EXODUS, NILE, The Haunted.


<2006年3月2日: 渋谷O−EAST>

今まで様々なバンドのライブ見てきて改めて思ったことがあるんですけど、やっぱし
ライブのノリ方って、見るバンドのジャンルによって相当左右されるものなのかなと。
例えばメロスピだとつい演奏に聴きいっちゃう感じだし(もしくは両手を掲げて「もっと
速くー」と叫びながら気をやる)、パンクなら体ごと跳ねてくようなホッピーノリだし、
正統派HRならメロスピとパンクの融合、メロデスならそれに加えてヘドバン、みたいな。
で、これ去年のスラドミでも強く思ったことなんですけれど、頭のてっ辺から足の先っぽ
に至るまでとことん空っぽになれる感じのノリ方させてくれるジャンルって、僕的には
やっぱしスラッシュなのかなと。それもメガデスやテスタみたいなメロ重視のそれじゃなくて、
ひたすら全開ノリの「これしかやらない、これしかできない」みたいな猪突猛進型、いわゆる
バカ・スラッシュって奴ですね。

そこでエクソダスの登場ってわけですよ。去年の復活公演時に見逃しちゃってちょっと
悔しい思いしてたところへ、今回のExtreme The Dojoのゲスト枠で早くも再来日が決定した
っていうんで、ここんとこあんまし暴れてなかったのもあってこりゃ行くしかなかろうと、
仕事も煮詰まった平日の木曜という悪条件の中、渋谷はO-WESTまで、半ばジョブぶっちぎり
気味で出向いてきたわけですが、この選択が最高にアタリでした。

いや、もう出だしから全開も全開、
ザクザク感てんこ盛り、あのおなじみのベイエリアクランチが凄まじいスピードで鳴り
響きだすと同時に周囲のバカ共が振る振る。そんでもって舞う舞う、あげく飛ぶ飛ぶ。
速さはスレイヤーに適わず、技術はメタリカに至らず、独創性はメガデスに及ばず、
挙句インギに「ウェー」とまで言われてしまったという、このベイエリアの暴れん坊達が、
何故にスラッシュ四天王と肩を並べる程の存在にまで成りえたか。全身でもってその答え
を強制体感させられましたね。、それら不足要素を補ってあまりある程の強力な武器、
「突貫力」の存在を。
その勢いこそまさにエクソダス、モーゼに導かれて脱エジプトし、はるかカナーンの大地を
目指したというヘブライ人達、総勢200万人の並々ならぬ怒涛パワーを想起させるがごとく。
それも皆ものっすご笑顔、そんでもって地平線の彼方へ向かって全員が全力疾走。まさに
そんなイメージでした。自らが持てるたった一つの取り柄だけをここ20年に渡って磨きに
磨き続けてきたバカの一念の頑強さ・鮮烈さというものを、もう、まざまざと叩きつけられた
って感じでしたね。

新ヴォーカルのロブも、その声質こそ初代ゼトロのアクの強さには及ばないものの、
そのヘルスエンジェルス然とした風貌といい、常に怒っているような赤ら顔といい、
若干キレキャラ気味なリアクションといい、何よりもそこら中に唾吐きまくった挙句、
天井にも景気よく打ち上げたかと思いきや重力の存在をすっかり忘れて自らの額でもって
それを受け止める羽目になってたその巨バカっぷりといい、もう完璧すぎ、一部の隙も
ないほどのエクソダスっぷり(人間からの)をあますことなく見せつけてくれてましたね。

ちなみにクライマックスは、"44 Magnum Opus"から"Shovel Headed Kill Machine"
へと直接繋げた辺りの流れ、もうフロアの方なんか誇張抜きでこんなんなってましたからね。
両曲とも最新作からで認知度がまだ全然低いにもかかわらずこの盛り上がりっぷりは正直、
異常だなと。
実のところ、曲メロ皆無でリフは凡庸、ソロは不協和そのもので、テクはお世辞にも上手い
とは言えず、ルックス的には完膚なきまでに野人、なのにどうして彼等の演奏はこんなにも
僕らを惹きつけるのか?理由は至極簡単でした。何故なら彼等は「エクソダス」させてくれ
るから。この日常という名の檻の中から!っていうか僕も次の日 会社から強制的にエクソダス
されそうになりました、やめて、解放しないで!まだ繋がれていたいの、この管理社会という
名の鎖に!ブロイラー、ブロイラー、ココッ、コココ…!

 01:Bonded By Blood
 02:Raze
 03:Deathamphetamine
 04:Blacklist
 05:A Lesson In Violence
 06:I Am Abomination
 07:Now Thy Death Day Come
 08:44 Magnum Opus
 09:Shovel Headed Kill Machine
 10:War Is My Shepherd
 11:Strike Of The Beast


いちお、他の2バンドの感想も書いときます。

<ナイル>

エクソダスで暴れすぎて精気を全部吸い取られちゃったので、少し下がってナイル観戦。
マイクチェック中の(メンバー自ら担当)「チェチェチェ、ヴォェェェェェ」辺りから
なんとなく感じていた嫌な予感が、演奏始まった途端、ものの見事に的中したことを確信
しましたね。こ、これはデス… その中でも超とびっきりの暗部、ブルータル・デス…!

