OPETH.


2008年8月27日: 赤坂BLITZ>

プログレメタルという新ジャンルを生み出した「ドリームシアター」に続けとばかり、
その更に先を求めてより過激にもっと濃密に、遂にはデスメタルとプログレとを掛け合わせ
「プログレッシブ・デスメタル」なる奇想天外の新天地を切り開いたスウェーデン出身の
変り種メタル集団「OPETH」のライブを見に、赤坂はBLITZまで行ってきました。
ちなみにここ赤坂BLITZは03年の「GUITAR WARS」以来でなんと5年ぶり。
まあほぼ全面改装が入ってたんで再来というよりはまったく新規の会場に来た気分でしたけど、
赤坂駅と直で繋がっている上にホールの広さもステージレイアウトも渋谷の人気ホール「AX」と
クリソツな辺りがミー的にはかなり好印象でしたね。あ、公式データによるとスタンディングで
1298人(1階1147人・2階151人)収容できる会場だそうです。渋谷O-WEST規模くらいかな。

で、改めて中を見渡してみたらまだ開演20分前だというのに場内は前も後ろもフルフル状態。
平日の水曜公演でこの入りって…あれ?オーペスってこんなに人気あったっけ?北欧メタル圏じゃ
大人気だってことは知ってたけどここ日本でもいつの間にやらこんなに人気を博していたとは…
まあ同系統と言えないでもないプログレメタルの雄ドリムシが日本じゃあれだけ大人気なことを
考えれば決して意外ではないかも知れないけど、でもマニア度のかなり濃い目なデスメタル系の
ジャンルでこの入りとは、ちょっとばかし意表を突かれたのもまた事実でしたね。

で、ほぼ定刻通りに始まったライブの方はというと、苛烈極まる音圧に押し潰され、絶え間ない
音壁に塗りこめられていくような感覚は他のエクストリーム系バンドのそれとわりかし似通った
印象なんですが、オーペスの場合はそこから先に訪れる静寂パートから再び「動」へと繰り返し、
揺り返される展開がやっぱり独特かなって。やり口がモグワイ的とでもいうか、音に圧倒されまくる
時間帯とそれを反芻して噛み締める時間帯、二つの時間軸があるせいで聞き入ってる間も妙に色々
考えさせられるんですよね、その音自体の印象とかそこから連想するイメージとか色々。
そのせい、というわけではないでしょうが普通ならモッシュやダイブ荒れ狂うこの手の系統にしちゃ
基本棒立ちがほとんどだったような…だけど盛り上がってないわけでは全然なくてやっぱしみんな
真剣に聞き入ってるような感じなんですよ。

本編からしてそんなでしたからね、曲間に入るチューニングタイムなんてもうメチャメチャ静か。
この間にちょくちょく挟まれたミカエルの「盛り上がってるかー!」的なテンションまるでなくして、
「今日はレコード買いすぎたよ、金を使いすぎたね」とか「チューニングは退屈?」とか「次の曲は
初めてやるんで自信ないんだよね、間違ったらごめんね」とかまるで友達にでも話しかけてるみたいな
ちょっとのんびりしたMCにはちょくちょくほのぼのさせられましたね。
他にも唐突に白蛇デビカバの真似しだしたり(マイクスタンドをポコチン代わりにおどける例のあれ)
だとか、その似合わない髭がトレードマークな元「Arch Enemy」の敏腕ギタリスト:フレデリックが
チューニングに手間取ってるのを見て「Hurry Up! Hurry Up!」と冗談交じりにせかしたりとか、
"Deliverance"演奏前に"Welcome To The Jungle"のイントロをつま弾いて「この曲の元は実は
これなんだけど先にスラッシュがやっちゃってね」と彼らの音楽性からはかなり意外なる逸話を披露
してくれたりなど、ミカエルの好印象を誘うお茶目な挙動が逐一目立ってました。

ちなみにミーが選んだ今ライブ最大のハイライトは、緊張感を煽るリフが印象的な"Bleak"から、
叙情リフとデストーンとのコントラストがデカダンス的な滅びの美学を感じさせる"Night And
The Silent Water
"へと繋いで、ヘヴィネスという語感を体現するかのごとき序盤の「起」から
静寂をたたえる「承」・結末へ向けての蠢動をイメージさせる「転」を経てその全てが「結」へと
収束していく"Deliverance"へともっていった展開。アックスさんの阿修羅ストロークと合わせて
ここ非常にスリリングかつエキサィティングな時間帯だったんじゃないかなと。
全体を通してはもうちょっと音圧上げてもいいんじゃね?と思ったけどバランス重視で考えたら
これで正解だったのかも。あと長尺の曲が多いバンドなんで若干のダレを懸念していたんですが、
そう感じるか感じないかの絶妙タイミングで新展開に入るので、常に新鮮な気持ちを保って聴いて
いられる点も秀逸だったと思います。


<今日の一枚>

 「Blackwater Park」 / OPETH

プログレ的な知性及び芸術性を感じさせる音の広がりと、デスメタルの持つ圧倒的攻撃色を
合わせ持つそのサウンドはエポックメイキングかつセンセーショナルと評するに十分な程のインパクト。
「Porcupine Tree」の"Steven Wilson"がプロデュースしたバンドということでもプログレ好きには
特に推したいアルバムの一つです。


<今日の無駄T>



#新譜のジャケをそのままプリントした前後のデザインはいまいち面白みにかけるかも。
 その音楽性と同じくTシャツの絵柄でも唯一無二なところをアピってほしかったけど、
 それは流石に求めすぎ?



<セット・リスト>

01:Heir Apparent
02:Master's Apprentices
03:The Baying Of The Hounds
04:Serenity Painted Death
05:To Rid The Disease
06:The Lotus Eater
07:Bleak
08:The Night And The Silent Water
09:Deliverance
10:Demon Of The Fall

11:The Drapery Falls


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