GAMMA RAY & HELLOWEEN.


2008年2月14日: 新宿厚生年金会館>

カイ・ハンセンとマイケル・ヴァイカート。
80年代初頭、「HELLOWEEN」を通してジャーマンメタルというジャンルの基軸をともに作り上げた
この稀代のメロディメイカー二人が、対立しあった末に別々の道を歩むようになってから早20年。
そんな長い歳月がかつては不可能と思われていた奇跡のカップリングを遂に実現させてくれました。

 「Hellish Rock 08 : HELLOWEEN & GAMMA RAY」

しかも今ツアーのラストじゃ往年ファンは感涙必至な「夢の共演」もあるとのこと。
そりゃ行かないでか!ねえ?メタラー的にこれ行かずして何に行くのか!的なテンションでもって、
新宿は厚生年金会館まで行ってまいりました。
ちなみに東京公演は両日ともソールドアウトとあってかなりの大入り状態。その熱気を「MEGADETH」
のSEが存分に煽ったこともあり、場内の雰囲気は開演前からかなりの暖まり度合いでした。


GAMMA RAY

ガンマのライブじゃもはや定番の2曲にここ最近リリースした「LAND OF THE FREE2」からの曲を
足して構成された前半セットは、座席位置が最前近くの最右端という音響的にダメダメな席であった
ことに加え、カイの普段でさえ「微妙」と言われがちな歌唱力が更に調子悪かったせいもあってか、
曲の輪郭が掴みづらくて、正直ミー的にはかなり微妙な出来でした。

そんなカイの立ち上がりの悪さを補って余りある勢いでカバーしていたのがその脇を固める三人。
その地味な風体に似合わぬアグレッシブかつ超絶技巧なソロを常に安定したレベルで聞かせてくれて
いたヘンヨといい、ヘラクレスのごときムキムキの肉体美から弾きだされる迫力チョッピングの数々で
もって、ダニエルのタイトなドラミングとともにガンマサウンドの中核を担っていたダークといい、
カイばかりが着目されがちなガンマにあって、他のメンバーがもてるミュージシャンシップの高さに
改めて着目させられたり。人の身長分くらいの高さがあるドラムライザーの左右にヘンヨとダークが
仁王立ちしてセンターのカイとともにベタ全開の三点フォメーションを組む様も、メタル的な見映えが
きいてて面白かったですね。

で、個人的にようやく盛り上がってきたのはライブも中盤、"Valley of the Kings"の冒頭にて
カイお馴染みの(最近は出し惜しみしてるとの噂も)「アーライ!」がようやく飛び出した辺りから。
その後もオペラティックな転調による飽きのこない曲展開が魅力的な"Rebellion In Dreamland"や、
ジューダス的な鋼鉄リフと勇壮メロ、そしてそれに絡むシンガロングが存分に高揚感を煽ってくれた
ガンマ流アンセム"Heavy Metal Universe"により、着実にその内面ヴォルテージを上げていくミー。
そこに駄目を押してくれたのが屈指の好バラード"Silence"。
初期クイーンを彷彿とさせるこのドラマティズムな構成美、その情感を確実に助長させる複雑な転調美、
そしてそれら感動という名の大波がゆっくりと引いていく最中に突如訪れる鳥肌ものの荘厳フィナーレ…
正直そのラストを飾る「Carry On〜 Carry On〜♪」の大合唱じゃ感極まりすぎて危うく泣くまで
ありました。ガンマの曲ってこの曲もそうですけど、その展開がクドいくらいに壮大で奥深いものが
多いんで、盛り上がりの底がなかなか見えてこないってところがまた最高なんですよね。