なんの感情も抑揚も高揚も感じさせることのない完全無欠のデスヴォイス「ヴォォォォ…」
がただただ切々と響く中、もはや不協和音としか思えないほど破壊指数強まった高速ソロと
ここまでバカッ速いドラミング本気で見たことないよレベルの超絶連打が無秩序周期で割り
込んでくるというね、完全に得体の知れない何かにとりつかれた人がやる音楽ですね、これは。
いや、もはや音楽ですらないな、むしろ呪文かも。あそこまで高い技術をここまでマイナーな
方向へ惜しみなくブチこんじゃうその熱意は間違いなく凄いけど。

不思議に思ったのはそのスピード感。演奏そのものは壮絶的に速い筈なのに妙にスローモー
に感じるという… なんだろう、この感覚。仮にスラッシュを尖った黒曜石とするなら
これはその角がとれたまん丸な石?それをぶつけられるんじゃなくて膝に無理やり抱かさ
れてる感じとでもいうか。つまりは結構な勢いで拷問でした。途中たったままで気を失い
かけた、そのあまりに常軌を逸した演奏力の前に周囲の皆も棒立ち状態でただただ唖然と
してましたヴォー。ちなみに一部ファンの声援はもちろんヴォォォォォォでした。

 01:The Blessed Dead
 02:Execration Text
 03:Serpent Headed Mask
 04:Cast Down The Heretic
 05:Sacrifice Unto Sebek
 06:Sarcophagous
 07:Annihilation Of The Wicked
 08:Black Seeds Of Vengeance
 09:Von Unaussprechlichen Kulten
 (全部、同じ曲に聞こえたけどね)

ところが帰宅後に再チャレンジしてみたら、そのカオス感が妙に心地よく聞こえちゃって
ちょっとびっくり。慣れないうちは不快だけど、続けているうちに段々と気持ちよくなって
くる、みたいな、ちょっと女の子のセクースっぽい(理想)ものすごい常習性のあるバンド
なのかもしれません。しばし聴き続けてみようと思います。


<ホーンテッド>

エクソダスで精気、ナイルでは生気まで抜かれました。もはや帰る余力すら尽きていたので出口近く
の階段付近に座り込んで30分程ぐったりしてたら、程なくしてホーンテッドの演奏が始まったので
座り込んだそのまま、完全に惰性のみで聴くことに。遠目からだったので大まかな印象のみで。

 ・ヴォーカルの人の動きはなかなか好印象。ブルハ時代のヒロトばりに跳ねてました。
 ・若いバンドだけあって、他メンツも全体的に動きがアクティブ。
 ・細っこいギターの人が、嫌ヒゲなのに上半身に黒キャミみたいのを着ていて、ちょいキモ。
 ・鉈の柄の部分でボクボク殴っているような音楽。
 ・スラッシュというよりは、パンテラのソロ弱めたようなモダンヘヴィネス系?
 ・どっちにしても今風スラッシュだよね、デストラみたいな化石っぽさはない。
 ・中盤から後半にかけての盛り上がりは、エクソダスばりだったかも。
 ・"Hate Song"が最強に良かったです。
 ・なるほど。エクソダスがトリじゃないわけが、なんとなく分かった。
 ・客席の前方から中程にかけて、いつのまにかダイブ大会が催されてました
 ・客と客の間、もうそこら中から足がニョキニョキ。
 ・ダイブって足とかぶつかると痛いのでクソきらいだったけど、あれ、遠方から
  見てる分には実はものすごく面白い見世物だったのね。
 ・ステージ上まで辿り着いた末、そこで1ポーズ、アピールかましてから客席へ
  向かって我が身かえりみずダイブしていく命知らずのブランチャ野郎が何人かいて笑いました。

 01:No Compromise
 02:Nothing Right
 03:Shadow World
 04:Bloodletting
 05:In Vein
 06:Abysmal
 07:Trespass
 08:99
 09:D.O.A.
 10:Hate Song
 11:All Against All
 12:Dark Intentions
 13:Bury Your Dead
 14:My Shadow


<今日の一枚>

 Shovel Headed Kill Machine / EXODUS

昨年、華々しく復活してなかなかの快作"Tempo Of The Dammed"を作り上げ、いよいよ
これからだ!と思った矢先に、初代Voのゼトロと喧嘩別れするやいなや、あれよあれよ
という間にドラム抜け、ギターの片割れ抜けで、はっと気づけばオリメンはゲイリーたった
1人だけという悲惨極まる状態に。そんな孤立無援な状況下、意地と怨念をこめて作り上げ、
ものの見事にエクソダス=ゲイリーホルトであるということを証明しきった一枚。
爆走する武装列車というジャケのイメージそのままに、行く手はばむもの全てをクランチし、
なぎ倒していくかのような突貫力は相変わらず健在。だけどこのバンドをアルバムの内容で
語ってもあまり意味ないんだよね、キングゲイナーもびっくりな奴等のエクソダスっぷりを
本気で体感したけりゃ迷うことなくライブ会場へゴー、そういう場でこそとことん映える
バンドだと思います。


<今日の駄目T>


#最新ジャケそのままのプリントですが、これを見た瞬間カッケーとか思ってしまった僕は
 いよいよ人としての境界を踏み越えはじめたような気がします。


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