QUEEN.


<2005年10月26日: 埼玉スーパーアリーナ>

音楽的好みにおいてターニング・ポイントというものがあるとするならば、
僕にとってのそれは、おそらくジャーニーとクイーンの2バンドだったんじゃないかと
思うのです。何故なら、洋楽を聞き始めるきっかけを作ってくれたのが前者で、それに
のめりこむきっかけを与えてくれたのが後者のクイーンだったから。

忘れもしない1984。当時、毎週かかさず見ていた「小林克哉のベストヒットUSA」。
そこで紹介された"Radio Ga Ga"のプロモに圧倒的感銘を覚え、次の日、すかさず近所の
貸レコード屋へと小走った小学生時代のあの頃。
そこで借りてきた「The Works」と「Sheer Heart Attack」を聴いて、更なる感銘をうけ、
そこから一気に洋楽へとのめりこんでいった中学入りたてのあの頃。

そして85年、来日公演。リア厨だった僕にとっては、金額的にも年齢的にも「ライブ」
という言葉があまりに重すぎた時代。あれから早20年近くが経過した今、フレディの他界
により「クイーン」の名を冠する公演が絶対にありえなくなってしまった今、"Radio Ga Ga"
を聞くたび、どうしてあのとき無理やりにでも行っておかなかったのだろうと考えるような
ことは何回かありました。

そんなある日、突然入ってきた今回のニュース、
「クイーン、元フリーのポール・ロジャースと組んで復活公演」

これ初めて聞いた時は正直、複雑な気分でした。
どうして今更…?的思いに加えて、どんな大物もってこようが絶対にフレディの代わりが務まる
わけはないし、その事実があまりに重すぎるからこそ、伝説となったウェンブリー追悼公演を最後
にクイーンとしての活動は、ほぼ行われなくなったわけだし。
そういう意味じゃZEPと同じですよ。消滅後、幾度となく再結成話が持ち上がるもボンゾの存在
があまりに大きすぎた故、それが正式に実現することは決してなかったし、残されたメンバー達も
(あのゼニゲバ魔人なペイジでさえ)ZEPの名前を使ってバンド活動するようなことだけは絶対に
しなかったという、そう、ある種の聖域とでもいうか、安易に触れちゃいけないような何かが確固
として出来あがっていたわけですよ。

そこへ今回の再結成話だもの、えー?一体どうしちゃったの?ってファンなら誰でも思ったろうし、
実際僕自身も当初そう思ったけれど、でもよくよく考えたらそれを一番よく分かっているのは残された
メンバー達なわけで、どこの馬の骨とも知れない他の奴等ならいざ知らず、クイーンという屋台骨を
ずっと支え続けてきたブライアンとロジャーがバンド名を「ブライアンと愉快な仲間達」みたいな事に
せず、あえて「クイーン」名義にすることを選んだなら、それはそれで尊重すべきなんじゃないかなって、
そう思えてきたら、なんか俄然テンションが上がってきちゃったんで、もう絶対行くもんねとばかり、
すかさずチケをゲット。平日の水曜に埼玉という最悪条件も今まですごく元気だった筈が唐突に体調
不良になって半休するという暗黒魔法で乗り越えて、もはや何の憂いもなしとばかり意気揚々と会場
へ向かったのでありました。

ちなみにジョンは、フレディ死後、完全に音楽業界から引退したとのことで今回のリユニオンには
不参加だそうで。まったく目立たないようでいて実は影から一番バンドを支えていたと言われる、
サイレンスマンこと彼のファンクなベースが聴けないのは残念だけど、まあ贅沢はいいっこなし。

で、いざ会場に着いて僕が一番最初にしたことは、席の場所を確認してそこに唖然と立ち尽くす
ことでした。いや、もう、ステージから遠い遠い、武道館レベルの距離感とか目じゃない、それ
より断然遠い。脚色なしで点レベル。今回のステージ組みはさいたまスーパーアリーナの数ある
オプションの中でも最大収容人数を誇るスタジアムモードという設定だそうですが、いや、それ
にしても遠いわー、ま、でも、その代わりと言っちゃなんだけど、椅子が両脇と繋がってない
単席タイプの奴だったんで、ちょっとしたVIP気分でライブを優雅に楽しむことが出来そうで、
その点だけはラッキーだったと思いました。こういう事態を見越して一応オペラグラスも装備して
きたことだしね。

