The ROLLING STONES.


<2006年3月24日: 東京ドーム>

「だけど、バスはまだ走っているんだ」 〜キース・リチャーズ〜

世界最大のロックバンドは、一体誰か? レコード総売上数・観客動員数という双方の視点から
考えるなら、プログレ界の巨人:ピンクフロイドが実質上 解散状態にある今、その答えはほぼ
間違いなくロック界の最長老、ザ・ローリング・ストーンズになると思うのです。
何せ還暦越えてなお健在、やりたいようにやり続けて早40年、あのビートルズとほぼ同時期
に頂点を極めたバンドが未だ現役で活動を続けているということだけでも驚きなのに、今も
なお精力的に世界ツアーを行っているほどの達者っぷりですからね。

まあ、ここ近年はその勢いもかげり気味、オアシスのキチガイ兄弟の弟の方にゃ「彼らの
ことはリスペクトしているけど曲はどうしようもないのばっかりだな」とかホザかれたり、
元メンバーのビル・ワイマンからは「もう止めるべきだ、馬鹿げてる」とか冷静な突っ込み
くらっちゃったりしているみたいだけど、でもロック好きを自負する奴なら誰もが、メタル
とかプログレとかパンクとかグランジとかそういったジャンルの枠を超えて、一度は生で見て
みたいと考えるバンドであることだけは間違いないと思うわけですよ。
何よりもロンドンパンクが一世を風靡するその15年以上前から唯我独尊街道のド真ん中を
堂々と闊歩し、今もなおメタリカ・エアロ・モトリー・ガンズなどの超一流どころから尊敬の
念を集めてやまないとされる界隈一のカリスマ男、あのキース・リチャーズを一度はね、生で
拝んでおきたいなと、そう思った次第なわけで、行ってきちゃいましたよ、平日の金曜。万全
を期すため会社まで休んで、水道橋は東京ドームまで。



で、いざ会場入って前方見た途端 さっそく唖然とさせられました。いや、今回は船舶コンテナ
38個と輸送機4つ分に分けての総重量300トン級フルプロダクションを持ちこんでくると事前に
聞いていたもんで、確かにそこそこ期待しちゃいたんだけれども、まさかステージ上に5階規模
のビルをそのままドデンとおっ立ててくるとは流石に思ってなかったですわ。それだけ大層な
ことやっておきながら、色とか外装とか案外地味めな上にその配置もただ後ろにありまーす感
が強すぎてもう見掛け倒し臭プンプン。やることなすこと派手な分、細かいところとかあまり
気にしなさそうなストーンズというバンドの特徴が実に良く表れているセットだなと思いました。

ついでに前座バンドのメンツも超豪華、元Mr.Bigの技巧派ギタリスト:リッチーコッツェンに
これまた元Mr.Bigでベース弾かせたらほぼ世最一なビリーシーンのコンビだって。これ、単独
公演でも十分に客が呼べるメンツですよ?なのにやってる曲はガンダム。なんでしょう、この
アルティメイト極まった無駄さ加減は?といった感じの突っ込みどころがそこら中にフル搭載。
ふと辺りを見渡せば飛行船はドーム内を飛び回るわ、セットだとばかり思ってたビルにゃ何故か
客がぞろぞろ入っていくわ、物販じゃ頭に血が昇った親父が店員とケンカはじめるわ、興奮を
抑えきれなくなったアリーナ中央辺りの客は椅子の上に突っ立ってのクラップハンズで周囲を
さんざ煽った挙句、それ見咎めた警備員と口論になってつまみ出されていくわで、開幕前から
そりゃもう大騒ぎさって感じの阿鼻叫喚臭漂う展開になってました。流石、ストーンズのライブ
だなあ〜(感心どころ大間違い)

のっけからそんなでしたからね、ライブが始まった瞬間の周囲のカオスっぷりたるやマジで
筆舌に尽くしがたいものがありましたね。斜め前のオッサンとかバルコニーの一番前を乗り
越えんばかりの勢いで椅子上にビン立しちゃってるし(落ちたら死亡)、右横のオッサンとか
連れてきた子供を肩車しだして後ろの客におもいくそ文句とか言われてるし、後方の婆アは
婆アで「立つな、見えない!」とかこれまた無茶なことホザきはじめるし(ガン無視)、で、
ふと階下を見下ろせばYシャツ姿のバーコード頭が集団でモンキーダンス踊り狂ってたりとか。
もうええじゃないかええじゃないか全開状態、今の社会を動かしてる中堅どころがこれだもの、
これ見て日本はもう駄目だと思わない奴ァたぶんいないと、本気でそう感じさせてくれた時間
帯でしたね。

まあ、OPナンバーの"Start Me Up"があまり好きでなかったこともあり、開幕後しばらくは
周囲のノリにうまくはいっていけなかったんですが、(そのバカ騒ぎっぷりを観察しすぎて)、
2曲目「たかがロックンロール、でも好きなんだ」っていうキースっぽさがもろに出てるサビ
が特徴的な"It's Only Rock And Roll"辺りから俄然アガってきましたね。やっぱストーンズ
って言ったらキースでしょ?みたいな思いが曲の進行とともにこうグングン上昇していって、
はっと気づけばもはやキースしか目に入らない、みたいな、ね。そこでキースが客席へ向かって
お馴染みの指差しポーズをこうビシっと決めてくれたりするわけでちょwおまwうぇ〜うぇ〜
(興奮しすぎてVip化)

