Steve Lukather & Nuno Bettencourt.


<2004年11月9日: 東京ブルーノート>

フュージョンやジャズをベースにした叙情的メロディで、ジャーニとともに80年代の産業ロック
を支え続けたTOTOの大黒柱スティーブ・ルカサーと、90年代前半にファンクメタルという概念
を世間に知らしめた元エクストリームの変態ギタリスト:ヌーノ。
全盛期の年代も違えばその音楽性もまるで接点なしと、どこをどこからどう考えても絡まなさそうな
この両者がジョイント・ライブを行うというニュースを嗅ぎ付け、こら面白いとばかり急遽参加して
みることにしました。さて、会場はどこかな?まさか武道館ってこたないだろ、ならおなじみのAX?
それとも若干小さめのクワトロ?もしくは多少捻って川崎チッタかな?とか思ってたら、ハードロック
という言葉 及び 僕という人格からはとんでもなくかけ離れていると思われるコジャレスポット表参道
に位置する「東京ブルーノート」という場所が今回の会場であるらしく、そんなハコ今までまったく
聞いたこともなかった僕は、行く前からたいそう不安な気分に駆られてしまいました。

で、入ってみて本当に不安になったというわけ。だってそこライブホールどころかまんまお洒落
ちっくなレストランなんだもの、いや確かにステージはあるけどさ?むしろ来客と僕とのステージ
そのものが違いすぎるって話ですよ。だって客層、背広姿のモテ系リーマンとかブランドもので
さりげにキめてるプチセレブ系OLとかが大半ですよ?そんなところへ僕のようなアキバ系ゴミオタ
が混じっちゃった日にゃ場の空気が、体中メタンで充満しきった水死体よりプカプカ浮きまくる
って話ですよ、当人の風貌もそのものズバリだし。わーどーしよどーしようーとオロオロしつつ
周囲を見渡してたら、僕と同じようにロックのそれを期待して髑髏Tとか着てきちゃってとんでも
なく浮きまくりーの凄まじく顔を赤くしてる小娘がそこらを所在なさげにウロウロしてるのを発見
しちゃったりしてね。屈マニ(屈辱マニア)の僕としてはこりゃたまらんって話なわけですよ。
そんなわけでぼくの機嫌はすっかりよくなってしまいましたとさビバ・オタク!どこへ行っても
己の価値観のみで楽しめるオタクは実にビバ!

さてと。

それにしても座って酒飲みながらライブ見れるなんて、なんかブルジョアにでもなった気分ですよと
ウキウキしながらテーブルの上にあったメニューを開きましたところ、早速僕の目玉が飛び出ました。

 ・トマトスープ スミイカと金目鯛のクネル添え ¥3000
 ・ブルーノート東京特製ソーセージ チリコンカルネ添え \2400
 ・和牛ほほ肉の赤ワイン煮 ¥3600

なんだこの大層なお献立とナイスなお値段。ただでさえチケットが一般外タレライブの2割増なのに、
その上まだ搾取する気なのかこのエコノミックアニマルが。そんな僕の心を見通したかのごとくピシっ
とした制服に身を固めたウェイトレスのお姉様が「お客様?何か飲み物は?」といきなりプレッシャー
をかけてきやがった日にゃね、悪いけど水一つ頼む気ないよと返すつもりがついつい見栄をはってしまい
平常時より1オクターブ高い声で「じゃあこのWeekly Special Cocktail なるものを貰おうかな」などと
ホザけちゃうこの口が!この口が!どの口がどの顔でそんなことホザきおるかー!と自らを一喝しつつ、
今頼んだメニューを再確認してみましたところ、

・Grand manier, Lillet, Orange Juice:¥1000
 ルークが愛飲し続けるグランマニエと、ヌーノの繊細さを感じられるリレの風味が、
 オレンジジュースとあいまって、今宵の熱いステージを盛り上げます。


へー、なんかそれっぽいことが書いてあるよ、ま、せっかくのブルジョア気分だし、とりあえず
そのスペシャル・カクテルなるものを楽しんでみようかな?

