THRASH DOMINATION 05.


<2005年9月18日: 川崎クラブチッタ>

サバス源流ヘヴィリフをベースに、とことんまでスピードを追い求めた結果、新たに生まれた、
大気を切り裂くような音質。その特徴的なリフからそのジャンルはこう称されるようになりました。

「THRASH」

1984年頃、エクソダスを起点としてベイエリア中心に広がったこのムーヴメントは
メタリカ、メガデス、アンスラックス、スレイヤーのスラッシュ四天王誕生を皮切りに、
80年中期〜後期にかけて最高の盛り上がりを見せます。が、90年代初頭グランジの
台頭をきっかけにその勢いは落ち始め、現在においてなおスラッシュ一筋で頑張っているのは
僅か数十バンド、四天王においても、そのサウンドに明確なるスラッシュ魂を残すのはスレイヤー
のみ、という凋落ぶりになってしまいました。

そんな忘れ去られたジャンルの数少ない生き残り組であり、今もなお、頑ななまでにその
スタイルを守り続けている筋金入りの頑固親父どもが、このたび一斉に4組も来日するとの
情報を得て、ここ最近、サマソニのスリップノットと銀杏を除けば大人しめのライブ続きで
多少なりともフラストレーションが蓄積しつつあった僕の今の現状を鑑みれば、この
「スラッシュ・ドミネーション」は何としても見逃せない内容である!とばかり、川崎は
クラブ・チッタまでれっつらごーしてきました。


<KREATOR>

(ROCKCITYより)

トップバッターはクリーター。ミレ・ペトロッツァ率いる独スラッシュ界の重鎮。
名前だけは知っていたものの、恥ずかしながらその音に触れたことはまだ一度もなかったもんで、
つい先日、いい機会だとばかり新譜の"Enemy Of God"聴いて、そのあまりの素晴らしさに
吹っ飛ばされたばかりでした。まあ、高速リフ一辺倒で押しまくる正統派スラッシュというよりは、
どちらかと言えばその中にメロディアスなソロを織り交ぜたここ最近流行りのメロデス風なんだけど、
その音の分厚さが並じゃないという。スラッシュ系は速さを重視するあまり厚みが薄くなりがちになる
ことが多々あるんですが、その辺の弱みがまったく見られない、あえて音質を例えるならば、マーティが
いた頃のメガデスをすごく邪悪にした感じとでもいうか、兎にも角にもミレがしぼり出すその直情的な声
から感じる「怒」のオーラが凄まじかったっス。

で、実際に彼らのライブで体感してみて、更に吹っ飛びました。その憤怒オーラはもちろんのこと、
ステージ上から漂ってくる緊張感が半端じゃない。ショウの流れも良く出来ていて、高速チューンで
おしまくる序盤、メロ重視のミディアムテンポで一息いれて、凶悪極まるヘヴィローテで圧倒しまくる
後半と、客を飽きさせない構成。流石はスラッシュ一筋20年、それにおける自らのスタイルをほぼ
模索し尽くした上で、エンドラマという自分探しの旅に出たのち、もう一度そのスタイルを再構築し
直しただけのことはあると。その威風堂々たる演奏っぷりは見事の一言でした。
更には速度・厚み・強弱の変化・ステージ上における煽り、どれをとっても超一流、どうしてこのバンド
が日本でこんなに知名度がないのか、正直不思議でたまりません。後ろの方でまったり見ているつもりだった
けれどあまりの楽しさに思わず特攻、ふと気づけば前から5列目ぐらいの位置で頭ブンブンふってましたね。
再来日したらまず行くと思います。

 01:Choir Of the Damned
 02:Enemy Of God
 03:Impossible Brutality
 04:Pleasure To kill
 05:Phobia
 06:World Anarchy
 07:Violent Revolution
 08:Suicide Terrorist
 09:Extreme Agression
 10:People Of The Lie
 11:Voices Of The Dead
 12:Terrible Certainty
 13:Betrayer
 14:Flag Of Hate
 15:Tormentor


