Gary Moore.


2010年4月28日: 東京国際フォーラム>

「アイルランドの国宝ギタリスト、21年ぶりの来日」との速報を聞いて以来、
楽しみにしていたこの日が遂にやってまいりました。
まあ、ここ日本で「泣き」と言えばシェンカー派かムーア派かに分かれるわけで、
実のところミー自身は思いきり前者側だったりするのですが、やっぱりレア感という
要素を鑑みれば、今回のこのステージは見逃せないだろと。それが例えハードロック
時代の持ち曲をほぼ封印してのブルース・セットだとしても…
てことで、有楽町は東京国際フォーラムまで、いそいそ行ってまいりました。

で、上述した通り、今回のライブはブルース主体と聞いていたんで、わりとまったりめの
気分で臨んだんですが、これがまあとんでもない勘違い。確かに曲自体はHR路線以降の
アルバムからのものがほとんどだったんですが、中間のソロはもう完全にハードより。
ここまで弾きっ放せたら本当に気持ちいいだろうなっていうくらいの凄まじい弾きっぷりに
加えて、超絶的な「泣きのギター」も全開に次ぐ全開ときたもんで、圧倒されすぎて完全に
目が点になってました。
いやだって、あくまで曲中のワンパートとしての「ソロ」が、完全に主題になっちゃって
いるんだもの、むしろ曲の方がおまけ、みたいな? ここ最近、こんなにクラシカルで
こんなに自己主張の強いソロ聞いたの、インギ以来ですよ。
そしてこの多様な抑揚感にツボを抑えたグルーヴ表現力、それを支えるこの澄んだ音色の
セッティングと、もろもろ含めてまさに「匠」、もしくは「国宝」と言われるだけのことは
確かにあるなと強烈に納得させられました。
てか90年代以降、ブルース路線にどっぷり浸かりこんですっかり大人しくなってしまった
とか巷じゃ言われてましたけど、実際に生で聞いてみたら、ホントとんでもなかったですね。
ブルースといったらクラプトン的な「凄いけど地味」みたいなのをイメージしていたんで、
しばし面食らった後、嬉しい悲鳴をあげちゃいましたね。



そんな中でのここぞというハイライトは、"Too Tired"エンディング際の、どこから
聞いても「ドメタル」なソロと、"Still Got the Blues"・"Parisienne Walkways"での、
かの泣きの本家「シェンカー」をも上回るじゃないかレベルな、とてつもない慟哭フレーズ。
この透き通るような、そしてどこまでも伸びていく珠玉トーンと、そしてこの尋常ならざる
「溜め」ときたら…!実際鳥肌どころの話じゃありませんでした。てか泣くわ、無理。
ギター主題の名曲は数あれど、イントロ一発と単音の伸びでこれ程までに空気を変えられる曲
ってのは、他には「Santana」の"哀愁のヨーロッパ"くらいしか思いつかないかも。

また"The Blues is Alright"を筆頭とする他のブルース曲でも、手拍子はあったし、
サビに合わせてシンガロングしてる集団もいたし、事前に得ていた「ブルースセットだから
ノリはあまり良くないかも」情報はいい意味で裏切られていました。
本来なら落ち着いて聞くノリのブルース曲主体でこれだけ派手にやってくれたんだから、
来年あると噂されてる80年代ハードロック曲主体での来日が実に楽しみですね。

<後日追記>
2011年2月6日、休暇先のスペインにて、心臓発作で急逝されてしまったそうです。
享年58歳。ゲイリーはニューギターを手に、2011年は世界中でショウを行なう計画を
立てていたとのことで、本当にもう残念でなりません。
今頃天国で同郷の先輩かつ盟友の「フィル・ライノット」や「ロリー・ギャラガー」と
思う存分セッションしていることでしょう。R.I.P…


<今日の一枚>

 「Still Got The Blues」 / Gary Moore

ギターヒーロー街道を突っ走った80年代のHR路線から、ブルースへの回帰を
目指した90年発表のソロ8作目。ジョージ・ハリスンにアルバート・キングなど、
いわゆる「名手」と呼ばれるプレイヤーが多数参加していることで話題となったヒット作。
タイトル曲の過剰すぎるくらいに侘び寂びをまとったギターフレーズ、これを聞くたびに
感じる全身への「染み入り方」はホントただごとじゃありません。
音数の多さとロック色の濃さから見るにブルースとしては異色作でしょうが、
それが「聴きやすさ」「分かりやすさ」というメリットに繋がっているので、
ハードロック・ブルースという特殊ジャンルの代表作としてオススメしたい逸品です。


<今日の無駄T>



#フロントに御大のシルエットをデザインというベタベタ系。
 ゲイリーが故人となってしまった今、軽々しく着ることを許されなくなってしまったような気がします。



<セット・リスト>

01:Oh Pretty Woman
02:Bad For You Baby
03:Down The Line
04:Since I Met You Baby
05:Have You Heard
06:All Your Love
07:More Than You'll Ever Know
08:Too Tired
09:Still Got The Blues
10:Walking By Myself

11:The Blues Is Alright

12:Parisienne Walkways


[ MenuNext ]