prisoner Of Society
 07:E Bookie
 08:Roll On


<休憩1>
シュガーカルト:セットチェンジの間、隣のステージで演奏してるポリシックスを、ステージ
の左右に設置されてる巨大モニターでゆるゆる見ていたのですが、これが存外によかったです。
特にキーボードの女の子が最高でした。まったくの無表情のまま、キーボード弾かずに演奏とは
全然関係なさそうなマラカスをいきなり振り始めたり、これまた完璧無表情のまま、ボーカルに
向かってパラパラ手を振ったりしてるとこなんか、完全調教されきって自我をなくした性奴隷っ
ぽくて、萌えついでに若干チンコ、ピクつかせました。


<シュガーカルト>



ポリの次に出てきたのは、曲メロの良さにかけてなら、今回出演する全バンドの中でもピカイチ
なんじゃないかと思われる、アメリカはカリフォルニア出身、メロ・パンクの雄シュガーカルト。

〜参照情報〜
 98年、サウス・カリフォルニアのサンタバーバラを拠点に結成された4人組パワー・ポップ・
 バンド、 シュガーカルト。01年8月にアメリカのインディーズ・レーベルより1stアルバム、
 『スタート・スタティック』を発表(日本では03年4月にリリース)。このアルバムを引っさげ、
 パンク・ロックの祭典へ参加し、そのグッド・メロディを携えた疾走感溢れるパンク・チューン
 が広く人気を集める。


1曲目からいきなり彼ら最大のキラーチューン"Stuck In America"を入れてきたところへ
そこから2曲たて続けに皆で歌えるシンガロング系のメロポップを持ってきたとあっては、
盛り上がらないわけがない!ということで前半のノリはかなり最高でした。曲の勢いに任せて
思い切り前の方へ突っ込んでいったら、モッシュの嵐に巻き込まれてかなりヘロヘロになった
けれど、でも、前のリヴィングエンドと同じくらい激しくノレた時間帯でした。

ただここの出来があまりに良すぎたせいか、以降でちょい失速した印象も否めなかったかなと。
楽曲・演奏・ステージング全てにわたって悪くはないんだけど、「これ!」という突き抜けた武器
を持っていないが故、なかなか中堅の位置から抜けきれない、そんな彼等のジレンマが伝わって
くるような中盤の空気を打破したのは、ビートルズからのカヴァーナンバー"Hard Day,s Night"。
で、再び勢いを増したところで一気に後半戦へと雪崩こんでいくのかと思いきや、それから1曲
やったところで終了だって。うーん、「メリハリがあった」という善意の解釈がないでもないけれど、
それ抜きにすれば、どうにも中途半端感が拭えない中盤〜後半だったかも。でもまあ、前半だけを
考えれば文句なしに最高だったし、十分に彼等の良さはアピれていたステージだったと思います。

 01:Stuck In America
 02:Dead Living
 03:Crying
 04:Memory
 05:Your The One
 06:What You Say
 07:Pretty Girl
 08:Hard Day,s Night
 09:Bouncing Off The Walls


<休憩2>
リヴィング、シュガーと2本続けて激しく暴れすぎて、極端にHPが減少していたので、この後に
続くビークル、MXPXは完全スルーして、とりあえず屋外でゆっくり休むことに、…したのだけれど、
その為に必要なペットボトルたかが1本を買うのに、列に15分も並ばされるという、いわれなき
責め苦を味わされる羽目となり、思わずムキーとなりました。

だって、ただでさえ人の流れが集中するド真ん中の売店スペースに、通路狭くするような仕切り
とか壁とか立ててわざわざ巡りを悪くしてんだもの、そら混雑に加えて混乱もするって話ですよね。
なんかもう皆めちゃめちゃ殺気だってんのを見て、こりゃ当分メシは買えないなと判断し、ひとまず
トイレへと向かったら、そこがまた売店スペースにも増して大混雑してて、再びムキー。
いや、確かに通常のフェスでもトイレは混むものと相場が決まってるもんだけど、それ差しひいても
こりゃ異常なレベル。男便でこれだもの、女子の方なんかどうなっちゃってんの?と思ってふと垣間
見てみたら案の定、DQ3発売前のヨドバシかよっていうくらい、その列は果てしなく延びちゃって
もうどうしようもないことになっちゃってました。何せ普通に「もう40分以上、並んでるよー」、
「まるでトイレ並ぶために来たみたい、ばかばかしいー」って会話が飛び交ってたくらいですからね、
そこからもその混雑っぷりはおして知るべし。

