IRON MAIDEN.


2008年2月16日: 幕張メッセ>

サバス、ジューダスに並ぶメタル界の巨人メイデンが、アーリーデイズの第2弾ツアーとして
「戦記ツアー」以来の再来日を果たすと聞き及び、これはすかさずチェキらねばとその第1弾
ツアーの様子を調べていたら、発掘したセトリがなんと…!

 01:Ides Of March
 02:Murders In The Rule Morgue
 03:Another Life
 04:Prowler
 05:The Trooper
 06:Remember Tomorrow
 07:Where Eagles Dare
 08:Run To The Hills
 09:Revelations
 10:Wrath Child
 11:Die With Your Boots ON
 12:Phantom Of The Opera
 13:The Number Of The Beast
 14:Hallowed Be Thy Name
 15:Iron Maiden
 16:Running Free
 17:Drifter
 18:Sanctuary

いや、これ見て漲らないメイデン・ファンはいないんじゃないでしょうか。何故来日がなかったんだ!
ちなみに今ツアーは「Powerslave」「Somewhere In Time」「Seventh Son Of A Seventh Son」の中期
三枚を中心としたセットリストとなるとのこと。メイデンにおけるミーのナンバーワン・フェイバリット
「Piece Of Mind」が入っていないのがたまに傷だけど、それでも新作発表ツアーじゃまず絶対やらない
"Aces High"や"Wasted Years"が聴けるだけでも行く価値ありだろと、幕張はメッセのイベントホール
までサクサク出向いてきました。えーと前回見たのが「戦記」ツアーの時だからおよそ1年半ぶり?

それにしてもメタルという過疎ジャンルのライブを大箱専用のメッセにて、それも万人クラスのオール
スタンディングで観戦というのは想像以上にカタルシスでしたね。なんていうか始まる前から気分はもう
すっかり「まだメタルの火は死んではいなかった…」的なセンチメンタル・テンションに。

が、そんな懐古丸出し気分が心地良かったのも開始4分前まで。
開幕の到来を告げる"Doctor Doctor"が鳴り出した途端、後方から外人勢がもの凄い勢いで突っこんで
きたのを合図にポジションキープのお題目を借りた問答無用の大タックル合戦が始まってしまい、それに
すかさず巻き込まれたミーはメンバー登場前から半死半生の目にあわされる羽目に。
この混沌ハリケーンはその後も着実に被害領域を拡大させつつ更なる猛威を奮い、3曲目"Revelations"
のスローテンポ調にてその勢いが収束化するまでに、そこらへ死屍累々の山を築いたと聞き及びます。
後日、某掲示板に寄せられたその被害の一部詳細を下記に抜粋。

 ・"2 Minutes To Midnight"で倒れこみが続出するあたりで巻き込まれた。
  助けようとする人も巻き込まれたりして、今まで参加した中でも一番危なかった。
 ・失神者もいたぞ。
 ・ブラジル人がとんでもない暴れっぷり。
 ・後ろからは押され、前は耐えようとするからサンドイッチ。
 ・左右は耐性なくて流れまくってさらに危なかったね。
 ・ほんと肋骨折るかと思ったよ。あと外人に首掴まれたw
 ・ウォールオブデスも発生。
 ・ある意味3曲目が"Revelations"で本当に良かった


更なる詳細レポートをあげてくれた人もいたので、心ないモッシュに対する問題提起の一環として
下記にその全てを抜粋してみました。

 実際、左側前方は酷かった。
 俺は地方者なので年間のライブ参加数は多いとは言えないが、それでも去年は二桁に乗ったし
 「Dojo」なんかにも参戦し前方で頑張ってるので、モッシュに慣れていないわけでもないと思う。
 普段は身の危険を感じたことも無いし、モッシュ中でも転倒者を助ける余裕もある。
 だが、今回は自分自身が倒れることになった。
 まず入場前に今回は外人が多いと感じたので、立ち位置は周りを確認して決めた。
 しかし前座が始まったときにはいつの間にか、ブラジル人が押し寄せていた。
 ローレン(前座)中は予想外に盛り上がり激しく押されたが、ここ迄は問題無かったと思う。
 ただブラジル人が拳や肘を使い前をこじ開けようとしていたのは除くが、俺もやられて少し
 苛立っていた。

 最初の問題点は、ローレンが終わってDoctor Doctorが始まる迄の間もそれが途切れなかったのと、
 左右に逃げ場が全く無かったこと。これにより俺を含めこれはヤバイなと思った奴が脱出不可能だった。
 で、チャーチル中に次の問題が起こった。
 Doctor Doctorが始まり当然押し上げは更に強くなったんだけど、チャーチルの途中で急に押し上げに
 ムラが出来てきて前後の波が大きくなり、空間が発生し、左右のうねりも大きくなった。
 (これが局所的なので万人には危険度が認識されない要因)
 そして転倒者発生。あれだけ人口密度が高いので、当然道連れが多数出た。俺も足を掬われる形になり、
 転倒した。熟練のモッシャーでも立ち位置次第ではあるが、あれは耐えられないと思う。
 実際、俺よりは屈強そうな外国人も倒れていたし。

