THE POLICE.


2008年2月13日: 東京ドーム>

当時の「ベストヒットUSA」から洋楽にハマっていったという音楽的ルーツ上の都合により、
27年前から今に至るまで長年患っている80年代回帰症候群が今年も早々と発症しやがりました。
今回のターゲットは去年、約23年ぶりの再結成を果たした「The Police」。
ビルボードチャート8週連続ナンバーワン、更にはその年の年間代表曲にも輝いた83年のヒット曲、
「見つめていたい」が当時まだ小学生だったミーに教えてくれた洋楽のカッコ良さは、今に至って
なお鮮明な記憶となりて、この胸の内に留まっていたりします。

が、今再結成ツアーに関しては、誰もが諸手をあげて賞賛というわけではなかったようで、
界隈きっての皮肉屋「ジョン・ライドン」には
「ポリスの再結成? 正直言って、ぶよぶよにふやけた死体でしかないだろ。
 スティンク(悪臭を意味するスティンクとスティングを掛けている)がロクサーヌをキーキー声で
 歌おうとしてんのをまた聴くなんて面白くもなんともない。風船から空気を抜いちまうようなもんだ」

と痛烈な批判を浴びたりもしたようですが、そんなアゲインストも蓋も開けてみれば、

 <2007年:北米コンサートの興収ランキング>
  1:ポリス(約150億円)
  2:ケニー・チェズニー(約81億円)
  3:ジャスティン・ティンバーレイク(約80億円)
  4:セリーヌ・ディオン(約74億円)
  5:ヴァン・ヘイレン(約64億円)
  6:ティム・マッグロウ&フェイス・ヒル(約59億円)
  7:ロッド・スチュワート(約55億円)
  8:ジェネシス(約54億円)
  9:ジョシュ・グローバン(約49億円)
 10:ラスカル・フラッツ(約47億円)

と、一瞬にして払拭。今回の来日公演においても大阪1日に東京連夜とあのキャパ最強のドームを
よもやの三連発、そして東京初日は既にソールドアウトと未だ陰らぬどころか当時をも越える勢いの
人気者っぷりを見せつけた彼等のライブを見に、水道橋は東京ドームまで行ってまいりました。
(チャリティー用に設けられた最前列のペア席は約55万円で落札されたそうです)

そして開幕曲の"Message in a Bottle"が始まるやいなや、顔の皺が増えたことを除けば当時と
ほぼ変わらないルックスのスティングと、英国人らしいインテリジェンスを感じさせる眼鏡が増えた
こと以外はこれまた昔同様の洗練された格好良さを維持し続けるスチュワートの二人を拝謁賜って
思わずジーンとするミー。その様たるやまさに男が歳を取るならこうありたいの見本版。
そして勿論アンディも…ってあれ?…えっとこちらの方は歳相応に普通のちんちくりんお爺ちゃんと
化してました。ついでに曲後半における見せ場のアルペジオも若干妖しかったような… 
いや、でもメチャ愛嬌あったんでそれもまた良し。

と、彼らの元気な姿を見ただけですっかり寛容になってしまったミーをより歓喜させてくれたのが
次曲の"Synchronicity II"。かの名盤「Synchronicity」のジャケ絵を想起させるような動画が
ステージ背後の大ビジョンに映し出されるやいなや、ゴミが吹き荒ぶ嵐の中を御大が熱唱する当時の
PVなんかを思い出したりしちゃって更にジーン。そして"When The World…"辺りではスティングと
アンディが絡んで弾くシーンなんかがあったりしちゃって、こう…なんていうか、もうすっかり感慨も
ひとしおな状態に。意外にアームを多用するアンディのサイケっぽいソロが聴けたのも収穫でしたね。

そして序盤のハイライト、"Don't Stand So Close To Me"。
地味ながらも革新的と当時のロックバンドのドラマー達を驚嘆せしめたコープランドのスティック
捌きが冴える冴える…!特にジャズっぽいリズムからロック調へと切り替える瞬間のシンバル捌きが
あまりに絶妙かつ異常なまでのカッコ良さときたもんで、もう折れたスティックを後ろへポイと無造作に
放り投げる仕草までもがカッコよかったりしちゃうわけですよ。パワーがメチャ凄いわけでもなし、
また手数が凄まじく多いというわけでもないのだけれど、この人の叩きだす音は切れ味という名のセンス、
また色気という名のグルーヴに満ち溢れているんですよね。
そしてそこに絡むスティングの決してクリーンではないのにどこか凛とした清涼さ、またそれと同時に
味わい深い哀愁をも感じさせるトーンが曲全体に与えるこの妖艶ムード…
そういった各メンバーの強烈な個性が、本来であれば分かりにくい領域に位置する筈のポリスの音を、
玄人のみならず多くの人々の心に浸透せしめる唯一無二の波動となっているのではないかと、そんなことを
思ったりも。