またその後のプレイにおいても、ハロウィンの初期ナンバー"Ride The Sky"にて今の最先端メロスピと
遜色ないどころか下手すりゃそれ以上の高速っぷりにアテられたまくった末、ヘドバンしすぎて頭を
クラクラさせたり、そこから間髪いれずに繋げたガンマ最高傑作"Somewhere Out In Space"にて
テンポの強弱による妙が交互に作り出すヘドバンとクワイヤの各パートにさんざ揺さぶられた挙句、
ラストのカイ絶唱に被さる「Somewhere〜」の大合唱シーンにて、そのドラマティズム溢れる波動に
思わず胸を詰まらせたりと、前半の不調っぷりが嘘のようなキメどころを確実に熟知した貫禄のステージ
運びを前に、やはりガンマのライブはハズレないとの思いをますます強くさせられた70分でした。
次回はラウパー級のデカいハコで見てみたいですね。"Somewhere…"とか絶対感動しちゃいそうだなー

 01:Welcome 〜 Into the Storm
 02:Heaven Can Wait
 03:New World Order
 04:From the Ashes
 05:Valley of the Kings
 06:Rebellion in Dreamland 〜 Heavy Metal Universe
 07:The Silence
 08:Ride The Sky 〜 Somewhere Out In Space

 09:Send Me a Sign


HELLOWEEN

ガンマ終了後、20分程のセットチェンジを経て、いよいよトリのハロウィン登場。
開幕直前のSEを「AC/DC」の"For Those About You"にしてこちらの昂揚を存分に煽ったところで、
曲が終わった瞬間に場内照明を消灯させ、ドラムライザーの横に設置してあった新譜ジャケのポップを
(アンディいわくギャンブルの悪魔)スポットで煌々と照らしだした視覚効果絶大のオープニングにて、
ベタすぎるけどでもやっぱしこういう見せ方はウマいなあ…といきなり頷かされることに。

それにしても入りの1曲目がよもやの"Halloween"とは。
や、久しぶりだわ懐かしいやらでそら嬉しいけど、幾ら何でも壮大すぎて、出だしで使うにゃあまりに
重たすぎるだろうと。この曲最大の見どころであるギターソロの音色にしたってヴァイキーは相変わらず
ピッキョピキョ、このバンドの良心たる超絶技巧派のサシャさんまでもがそれに引っ張られて同じように
ペッキョペキョ?そこへアンディの「え?お前はグレートムタなの?」と突っ込みたくなるような小芝居
がかった動きが、そのカオス感に更なる拍車をかけていくわけですからね。
よもやこの壮大なる長尺曲を、年端のいかない子供も苦笑するレベルの動きとプレイの数々でもって、
ギャグ全開のエンターテイメントへと開幕から昇華せしめてくるとは…! 
なるほど確かにハロウィンにしかこれは出来んわと、出だしから妙なところで納得させられることに。

そんなこんなで、ハロウィンお家芸の本人等も意図せぬ渾身ギャグでなくして音そのものにようやく
引き込まれ始めたのは3曲目の"March Of Time"、サビの「ターイム!マーチ、オブ、ターイム!」で
周囲とともに大合唱しちゃった辺りからでした。はい懐古厨でサーセン。 
その後に続いた新譜からの"As Long As I Fall"も聴き心地よくてかなりグーでした。こういうパッと
聴きで「あ、ちょっといいかも」と思わせる辺りのメロディセンスに、今のハロウィンにおけるアンディの
存在感のデカさというものをまざまざと感じたり。
またド演歌と聴き間違えんばかりの泣きに溢れていた"A Tale That Wasn't Right"や、神秘的かつ
荘厳ムードに包まれていた"King For A 1000 Years"においては、ハロウィンもう1人の好メロディ
メイカーであるヴァイキーのその凄さとともに、カイ脱退後のハロウィンを支える大黒柱としての意地を
垣間見たりも。でもソロを弾く時はピッキョピキョ、それがヴァイキー・クオリティ。

