K I S S.


<2004年5月28日: 日本武道館>

本質的にはパープル・ZEP・サバスが作りあげたHR/HMの世界観をきっちり受け継ぎつつも
その模倣だけで終るにとどまらず自らのオリジナリティを強烈にアピールし、1970年後半〜
1980前半にかけてそのパワーで世界を席巻しまくった界隈きっての大御所を3つあげよと言わ
れれば、ソレ系好きの人が口を揃えてあげる名前:クイーン、エアロスミス、そして???

フレディ亡きあと話がどんどん膨らんでもはや伝説の域に達してしまった感のあるクイーンや、
ストーンズの後を継ぐロックシンボルにまで成長してしまったエアロスミスに比べ、自ら時代に
あわせることを拒否し、あえて70年当時の雰囲気とその世界観を頑に守り続けているロック界
のプテラノドンと言えば、そう、もちろんキッスです。去年にひき続いて来日すると聞いた途端、
レッドデーターブックばりの希少種から感じるのと似たような、今観ておかないといつ絶滅しちゃ
うか分からないよ的義務感にかられまくって行ってきちゃいました武道館。

で、今まで観て来たどんなバンドとも異なる、開幕前の異常というか異様な雰囲気を肌に感じて
(だって始まる前から既に泣いてる女の人とかいるンだよ)ビクビクと怖れおののいていたら、
「オーライ、トキオー!」のかけ声とともにステージ全体を包む暗幕がバサッと落ちていきなり
パイロが爆発(10以上もの炎柱がボワーン)、その炎の噴出にシンクロするかのごとく"Love Gun"
のマシンガンリフが雷のように鳴り響き、僕は開始後たったの10秒で魂を抜かれてしまいました
以下、感想。

・演出過剰にもほどがある!と思う暇もなく花火がバンバン炸裂して耳キーン
・あの高ゲタでよくもあそこまで動けるものだと感心したその矢先にジーンがよろけてちょっとニヤリ
・"Deuce"でフロントの3人が揃ってギターをブン回す"おなじみのアクション見てすっかり気分高揚。
・前の1人が椅子の上に乗ろうとして、そのまま花道を転げ落ちてった
・ポールは、自分のカッコいいとこ知っててそれアピールするのが抜群にうまいね
・そのお尻をプリプリゆわすたび、ステージ上にブラジャーとかパンツがバンバン放り投げられました
・それを一枚一枚律儀に拾い集めてマイクスタンドに全部かけてるとこもアホすぎて最高
・ジーンの火吹きや舌をベロベロやりつつの血吐きはあまりにも微笑ましすぎる
・ドリフターズの「うしろ!うしろ!」的ノリとある種同義な、もはや伝統芸の域にまで達した感の
 あるお約束ぶりにゃ、もはや感涙を禁じえませんでした。
・"I Want You"のイントロだけで両隣の女の子がウルウルしはじめるってな、これどういう魔法?
・"I Was Made For Lovin' You"におけるポール宙吊りパフォーマンスでのアリーナの熱狂ぶりが
 (みんなポールの足めがけて一斉に手をのばす)遠めに見て亡者の群れみたいで面白かった
・"Detroit Rock City"をバックにねずみ花火の化け物がグルングルン回って周囲に火花を散らす中、
 ドラムごと吊りあげられてさらに両脇でパイロを爆発させられたエリックは炎熱地獄で干涸びてるンじゃ?

などと心配してるうちにエンディング間近と相成ってたところで最高にドラマチックな名曲
"God Gave Rock And Roll To You II"が流れたときには思わずホロっときちゃいましたよコレが。
更には、何十万枚もの紙吹雪がステージとアリーナに降り注ぐ中、"Rock And Roll All Nite"の大合唱
なんてやられちゃった日にゃ、気分はすっかりグルーピー(死語?)、そらみんなキャーキャー言うわ、
こりゃ仕方ないよ実際。だってベタな方向とはいえあまりにも突き抜けすぎてるもの。

オリジナルメンバーである(現アル中)エースのロケット・ギターや(ギターの先から炎がドーン)
同じくオリメンであるピーター(現ヤク中)が繰りだす民族音楽風ドラムソロが見られなかったのは
少し残念だったけれど、正直今回のライブの要は、ポールとジーンが派手なパフォーマンスで会場を
盛りあげている裏で、きっちりとリズムを作り上げていたトミーとエリックのご両人でもあるとも
思ったので、この布陣はこれで十分にアリかと。

正直キッス全盛時代のアルバムを今聞くと、音はスカスカだわ、メロの古くささは流石に否めないわ
でちょっと苦しい感アリアリだと感じていたにもかかわらず、このステージの充実ぶりと熱狂ぶりは
一体全体どうしたことかと。音楽の独創性やステージにおけるストイックさが何かともてはやされがち
な昨今にあって、ここまで俗を極めたライブを徹底的にやりきってる彼等にはちょっと真剣に感動し
ちゃいました。できることなら明日も行ってみたいなと思ったライブはこれがはじめて。それほど
熱狂的ファンじゃなかったこの僕をして、たった1回のライブでここまで思わせる、そのエンターテイナー
としての実力はやはり折り紙付き。パンク的なスカしたクールさとは逆をいくベタ全開のカッコよさっ
てのも悪くないなあと思った、そんな夜でした。


<今日の3枚>



エアロの魅力が、猥雑かつ抜群にノリが良いリフとあるとするならば、
キッスの魅力は、重厚さの中に同居する最高にポップなメロにあると思うのです。
若干重めなベースラインにのせて繰り出される青臭さ満載のベタベタ青春系ソングの数々、
とりあえず洋楽好きなら一度は転んどけ。
だけどコイツ等のその魅力を真に味わうためには、やっぱライブ盤じゃなきゃ駄目です。
というわけで左からアライヴ1、2、3。始めの2枚は押しも押されぬ超名盤。
この3枚の魅力をネットもん的に語るとするならば、ほとんどのサイトが拡大フォントを使わなく
なったこの御時世において、それを何の後ろめたさも恥ずかしげもなく、むしろ堂々と使っている
ことに対するその答えを全身で味わってみろーとかまあそんな感じ?うんものすごく意味不明。



<セット・リスト>

01:Love Gun
02:Deuce
03:Makin' Love
04:I Love It Loud
05:C'mon And Love Me
06:Cold Gin
07:Got To Choose
08:War Machine
09:Parasite
10:She
11:Love Her All I Can
12:Calling Dr. Love
13:I Want You
14:100,000 Years
15:Gene Solo
16:Unholy
17:Shout It Out Loud
18:I Was Made For Lovin' You
19:Detroit Rock City

20:God Gave Rock And Roll To You II
21:Rock And Roll All Nite


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