ついには生理現象が限界にまで達したと思われる何人かの女子とか、男便の個室前に突っ込んできて、
「お願い…!む無理」とか「ごめんなさい、入れてください」とか懇願しちゃってるのね。それ見た
僕の股間は思わぬところでアドレナることに。しかしこりゃ参った、こんなところで立ったら割れて
しまうではないですか、お小水の放物線が左右に分かれてしまうではないですか、ぼぼぼ僕の股間が
ビグザムにー!そんな妄想してる奴には一生幸せがこなければいいのになと心の底から願いました。
ついでにその場面で「いいよ、で、見返りは?」的な等価交換の法則をすかさず返せないような奴は
心底負け犬だとも思いました、そして案の定ここには負け犬しかいませんでした。非常に残念です。


<311>



2時間ほど屋外で「ただの屍のようだ」さんと化して、多少なりとも体力を取り戻したところで、
会場内へと戻ったら、丁度311のステージが始まったところだったので、後ろの方でユルーく見ることに。

〜参照情報〜
 パンク/ハードコアをはじめとするロックのハードエッジ・テイストと、レゲエのゆるくトロピカルな
 空気感を融合させたサウンドで人気を博す、ロサンゼルス出身の一風変わったミクスチャー・バンド。


一応「パンク」というジャンルを前面に押し出しているイベントに出てくるバンドなわりには、まるで
それを感じさせないマイペースサウンド、ヒップホップとレゲエという本来ならわりと相反する筈の要素
をカオス的に混ぜ合わせた妙なリズム感、そしてその中に時折割り込んでくるパンクっぽいギターリフ。
あまりに摩訶不思議なサウンドなんで、観客の方もノリがタテなのかヨコなのかいまいち掴みきれなくて
若干戸惑ってる感はあったみたいだけど、聴いてるうちふと気づけば体がユラユラと動き始めちゃうような
不思議なグルーヴ感をもっていることも確かであり、僕的にはかなり楽しめました。
いいか悪いかは別にして「オリジナル」という点のみから考えれば、たぶん全出場バンドの中でも
とびっきりにすこぶるつきな音だったんじゃないかと思いましたね。あと、メンバーが横一列に並んでの
太鼓連打パフォーマンスがあからさまにガイキチっぽくて笑えました。

 01:All Mixed Up
 02:Beautiful Disaster
 03:Freeze Time
 04:Sick Tight
 05:Amber
 06:Come Original
 07:Don't Tread On Me
 08:Applied Science
 09:Creatures
 10:Down
 11:Feels So Good (if have enough' time)


<ゼブラヘッド>



隣のステージで演奏してるエルレのボーカルを見てミーハー女子どもがキャーキャー言いながら
ガッツンガツンに跳ねてんのを冷ややかな目で観察しつつ、ゼブヘ待ちで座り込んじゃって踏み
つけられた雑草みたいになってる馬鹿どもを本当に踏みつけてやりたい気分に駆られつつ、前へ
前へと進んでいたらあら不思議。前進不可能になった時点でしばし佇んでいたら、さっき通って
きた筈の後方に、いつのまにか雑草どもがニョキニョキ生えまくって、僕は前進どころか後退する
ことすらままならなくなっていました。しかもその場、足二つ分くらいのスペースしかないの、
そんでもって周囲は全員座ってるもんだから立ってる僕だけすごく目立っちゃってるの、その上、
実はこの日、風邪ひいててもともと体調が悪かったところへもってきて(そんなんでライブ行く
なよって話は生粋のパンキストにゃ筋は通っても頭にゃ届かない理屈なのだ)、お腹までキュル
キュルいいだしたもんだからもう大変。群生する雑草の中心でムンクと化して声にならない悲鳴を
上げる、というね、なかなかに貴重な体験をさせていただきましたよ、ええ。
その頃、一緒にきた僕の友人は、エルレ信者荒れ狂う暴風雨の中でヤンキーと熾烈極まる殴り合い
を執り行っていたといいます。馬鹿はどこまでいっても馬鹿なんだなと思いました。
さて、なんでしたっけ。そうだ、ゼブヘだ。ちなみにどんなバンドなのかというと…

〜参照情報〜
 アメリカのカリフォルニア州オレンジ・カウンティのラ・ハブラ出身の5人組。
 ラップ・フレイヴァーを巧みに取り入れたヴォーカル・スタイル、次から次へと繰り出される
 即効シング・アロング可能なサビ・メロ、パリッと乾いた轟音ギター・サウンド、ラウドに攻める
 ドラミング。--オルタナティヴ/ハードロック/ヒップホップ/パンク/メタルのもつ高揚感を十二分
 に体現している。


