Rage Against The Machine.


2008年2月10日: 幕張メッセ>

「バンド名のマシーンとは500年もの間、抑圧された人びとの血を搾ってきた
 システムのことをさしているんだ」 〜ザック・デ・ラ・ロッチャ〜


フロントマンのザックとギタリストのトム、この両者の背景に根ざす政治色の濃さが、グランジに
ラップを加えたミクスチャーロックの先進的要素と絶妙マッチしたことによる、動機付けの強さと
新機軸サウンドの魅力にて当時の若人に絶大な支持を得ていたバンド「Rage Against the Machine」。
その激動の経歴をまとめたものが以下。

 ・1990年、アメリカはロサンゼルスにて結成。

 ・1991年、エピック・アソシエイテッドと契約。
  かのマドンナが設立したレーベルからの誘いもあったそうだが、
  トムはこれを「俺達はマテリアル・ガールと関わるつもりはない」の一言で断る。

 ・1992年、「RAGE AGAINST THE MACHINE」リリース。
  アメリカ大使館前でガソリンをかぶり、南ベトナム政権に抗議する意味で焼身自殺した僧侶の
  写真をジャケットに使用。
  
 ・メキシコのゲリラ組織「サパティスタ民族解放軍」のマーク[★]を、バンドのシンボルに使用。

 ・1993年、ロックフェス「ロラパルーザ」のフィラデルフィア公演にて、
  全裸、口をガムテープで塞いだ上、メンバーそれぞれが胸に「P」「M」「R」「C」のシールを
  貼りつけた状態でステージに登場。歌詞検閲機関(PMRC)に対する無言の抗議として15分間
  その場に立ち尽くした末、何もしないままステージを去った。(後日代替公演)
  後日、「これが検閲というものさ。聴きたいものも聴けない世の中。それを演奏しないことで
  表現したってわけさ」とトムはコメント。

 ・同「ロラパルーザ」参加時、自身のマーチャンダイズが高額販売されていたことを非難。
  この騒動は公演キャンセルにまで発展。

 ・1994年、政治活動家ペルティエ氏の冤罪を主張した内容で、"Freedom"のプロモビデオを作成。

 ・1996年のテレビ出演時、共和党大統領候補のスティーヴ・フォーブス氏に配慮した局側から
  星条旗を逆さに吊るす演出は控えてくれと言われて怒髪天、1曲演奏した後、破り捨てた星条旗を
  氏の控え室に放り込んで、その場を立ち去る。

 ・同年、セカンド「Evil Empire」リリース。

 ・1997年、衣料メーカー「Guess?」に対して、工場の労働環境改善を求めて不買運動を起こす。
  デモ行進に参加したトムは逮捕される。

 ・同年、クリントン大統領の就任式当日にLAのとあるラジオ局を占拠して、アメリカの政治の
  現状を批判するゲリラライブを行う。

 ・1999年、「The Battle of Los Angeles」リリース。全米チャートで初登場1位を獲得。

 ・同年、「ウッドストック99」出演時、ステージ上で星条旗を燃やす。

 ・同年、スイスのジュネーブで開かれた「国連国際人権委員会」にて、政治運動家ジャマール氏
  の減刑運動やその権利に関する演説をザックが行う。

 ・同年、ニューヨーク証券取引所前にて、"Sleep Now In The Fire"のプロモビデオ撮影を
  マイケル・ムーア監督とともにゲリラ敢行。

 ・2000年、大統領選挙及びその候補を揶揄する内容で、「Testify」のプロモビデオを作成。

 ・同年、ザックが突然の脱退表明し、それを契機にバンドは解散。


そして2007年4月、トム・モレロの
 「レイジが姿を消していた7年の間に、この国が右翼化したのは単なる偶然なのか? 
  俺はそう思わないね」
 「今こそブッシュ政権を一挙に打倒できるか、やってみるべき時だと俺たちは気付いた。
  その役目を十分果たしたいと思ってる」