<LAAZ ROCKIT>

2番手はシスコ出身の激烈リフ軍団、ラーズ・ロキット。
ここ10年ぐらい活動停止していた筈が、今春、オランダでいきなり思い出したように再結成
を果たしたそうで、昔の栄光をもう一度なのか、普通に金もうけの為なのか、単なる同窓会の
つもりが勢いあまってやらかしちゃったのか、真偽の程は謎ですが、ボーカルの人のデブった腹に
月日の残酷さを見たことだけは確かでした。

まあ、元々そんなに聞きこんでなかったバンドだけに、ここはスルーしてクレーターで失った体力
復活させとくかとばかり休憩スペースへ向かったら、皆、同じことを考えていたのか、そこは既に
スシ詰め状態と化してまして、僕は否応なしにホールへ戻るという選択肢を選ばざるをえなくなるという…
結局ラーズ全部見ちゃったよ。

で、実際にその音聴いた印象としては、確かにリズムはスラッシュなんだけど、ボーカルの人の声
がもろファンク系すぎて、なんだかエクストリーム思い出しちゃいました。そのノリ自体もスラッシュ
っぽい緊張感みなぎるダークさとか全然なくて、なんか妙に跳ねてて明るいというか、こう、弾ける
ような雰囲気というか。前バンがクレーターだっただけにことさらそう感じました。

でも、なかなかに個性的な音でもあったんで、これ、もっと磨きかければ、ファンクスラッシュとか、
そういった感じの新しいジャンル切り開けるかも?とも思ったけど、やっぱアレか、もうちょっと
メンバーのルックス自体に華がなきゃ無理か。や、ベースのおっさんの必要以上に自分をアピりたが
ってるその仕草にゃかなり笑わされたけども、でもそれって華じゃなくて「花」つうか、むしろ笑い
のベクトルだもんね、残念!


<DESTRUCTION>

(ROCKCITYより)

三番手に登場したのはデストラクション。
前述のクレーター、ソドムと並ぶ、独スラッシュ界・三神の一角。

これまた名前だけは知っていたものの今までほとんど音を聴いたことのなかったバンドだけ
に予習とばかり最新作をすかさずゲット。で、帯の「これしかやらない、これしかできない」
ってな漢魂溢れるそのキャッチ見た途端、中身を聴く前から早くも痺れまくってしまいました。
で、実際に聞いてみたら、これがもう笑っちゃうくらい極上バリもんのスラッシュメタル。
スローテンポなし、バラードなし、メロディアスなソロなしのナシ尽くしなところへもってきて、
リフ、リフ、ひたすら高速リフの一辺倒。今時ここまであからさまなのも珍しい。看板通りの
その恐るべき直進性に心底たまげてしまいました。

実際のライブの方もその看板内容に嘘偽りなし、始まった瞬間から全開全開また全開。
暴虐的といってもいいぐらいの勢いで叩き出される怒涛のバスドラ連打と、とにかく死ぬまで刻んで
刻んで刻みまくってやるぐらいの気合でブン回されるザクザク・ベース、その中に強引に割り込んでくる
「背骨をヤスリでゴリゴリ削られているかのごとき(BURRNより)」マイクのギターソロ。肉どころか
骨にまで響く音圧とはまさにこのこと、ヘッドバンキングするのに世界一適している音楽といっても過言
じゃないと本気で感じました。これ、そんぐらい分かりやすいです。"Etrnal Ban"における出だしの
不協和極まる金切りソロ聞いた瞬間とか「死ぬまでスラッシュ」ってな曲名をまんま表しているかの
ような"Thrash Till Death"の異常といってもいいくらいの疾走ぶりとか、アテられすぎの首振りすぎて
何度か頚椎おかしくしかけたし。しかも、この音をトリオ編成のたった3人でひねり出してるってんだから
こりゃマジ凄すぎると。

その音楽性はもちろんのこと、その音に似合わぬシュミーアのコミカルなMC(猪木の真似とか)巧者
っぷりも重なって、あまりに気にいっちゃったので思わずライブ終了後のサイン会にまで参加しちゃい
ましたよ。

