RADIOHEAD.


2008年10月5日: さいたまスーパーアリーナ>

ここ最近、自分の中でのライブに対する位置づけが変わってきたのを如実に感じ始めていたり。
つまるところその理由が以前は「好きなバンドだから」というのがその大半を占めていたのに対し、
今じゃファンだから足を運ぶというより「そのアーティストを知るため」という色合いがかなり強く
なってきてるのを実感してまして、えと、これたぶんフジとかサマソニとかの夏フェス系で様々な
ジャンルのバンドを見たことによる音楽的横幅の成長の証じゃないかと勝手に思ってるんですけど、
でもその弊害は金銭の浪費という形でしっかり跳ね返ってきてるわけだからあまりいいことばかりでも
ないなァとか思ったり思わなかったり…で、今回はもろそんな位置づけバンドであらせられるところの
エギリスは次世代ロックのカリスマ「Radiohead」のライブを見に、さいたま新都心は遠くてバカでかい
ことで有名なスーパーアリーナまで行ってまいりました。

しかしまあこの規模のホールでは珍しいオールスタンディング仕様だったにもかかわらずアリーナ側の
「人がゴミのようだ」度合ときたらマジ半端なかったですね。正直スタンドで大正解だと思いきや、その
スタンドですら200から500レベルまで全開放だったにもかかわらずそのほとんどがびっしりで、
しかもこれ昨夜公演よりはかなりマシな状況だったらしいですからね。なおかつこの後行われる予定の
国際フォーラム追加2デイズもしっかりソールドアウト済みって… お前らどんだけ人気あるんだと。

というわけで開幕前からそのあまりの人気っぷりに多少気圧され気味なライブとなりましたが、
全体的な所感としては、天井から格子状に垂れ下がった棒状ライトとそれによる柔らかいライティング、
そしてその後方に配置されたスクリーンから流れるVJ映像の派手さ抑え目だけどじわじわと情感を煽る
作りとのコンボが演出する「謙譲の美学」的なベクトルが、彼らのスタイリッシュな曲イメージにぴったり
マッチしていたステージ全体の「魅せ方」がとにもかくにも興味深かったなと。
"Everything In Its Right Place"での、棒ライトに投影された不可思議フォントの文字スクロールも
かなり印象的でしたね。ステージから相当距離のある2F席だったこともあり、トムさんの表情とか
動きとかが全然見えなかった分、この時点で気分はもうすっかりアートショーを見てる感覚に。
またほとんどの曲が壮大で幻想的な曲展開のわりに尺は案外と短めなので、思っていたイメージよりは
かなりとっつきやすかったですね。プログレとポップス両方の長所「深みがあって聞きやすい」という
このゴールデンコンボを「どうだ凄いだろう」臭なしに自然とやってのけてるソツの無さが個人的には
ちょっとスカしすぎじゃね?と思ったりしないでもなかったですが、と同時に真正面から受け止めれば
文句なしにカッコいいんだからそりゃ人気も出ちゃうわなとその要因の根幹をフル体感させられたりも。

そんな中での個人的ハイライトはやっぱり出だし、"Airbag"〜"Just"の流れかな?
特に後者、曲終盤のテンションをとことんまで引っ張り上げたギターフレーズには相当グっときましたね。
あとは"Jigsaw Falling Into Place"にてスティング風の哀愁ムードをふんだんにバラまいたのち、
そのムーディな高揚を"Fake Plastic Trees"で一旦しんみりかつほんのりとさせておいてから、
次曲"Bodysnatchers"で急激に弾けさせた本編ラス前の「→↓↑」な〆かたも良かったですね。
またアンコール以降では"Paranoid Android"終盤におけるギターソロの畳み掛けから、幽玄かつ爽涼なる
"Reckoner"の奇跡的美旋律へともっていった展開がベストだったかなと。これは屋内よりもむしろ野外、
それもフジロックのグリーンみたいな開放感溢れる空間で聴いてみたかったなァって。あの雰囲気にこの
曲調は絶対気持ちいいだろうなァって、そう心底思わせてくれた時間帯でしたね。

この文句つけようのない内容にあえて苦言を呈すなら、絶対やらないと分かっちゃいたけどそれでもね…
まあやっぱり"Cleep"は聴いてみたかったなァと。ほら、オアシスのノエルさんも
 
「トムは“これは困った”とかピアノの前で30分も歌ってやがんだろ。
  俺たちみんなわかってんだよ、ヨークさん。ニュースのことなんか歌うな。
  あいつがどれだけ“僕らはみんな終わりだ”とかのらりくらりしてようが最終的にみんなが
  聴きたいのは“Creep”なんだよ。いい加減に諦めろよ」

とこうおしゃっているじゃないですか。「俺はダメだァ〜」とか歌うのがもうイヤなのはよく分かるけど、
そこんとこ割り切ってサマソニ03以来の封印を解いちゃいましょうよ! …と、そう思っていた時期が
このミーにもありました。が、2回目のアンコール前で「クリィィプ!」「クリィィィィィィィプゥゥ!」と
やたらヒステリックに騒ぐアメ公達を見て、その考えが180度変わったことをここに記しておこうと思います。
うんざりどころかありゃー究極的にウザい、誰だってこれじゃ絶対やるもんかって思うわ。


<今日の一枚>

 「In Rainbows」/ Radiohead

巷じゃグランジ系と呼ばれてるらしいけど、このアルバムだけに限っていうならミーにとっちゃ
ヒーリング系。メチャ感動というわけではないけれど妙に尾を引く、少し時間をおいてムズムズと
聴きなおしたくなるようなタイプの一枚。
ファンかと問われれば実際そうでもないミーのような人間が聴いてさえ「いいわー」と、それも
ジワジワとそう思わせる辺りの奥深さにその人気の秘密を垣間見たような気がしたり。


<今日の無駄T>



#やたらポップ&カラフルなテイストのデザインはともかく、あまりに生地がペラッペラすぎて、
 まるで着る気にならない一枚。これで4000円はちょっと暴利かなーって。(ま、買うけどね)



<セット・リスト>

01:15 Step
02:Airbag
03:Just
04:There There
05:All I Need
06:Pyramid Song
07:Weird Fishes/Arpeggi
08:The Gloaming
09:Myxomatosis
10:Faust Arp
11:Knives Out
12:Nude
13:Optimistic
14:Jigsaw Falling Into Place
15:Idioteque
16:Fake Plastic Trees
17:Bodysnatchers

18:Like Spinning Plates
19:Videotape
20:Paranoid Android
21:Reckoner
22:Everything In Its Right Place

23:Go Slowly
24:My Iron Lung
25:How to Disappear Completely


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