演出効果の方も金かけてるだけあってやっぱ凄くて、デカいだけの見かけ倒しとばかり思って
いたあのビルセットの窓部分が、曲の進行に合わせてオーディオ機器のレベルメーターばりに
ビコビコ光りまくるギミックとか、メチャ演出的にカッコよくてステージ映えしてましたね、
けどこの日はミック自身がそれ以上に光りすぎていました。おおよそ200メートルはありそうな
長〜いステージの端から端まで縦横無尽に駆け巡って"Midnight Rambler"を熱唱したかと
思えば、モニターにふと映った女の子に(照れてカメラから逃げる様に激萌え)「コノアトドウ!」
と熱いメッセージを送ったり、"Gimmie Shelter"(渋い選曲だなオイ)じゃリサとかいうミニスカ
はいた女性ヴォーカルと絡んでエロエロな腰の動きを存分にみせつけてくれるわで(その度、
後ろの婆さんが断末魔としか思えない雄叫びをあげてた)、到底63歳とは思えない超人的な
動きを終始披露し続けてくれたのにはマジ感服いたしました。あの歳にしてあの締まった体型
も素直に凄いと思うしか。

中盤最大の僕的ツボは、やっぱし、ステージがドラムセットごとずずいっと前にせり出していって、
そのままアリーナ中央を突っ切っていく中にて演奏された"Miss You"かな。正直、安易なディスコ
ブームにのせられて半ば無理やり作ったような(同件:KISSのI Was Made For Lovin' You)、この
曲のことはあまり好きじゃなかった筈なんですが、ミック・キース・ロンのあの伝説の3人がミニ
ステージ上をところ狭しと動きまわりながら(もちろんチャーリーは動けない)すごく楽しそうに
ジャガジャガやってるその様を眺めてたら、なんかこっちまでノセられて、こう、気分が高揚して
きちゃったとでもいうか(後ろの婆アの「見えない!」はこの時点で完殺)。
だけどミニステージが終点に着いちゃって以降が最悪で、アリーナ後方でワイワイやってる皆の楽しそ
うな姿を尻目に、チャーリーのケツをただただ眺めるしかないという拷問タイムが待ち受けている始末。
"Honky Tonk Woman"でやっとこさ、こっち側に引き返してくるのを見たときは正直ホッとしました。

そこからエンディングまでの展開はまさに津波のごとしでしたね、"Sympathy For The Devil"
のあの「フッーフッー」ってスゥイングするリズムの中へ突如割り込んでくるキースの切れ味鋭い
ギターライン(死ぬほどカッチョいい)に心奪われてたところへ、畳み掛けるがごとく"JJF"とか
やられちゃって、とどめに"Brown Sugar"ときた日にゃこりゃ自然と声出ちゃいますわ、ついでに
周囲のオジオバと一緒になりつつ、ステージ上のミックに向かって「イエーイエーイエーフー♪」って
そんなにコアなファンでないにもかかわらず、拳振り上げちゃったりしてね。
いや、若さと体力だけで突っ走れる10・20代ならまだしも、30・40、いや、それをも上回る
50・60超のファンにまで、これを自然とさせちゃうところは確かにスゴいなあと、ストーンズが
ストーンズたる所以はコレなのかなあと、まあそんなことを如実に感じた瞬間でした。
実際、今の最先端HMと比べれば、音はスカスカ、リズムはバタくさ、演奏もダレダレな筈のこの
ストーンズというバンドに、何故みんなはかくもこう強く惹き付けられるのか? 正直、長年の謎
だったんですが、こうして生で聴いてみてなんとなくその理由が分かったような気がしましたね、

でもって、ラストは"Satisfaction"。
「40年間もやり続けて「満足できない」って歌って終わるライブ。最高!」
とある名無しさんが2chのストーンズ板に書き残したこのセリフが、今日のライブの全てを象徴して
いたと思います。

#補足:"Wild Horses"と"Paint It Black"を聴けなかったことだけが唯一の心残り。


<今日の一枚>

 Undercover Of The Night / The Rolling Stones

もし100人の音楽批評家に「ストーンズ名盤ベスト3」を選ばせたとしたなら、
まずこの「アンダカヴァー」をチョイスする人はいないだろうとほぼ断言できる程、
ストーンズ史におけるブランキング・ゾーンな一枚。
確かに世間的評価はあまりかんばしいものではなかったかもしれないけど、、でも僕が
思うストーンズ最大の魅力である、ルーズさと猥雑さを混ぜ合わせた「ちょいワル親父
どものパーティロック」といった雰囲気が、実に色濃く表現されている一枚であるとも
思うので、まだストーンズを1〜2枚しか聴いたことないよーって初心者には是非とも
チャレンジしてみてほしいアルバムです。


<今日の駄目T>



#メタルTシャツ道をはじめて随分になりますが、こんなにも「着れねえ…!」と思った
 デザインは始めてです。流石!流石、ストーンズ!



<セット・リスト>

01:Start Me Up
02:It's Only Rock And Roll
03:Oh No Not You Again
04:Bitch
05:Tumblin' Dice
06:Worried About You
07:Ain't Too Proud To Beg
08:Midnight Rambler
09:Gimmie Shelter
10:This Place Is Empty
11:Happy
12:Miss You
13:Rough Justice
14:You Got Me Rocking
15:Honky Tonk Woman
16:Sympathy For The Devil
17:Jumping Jack Flash
18:Brown Sugar

19:Can't Always Get What You Want
20:Satisfaction


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