で、それから程なくして、いよいよライブ開幕となったわけですが、照明暗転後、ポールがOPの
"Reaching Out"をアカペラで歌い始めた途端、早々と涙腺にきちゃってる自分を省みて再度唖然、
幾らなんでも早すぎるわと。でも高音域にずずいって伸びてくハイトーンがフレディみたいで思わず
ジーンときちゃったんだもの、シカタナーイ。
で、そこから繋がる"Tie Your Mother Down"の出と同時にはりきって駆け出してきたかと
思いきや早速カーテンに足を引っ掛けて軽々とブッこけてるブライアンの姿見てまたもやジーン。
のっけからこんなだもの、その後も続く往年の名曲の数々に弱りきった涙腺が耐えられるわけも
なく、もう何を聞いてもホロリときちゃう状態に。
"39"から"Love Of My Life"を経て"Teo Torriate"へと繋がっていくブライアンのアコス帯
なんて周囲の雰囲気にも引っ張られて、今、自分がとんでもなくキモいと頭でわかっていながら
若干声をくぐもらせての嗚咽泣きまでする始末。だけどふと周囲を見渡したら何故か周りのほぼ
全員が一緒に嗚咽泣きしているという無惨極まる現実をそこに見てしまい、僕は流石に少し冷静
になってしまいましたキモッキモ。こりゃ一体なにごとだ?そこで僕はようやく、もはや会場全体
がライブという枠を超え、観客全てをも巻き込んだ極めて壮大な別の何かに変化を遂げはじめて
いることに改めて気づき、日本のファンがクイーンというバンドに持っている「重み」というもの
をしみじみと実感するのでありました。

中盤辺りで会場が一番沸いたのは、ロジャーのドラムソロとコンボになっての"I,m In Love…"
かなあ。もともと初期時代の隠れた名曲とは言われていたけど、クイーンのカラーとはあまりに
違いすぎる曲なんで今回はカットかなと思っていたら、しっかりとやってくれたので、ちょっと
嬉しかったり。それにしてもロジャーの野太い声が響いた途端、会場全体が縦揺れしたのにはマジ
驚きました。と、同時にかつての少女達(現在オバ厨)から黄色い声援がもう飛ぶ飛ぶ。
そりゃまあね、確かに30年前はメンバーの中で一番のイケメンとは言われていたかもしれない
けどね、今やすっかり小太って、頬のお肉もぷっくり垂れ下がり、もはや往年の風貌は見る影も
なくなってしまった今の彼に向かってそのグルーピー丸出しコールは流石にないんじゃないの?
とか考えてたら、当の本人は案外嬉しそうな顔してたので、お前も少しは年齢を考えろよと思い
ました。

ちなみに、僕が選ぶ中盤ハイライトは、もちろんブライアンのギターソロ。
今回のツアーじゃ、自分の家の暖炉の100年もの木材を削りだして作ったと言われる伝説の
レッドスペシャルは使っていなかったみたいだけど、それでもそのレプリカを小脇に抱えただけで
絵になっちゃうところなんかはやっぱ流石だと思いましたね。
もちろんプレイの方はもっと流石で、多くの著名ギタリストをして「真似できそうで出来ない」と
いわしめた、かの「津軽じょんがらフレーズ」の連続弾きから生じる独特のグルーヴ感は言うに及ばず、
"Last Horizon"で見せた渾身のチョーキングビブラートが彩る、哀愁と郷愁を織り交ぜたかのごとき、
どことなく懐かしい、だけど決して古臭く聞こえず、そして静かに体の中に染みいってくるような珠玉
のメロディは、まさに圧巻という他ないほどの素晴らしさ。
リッチーしかりインギしかり、とにかく人格破綻者が多いと言われるギタープレイヤーの中にあって、
飛びぬけて穏やか かつ ずばぬけて人格者、と言われる彼の性格がまんまが表れているかのような
このソロに、僕は体の芯から身震いさせられてしまいました。

その後ライブは、前半のアコギ・パートにも増して、より涙・感動、雨あられ的な展開へ。
"素晴らしき日々"という邦題の通り、ただでさえ昔を思いおこさせるような曲"These Are The
Days…
"のバックで初来日時のプリンスHお茶会映像とか流されて、けん玉に興じるフレディだとか、
のっぺり面で佇んでいるジョンだとかを見せられた日にゃ、そりゃまた涙腺にジワっときちゃうわっ
てお話なわけで。更には会場を埋め尽くした3万人の聴衆ほぼ全員が"Radio Ga Ga"のおなじみの
サビんとこで一糸乱れぬクラップハンズしてんの見て強烈に感動。席が後ろの方だったこともあり
会場全体の動きが良く見えた分、より感動に拍車がかかった感じ。これ、本当すっごい光景でした。
数十年前、この曲のプロモをテレビで見てそこからクイーンにのめりこんでいったこの身としては、
マジでたまらんものがありましたね。