うん、要するに何でもアリってことですね。
実際、僕の中じゃ"I am"って曲の印象が強すぎたせいか、わりとロカビリーパンクっぽいイメージ
があったのに、いざ生で聴いてみたら、これが思ったよりヒップホップ感強めな上に、リンキンっぽい
ミクスチャー臭あり、ギターソロじゃパープルっぽい(実際に弾いていた)王道UKサウンドあり、
かと思えばゴリゴリのメタルチューンが入ったり、挙句にスリップノットばりの「オマエラ、スワレー」
からジャンプジャンプ攻撃や、「FUCK!」を延々と連呼させる言わせプレイを客に強要したりと、
もうやりたい放題。本当になんでもアリなバンドなんだなと思いましたね。まあ、その節操のなさが
楽しさに繋がってもいたので、これはこれでアリかと。実際、ノリ及び客の数は、今日1日の中じゃ
一番凄かったんじゃないかと思うし。

僕的には、ホッピーなリズム感が妙に心地よい新作からの"Broadcast…"から、極上のメロパンク曲
"Rescue Me"へと繋げた前半の持っていき方。それから中盤の、甘酸っぱ青春フレヴァーを感じさせる
"Playmate Of The Year"からノリノリの高速チューン"Anthem"へと通した流れが抜群に心地良かった
です。ふと気づけば体調の悪さも直ってたしね。わりと音楽療法(激しめじゃないと効果なし)ってのも
馬鹿にならないなと思いました。

 01:Broadcast To The World
 02:Rescue Me
 03:Into You
 04:Jagoff
 05:Rated U For Ugly
 06:Hello Tomorrow
 07:Postcards FromHell
 08:Playmate Of The Year
 09:Anthem
 10:The Set-Up


<バッド・レリジョン>



大トリを飾るは、僕が今フェスで一番のお目当てにしていた、現アメリカンパンクの代表格、
バッド・レリジョン。終電を気にしたか電車が混むのを避けたか、いずれにせよかなりの人数
がゼブヘ終了と同時に帰ったこともあり、ほぼ最前列まで楽々といけたことは実にラッキー。

〜参照情報〜
 北米メロコアシーンの立役者にして世界最大のインディーパンクレーベル<Epitaph>のドン。
 知的で思慮深い歌詞にアグレッシヴ・サウンドという伝統的組み合わせで、根強い人気を博す、
 アメリカンパンク界の大御所。

エッジの効いた小気味よいリフが高速リズムで淡々と刻まれる中に、これまた淡々とかぶさる
ガレージテイスト一杯の骨太ボーカル。派手なステージアクションや、迸るようなはつらつさ
といったようなものは見受けられないものの、パンクというジャンルが本来有していた負の要素、
つまりは「行き場のない抑圧感や鬱憤」といったものを淡々とした演奏の中に切々と感じさせて
くれる、このファーストパンクっぽさが、バッドレリジョン最大の魅力かなと。

特に前半の出来は文句のつけようがないほど完璧でしたね。1曲目"Sinister Rouge"から4曲目
の代表曲"Super Sonic"までひたすらゴリ押しした後、次の"Epiphany"で、それまでの高速テンポ
の流れを一変させてから、再び"I Want To Conquer…"(大好きななんだよね、この曲)で畳み
かけていく、という押し引きのツボをきっちり抑えたその演奏力と展開力は流石貫禄の一言。
現アメリカン・パンク筆頭の底力を感じさせてくれるに十分な仕上がりだったと思います。

それに引っ張られて観客のノリも最高潮に。それも決して刺々しい感じではなくて、例えば、
全然見知らぬ者同士が手を打ち合わせたり、互いに肩くんでモッシュゾーンをひたすらグルグル
回っていたり、暴れすぎて倒れたどこぞの阿呆を助け起こすため何人ものワルモノ顔が協力しあ
っていたりと、お脳の中枢機能がほぼ麻痺しきっていなければ到底不可能と思われるオモシロ・
プレイがそこかしこで乱発されてて、なんかそれ見てたら、こっちまでハートウォミングな気分
になってきちゃったりしましたね。

 01:Sinister Rouge
 02:Digital Boy
 03:All There Is
 04:Supersonic
 05:Epiphany
 06:I Want To Conquer The World
 07:Let Them Eat War
 08:Infected
 09:LA Is Burning
 10:Gods Love
 11:No Control
 12:American Jesus

 13:Generator
 14:Sorrow


<総括>
そんなわけで、パンク・スプリング。バンド自体のパフォーマンスだけに着目すれば素晴らしく
良質なフェスだったと思います。その代わり運営面だけをみればとてつもなくシットなフェスだった
とも感じましたが、まあ、楽しかったことは事実ですしね。

 ・ステージ構成とタイムテーブルをもっと考えてほしい(全部見れちゃうのも問題)
 ・飯屋の数、少なし。
 ・人の流れがまるで考えられていないレイアウト、

といった面が改善されれば、内外ともに良フェスになっていくんじゃないかなと思いました。


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