 そして最大の問題は、この時に転倒者を助けようとする動きが少なかった事と転倒者の上に乗って
 でも前に進もうとした、信じられない奴らがいた事。
 そういう奴らの一部が、疲れてきて前からの押し返しに対応出来なくなり最初の空間が出来たんだと
 思う。つまり単に前に出たいだけだったから自分のことのみ考え、スーッと引いた奴らがいたんだろう
 と思う。(故に局所的な発生状況)
 具体的に言うと、ブラジル人とそれに乗じて前を目指しただけの奴ら。
 こいつらがモッシュでは無く、プレスゾーンを作っていたが故の惨事だったのではないかと思う次第。

 俺は転倒後暫くして助けられたので一人を抱え上げたが、上に覆い被された際に左足を痛めていたので、
 二次災害を引き起こしては不味いと思い耐えられなくなる前に後ろの奴らを無理やりこじ開けて撤退した。
 この際も半分より後方まで下がるまでは、綺麗に脱落者を通してくれる奴は少なかった。
 当事者としては、転倒者がスタンディング慣れしていなかったと言うよりは転倒者よりも若干後ろにいた
 層がスタンディング慣れしておらず、更に、前に行きたいが故に、無理な押し上げをしたのが惨事の最大
 の原因ではないかと思う。(勿論、押されてヘロヘロになってた奴もいたのは事実であるが)
 そしてその状況のトリガーになったのはブラジル人であると思う。

 最後に、俺を起こしてくれた白っぽいのシャツを着ていた兄ちゃんはじめ、転倒者の救助活動をしてくれた
 方々に心よりお礼を言いたい。ありがとう。
 また、その姿を目前にしながらも救助を手伝わないどころかまだ前進しようとしていた心無い人たちには
 改心するよう求めたい。あなた方の行動は、あのブラジル人と何ら変わりない粗暴なものです。
 脱落者を通さないのもそれに準じる行為だと思います。これは慣れ云々では有りません。
 良心や常識が備わった集団であれば、あのような惨事は起こり得ないのです。


ダイブとモッシュはいわば夏フェスの華ですが、本来ならばより音に酔いしれる為に行う筈のそれら行為を、
ここ最近単なるバイオレンスと履き違えてるとしか思えないお子様厨房達が続出しているのもまた事実。
そして、その唯一の抑止力となっているのが、非常に残念なことに上記ブラジル人らを筆頭とする外人勢
だったりするから、また余計に始末が悪かったりするんですよね。
結局、暴力にはそれ以上の暴力で対処するしかないというのが現実なんでしょうか?うーん…


そんなこんなで、ようやく落ち着いてライブ鑑賞できるようになったのは"Revelations"のほぼ終わり際。
そこで改めて今ステージのプロダクションをじっくり見てみてほっと一息。
「Powerslave」のピラミッドをセンターに配置しその左右に「Somewhere In Time」と「Seventh Son…」の
エディをあしらった電動式のバックドロップといい、ステージを取り囲むように組まれた城壁型のセットといい、
その思想や哲学、いわばメイデイズムというものが如実に反映されている彼らのステージは今回もやはり圧巻。

と、そこでバックがユニオンジャックを掲げるエディに切り替わって、すかさず始まったのが"Trooper"。
と同時にメイデンが誇る弦楽器チーム4人による必殺フォメーションがキター!ついでにハリスのベースを
マシンガンに見立てた恒例アクションもキター!そして城壁上には英国旗を遮二無二振るブルースの姿!
この心躍らせるリフ、そしてこの熱気と興奮…! ここでブルースお馴染みのあの檄が飛ぶわけですよ、
「Scream For Me〜 Tokyo〜!」続いて万人単位のオーディエンスから沸き起こる、地響きの如き大歓声。
この光景を見た瞬間、オープニングの"Aces High"を見損ねた悔しさなどあっという間に吹き飛びましたね。
これ、これですよ、メイデンのライブはやはりこうでなくちゃ。

そしてこれも毎回思わされてることですが、今回もやっぱりブルースはとんでもなかったですね。
もはや50に手が届こうというあの年齢にして、この高い跳躍力とケタはずれの声量は一体全体?
と小一時間問い詰めたくなる程の凄まじきパフォーマンスの数々を見るにつけ、総合力という点から見るなら
前述のサバスやジューダスにエアロやキッスなどを含めた現役ベテランバンドの中じゃ一番元気なシンガーは
このブルースではないかとの思いをますます強くさせられたりも。
というか元気がありすぎて、ツアー用ジャンボジェットの操縦桿は自ら握っちゃうわ、オジーの嫁さんとは
トラブった末に卵を投げつけられちゃうわ、大昔の話になるけどインギの自尊心を思いっきり損ねた挙句、
最低扱いされちゃうわと、とかく話題に事欠かないオッサンですが、そこも彼の魅力の一つなので今後とも
無限のバイテリティとともにその不変のトラブルメーカーっぷりをも発揮し続けていってほしいナァ…とか
思ったり思わなかったり。