で、とどめが"Bohemian Rhapsody"のバックでこれでもかってくらい流されたフレディ名場面集。
フレディの死後、その印象を聞かれたボウイが「またそのヘンな服か」の一言で見事に表現したという、
彼のありし日のはっちゃけ映像をモニターで見つつ、その天性のエンターテイナーっぷりを懐かしんで
いたら、今度はジーンを超えて普通にホロホロきちゃいました。クイーン・ファンでこれ見て泣かない
奴はおそらく1人もいないんじゃないでしょうか。

そのフレディの代役を務めたポールのことについても少し触れておきますと、聴く前は若干ミス
キャスト気味なんじゃないの?とか思ってたその認識が180度、ものの見事に覆りましたね。
放り投げたりブン回したり振り回したりのマイクスタンド芸はフーのロジャー・ダルトリーばりに
映えてたし、"The Show Must Go On"や"I Want It All"のトーンはもろにバカはまりしてたし、
フリーやバドカン時代の名曲、特に出だしのリフだけでも失禁ものの"All Right Now"とか、もう
滅茶苦茶にうまくてカッコ良かったし。流石、あのリッチーをして「世界最高のブルーズロック・
シンガー」と言わしめただけのことはあると思いました。ツラだけ見るとただのムサいオッサンで
しかないのに、ねえ?

ただ、あまりにクイーンしか見えてないファンが多すぎたことが、今回の彼にとっては不幸だった
かもしれません。だって本来なら盛り上がり必至な筈の"Can,t Get Enough"とか、あのロッドも
カヴァーした名曲"All Right Now"でさえ、いま一どころかいま三な盛り上がり具合で、クイーン
楽曲時のそれと比べるともう全然に「シーン」でしたからね。フリーのファンらしき右前方の人とか
「曲知らねーなら来るなよ!」って普通に怒ってたし。サビ部分を客に歌わせようとしてものの見事
にダダすべりしてるステージ上のポールと、それを必死にフォローしようとしているブライアンの姿
がただただ哀れでなりませんでした。
あと、日本のファンの為にってわざわざサービスしてくれたまではいいんだけど、バンド演奏じゃ
なくてロジャーとブライアンのアカペラだったもんだから、かなりスカスカな感じになって、むしろ
やらない方がよかったんじゃね?的出来になってしまっていた"I Was Born To Love You"とかね、
中途半端にやるぐらいなら初期時代の名曲、例えば"Seven Seas Of Rhye"とか"Keep Yourself Alive"
の方をやってくれた方がこちら的には嬉しかったかも。

まあ、でも全体を通して残念だった点はその二つくらいで、もしチャンスがあるなら次は是が非でも
アリーナ、それも思いきり前の方で見たいと心底思わしてくれた内容だったんで、こうなったら追加
の横浜公演も行っちゃおうかなー?、とか考えてる自分にすかさずムカッ腹。
行っちゃおうかな?前の方で見たい?ナメんじゃねー、よくよく考えたら俺等の辞書にゃそんな言葉
は存在しない!俺等オタクは見たいと思ったそのときにゃ既にチケを手にいれてるんだ!のギアッチョ
的思考にのっとり、すかさずヤフオクのチケ争奪戦に参戦したらなんと20万円まで跳ね上がりやがって
心底カーっときたもんで、マリー姐さんの教えのまま、東京が駄目ならほかの場所に行けばいいじゃない?
とばかり、すかさず再度のオクで福岡ドームの最終公演アリーナ5列目を落札したりましたイヤッホー!
ちなみに東京〜福岡間の距離は約1500キロほどあるそうです、全然関係ないですね。だって飛行機代
往復+チケ落札代入れても20万以下な上に小旅行気分も楽しめて更にはクイーンのライブまで楽しめ
ちゃうんですよ?最高じゃん!? というわけで、


<2005年11月3日: 福岡ヤフースタジアム>
 ・福岡近いー、飛行機でたった2時間、楽勝!
 ・そして取引も会場近くで無事成立。
 ・もしオク詐欺にあってたら博多湾でピチピチするとこだった。
 ・開演前の入り口近くで強烈なフレディ信者さんを発見。写真バシバシ撮られてました。
  
