Dream Theater.


<2006年1月13日: 東京国際フォーラム>

メンバーそれぞれがHR・HM界隈における各分野のトップといっても差し支えないほどの
テクを持つ超絶技巧集団ドリームシアター。メタルにプログレ的世界観を盛り込んた新機軸
のサウンドを作り出し、それに感銘した多くのフォロワーを生んだ彼等が、このたび新作を
ひっさげて2年ぶりの来日を果たすというので、これはとりあえずおさえておこうと、寒風
吹きすさぶ中、有楽町は国際フォーラムまで行ってまいりました。

で、今回も前来日時と同じく間に休憩はさんでの2部仕立て、ほぼ3時間を超える長尺構成
だったわけですが、僕的にはやっぱしOPの"The Glass Prison"から"This Dying Soul"
へと繋げたDTらしさ全開のプログレ風味な展開が一番印象に残りました。ここで感じた良さ
って文字にするとなかなかうまく出てこないんだけど、あえて無理やり紡ぎ出してみるとするなら、
個々の曲調の良さって言うよりその2曲を通して見た構成の素晴らしさとでもいうか、音を聞いて
いるというより、音を観ている感覚?とでもいうか。

例えば他のバンドだと、気に入ってる曲のサビだとかソロ部分だとかで一気にこう、ブワって
アガってくるもんだけど、でもDTの場合はそうじゃなくて、JPとジョーダン繰り出す、
ギターとキーボードの超絶ユニゾンとか、その間で時折とんでもなく目立つマイアングのベースが
刻むマシンガントーンだとか、そういった心の琴線に触れるフラグが立つ度に、こう徐々に徐々に
高まってきて、その上昇感が臨界点まで上がってきたところでホワっと霧散していくような感覚、
とでも表現する以外にないかなあと。こういう特殊なアガりかたを体感させてくれるバンドって、
メタルというジャンルの中じゃ正直DTぐらいかも。

その後にやった"Never Enough"がこれまた味わい深くて、これは単体としての曲メロの良さを
純粋に感じさせてくれる曲なんで、前2曲ですっかりプログレ脳と化していた頭の中身がゆっくり
解きほぐされていくような感覚が実に心地良かったです。(でも、この後の展開は多少グダグダ気味)
あと演奏中の曲が入っているアルバム・ジャケを背面モニターに映し出す演出は、こちらの購買欲を
そそる意味でも、「あっこの曲、どのアルバムに入ってたっけ?」ってジレンマを一瞬にして解決して
くれる意味においてもいいギミックだなあと感じました。だけど前回見た武道館の時よりモニターの
照度が低くて、そこだけはちょっといただけなかったかも。

でも、今回のライブにおいて一番驚愕したのは第2部ですよ。
何せDPの"Highway Star"からインだもの。まあ、この曲のソロ部分が死ぬ程好きで携帯の
着メロにまでしてしまっている僕からしてみれば、これはものすごく嬉しいサプライズでもあった
のだけれど。で、元祖リッチーより若干速めにソロパートをこなすJPの超絶テクには思わず身震い
したけれども、それよりも感嘆したのがラブリエのボーカル。ホント、全盛期のギランと並ぶか、
もしくはチョイ上なんじゃないかっていうくらい声が、特に高域シャウトがものすごく良く出ていて、
これ聞けただけでも今日来た価値はあったなぐらい思いました。

で、この1曲だけのサービスなかと思っていたらその後も延々とパープルの曲ばっかが続いたもんで、
えっどういうこと?って逆に引いてきちゃったんですが、これ、後で調べたら、DTって同会場の
2日目はカヴァーナイトと称して、彼等が好きなアルバムを丸々一枚、完全再現するのがお約束なん
ですってね。この日はどうやらそれがDPの「Live In Japan」だったみたいで、何だ、始めっからそれ
知ってりゃもっと楽しめたのにとちょっと後悔。あ、でもどうせならDPみたいな分かりやすいバンドより、
ラッシュかフロイドの方が嬉しかったかも。

ちなみに本家DPは今年の5月に来日が決まっていますが、正直ここまで完璧なカヴァーを
聴かされちゃったらさすがに今回はスルーかも、と思った人、僕以外にも何人もいるんじゃ
ないかな。そんぐらい凄まじいカヴァーっぷりだったと思います。おしくらくは各メンバーが
放つオーラが本家DPと比べて地味すぎるという部分だけがマイナス点。ホント、ものの見事に
地味で華がないものなあコイツ等。それでも、その場で360度回転するキーボードを使い
こなしてるジョーダンとか、やたらとオプションが多いドラムキット組んでるマイキーとかは、
まだ頑張ってる方だと思うけれど、JPとマイアングの地味っぷり、特にJPの弾いてるときの
見栄えのしなさ加減だけはいかんともし難いものがあると心の底から実感。
ま、その辺の無骨な職人らしさが、彼等最大の魅力でもあるので、アリっちゃアリなんだけど。


<今日の一枚>

 「
AWAKE」 / Dream Theater

その超絶的テクニックが生み出す、まさに「壮大」というに相応しい曲展開でもって
全世界のHR・HMシーンを震撼せしめたセカンド「Image And Words」に続く三枚目。
これまでにも増してよりプログレ臭を強めたその楽曲群は前作よりやや暗めな雰囲気に
仕上がったものの、その中に色濃く漂う「硬質感」が、これはあくまでメタルなんだと
いうことへの主張をきっちり放っている快作。
特に4の"Erotomania"は動静・強弱の、微妙に異なった2面性をそれぞれ合わせもった
DT史上屈指の名曲。
プログレッシヴ・ヘヴィメタルという音楽が、どういうものかを知りたい方には最適。


<今日の駄目T>



#珍しくまともなデザインだけど、これまたえらく地味。
 その地味さ具合は、メンバーの華の無さをそのまま現わしているかのようで、ちょっと悲しいです。



<セット・リスト>

01:The Glass Prison
02:This Dying Soul
03:Never Enough
04:Panic Attack
05:Just Let Me Breathe
06:Raise the Knife
07:Home

08:Highway Star (Deep Purple)
09:Child In Time (Deep Purple)
10:Smoke On The Water (Deep Purple)
11:The Mule (Deep Purple)
12:Strange Kind Of Woman (Deep Purple)
13:Lazy (Deep Purple)
14:Space Truckin' (Deep Purple)

15:The Spirit Carries On
16:Pull Me Under


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