STRATOVARIUS.


<2006年1月21日: 渋谷O−EAST>

かつてメタル不毛の地と言われたスカンジナビア半島はフィンランドが世界に誇る
北欧様式美HMの旗手であるとともに、メロディック・スピード・メタルの先駆者として、
90年代後半「メタル:冬の時代」を駆け抜けたバンド、ストラトヴァリウス。
繁栄の極みにあった97〜00頃は、そのジャンルの覇権をほぼ手中にするまでに至って
いたあのストラトも、しかし、ここ最近は、小ティモが大ティモを頭のおかしい馬鹿野郎
よばわりしてバンド出て行っただの、大ティモがバーで見知らぬ男にいきなり殴られたことから
うつ病を煩って入院だのと、とにかくろくなニュース聞かない上に、バンドの方もイェンスに
説得されて小ティモが戻ったものの依然として緊張状態は解けていないとのことで、正直、
今のストラトにこの悪天候の中をおしてわざわざ見にいくだけの価値が果たしてあるか?
との疑念は尽きなかったものの、今回見逃したら(解散しちゃって)二度と見れなくなる
かもしれないからというただ1点のみをモチベーションに変えて、小雪がチラチラ降り
しきる中を、渋谷はO−EASTまでテクテク行ってまいりました。

だけど会場内へ入った途端、最前列中央辺りにて、ジェロニモみたいな風貌した外人達が
 「ストラット!」「ヴァリウッス!」
 「ストラット!」「ヴァリウッス!」
 「ストラット!」「フォォォォォォー」
 「ストラット!」「フォォォォォォォォォー」
って、集団で雄叫んでいるのを発見してしまい、やっぱり今日は家で寝てればよかったと
即刻思いました。
開幕前に流されたツアー中のドキュメンタリー映像でブラジルが出たら、またもや
「ストラット!」「フォォォォォォー」って狂ったようにやってたとこから察するに、どーも
ブラジリアンっぽかったです。だとすると流石ラテンの血、キモスパーなんか目じゃないね。
メロスパー、キモスパーに続く第3のメロスピ勢力:人外魔境ブラスパーとして、今日はどこ
までも頑張っちゃってほしいナァと思いましたキモっキモっ(死んだ魚の目で眺めつつ)。

まあそんな些細なアクシデント?はあったものの、ライブそのものの出来具合はかなり
よろしくて、"Hunting High and Low"・"Speed Of Light"と疾走曲を並べた序盤はほぼ完璧。
まごうことなき駄作と評された最新作からの"Maniac Dance"(出だしの電子音のヘナっぷりは
抱腹絶倒もの)で多少ダレたもののその他のノリは概ねよくて、特にバラードパートの2曲目、
「朝起きてカーテンを開けたら雪だった。まるでフィンランドのようだ」のMCとともに始まった
"The Land of Ice and Snow"とか、曲開始前にモニター使って「今、この瞬間にも(戦争で)
たくさんもの人が死んでいってる、なのに我々はいまだ学ばない!」的演出を恥ずかしげもなく
やってから「世界は一つ!僕らは一つ」をあたかもガッチャマン主題歌のごとくサビで繰り返した
"United"に至っては、そのあまりに度を越えすぎてクサさ極まった展開に逆に本気で感動して
しまうという不思議現象が四方八方で巻き起こってしまう始末。この時点で僕はもう今日のライブ
が完全にアタリであることを確信しましたね。

 (ROCKCITYより)

位置取り的にもツイてた、何せステージ左側の最前列、ほぼ大ティモの真ん前のかぶりつき
ポジション、ゲットだもの。その動きや表情のみならず、高速ソロ時の運指の動きなんかも
無茶苦茶よく観察できちゃってもう最高。ちなみに大ティモはインギ様に「アイツがオレを
パクってないって?もし本気でそう思っているんならこいつは頭が完全におかしい!とんで
もない話だ!あの醜い顔を殴ってやりたい!」呼ばわりされてるぐらいだから、手癖全開の
インプロヴァイズ派と見せかけたナルシスプレイをお楽しむタイプかと思ってたらこれが意外
や意外、きっちり押さえてかっちり弾くアカデミックタイプのプレイヤーだったので、やっぱり
インギ様が仰ることは当てにならないなあと至極実感すると同時に、頭がおかしいのはたぶん
お前のほうだったんだろうなだと思いました。