 ・いよいよ開演。5列目ってステージに滅茶苦茶、ちけー
 ・東京一日目じゃやらなかった"I Want To Break Free" キター
 ・だけど東京二日目にやったらしい"Long Away"はやってくれなかったー、がっくし。
 ・正直、今回の強行軍の動機は、これ聴きたさが半分だったんで相当、意気消沈。
 ・すごく間近でブライアンの運指みれたので、再び元気が出てきました。
 ・この人、本当にコイン使って弾いてるだね。渋すぎる。
 ・ポールのマイクスタンド投擲芸は相変わらず神。
 ・それを真似しようとロジャーがスティックぼんぼん放り投げてんのには笑った。
 ・"Radio Ga Ga"では、手を叩きすぎのふるいすぎて、次の日、両腕の筋肉が大変なことに。
 ・"I Want It All"の間奏ソロで死ぬほど頭ふりまくって、気分を悪くする。
 ・後ろのお姉さん、"Bohemian Rhapsody"で全開泣き。
 ・相変わらずバドカンやフリー関連の曲は声援が小さいなあ。
 ・正直アリーナのわりに周囲のノリがちと大人しめだったのは残念。
 ・"Radio Ga Ga"はパンパン→両腕広げの際に拳握らずで、"We Will Rock You"は握り拳。知ってました?
 ・"We Will Rock You"〜"We Are The Champions"のお約束コンボは、何度聴いても感動的。
 ・最終日サプライズなし。声援が多少大人しめだったせい? 
 ・最終便の飛行機で日帰りする予定がものの見事に間に合わず、次の日、軽々と会社をブッチぎる羽目に。
 ・ま、なんの問題もない。


<今日の一枚>

 The Game / QUEEN

1980年リリース、8枚目のソロ作。
初期の頃のアルバムは、正直なに聴いても名盤になっちゃうと思うので、今回はあえて中期の
頃の佳作を紹介。この頃のクイーンはものすごくアメリカ市場というものを意識していたらしく、
このアルバムでは、曲メロ・キャッチーで曲調もポップな曲がフル搭載されることに。
その出来具合いを聴いた往年のファンは、これまでの売りだったオペラ調ロックを自ら捨てて、
こんなありがちなアルバム作っちゃってどーしたの?と思ったとか思わないとか。
ところがよくよく聴いてみりゃアルバム全体の雰囲気はともかく、飛び抜けた出来の楽曲はない
もののほとんどの曲が水準以上であり、実際"Another One Bites The Dust"・"Crazy Little Thing
Called Love"という2曲の全米ナンバーワンがここから創出されることに。
クイーンというバンドが持つ長所の中でもわりと意外な一面、「器用さ」というものが大きく
前面に出た一枚。飛び抜けた創造性と独創性を持つ人達は、普通のことやらせても凄いんだよ
ということを実感させてくれます。


<今日の無駄T>



#フロントの垢抜けないデザインはともかく、
 バックのクイーン初期を思わせるようなロゴはちょっと嬉しいかも。




<セット・リスト>

<2005年10月26日: 埼玉スーパーアリーナ>
01:Reaching Out〜Tie Your Mother Down
02:Fat Bottomed Girls
03:Another One Bites The Dust
04:Crazy Little Thing Called Love
05:Bad Company
06:Say Its Not True
07:39
08:Love Of My Life
09:Teo Torriate
10:Hammer To Fall
11:Feel Like Making Love
12:〜 Drum Solo 〜
13:I,m In Love With My Car
14:〜 Guitar Solo 〜
15:Last Horizon
16:These Are The Days Of Our Lives
17:Radio Ga Ga
18:Can,t Get Enough
19:Wishing Well
20:I Want It All
21:Bohemian Rhapsody

22:I Was Born To Love You
23:The Show Must Go On
24:All Right Now
25:We Will Rock You
26:We Are The Champions


<2005年11月3日: 福岡ヤフースタジアム>
01:Reaching Out〜Tie Your Mother Down
02:Fat Bottomed Girls
03:I Want To Break Free
04:Wishing Well
05:Crazy Little Thing Called Love
06:Say Its Not True
07:39
08:Love Of My Life
09:Teo Torriate
10:Hammer To Fall
11:Feel Like Making Love
12:〜 Drum Solo 〜
13:I,m In Love With My Car
14:〜 Guitar Solo 〜
15:Last Horizon
16:These Are The Days Of Our Lives
17:Radio Ga Ga
18:Can,t Get Enough
19:A Kind Of Magic
20:I Want It All
21:Bohemian Rhapsody

22:I Was Born To Love You
23:The Show Must Go On
24:All Right Now
25:We Will Rock You
26:We Are The Champions


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