中盤における最大の盛り上がりどころは、おそらく"Magic"と"De Do Do Do De Da Da Da"。
特に後者、スティングの「Do Do Do!」という煽りに続いて沸き起こった「Da Da Da!」の地鳴りの
ごとき合唱はドーム規模の会場をもすっぽり覆うくらいの一体感を作り上げていたんじゃないかと。
またそれに絡むアンディの絶妙なギターワークと、大波が急速に引いていくかのごときシャキっとした
まとめ方のカッコ良さにも心の臓を射抜かれました。
そしてこの2曲間に挟んだ"Wrapped Around Your Finger"ではコープランドが獅子奮迅の大活躍。
ドラムライザーとその上の台座に設置された金物コーナーをいったりきたりしつつ、木琴もどきやら
トライアングルっぽい打楽器やらをメインドラムとともに使い分けながら、時にやさしく時には強くと
その強弱の妙を存分に見せつけてくれていました。まあ会場規模のデカさと金物のチャカポコ感にスケールの
ギャップがありすぎて半分ギャグになっているような部分もなきにしも非ずでしたけど、その辺りのご愛嬌も
含めて見ごたえ聞きごたえともに抜群の時間帯だったんじゃないかと。

それにも増して素晴らしかったのが本編ラスト付近を飾った絶頂ゾーン。
印象的なフレーズを繰り返すサビが高揚感を煽る"Can't Stand Losing You"とその中に挿入された
"Reggatta…"が醸しだすそこはかとないパンク臭、それにライティングのストロボ効果も加わって、
熱狂の渦が巻き起こったところから、ステージが赤一色のライトで染まるとともに"Roxanne"へと
繋がっていった流れ、そしてそこでのスティングの熱唱、いやそれをも超えた絶唱があまりに圧巻すぎて…!
曲終了後、誰もいなくなったステージ上のスクリーンにポっと浮き上がった「Ghost In The Machine」の
ジャケを彷彿とさせるデジタル表示も極めて印象的でした。

そんな最高のフィナーレを飾った本編に比べ、"King Of Pain"で御大の声が途切れ途切れだったり
("Roxanne"で燃え尽きた?)、"Every Breath You Take"の曲テンポが若干早まっていたせいで
原曲にあった情緒感が希薄気味になっていたりと、少々「ん?」な感じもあったアンコールでしたが、
「もう1曲やろうと思ったけど、あれ?メンバーが帰っちゃったよ?」みたいなアンディの小芝居で
場を存分に煽ったところからメンバー再登場の大喝采ともに始まった"Next To You"がそんな不満を悠々と
吹き飛ばす勢いで最高すぎたので全て良しと致します。最後の最後に「熟成された今の姿」でなくして
「往年の若々しさ」を垣間見させてくれたってのは嬉しかったなあー

また大バコでのライブにありがちなコーラス隊やバックバンドなどの追加サポートを完全拒否して、
往年と同じく3ピースの演奏のみで勝負したというその潔さにも好感が持てたライブでしたね。


<今日の一枚>

 「Outlandos d'Amour」 / The Police

かのモッズ・ファーザーことポール・ウェラーとほぼ同じ時期に、ポストパンクが向かうべき
道筋を明確に照らしだしていた当時の最重要アルバムの一つ。
そのミュージシャン・シップの高さを示す圧倒的演奏力、ロンドンパンクの発火が始まった
当時の背景を示す荒々しい曲調、その中にポツポツと混じる初期衝動的な若々しさとはおおよそ
無縁の洗練されたメロディと、どこをとってもこれがデビュー作とはまるで思えないほどの完成度。
希代の名盤「Synchronicity」の次に聴くなら、これがオススメ。


<今日の無駄T>



#昔のツアーの様子を形どった、わりかし無難な感じのデザイン。
 とりあえず記念で買ってみはみたものの、これも着る機会ないだろうなー



<セット・リスト>

01:Message in a Bottle
02:Synchronicity II
03:Walking On The Moon
04:Voices Inside My Head 〜 When The World Is Running Down
05:Don't Stand So Close To Me
06:Driven To Tears
07:Hole In My Life
08:Every Little Thing She Does Is Magic
09:Wrapped Around Your Finger
10:De Do Do Do De Da Da Da
11:Invisible Sun
12:Walking in Your Footstep
13:Can't Stand Losing You 〜 Reggatta De Blanc 〜 Can't Stand Losing You
14:Roxanne

15:King Of Pain
16:So Lonely
17:Every Breath You Take

19:Next To You


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