SLIPKNOT.


<2004年10月31日: 幕張メッセ>

最近の若者達はいかなる音楽でもってそのストレスを発散させているのか?
今の若人達が抱える抑圧を解消しうる手段となりうる音楽とはいかなるものなのか?

「今どきのティーン文化を理解する努力をしてみよう!」

そんな確固たるテーマが基となり、今回のスリップノット行きは決定されました。


…ただね、なにせヴォーカルがいきなりこれモンだからね。



他にもこんなのがゴロゴロ ↓



Gガンダムに出てたポルトガル代表もどきはいるわ、あの伝説のカルトゲーム暴れん坊天狗
主人公さんはいるわで、正直、音楽とか文化がどうのこうの言う以前に、僕は一体全体何しに
行くつもりなんだ?という疑問が頭ん中にとめどめなく湧いてきて困ってるところへもってきて、
とどめのコレですわ ↓



まごうことなき只のウニ。
午前8時の山の手ラッシュの中で足もってブン回して阿鼻叫喚の地獄絵図を演出するぐらいしか、
使用用途が思い浮かびません。げんしけん風に言うなら大野さんの胸、いわゆる「今世紀初頭にして
はやくも現れた最大のムダ」と言わざるをえない程の唖然っぷり。

ちなみにメンバー全員集まるとこうなります ↓



これで不安にならなきゃ絶対どうかしてます。

嫌な胸さわぎがおさまらなくなってきたので、少しでも安心感を得ようと、
前日のライブの模様を2chでちょっと調べてみたらこんな情報がゴロゴロ。

 ・最前列付近ホンマにヤバかったね。
 ・目の上から出血してた外人大丈夫だったかな
 ・胸を圧迫されて呼吸困難状態だった
 ・柵の後ろのほうで、酸欠で担ぎ出されたオニィサンも乙。
 ・寝ても耳鳴りが治らないー
 ・アバラの一本に集中してフェンスとのあいだで押されて今も痛いんだけど折れてたらやだなぁ
 ・真ん中らへん空気薄すぎ。
 ・360度暴れまくりの状態。頼むからカップルで来て彼女を守ろうとか愚かな事は止めてくれ
 ・アゴにエルボー 喰らって噛み合わせおかしくなった
 ・序盤、曲間の客が静まるときに泣きながら彼氏のところへ走っていく女見かけた
 ・金髪の女がぶっ倒れてた。本当に意識なく大の字で倒れてた。
 ・女やちょいとヤワイ男は一番前の柵のトコはやめとけ。 おそらく内蔵やられるぞ。
 ・20回くらい突撃くらってきれて突撃してきた奴にカウンターをくらわせまくった
 ・即効モッシュの下敷きになって「タスケテー!」って叫んでたのは僕です。
 ・一緒にきた母親?を最前にまきこんでしまい、母親顔面蒼白で後退…後ろの柵につかまってたw


こんなに「音楽」というものを聴きにいく気がしないライブもはじめてです。
正直、一種の苦行に近いものがあるンじゃないかと思いました。
そんな不安を暗示するかのごとく、京浜幕張駅に降り立った途端、モドキと遭遇。
写真を撮らせてもらおうかどうしようか迷っていた僕の目の前で、そのままタクシーに乗り去る
という前代未聞の荒技を容赦なく駆使して、さっそうとその場を後にしていきました。
むしろその格好のままでタクシーに搭乗するということへの違和感に、何の疑問も感じさせる
ことのなきようなその至極自然な仕草にたいそう感服いたしました。絶対なにかが間違ってる。
運転手さんはさぞかしびっくりされたことでしょう。

で、会場についたらまあいるわいるわ、あたかもこの不安定な社会情勢を象徴しているがごとき
「キレる10代」的な若者様達が。正直これだけでもうお腹一杯だと思いました、よし堪能しきったぞ、
見るものみたしじゃあそろそろ帰ろうかときびすを返しかけた途端、周囲をすっかりそのキレる若者…
どころか、ライブ開幕を待ちきれず「既にキレてる若者」達に取り囲まれていることに気づいてしまい
アギアギしてるうちに、おどろおどろしいオープニング・ソングが流れだして、僕はあっというまに
モミのクチャにされてしまいました。

