D I O.


<2005年5月29日: ZEPP・TOKYO>

レインボーにサバスと、ロック界に多大なる功績を残した伝説の2バンドの最盛期を支え、
自らが興したディオにおいても中世風様式美を前面に押し出した質の高い正当派ロックで
周囲を魅了し続けてきたあの名ヴォーカリスト、もはや生ける伝説と化している感のある
あのロニー・ジェイムズ・ディオがディオとして5年ぶりの来日をはたすと聞き及び、こら
風邪でヘタってる場合じゃないとばかりヨロヨロの体をひきずって、お台場はZEPP・TOKYO
まで行ってまいりました。そりゃまーね、好きなVOをあげろと言われれば、フレディ、ウド、
ロブ、クラウスと並んで確実にマイランキングTop5に入るであろうあのロニー様の来日
だもんね、どんなに体の状態がアレでもそら見逃すわけないっつの。
更に、今回の来日ではサポートアクトとして、アークエネミーのマイケル・アモット率いる
サブバンド:「
SPIRITUAL BEGGERS」が起用されてまして、マイケル・シェンカー的な
叙情性の高いギターソロ大好きッ子の僕としては、実はこちらも密かに楽しみでした。

で、実際に生演奏 聴いてみた印象としては、アークエネミーよりソロ弱め、ついでに短かめ、
その分リフ強めってな感じ。つまり良くも悪くも個性的とは言えない普通のロック、だけど
リフに関しちゃかなり気持ちいいとこ突いてくれてんのに加え、VO取ってるハゲの声が実に
骨太ロックっぽいしゃがれ方してて、その辺りのヘヴィネスさはかなりイケてると思いました。
時折割り込むアモットの叙情ソロも相変わらず素晴らしいし、その巨体を激しく揺らしながら
ベースぶいぶい言わせてるシャーリーの姿も抜群に格好いいしね、これ単独で来ても行くかも。
これでもう少しギター音がデカければもっと良かったと思います。せっかくのソロがリズム隊
の音圧で掻き消され気味だったのはちょっともったいなかったかな、と。
あと、ディオのクレイグ・ゴールディが時折バックステージをウロウロしつつ、アモットのプレイ
を「やるー」って感じでたいそう楽しそうに見つめてたのが妙に印象に残りました。

 01:Throwing Your Life Away
 02:Street Fighting Saviours
 03:Angel Of Betrayal
 04:Fools Gold
 05:Treading Water
 06:Young Man,Old Soul
 07:Wonderful World
 08:Through The Halls
 09:Beneath The Skin
 10:Dying Every Day
 11:One Man Army
 12:Look Back
 13:Euphoria


ベガーズ終了後、そのセットチェンジ作業をぼんやりと眺めていたら、後方でいきなり怒声。

 「なんの為の整理券や!」 
 「だから好きに前行けっつってんだろ?」
 「は?なに?」
 「は?ってそっちがや!」
 「は?」
 「は?」
 「はっ?」
 「はっ?」
 「はっ?」
 「はっ?」

いつアメフトが始まるのかと思いました。
結局のところ、整理券の番号が若いにもかかわらず前の方へ行けなかったことに対し、
まったく見ず知らずの他人に八つ当たったことがケンカの要因だったようで、絡まれた
方は本当に可哀想、スタンディング形式のライブでそんなこと抜かすバカがまさかこの世に
いようとは。もうね、アホかと、馬鹿かと。お前な、整理券の番号だけで前行けると
勘違いしてんならライブなんか来るンじゃねーよボケが。スタンディングってのはな、
とにかく殺伐としてるんだよ、会場に足を踏み入れたが最後、いつもみくちゃにされても
おかしくない、つぶすかつぶされるか、そンな雰囲気がいいんじゃねーか、整理券とか
むしろ食ってろ。で、向こうの方じゃよーし俺ダイブしちゃうぞーとか言ってるんです。
そこでまたブチ切れですよ。あのな、ダイブなんてきょうび流行らねーんだよボケが。
得意げな顔して何が、ダイブ、だ。お前は本当にライブを楽しみたいのかと問いたい。
問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。お前、暴れたいだけなんちゃうんかと。
ライブ通の俺から言わせてもらえば今、スタンディングで楽々ライブ見る方法はやっぱり
オタク、これだね。オタクってのはただでさえ気持ち悪い。加えて汗大目、そんでもって
風呂に丸3日入らない。これ最強。たぶん周囲が勝手に避ける。しかしこれやるとライブ後、
普通に狩られるかもしれないという危険性もつきまとう諸刃の剣。素人にはお薦め出来ない。
まあ整理券がどーのこーのブチ文句たれてる奴は、一番後ろで見てなさいってこった。