というコメントとともに7年ぶりの完全復活。
直後、コーチェラ・フェスティバルにて再結成ライブを行い、全世界にその存在感を再アピールした
彼等がこの度8年ぶりの来日を果たすと聞き及び、過去にトムがとあるインタビューで語っていた
 「俺がアメリカの中南米政策のことを学んだのは、テレビのニュース番組のプロパガンダなんか
  じゃない。クラッシュの「サンディニスタ」からだった。俺たちのアルバムを聴いたキッズの
  中にもそういう連中がきっといるはずさ。撒いた種からは必ず芽が出てくる。そう信じている」
との発言に当時から同じくクラッシュを愛する者としてのシンパシーをビシバシ感じていたミーは、
今来日を当然抑えておかねばならない最重要ライブの一つと位置づけ、その鬼気迫るテンションから
発散されるであろう渇望エナジーを全身に浴びるべく、幕張メッセのイベントホールまで意気揚々と
向かったのでありました。

…の筈が、入り口にて持ち物チェックをしていたセキュリティさんにいきなりビビらされるミー。
いや、だってそれやってんの普段の日本人スタッフじゃなくて明らかに本場の本職さん、それもNBAの
バスケ選手ばりな背高ノッポさんにNFLのフットボーラーばりな筋肉ムキムキさんと無駄にバリエーション
豊かなんですもん。そら怖いですって。
後で調べたところによると大阪では、会場後方で火柱を上げ始めた阿呆とかブロック間を区切る2メートル
幅の通路を気合一閃飛び越えた大馬鹿者とかいたそうで、この外人セキュリティの配置はそれらやんちゃ君達
に抗する対応策だったのかも。

 ← 背高ノッポさんのセキュリティ

そんな怖い怖いセキュリティの視線を見事かいくぐって禁制品のペットボトルを持込むことに成功、
(レイジのライブで水分補給なしって無理に決まってる!)ほっと一息ついた後は恒例の好ポジション
探しに早速いそしむことに。ちなみにミーのチケは会場の後ろ半分を占めるBブロック側でしたが、
その前のAブロック側などはまだ開幕20分前だというのになんかもう遠目から見ても大変なことに…
例えステージとの距離を犠牲にしてでもあの中に入るなら正直帰った方が全然マシというくらい、
おしくら饅頭で阿鼻叫喚が死屍累々な様相を呈しておりました。みんなようやるわー

 ← 待ち時間中に発見

開幕前からそんな状態でしたからね。ステージの幕がいよいよ落ちて黒字に赤の
マークを染め抜いた
お馴染みのバックドロップがお目見えした時の場内の白熱っぷりときたら、もうおして知るべしですよ。
そこに加えて1曲目がいきなり"Guerilla Radio"ときた日にゃ、前日と同じく"Testify"で開幕と
ばかり思っていたファン達の意表を突きまくった挙句の喜悦が爆発しちゃって、その興奮度合は更に倍。
その勢いをザックの煽動的かつ煽情的なライムが更に後押しするわけですからね。その波動は曲最後の
アジテーション「All〜!Hell〜!Can,t!Stop Us Now!」をきっかけに前方のみならずその間を区切る
通路を通り越して後方ブロックまでをも侵食し、なお加速。皆が暴れ疲れたせいでようやく鎮まってきた
中盤辺りまでは、正直ライブを見るどころか、混沌と動乱の渦に溺れすぎてただただ生き残るのに必死な
状態でした。