それにしてもこのオープニング(
Prelude3.0)、無茶苦茶カッコいいうえに凄くムーディじゃん。
これならイケるぜ!とか千春ばりに考えたその僅か3秒後にゃドッドッドッ(ウボー!)ボボギャー!
ってな常軌を逸するノッキングがこれまた想像を絶する大音量で流れ出し、それ聴いた瞬間、周囲の
マゴット達が昇竜拳(大ね)を一斉に放ちはじめ、その容赦なきジェット旋風に巻き込まれた僕自身も
自らの意志に関係なくその場を半強制的にクルクル回される羽目になりました。わー楽しー気分はもう
すっかり輪姦? そんなことを考えつつ、周囲の狂人共(同義語=マゴット)に滅茶苦茶にされつつ、
まさに乱痴気というに相応しい狂気が渦巻いているステージ上をじっと眺めておりましたら、どこぞ
のファンタジー小説に出てきそうな小人系音楽隊よろしくパーカッションを小脇に抱えたメンバーが、
無駄に太鼓を乱れ打ちした上で脈絡なくステージ上を大行進すのを見てしまいそのコミカルさに思わず
苦笑、仕上げにドラム台の上から意味なく転げ落ちたのを目撃してしまい今度は失笑、そのあまりの
やりたい放題っぷりに心の底から驚愕してしまいました。

それにしてもこれは一体全体どういう音楽でしょうか?
デスをベースにラップ・ミクスチャー要素をも含めたエクストリーム・メタルの極点?
それとも暴れたい若者達が暴れる理由のために使うエクスキューズ?
オープニング曲のようなメロ路線で十分ウケを狙えるにもかかわらず、極力そういったNUメタル要素を
避けて、あえてスクリーム&シャウトで勝負するスタイル、いわば各パートが持てる抜群のテクニックと
あまりある才能を全てドブに投げ捨てるかのようなやるせなさと潔さが、ストレートな思いきりの良さに
つながって、この突き動かされるような衝動を生んでいるのでしょうか? ライブ中「これは!?」と
思わせるような得体の知れない何らかのエネルギーをビンビン感じました。バキの勇次郎とBECK・千葉
の言葉を借りるならば「上等な料理にハチミツをぶちまけるがごとき思想」がこの「歌じゃねえ…叫びだ!」
的パッションに繋がっているような気がしてなりません。ほら、あのリーも言っているではありませんか、
「考えるな、感じろ」と。感動できるタイプのそれではないけれど、間違いなくアドレなってエキサイト
できる部類の音楽であることだけは確かだと思いました。

とか考えてたら、いつの間にか僕自身の頭が周囲に負けず劣らず盛り上がってしまっていました(主に
タンコブとかで) よーし、こうなったら僕も特攻しちゃうぞーとばかり前のモッシュビットへ向かって
ジャーンプ!…しようとしたら、同じことしようとしてた隣のヤツがそのヒップアタックを前列の外人に
これ以上ないというくらいきっちり受け止められて完膚なきまでにクラッチ、仕上げにそのまま後ろへ
投げッ放されて床の上をどこまでもゴミのごとく転がっていくのを目撃してしまい、あわててザリガニの
ごとくシャコシャコ後ずさり。これが本当のライク・ア・ローリング・ストーン、ロックの真髄を自らの
体で体感出来て彼もさぞかし満足なことでしょう。うん、同じ目にあうのは死んでも御免、やっぱ己の器
をわきまえて行動することが人としての基本だよね? 
 冷水をかけられたかのごとくあっという間に自分を取り戻し周囲を冷静に観察していましたら、もはや
手のつけようがないくらいカオス化してるとばかり思っていた狂人共の流れが、いつの間にか海流に翻弄
されてるホンマグロのごとく、規則正しくなっている事に気づきました。つまりはヒートしすぎて額から
血ィ流したり酸欠で顔面蒼白になったりと最前線でダメージ負いすぎた者達がしばしの憩いを求めて最後尾
へノロノロ向かう流れがあるのに対して、そのスペースでブッ倒れ休んでいた元負傷兵が復活と同時に新た
なるバーサーカーと化して憤怒の表情で最前線へと突っ込んでいく逆の流れが対となり、その2つの海流が
上手い具合に噛みあって円を描きこのライブ会場をあたかも黒潮化させているのが見てとれまして、こりゃ
なかなか良く出来たスシテムだと思わず感心してしまいました、なるほど、大多数がたったの2〜3曲で
燃え尽きる程全開にトバしまくってるとこういう現象が発生するンだね。ま、分かったところで何の得にも
ならないけど。

