ANVIL.


2010年4月19日: 渋谷クワトロ>

「ロックスターになりたいんだ!馬鹿な夢だが必ずかなえてやるぜ!」

10代ならまあ許容、20代ならギリでアウト、30代でまだ言ってるようなら
単なるバカ扱いされること鉄板なこのセリフ、これを50代というとてつもない領域で
ブチかましたが故、逆に正真正銘のロックスターたりえてしまった愛すべき大バカ野郎、
「ANVIL」のライブを見に、渋谷はクワトロまで行ってきました。

まあこの人達、20代の頃は普通にロックスターだったと思うんですけどね、
その後の泣かず飛ばずにもまったくめげずにバンド活動を続けてきたことが、
今頃になってこんなキワモノ扱い受けている要因かと思うと「不屈の根性」って
奴もあまりに過ぎると少々問題アリなのかも、とか思ったり。
んーでもそのおかげで映画の題材に取り上げられて再びスポットを浴びることが
出来たわけだしなー、んー、とまあ少々複雑な気分で彼等の登場を待っていたことは
確かでしたね。

で、そんな彼等のライブ、相変わらず演奏は雑だし、トリオ編成なんで音はわりかし
スカスカ気味でしたけど、それを補って余りある「熱さ」って奴がステージ全体から
迸ってましたね。しかもその「熱さ」、方向性が10代の初期衝動的な始原パワーに
溢れまくってるし。てか50代でこの無茶極まる暴走っぷりはホントすごいとしか
いいようがありません、いい意味でまったく「落ち着き感」皆無でした。

見どころをあげるとすればまず冒頭、リップスの挨拶代わりのピックアップに向かって
絶叫パフォーマンスかと。普通ギターに向かっていくら怒鳴ってもあんな拡声器代わりに
なんか絶対ならないのに、あれ一体どういう仕組みになってるんでしょうか?
それから"School Love"、B級感に溢れまくった泥臭さ満点の導入部といい、サビ前の
盛り上げに一役買う絶品フレーズといい、ここの盛り上がりは鉄板でしたね。
でもって"This Is Thirteen"におけるサバス的ドゥーミー感、活躍してた時代背景が
LAメタル創世記だっただけに、割と軽い音作りのバンドに見られがちだけど、実は
結構芯があって重厚なリフとか多いんですよね「ANVIL」は。
で、そこから一気にギアを上げての疾走曲"Mothra"ね、ソロ中のバイブを使ったアホ
すぎて逆に最高なプレイも合わせて、ここが中盤最大のハイライトだったかも。
この動画の3分40秒付近に上記のバイブ奏法あり。個人的にはエディのドリル弾きと
 並んで、大変偉大なる発明だと思っています)

後半は基本中速、ヘヴィ感で圧してくるタイプの曲が多くて、サバスとか好きな人
以外には少々キツい展開が続いちゃったんですけど、でもまあ"Metal On Metal"の
イントロが始まっちゃえばそんな滞った空気は瞬時にして霧散しちゃいますよね、
というわけで、ここのサビ部分は安定で一糸乱れぬ大合唱が入ってました。
ラストにやった"Jackhammer"も良かったですね、うねりのあるリフといい、一気に
加速するドライブ感といい、最後を締めくくるに相応しい曲だったんじゃないかと。

あとは全編を通してリップスの立ち振る舞いが印象的でしたね。
この人、眼をギョロつかせたり寄せたり上げたりと、プレイ中の顔芸が多彩な上に、
基本ニヤニヤ笑顔でホントに楽しそうに演奏するので、見ているこちら側も自然と
その雰囲気に引っ張りこまれちゃうんですよね。ギター変える際シールドの先端を
舐めて痺れてる真似とかしてるし、どこまでも愛嬌に溢れてるオジサンだなあと。

 「誰もが年を取る。それが現実だ。腹は出て顔の肉は垂れ、髪は抜け時間はなくなる…
  だから今やる。今から20年後、30年後、40年後には人生は終わるんだ。やるしかない!」

ここまで人生かけられて、ここまで自由奔放に規格外バカやられて、
男だったら誰もが憧れる人生観を現在進行形でここまで貫き通されたら、
そりゃもう「カッコイイ!」という他、ないでしょう。
レコードセールスでなく、勿論一発チャートでもなく、その生き方でもってして
「ロックスター」であることを証明し続けている稀有なバンドだと思いますね。


<今日の一枚>



「Anvil」の04〜06年の活動を追いかけたドキュメンタリー。
かつて一世を風靡したバンド人気が底辺にまで落ち込んだ後のお話故に、
客が5人、ギャラが支払われない、レコード会社にガン無視くらうなどの
悲惨なエピソード満載なのだけれど、リップスの根明なキャラがそれをギリで
笑えるバランスに持ち上げてくれているので、あまり悲壮感がないところがグー。
勿論、最後の「LOUDPARK06」での一幕など、胸にジーンとくるシーンもあり。
何よりも「ロックスターになりたいんだ!馬鹿な夢だが必ずかなえてやるぜ!」
と言い切るリップスの、そのブレないスタイルに胸を打たれること必至。
50過ぎてコレが言えるならそれはもう「バカな夢」などでは決してなく、
「生き様」とか「人生哲学」の領域まで昇華しきっちゃってると思うんス。


<今日の無駄T>



#歴代のアルバムを全て羅列した背面デザインは、ありがちそうで実は結構レアなアイデア。
 彼等のシンボルとも言うべきフロントの金床とともに、個性汁あふれまくりの一枚じゃないかと。



<セット・リスト>

01:March Of The Crabs
02:666
03:School Love
04:Winged Assassins
05:This Is Thirteen
06:Mothra〜G Solo〜Mothra
07:Flying Blind
08:Thumb Hang
09:White Rhino
10:Mad Dog
11:Forged In Fire
12:Metal On Metal

13:Jackhammer


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