で、出てきたのがコレ↓



飲む前から既にない。1ミリリットル辺り幾らだよ。

この後も喉の渇きに耐えかねてエビアン頼んだりしたら、大層ご立派なビン入りのそれが出てきて、
たかが水ごときで軽々と夏目(今は野口?)一枚ぶんどられたりしちゃってね。そんなこんなで、
ライブが始まる前から別の次元で大層プリプリと興奮しておりましたところ、後ろの方から突然ワッと
歓声があがったのでそっちの方を振りむいてみたら、ちょうど僕の目の前を御大ルカサーと変態ヌーノ
が通過していくところでして、こりゃなんたるビッグチャンスとばかり、さりげに通路側に手の平を
出してみたら、なんとその貧相な手をルカサーとヌーノが続けてパチン!パチン!ってタッチして
くれたりしちゃってね! わーすごくラッキー!わー気分はすっかりグルーピー!
というわけで、僕は演奏を聞く前から完全に満足しきってしまいました。(ファン失格)

で、肝心の内容の方ですが、こういう場所(レストランにステージ隣接型の少人数形式)故に、
おざなりのライブはやらないだろうと思っていたところ、その予測がいい意味で的中。
原曲が全然わからないくらいインプロヴァイズしまくりのジャムやりまくった上に、当然ルカサー
とヌーノは弾きまくり。そのレベルはこれでもかこれでもか!どころか、それを超越したフリーザ
並の絶対許さないぞー級クラス。もはやライブというよりショー? ここまでギター弾きまくりの
ステージ、正直見たことがありません。段取りがある程度決まってる通常のライブでは絶対ありえ
ない流れなだけに、こら、こういう形式ならではの特典だなーとかなり得した気分になりました。

それにしてもルカサー凄いわ、TOTOってな産業ロックバンドのギタリストなだけに、正直
少しナメてました、いや、もうとんでもないっスわ、ジャーニーのニール・ショーンと似たタイプ
でボカァなんでもこなせますよとばかりジミヘンばりにギュイギュイいわせるわけなんですが、
そこから立ち昇る音のグルーヴ感が凄い(本人は小太りオッサンなくせに)、更には一音一音が実
にクリアで手癖的な部分をほとんど感じさせない上にその音が素晴らしくファンキーときたもんで、
やーもう音が踊る踊る。ヌーノは若干遠慮しがちな部分はあったけど、もともとファンク系は自分
のお家芸なだけにここぞというところではお得意のホッピング・リズムを刻みまくり、これが御大
のかき鳴らすスケール音と絶妙にマッチしあって、実に見事な音の洪水を作り出していました。
時折 演奏を他パートに任せてバーへビール取りに行っちゃったり、いきなり観客テーブルに座りこんで
テーブルの上にある飲み物グビグビ飲んじゃったりする破天荒パフォーマンスも含めて、ありとあらゆる
部分で観客を楽しませようとしてくれたその姿勢にも非常に好感が持てました。

こういうステージと客が距離的に近いだけじゃなく、内面的にも近い感じになれるってショーは
観客がアーティストのキャラ性に媚を売りすぎず、純粋に音楽を楽しむという姿勢を見せる成熟
がなければ成り立たないんじゃないかと、そう思うと同時に、そういうライブを文化的に成熟しき
ってるヨーロッパ圏でなく、この日本でも見れるってな実に喜ばしい限りだと思いました。
なるほど、そのためのブルーノート、その為のハイソ感と高めの値段設定なわけね、至極納得。
通常のライブでは絶対味わえない、抜群のグルーヴ感に酔いしれることができた夜だったと思います。


<今日の一枚>

 Candyman / Steve Lukather

今回のライブで聴いた"Hero With A Thousand Eyes"のリフが抜群にカッコよかったンで、
こらちゃんと聴くしか!とばかりヤフオクで探してきて即効ゲットしちゃいました。
数多のスタジオ活動で培った、何でもアリのアンサンブル的コンテンツは、聞きごたえ十分。
特に5:"Never Walk Alone"で見せるシェンカーばりの泣きギターと、6:"Party In…"
でのヌーノばりのファンク・リズムは鳥肌もの。ちょっとムーディな大人のロックが好きな
人とかにオススメです。



<セット・リスト>

01:Dismemberment

02:Freedom
03:I,m Buzzed
04:Hero With A Thousand Eyes
05:Interlude
06:Led Boots

07:Joy To The World


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