THE WHO.


2008年11月16日: さいたまスーパーアリーナ>

「フーは特別なバンドだ。
 バンドの中にリード・ヴォーカリストがいて、リード・ギタリストがいて、
 リード・ベーシストがいて、リード・ドラマーがいる」

そうノエル・ギャラガーに言わしめるほどの卓越した技術と才能、
そしてそれをも上回る唯一無二な個性までを、しかもメンバー全員が持っていたが故、
その融合はシーンの革新へと確実に結びつき、と同時に破滅的ライフスタイルへと直結し、
自らをも終結へ導いたといわれるイギリスの伝説的ロックアイコン「The Who」。
正直、世代がズレすぎてるが故、個人的な思い入れはそれほどなかったんですが、
このバンドこそ今回見逃したら二度と見る機会は訪れないだろうと思いたったが吉日、
さいたま新都心はスーパーアリーナまで急遽行ってまいりました。

…とは言ってもね。ぶっちゃけ主要メンバー全員が還暦を迎えた完全無欠のジジイですからね。
正直なところ直撃世代の遥か後方組であるミーとしては昔すごかったらしき親父達を珍種見物気分で
見に来てやったぜ的なテンションであったからにして、そんなに期待はしていなかったというのが
まあ概ねの本音といったところであり。そんなミーの心境を知ってか知らずか肝心かなめの内容も
"I Can't Explain"による出だしの熱狂を除けばわりかし坦々進行の「はいはいオッサン頑張ってるねー」
的なまあ予定調和的なノリ?むしろそっちのメインディッシュよりもサポートメンバーであるザックの
ドラミングに目を奪われてたりとか。あれ?

そんな物見遊山100%気分が徐々に主役側へと立ち戻り始めたのは"Who Are You"辺りから。
サビの軽快なリズムに合わせて気分よく体を揺らしてたら今度は"Behind Blue Eyes"の泣きメロにて
涙腺を刺激され更にじわじわと来始めたところで、ロジャーのマイク振り回し芸とピートの風車奏法
によるダブルコンボのキレがますます冴えてきた…というかやりすぎて頭にマイクをゴンだったり
ピックを当て損ねて音が飛んでたりなミスまでもが「味」となってますます前のめりにさせられた
"Sister Disco"を経て、いよいよ満を持しての真打が登場、そう"Baba O'Riley"ですよ。
このモンスター級のスケール感、なるほどこりゃマジすごいわと。なるほど?これが「フー」かと。

以降はすっかり「もう好きにしちゃって〜」状態。
"5'15"の哀愁イントロにジーンときたところでギターのヘッドを客席に向けてのマシンガン弾きを
見て子供みたいに喜んだり知的なニュアンスを感じさせるその複雑な展開にムムムっと唸らされたり、
はたまた"Love Reign O'er Me"では「さらば青春の光」によるスクリーンと照明のシンクロ演出に
高揚させられまくったり、と思いきや"My Generation"じゃかの有名なリードベース部分に今は亡き
ジョン・エントウィッスルの面影を重ねて感慨にふけったり…する間も与えないこの「みんな勝手に
やりすぎ感」が逆に最高なジャム展開に見入らされたりと、聞きどころがありすぎてもう何がなんだか。

ちなみにとどめは本編ラストの"無法の世界"。
じわじわとテンションを持ち上げられた末のほぼ頂上部分でタイミングもろドンピシャの絶頂シャウト
くらったらそらゾワっときちゃいますわ。ついでのダメ押しはアンコール冒頭の"Pinball Wizard"。
メチャ後方のスタンド席にもかかわらず超絶ハイなシンガロングが完璧にキマりまくってたこの時の
周囲のノリたるやマジすごいものがあったんじゃないかと。
あ、トレードマークのギター壊しを封印して"Tea and Theatre"でしんみりと締めた括り方はちょっと
「らしく」ないなとも思ったけれどあとで詞の内容調べてみたら妙に納得。

 僕と一緒にお茶を飲まないか 劇場で
 すべてのことをやり終えたんだ そうだよね
 すべての壁を飛び越えたのさ 本能的に
 暗号だって解いたよ とてもうまく
 すべての道をつなげたんだ 切れ目なく
 僕たちはうまくやったよ
 でもひとりが失敗してしまった
 それはとても悲しいことだ
 大きな夢は 脱線してしまったんだ
 僕たちのうち
 ひとりは死に
 ひとりは頭がおかしくなり
 ひとりはこの僕だ
 僕たちみんな 悲しく思っている
 僕たちみんな 悲しく思っている 僕の肩にもたれてもいいよ
 物語はこれで終わりだ ずいぶん寒くなってきたね
 千もの曲が まだくすぶり続けている
 僕たちは ひとつになって演奏したんだ いまや老いてしまったけれど
 僕たちみんな 悲しく思っている
 僕たちみんな 自由の身だ
 このステージから去ってゆく前に
 僕たち二人で お茶を飲まないか
 僕と一緒にお茶を飲まないか 劇場で


あえてまとめるなら「よもやこんなにいいとは…!」の一言に尽きるライブだったと思います。


<今日の一枚>

Who's Next」 / THE WHO

71年リリースの5作目にして、ピ−ト自身のキャリアにおけるベストアルバム。
前作「Tommy」の商業的成功による重圧を見事に跳ねのけてみせた歴史的名盤。
"Baba O'Riley"・"Won't Get Fooled Again"を筆頭に、「WHO」というバンドが持つ、
突き抜けた壮大なスケール感がもっとも味わえる一枚だと思われ。
ミー的には切なさと荒々しさの両面を楽しめる"Behind Blue Eyes"が一番好きかも。


<今日の無駄T>



#これまた自己主張度バツグンのデザイン。
 いくら大物バンドとはいえ、ここまで「どうだー!」でこられると、流石に着用は気がひけるかも。 



<セット・リスト>

01:I Can't Explain
02:The Seeker
03:Anyway, Anyhow, Anywhere
04:Fragments
05:Who Are You
06:Behind Blue Eyes
07:The Relay
08:Sister Disco
09:Baba O'Riley
10:Eminence Front
11:5:15
12:Love Reign O'Er Me
13:My Generation
14:Won't Get Fooled Again

15:Pinball Wizard
16:Amazing Journey / Sparks
17:See Me, Feel Me
18:Listening To You
19:Tea And Theater


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