 

これまで「スラッシュって何?」って聞かれたら、いの一番にスレイヤーの名前あげてたけど、
これからはそれにデストラクションも加えようと思います。

 01:Soul Collector
 02:Bestial Invasion
 03:Nailed To The Cross
 04:The Alliance of Hellhoundz
 05:Eternal Ban
 06:Thrash Till Death
 07:Life Without Sense
 08:The Defiance will remain
 09:Total Desaster
 10:Metal Discharge
 11:Mad Butcher
 12:The Butcher Strikes Back
 13:Curse The Gods


<TESTAMENT>

(ROCKCITYより)

さて、ラストはいよいよお待ちかね。カル=ス最大の氷雪系呪文の名を冠するスラッシュ界の
大御所、テスタメント。
ヘヴィ極まるスラッシュリフ、そこに骨太く乗っかるチャックの野太いヴォイス、その隙間を
縫うようにして時折割りこんでくるメロディアス溢れるソロ。これ、この三位一体のハーモニー、
これがテスタメント最大の魅力!

(エアギまくりの左デブに注目)

…だった筈なんだけど、正直、前のデストラクションに比べると妙に迫力不足に聞こえちゃって、
どうにもこうにも高揚感といったものが沸いてこないというか… いや、決して悪くはないんです
けれどもね。バリバリのスラッシュ風味でありながら、しっかりメジャー受けするようにも作られ
ているメロ心に溢れた曲調の良さは相変わらずだし、お前どこぞのスモウレスラーだよってくらい
肥えまくったチャックの間奏におけるエアギショーも大層面白いんだけど、でも悲しいかな、それ
を受け入れるだけの体力的余裕が、もはや僕の中には残されていなかったようで。

加えてこの時点で既に4時間立ちっぱなし。今回長丁場ということでわざわざ足をいたわるために
履いてきた「年季入りすぎてものすごく臭いけどでも最高に柔らかくて足にフィットしまくるので
凄く気持ちいいぜシューズ」のご利益も遂に尽き果てかけて、いよいよ体が本気で限界モード。
とりあえず一旦後ろに下がって後方壁際でしばし休んでくるかときびすを返しかけていた時に「それ」
は起こりました。

終盤の"Over The Wall"の出だしでチャックが突然こう(たぶん)叫んだのです、
「ダイブ・タイム! 元気残ってる奴ら、ここまで、ステージまで上がってこい!」
その途端、多少ダレかけてた会場の空気が一変、前の方で一斉にダイブの嵐が巻き起こり、
あっというまにステージが人、人、人で埋め尽くされて、皆、メンバーと一緒に歌ったり、触ったり、
そこらを所在なさげにウロウロうろつき回った挙句、じゃそろそろ俺逝くねとばかりそこから客席へ
飛びこんだりしちゃったりで、もう無茶苦茶楽しそう。
正直、こんなの見たの始めてで、そのシーンがあまりに面白すぎて思わずカーっときたもんで
僕もまぜろとばかりその喧騒にまぎれて特攻んだ末、ステージ上がってチャックとハイタッチして
きちゃいました。やー、今日、本当に来て良かったわーと思った瞬間。

 01:The Preacher 
 02:New Order
 03:The Haunting
 04:Electric Crown
 05:Sins Of Omission
 06:Practice What You Preach
 07:Into The Pit
 08:Souls Of Black
 09:The Legacy
 10:Alone In The Dark
 11:Trial By Fire
 12:Over The Wall

 13:Raging Water
 14:Disciples Of The Watch


このイベントは今年で2回目だそうですが、とにもかくにも今年は出演バンドが秀逸だった
と思います。特にクリーターとデストラクション、この2バンドと新たに巡り合えたってな、
思った以上に大きな収穫でした。来年も絶対開催希望。


<今日の無駄T>



#これ着て外を出歩けるようならば、もう、たぶん何もこわくないな、と思った。
 メタルTシャツは自己啓発にも使えるんだってこと、始めて知りました。



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