 (ROCKCITYより)

そんなインギ様のかつての片腕だったイェンスの存在は、やっぱここでも際立ってましたね。
客席側の方を向いて立っている鍵盤の向きからもその自信のほどは伺えたけど、パワーコード
全開のギターソロにユニゾンして怒涛の疾走ラインをともに作り出してるその様はやっぱ実際
に見ると迫力満点でスゲえなと。あと、何気に演出用モニターの制御まで(スタッフ任せにせず)
全部自分でやっていたところとかも好印象。最後の"Black Diamond"演奏中にいきなりモニター
がトんで、キーボードそっちのけで制御用PC弄くりまわしてたものの、自分のソロパートの番が
回ってきちゃってパニった挙句、ケーブル力任せにブチ抜いてたそのマヌっぷりとか、もっと好印象。
案外、今のストラトに一番必要なのって、大小ティモじゃなくて、このイェンスだったりして。
(インギ時代も地味ながら重要なポジションを担っていたし)
今後も縁の下の力持ち的存在として、その職人芸を見せ続けてほしいなァと思いました。

あと特筆すべきは今ツアーから参加の新メンバー、ラウリのベースソロ。
もともとベースソロって、まるで原曲の分からない低音がひたすらボボボボ鳴ってるのを延々と
聴かされるだけの無意味極まる時間帯で、それをエンタとして成立させるためにはキッスのジーン
みたいに空を飛ぶか血を吐くかぐらいしかないと思っていたのだけど、その印象がもう一変。
ベースという楽器の特徴を強く印象づける為の荒々しい弾きっぷりといい、その特性を際立たせ
るための感情むき出しフレームぶっ叩き奏法といい、メロはどうでもいいからパワーを感じてくれ、
とでも言わんばかりの居直りっぷりが実に素晴らしかったです。

なんだ、よくよく考えたらキーボードとベースにこんだけ弾けるメンバーがいて、その性格は
ともかく実力には定評のあるギターと、北欧様式美というフォーマットにぴったりの声質をもつ
ヴォーカルが揃ってるっていうんだから、ストラトって実はすげえバンドなんじゃん、ねえ?
正直、行く前はあまり期待していなかったけど、それをいい意味で大幅に裏切る良質のライブを
見せてくれたこともあり、ちょっと真剣にファンになっちゃうかも。


<今日の一枚>

 INFINITE / Stratovarius

世界進出の足がかりとなった"Visions"、その勢いを更に加速させた"Destiny"に続く、
ストラト出世作のトリを飾る第3段。
ストラト最大の魅力である各パートがユニゾンしての疾走プレイはそのままに、
これまでよりも幾分ヘヴィさを薄めてその分ポップ感を増し、万人に受け入れられやすい
構成にしたメジャー指向の強い一枚。
ドラゴンに古城に魔法と相場が決まっていた、ネオクラ系に端を発するダサインな
イメージを一掃する、センスあるジャケにも注目。
メロディック・スピード・メタルの何たるかを知りたければ、まずこれを聴くが吉!


<今日の駄目T>



#メロスピ系って、その音のみならずグッズまでもが、わりかし似通ってるときたもんで、
 このデザインもソナタやアングラのそれと酷似してたり。
 ま、マシっちゃマシな部類に入るとは思うけど、もう少し突き抜けてもいいかも。
 (どっちにしろ普段着れないんだし)




<セット・リスト>

01:Hunting High and Low
02:Speed Of Light
03:Kiss Of Judas
04:S.O.S
05:Maniac Dance
06:Destiny
07:Against The Wind
08:Bass Solo
09:Coming Home
10:The Land Of Ice And Snow 
11:Twilight Symphony
12:United
13:Father Time

14:Forever
15:Paradise
16:Black Diamond


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