Dark Tranquillity & The Haunted.


2008年1月18日: 渋谷O−EAST>

メロデスの創始者「At THe Gates」の遺伝子を汲むデスラッシュの雄「The Haunted」、
「In Flames」「Arch Enemy」に並ぶ北欧メロディック・デスの伝道者「Dark Tranquillity」、
メロデス/スラッシュ界隈の中堅どころとしては、かなり上位に位置するこの両バンドによる
「Dark Tranquillity VS The Haunted 〜Double Titans Tour In Japan 2008〜」と銘うった
ダブルヘッドライナー形式の来日ツアーを見に、渋谷はもはやお馴染みとなりすぎたEAST
まで行ってまいりました。


The Haunted

本日の先行は「The Haunted」から。
(Wヘッドライナーという形を尊重して、他公演ではダートラが先だったみたいです)

通常のデス系より2割増しで攻撃的と思われるリフの暴風雨の中に時折混ざる叙情フレーズ。
ここだけ見れば「なるほど、これがデスラッシュか!」と頷けないでもなかったんですが、
そこに被さるピーターのスキンヘッド&マッチョな強面キャラと獣臭漂う咆哮シャウトが、
それら要素を容赦なくハードコアに書き換えてしまうというちゃぶ台返しがいかんなく炸裂
しまくってるもんで、ひたすらその勢いに翻弄されまくってる感が強くて、正直なにがなんだか…
というのが序盤の印象でした。

ただ剛柔併せ持った多様性の中にビっと通った一本芯が感じられる辺り、確かに「骨ある」
音作りではあったなと。まあ調和性という面から見ればその欠片も見つからなかったんですけど、
そんなカオス感をも合わせて楽しめる領域にまで、そのパワーが達していることもまた否めない
事実だったかなと。
特に序盤の"99"における「Black Flag」ばりの突貫力や、ハードコアのりなのにメロディック
というギャップ的な面白さが新鮮だった"In Vein"と"D.O.A"、そして"All Against All"
の一撃必殺的な極上リフに、スレイヤー級の厭世的疾走感が周囲をみな狂騒へと追いやった
"Bury Your Dead"には、その「らしさ」に喚起された躍動感というものが一貫して漲って
ましたね。曲前のところどころに"South Of Heaven"や"Raining Blood"のリフを組みこむお遊びも
好印象、客層的にもかなり受けてましたし。

もちろん最大のハイライトはラストの"Hate Song"。
「Hate!Hate!Hate!」の大合唱が沸き起こる中、いかにもな風貌といわずもがなの肉体を誇る
方々が中指突き立てつつ次から次へとクラウドサーフに興じていく様は、単純な盛り上がりという
意味ではたぶんこの日一番だったんじゃないかと思います。

そいやバンドの中核を担うビョーラー兄弟は、あの伝説的バンド「At The Gates」のメンバーと
して5月に再来日(対バンはなんと「MAYHEM」!)するそうなので、そちらにも期待大ですね。

 01:The Premonition〜The Flood
 02:The Medication
 03:99
 04:Abysmal
 05:In Vein
 06:D.O.A
 07:The Drowning
 08:Trespass
 09:The Reflection
 10:All Against All
 11:The Guilt Trip
 12:No Compromise
 13:Fall Out
 14:The Prosecution
 15:Dark Intentions〜Bury Your Dead

 16:Hate Song


Dark Tranquillity

30分程のセットチェンジンを経て、本日のトリ「Dark Tranquillity」登場。
その出だしから音圧的な弱さをいきなり感じてしまったので、ホーンテッドの圧倒的攻撃力
を思う存分体感してしまった後ではさすがに歩が悪いかと、ジャイアンに苛められた直後の
のび太君を見るような目でそのステージを暫し暖かく見守ること約10分、
3曲めの"Treason Wall"にて、彼等ならではの長所である荘厳美及び情感美を見せつけて、
それまでの劣勢を見事に跳ね除けてくれたこの時間帯が序盤のハイライトだったんじゃないかと。
そのタイミングに呼応するかのごとく観客の中から自然と沸き起こった「オ〜オオオ〜」の
ハモり合唱もその興奮を助長するに十分すぎる援軍だったし、それを眺めるミカエルの本当に
嬉しそうな笑顔もまた実に印象的でした。

ところが中盤の"Hedon"辺りから音圧がいい感じに上がってきたかと思いきや、今度はギター
がその中に埋もれてしまうという弊害も同時に発生してしまい… これメロデス系のライブに
おいては実際よくありがちな問題なんすけど、その荘厳美を作り出している繊細なギターフレーズ
が聞こえないと、音の輪郭がよく分からず原曲の再現性も薄めになってしまって、聴いている
ほうとしては大変苦しい状況に追いやられてしまうわけでして。
更にツインギターを担う二人の、ギタリストという花形なわりにゃ過度に控えめかつ妙に自信
なさげなその挙動も手伝って(出だしの扇風機ヘッドバッキングとか良かったんだけどその後が
どうにも…)、かなりもっさりとした感じの時間帯が続いてしまっていました。

そのウィークポイントをありあまる勢いでカバーしていたのがVo担当のミカエル。
かつて世界一美しいデス声と言われたその片鱗を要所要所にて存分に発揮、バッキングに埋もれ
やすいといわれるデス系ヴォーカル特有の弱点をまるで感じさせない見事なトーンに、恍惚と
した表情を浮かべながら駄々をこねる女の子のごとくクネクネ踊る摩訶不思議ダンスでもって、
常にフロントマンらしい自己主張を放ってくれていました。またベースの人のステージング的な
アピール面をも含めた頑張りっぷりにもキラリと光るものを感じました。

特筆すべき終盤の見どころは、クリーンからデス声への切り替えとその逆のコントラスト美が
秀逸だった"Misery's Crown"と"Therein"、その間においた"Punish My Heaven"における
盛り上がりの凄さ(但しノリを別にして演奏としてみた場合、音の輪郭が潰れ気味だった上に
かなりアレンジ入ってたんで正直苦しくはあった)、それから本編ラストに向けて一気に畳み
掛けた"My Negation"〜"Final Resistance"辺りの勢いに満ち満ちた疾走美だったかなと。

あえて難をあげるならハッと目が醒めるようなリフの作りは相変わらず極上なのに、曲全体と
して見た場合の印象度合がそれと比べて妙にアンバランスなのが少し気になりましたね。
まあ、この突き抜けきれなさ加減が醸し出すB級感もまた彼等の魅力の一つではあるので、
このままでもアリっちゃアリだとは思うんですけどね。

 01:Terminus
 02:The Lesser Faith
 03:The Treason Wall
 04:The Wonders At Your Feet
 05:Lost to Apathy
 06:Hedon
 07:Inside The Particle Storm
 08:Focus Shift
 09:Misery's Crown
 10:Punish My Heaven
 11:Therein
 12:My Negation
 13:Final Resistance

 14:Lethe
 15:The New Build


<今日の一枚>

 「ONE KILL WONDER」 / The Haunted

メタル的なリフの格好良さ、ハードコア的なアグレッション、パンク的な疾走感という
3つの長所を前面に押し出しつつ、なお北欧メロデス系テイスト漂うメロディの良さをも
「程よく」内包させたデスラッシャー垂涎ものの絶品。骨太いメタルを聴きたいなら是非!


<今日の無駄T>



#最新アルバム「THE DEAD EYE」のジャケをまんまプリントという芸の無さはともかく、
 ハードコア感剥き出しの骨ボキボキなテイストは結構好み。


[ MenuNext ]