そんなこんながあったのに加え、その後も空気読まずグイグイ圧してくるどっかのバカ厨を
えんぴ(肘うち)で迎撃するなどの作業を淡々とこなしておりましたらあら不思議、
僕の顔と心はすっかりやさぐれてしまったというわけで、正直、周囲も相当雰囲気悪く
なっていたし、後5分、ディオの登場が遅れていたら場所移動してたかもしれません。

だけどロニーがそのハ・キム然(手長猿の一種と思ってください)とした小柄な体をヒョコ
ヒョコさせて登場した途端、そんな険悪ムードはどこへやら。みんなしてメロイックサイン
一斉に掲げてこの小さな巨人の名前を大コール。その声援に応えるかのように悠然と歌い
始めたロニーのその声聴いた途端、そのあまりの歌唱力にマジぶっとびました。比類なき
力強さと比肩なき野太さを合わせ持つあのゴッドヴォイスは還暦を超えてもなお健在なり。
風貌的にはどこをどこからどう見ても少し小さめなピテカントロプス・ペキネンシス以外の
何者でもないその類人猿の声の凄さたるや、先日のプリーストでのロブ渾身の超絶ハイトーンを
拝聴した時と同じくらいシビシビきました。世界広しと言えどもヴォーカルのみでここまで
オーディエンスを痺れさせることが出来るシンガーってな、HR界隈じゃもはやこの二人くらい
じゃないでしょうか。ここ最近のアイデア枯渇が招いた半化石化のせいでセールス的にパッと
していないこともあり、全盛期通りのパフォーマンスが果して見られるのか、正直かなり
懐疑的だったんですけど、いや、とんでもないっス、心の底から感服いたしました。

更には、その歌声がただでさえ中世浪漫譚ムードをバリバリ感じさせるところへもってきて、
演ってる楽曲がこれまた"Stargazer"・"Gates Of Babylon"を筆頭としたドラマチックに
展開しまくる叙事詩風ソングの、しかも一大傑作のめじろおしときた日にゃ、もう土下座もんの
素晴らしさ。本編の歌パートが最高なのはもちろんのこと、それ以上に縦横無尽の広がりを見せる
ソロパートの完成度の高さは土下座をこえた土下寝もんの麗しさ。
これで弾いているギタリストがリッチーでさえあったならもう完璧だったのに、とか思ったか
思わないかは別にして、元ジェフリアのギタリスト、クレイグ・ゴールディの出来も皆が言う程
酷くはなかったように思います。ヴィヴィアン、リッチーにトニーアイオミと、全然タイプの
違う名ギタリストのフレーズを忠実に再現している辺り、なかなかに器用な奴だなと思いました。
そのぶん没個性だったけど。個性的なのはへちゃむくれたカエルみたいなツラのみだったけれど。
(本人も自ツラのコミカルさを理解しているみたいで、途中で背中に自ら旗とか立ててました)

それと比べて、と言っちゃなんですが、元クワイエットライオット(大好きだった)ベースの
ルディ・サーゾのカッコよさと来たら、もうマジで神レベル。ヴォーカルが猿にギターが蛙と、
これでベースが人間以外だったら目ェつぶって音だけに酔いしれるしかないなぐらい思ってた
ところへ1人だけ際立ったカッコよさ見せつけられたせいもあり、その評価は通常の3割増し。
ベース・フレーム部分を拳でゴンゴンやる独特奏法から垣間見える力強さといい、常に満面の
笑顔をたたえながらステージ上を元気よく走り回るバイタリティといい、えっこれで本当に
55歳なの?と首を捻らんばかりの若々しさに満ち溢れていました。