で、これ以降はほぼ全編が見どころといってもいいくらい、メタル的にアゲアゲな構成だったわけですが、
その中でもあえて「ここ!」という場面を選ぶとするなら、"Wasted Years"でのエイドリアン爪弾き出す
高速ソロの小気味良さ、それから"Rime Of The Ancient Mariner"での陰影を内包した壮大さが醸し出す
「静」のグルーヴから次曲"Powerslave"にて一気に「動」へと転じたことによりその場に生じた秀逸の
コントラスト美などが挙げられるかなと。特に後者の方は黒ボロを纏ったり石仮面を被ったりといった
ブルースのお色直し演出に普段ならまずやらない「Powerslave」屈指の大曲を連続でプレイというレア度が
相まってか、年季の入ってそうなファンほど狂喜していましたね。 

またその後においても、一般客から集められた「メイデン・コーラス隊」主導による"Heaven Can Wait"
での「オオオー♪」大合唱が引き起こした混沌っぷりを筆頭に、もはや聞き飽きてる筈なのにやっぱり
今回も感動させられてしまった"Run To The Hills"/"Fear Of The Dark"でのコール&レスポンスや、
"Iron Maiden"の演奏中、袖から出てきた「Somewhere In Time」ジャケのサイボーグ型エディを相手に戦う
ヤニックのギター弾いてないっぷり&その回しっぷりなどなど、これどこで休めばいいんだというくらい、
見どころ・聴きどころのまあ続くこと続くこと。この時点でミーなどはさながら地中に首だけ出して埋められ、
もはや満腹であるにもかかわらず更なる飯を無理やり詰め込まれてるフォアグラ用のガチョウの如しでした。
実際、叫びすぎて喉も枯れ枯れだったし。

そんな今ライブにおける最大のクライマックスはアンコールのラストに演った"Hallowed Be Thy Name"。
ブルースのテンションをわざと抑えたトーンが徐々に開放されていく様が実に印象的な「ロォォォォォド」
のシャウトから、この曲の出来の良さを決定づける必殺フレーズへとユニゾンで繋がっていく流れなどは
まさに鳥肌もの。またソロパートにおけるブルースの「バンザーイ」誘発アクションとその直後に客全員から
返された万歳レスポンスの一体感などにも抜きん出たヴァイブを感じたり。いや元から分かってはいた筈なん
ですけどこの曲、メチャクチャ名曲ですね。ライブで改めて聴いたら、元からの好評価をなお上回る勢いで
更に好きになりましたわ。

ちなみに今ツアーのテーマとなった中期三作以外から選ばれたのは、
 ・Revelations(Piece Of Mind)
 ・The Trooper(Piece Of Mind)
 ・The Number Of The Beast(The Number Of The Beast)
 ・Fear Of The Dark(Fear Of The Dark)
 ・Iron Maiden(Iron Maiden)
 ・Hallowed Be Thy Name(The Number Of The Beast)
の6曲だったわけですが、こうして見てみると「The Number Of The Beast」や「Piece Of Mind」辺りからも
しっかり選曲されているような… だとするなら、例え"Fear Of…"を削ってでも"Flight Of Icarus"は
聴きたかったかも。あ、よくよく見れば「Seventh Son Of…」からの"Evil That Men Do"も抜けてるしー
…とまあ幾つかの不満もあるにはあったもの、ライブ全体から受けた満足度に比べればそれも取るに足らない
ことと思わせてくれるくらいの内容だったと思います。

もし仮にこのアーリーデイズの次があるとしたなら、その選択肢はブルース脱退前の2枚、
「Fear Of The Dark」「No Prayer For The Dying」に復帰直後の「Brave New World」となるんでしょうかね?
「Brave New World」のタイトル曲や"The Wicker Man"が大好きなミーとしては、5年後くらいでもいいので、
是非とも実現してほしいと思いますね。


<今日の一枚>

 「Piece of Mind」 / IRON MAIDEN

83年リリースの4枚目。
キャッチーでメロディアスな疾走曲あり、お得意のツインソロ炸裂曲あり、ハリスがいかにも
作りそうなプログレ風の大作ありと、バラエティにとんだ良作揃いの内容は、名盤揃いな前期
メイデン・ライブラリーの中でも指折りの一枚。
特にもはやライブじゃお馴染みとなった定番曲"Trooper"、勇壮このうえないサビが印象的な
"Flight of Icarus"は必聴ものの1曲かと思われ。なにげにブルースもハリスもこのアルバムが
一番好きみたいです。


<今日の無駄T>



#通常のバンドTよりかなり高めの5000円設定は、流石メタルT界トップのブランド品。
 ていうかレイジにポリス、ハロウィンにこのメイデンと大物連発すぎてマジ金ない財布事情なところへ
 この値段は正直キツいっす。



<セット・リスト>

01:Churchill's Speech 〜 Aces High
02:2 Minutes To Midnight
03:Revelations
04:The Trooper
05:Wasted Years
06:The Number Of The Beast
07:Can I Play With Madness
08:Rime Of The Ancient Mariner
09:Powerslave
10:Heaven Can Wait
11:Run To The Hills
12:Fear Of The Dark
13:Iron Maiden

14:Moonchild
15:The Clairvoyant
16:Hallowed Be Thy Name


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