中盤から後半にかけての個人的ハイライトは、新譜からの"The Bells Of The Seven Hells"。
定番ナンバー"Eagle Fly Free"で俄然盛り上がった直後に、出したばかりの新譜曲でそのテンションを
がっちり維持し、なおかつ客からシンガロングをも引っ張り出した辺りにバンドとして熟成しきった地力
というものを感じましたね。ルーレットが回っているように見えた背景の照明効果も大きかったかな。
そしてもう一つの聴きどころ、本編のラストで使われた"Dr. Stein"。
メロ良し・ノリ良し・ソロも良しと、メタル的にヒットする為の全条件を兼ね備えた名曲中の名曲な筈が
あまりにトホホすぎたその歌詞のせいで
 「面白ければいいよ。でもこの歌詞は面白くないジャン!」
 「ふざけてるんじゃないですかって感じ」
と元メガデスのマーティに斬られまくったせいもあってか、ファニーなベクトルの方に名が売れちゃった
という逸話も含めてかなり大好きなんですよね、この曲。
というわけで以下にサビ部分の歌詞を羅列してみる試み。

 Dr.Stein grows funny creatures, let's them run into the night♪
 (博士が創った怪物はやがて大物になる)
 they become great rock musicians, and their time is right〜♪
 (それはやがてロックミュージシャンに!ついに彼らの時代がやってきたぜ!)

この「ロック・ミュージシャン!」のところが妙に頭に残るんですよね、この曲。
だけど冷静にみるとこりゃ確かに言い訳のしようがないくらい酷い… でも、それがハロウィン・クオリティ!

そんなハロウィンらしさ全開の本編シメから、今「Hellish Rock」最大の見せ場、アンコールへ。
"I Can"・"Where The Rain Grows"から"Perfect Gentleman"に"Power"と、アンディ加入以降の
ポップでキャッチーなヒット曲ばかりを息継ぎなしのメドレー形式で放っておいて、その最後に代表曲の
"7鍵守護神"をもってくるというカボチャファンなら誰がどう聞いても盛り上がっちゃう的なズルすぎる
展開から満を持してのトドメが、ガンマのメンバーを乱入させて"Future World"と"I Want Out"をともに
プレイという、まさにジャーマン・メタラー血涙ものの流れ。
あのカイとヴァイキーが同じステージ上にて再びくつわを並べる瞬間を、よもやこの眼に焼き付けることが
できようとはね。たとえそれが予定調和的なものだったとしても、そのシーンが素晴らしく感動的に映ったこと
だけは確かであり、両バンドのファンとしてというより単なる一メタラーとして、その歴史的瞬間に立ち会えた
ことをメタルの神に感謝したいと思った時間帯でした。

 01:Halloween
 02:Final Fortune
 03:March Of Time
 04:As Long As I Fall
 05:A Tale That Wasn't Right
 06:〜 Ds Solo 〜
 07:The King For A 1000 Years
 08:Eagle Fly Free
 09:The Bells Of The Seven Hells
 10:If I Could Fly
 11:Dr. Stein
 
 12:I Can 〜 Where The Rain Grows 〜 Perfect Gentleman 〜 Power 〜 Keeper of The Seven Keys
 
 13:Future World(with Gamma Ray)
 14:I Want Out(with Gamma Ray)


<今日の一枚>

 「Somewhere Out In Space」 / Gamma Ray

現ギターのヘンヨ、ドラムのダニエル加入後の初フルレンスにして通算5枚目の97年作。
この手のジャンルに付きものの疾走系に加えて、ガンマ旧来からの持ち味である大曲指向が紡ぎ出す
転調美とその美メロが醸し出す至高のドラマティズムが更にパワーアップ。これぞカイ・ハンセン節。
良質なパワメロ系バンドは数あれどこの手の曲質を生み出せるのは神光臨中のヴァイキーとガンマのみと
言いきってしまえるぐらいの出来に仕上がっている超良盤かと思われ。


<今日の無駄T>



#前来日時は売り切れで買えなかった念願のガンマTを遂にゲット。
 嬉しい…けれども、微妙に嬉しくない… 内底から沸き上がるこの複雑な感情は一体なに?
 (たぶんまた着れないゴミTが増えたせい)


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