後は、ボーカルの人のアオりが極めて特徴的で面白かったり。
「オドレー」「サワゲ−」「ツギノキョクワー」あたりの辿々しい日本語に関しては頑張ってくれてるン
だなって感じで若干微笑ましくもありましたが「ナカユビタテロー」は幾ら何でもやりすぎだと思いました、
誰だこんな日本語教えたの?ついでに「ヒーホー!」と「オレサマオマエマルカジリー」も教えとけ。
あと"The Heretic Anthem"の「5!5!5!」&「6!6!6!」ってなパートをわざと日本語で
ゴー!ゴー!ゴー!って歌うサービスと、客がそれにちゃんと気づいてロック!ロック!ロック!って
きっちり日本語(しかもGOとROCKをかけてるっぽい)で返してる辺りに、両者ともになかなか分かっ
てるな的ワビサビ情緒を感じてしまい、妙に暖かい気分になってしまいました。まあそう感じてる間にも
着実にモッシュ崩れの流れパンチや武蔵ばりのミドルが飛んできて僕は確実にケズられていくわけですが。
圧巻は"Spit It Out"での「オマエラ、スワレー!」と、その後の「Jump The Fuck Out!!」、
3000人もの人間がボーカルの一声とともに一斉に立ち上がって不規則に飛び跳ねまくるその様は、
あたかも集団カンカン躍り(焼けた鉄板の上で裸足になって躍る)させられてるどっかの狂信者の群れを
見ているかのようでありまことに壮観でありました。ついでに日本の将来がとんでもなく不安になったよ。
僕はこの地獄絵図を眺めつつ、昨今より迷走し続けている日本経済の行方をただただ憂うのでありました。


てなわけで今日の一枚。

 
VOL3 / SLIPKNOT

戦慄と言われた伝説のファーストと、凶悪極まりない攻撃性を持つセカンドに比べ、
日和りやがった・シャバくなったとエクストリーム原理主義者から総スカンを食った最新作。
オープニングとエンディングナンバーが示すキャッチーさと"Duality"のようなメロ路線で
独特の世界観への間口を広くしている上で、彼等の昔ながらの持ち味を活かす暴虐系も"Pulse
Of The Maggots
"を中心にきっちり作りこまれているので、 新旧ファンともに楽しめる内容に
なっていると思います。その反面、どっちつかず的中途半端さもなきにしもあらずだけど駄目な
人にはまったく駄目なセカンド(IOWA)よりは、メジャー的な風格が漂うこのアルバムの方が
僕のようなにわかファンにはあっているみたい。


<今日の無駄Tシャツ>



#もっと着れそうなデザインの奴もあったンだけど、周囲の毒気に当てられすぎて
 「こんなところで日和れるかよ!」とばかり、あえて一番ひどいデザインのを選んで購入。
 たぶん再び袖を通すことはないと二度とないと思われ。



<セット・リスト>

01:INTRO 〜Prelude
3.0〜
02:The Blister Exists
03:(SIC)
04:Disasterpiece
05:Three Nil
06:Eyeless
07:Left Behind
08:Eeyore
09:Vermilion
10:Pule Of THe Maggots
11:Iowa
12:The Heretic Anthem
13:Duality
14:Spit It Out

15:(515)
16:People=Shit
17:Wait And Breed
18:Surfacing
19:OUTRO 〜Danger - Keep Away〜


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