この日一番のハイライトは、暗転したステージ上にてロニーのご尊顔だけにスポット当てつつ
始まったサバスの"Heaven And Hell"。重厚極まるスロー展開から徐々のテンポアップを経て、
ラスト前のハイテンポな盛り上がりへと繋がっていくそのダイナミズムに溢れた展開はまさに
珠玉の名曲。サバス時代の曲は他にも"Neon Knights"・"Mob Rules"をやる予定だったらしい
のですが(マサ情報)、時間の関係からか結局なし。うーむ、レインボー時代の楽曲削ってでも
サバスの曲を、贅沢言うなら"Die Young"をやってほしかったなあ…!

あえて難を言うなら、レインボー・サバスからディオ初期時代にかけての素晴らしい楽曲の
数々と比べてここ10年の曲の出来が悪すぎる為、バンドとしての未来がまるで見えない展開、
つまりはインギがグラハムに言わんとしたところの「俺はレインボーにいたんだァ〜って曲だよね」的、
只の懐古マンセーライブに成り果ててしまっていたことが若干寂しくもありましたが、
そこさえ割り切ってしまえるなら、楽しむ分には最高レベルのライブだったと思います。


<なぜなにメタルマン>



今日のお題は「メロイックサイン」
メタルと言えばメロイックサインと言うぐらい、それ系のアーティストのライブではおなじみに
なった感のあるこのポーズだが、誰が・何故・何時から、やりはじめたのか、ということに
関してはわりと知られていないようだったので、ちょっと興味もって調べてみた。
一説によると、イタリアのとある田舎に昔から伝わっていた
魔除けのポーズを、ロニーがいたく
気に入りライブでやりだしたのが始まり、という説と、キッスのジーン・シモンズがライブ中に
観客の声援に応えようと右手を挙げたものの、指に挟んでいたピックのせいで手が例のポーズの
ような形になり、それを見たARMY(キッス狂信者)が何か勘違いして真似しはじめたのが
いつのまにか広がってしまったという説の二つがあるらしい。もちろん真偽のほどは定かではない。
ちなみに上記の写真はロニー猊下のメロイックサイン、流石に決まってるよね(顔は猿だけど)。


<今日の勘違い君>

 
 

 アンタ、それ、違うから! 
 
(まさかライブ会場にこんな勘違い
甚だしいイキモノが生息してようとは…驚愕!)


<今日の一枚>

 「The Last in Line」 / DIO

レインボーにサバスという、まったく異なるタイプの2バンドを頂点に導く牽引役を果し、
その頂きで至福に浸っていたところをいきなり蹴り落とされて、失意の底に沈んでいたロニーが
「まだだ‥まだ終わらんよ…!」とばかり、自らの意地と怨念をこねくり回して作り上げた執念の
バンド:ディオのセカンド。界隈を代表する不屈のロックアンセム”We Rock"を筆頭に、
疾走感が素晴らしい"I Speed At Night"、ミステリアスなタイトルイメージそのままにロマン
溢れるディオの世界観を象徴するかのような広がりを見せる"Egypt"など、どこを切っても
捨て曲(少ししか)なしのディオ入魂の一作。現デフレパードのヴィヴィアンの切れ味鋭い
ソリッドなギターテクも見逃せません。


<今日の無駄Tシャツ>



#表・裏、ともにこれだけ万遍なく酷いのは初かも。
 ディオの歴代ジャケはセンスの無さで有名なのだけれど、それグッズにも当てはまるみたい。



<セット・リスト>

01:Killing The Dragon
02:Egypt
03:Stargazer
04:Stand Up And Shout
05:〜Ds Solo〜
06:Holy Diver
07:Sunset Superman
08:Don't Talk To The Strangers
09:Man On The Silver Mountain
10:〜Guitar Solo〜
11:Long Live Rock 'n' Roll
12:Shivers
13:Gates Of Babylon
14:Heaven And Hell
15:Rainbow In The Dark
16:The Last In Line

17:We Rock


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