というわけで多少落ち着いてステージを見れるようになったのは"Bullet in the Head"辺りから。
サビ熱唱とともに笑顔でステージのあちこちを飛び跳ねまくるザック、ギザカッコヨス!(しょこたん風)
ザックにゃどこか「怖い」イメージを持っていたんですが、存外に楽しそうなこの姿にはいい意味で
その先入観を裏切られましたね。
そしてこの曲辺りからますますとんでもなくなっていくトムのギタープレイがまた…!
順手・逆手と素早くフィンガリングを切り替えてのメタル的な曲芸ソロから、"Bulls On Parade"に
おける「キュキュキュキュ」的なスクラッチ音に至るまで、ホントお前どっから音だしてんの?という
驚愕プレイが次から次へと炸裂。や、これが噂のブラッシング&スイッチング奏法かと。
「音を弾いている」というより「音で遊んでいる」感が前面に押し出されたそのプレイの数々は特に
流麗でもなければ情感的でもないんですけど、そういったベクトルとはまったくの別次元で格別に
「刺激的」かつ「挑発的」であり、ここ最近見たライブの中じゃマシュー(MUSE)のカオスパッドによる
エフェクトと並ぶくらい衝撃的でした。またこの攻撃的ヴァイブがザックから発散される煽動的な吸引力と
見事にマッチしている辺りに、レイジをレイジたらしめている主要因を感じたりも。

そしてこの直後、いよいよ今ライブにおけるミーの中での最大ハイライトが発動。
この「テ・テ・テ…」という特徴的イントロ、そこから一転して躍動しまくる攻撃的リフ、そして曲中
うねりまくるフレーズとこのスイッチング炸裂しまくりのソロは…! 遂に"Know Your Enemy"キター!
お話にならないほど興奮しまくった挙句に勢いだけで前方へと特攻したら、瞬時にしてモッシュの大海内に
取り込まれた末、即座にピンボールの玉化しちゃったのには自分でもちょっとびっくりしました。
もちろん最後は周囲とともに喉も枯れよと「All of which are! American dreams!」の大合唱ですよ。
そのドサクサに紛れて、トムがやってたやる気のない回し蹴りみたいなアクションを真似しようとした
どこぞの腐れ外人に側頭部を蹴られたのも今となってはいい思い出です(後日、コブをさすりながら)。

そしてまた今ライブを通して殊更に強く再実感したことが、どの曲も導入及びリフがちゃんとメタル的に
カッコよいということ、加えて普段は体内に眠っている筈の本能的な衝動を喚起せしめる何かがその
グルーヴには確実に存在するということであり、これら2点の特徴を最も顕著に示していたのがラストの
"Killing In The Name"だったんじゃないかなと。普段はモッシュ嫌いな筈のミーまでをも狂乱のテコンドー
魔人へと変化させしめるその影響力たるや半端ないものがありました。
後で聞いたところによると同刻、かの「浅野忠信」も前方で単なる一ダイバーと化していたといいます。
や、かつて発散されるエネルギー量ナンバーワンといわれたそのパワーを十二分に体感させてくれた、
非常に内容の濃いライブだったと思います。


<今日の一枚>

 「Rage Against The Machine」 / Rage Against The Machine

メタル、ハードロック、ラップ、ハードコアと様々なジャンルの音を組み合わせた上で、
その上に「ファンク」という名の隠し味を加え、いわゆるミクスチャー系と呼ばれる分野を
確立させた一枚。怒りと渇望に満ち満ちたザックの攻撃的ライム、もはやこれ以上の進化は
難しいと思われていたギターソロに劇的な変革をもたらしたトムのスイッチング奏法、
そしてなによりも初期衝動とともに迸る「信念」という名のエネルギーこそがこのアルバムを
歴史的名盤たらしめている要因かと。


<今日の無駄T>



#本命の
マーク入りが既に売れ切れていたので「Battle of Los Angeles」デザインのこれを購入。
 うーん、レイジのTシャツってよほどココ!って時じゃないと、着にくいような気がするなあ。



<セット・リスト>

01:Guerilla Radio
02:People of the Sun
03:Bombtrack
04:Testify
05:Vietnow
06:Bullet in the Head
07:Down Rodeo
08:Bulls On Parade
09:Tire Me
10:Know Your Enemy
11:Sleep Now in the Fire
12:War Within A Breath

13:Freedom 〜 Killing In The Name


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