PRIMAL FEAR & LABYRINTH.


2007年12月3日: 渋谷O−EAST>

イタリア発は、メロパワ系の叙情派メタルバンド「LABYRINTH」、
ドイツ出身、ゴリっゴリの正統派メタルバンド「PRIMAL FEAR」、
先駆者の後追い感が色濃いこともあってか、どこかB級感が漂うこの二つのバンドが、
ここ最近流行りのダブルヘッドライナー形式で来日するというので、渋谷はお馴染みの
EASTまで、当日券でチョイと見にいってきました。


<LABYRINTH>

オールバックの髪型に黒シャツ&赤ネクタイというもろ伊達男な格好で飛び出してきた
フロントマンのロベルトを見て開幕早々まず微苦笑、続けてオペラ歌手もかくやという
裏声連発のパフォーマンスに今度は噴飯と、メタルという枠を突き抜けて存外にやりたい
放題なロベルトの天真爛漫っぷりにまずは目を奪われることに。むしろ突きぬけすぎて、
お笑いレベルにまで至っちゃってたのはご愛嬌? むろん兼務パートのベースにおいても
なかなかの芸達者っぷりを発揮、さすがは知る人ぞ知るイタリアの伝説的プログレバンド
「New Trolls」にも参加しているだけあって職人系のプレイヤーさんだなと。

じゃ全体の所感の方はというと、ブラジルと北欧の中間的ヴァイブを感じさせる、陽気で
ウェットなパワメロ色自体は確かに悪かなかったんですけど、どこかパンチ不足というか、
メタル的なスパイス不足… つまりはラプソやドラフォ的な「やっちゃった」的びっくり感
が希薄なせいか悪い意味でまとまりすぎている感じがして、ヴィジュアル面から引っ張られた
その勢い程にはノっていけなかったというのが前半の印象でした。強弱やテンポが似通った
曲調の楽曲が続いたせいもあってか、疾走系の"Lady Lost In Time"がくるまでは周囲の
ノリの方もいまいちなように思えたし。

そんな閉塞感漂う内容を打破するきっかけになってくれたのが、中盤で突然飛び入りして
きたハゲの人。カタコトで「スピードノアルキョク、ヤリタイ」とか抜かすやいなや怒涛の
勢いで「MOTORHEAD」の"Over Kill"をやりだすというその脈絡のなさ全開の行為に一同
ポカーンですっかり毒気を抜かれたところへ、今度はバリバリのスラッシュを演奏しだすという
無茶振りもいいところな力技を繰り出して、場内の停滞感を強引に一掃したかと思いきや、
そのまま嵐のように去っていかれちゃいましたが、何者だったんでしょうか一体…!
<補足情報>
後で調べたところによると「イタリアのSODOM」との異名をとる「BULLDOZER」なるバンドに
在籍していたシンガーさんだそうで、今は「LABYRINTH」のマネージャーもどきをなさって
いるとのこと。今回の飛び入りもファンの間じゃもはや恒例となっているみたいで、一部じゃ
相当ウザがられているらしいとも。まあ毎回アレじゃ嫌われもするか…(笑)

謎のハゲの人により場の空気が入れかわって以降の後半戦、その頭に疾走感及び壮大感を
感じさせる初期ナンバーの"Moonlight"を持ってきて、いい流れのノリをきっちり引き継いだ
ところで、"L.Y.A.F.H."に"Lost"という非常にアクの強い個性的ナンバーを連続で繰り出し、
その熱気を更に密度の濃いものへと錬成させていった辺りの展開はなかなかだったものの、
その「掴み」がちょっと遅すぎた感は否めず、結局のところ新譜の出来の良さをアピールした
以外は、今一歩及ばずといった最初の印象を覆すまでには至らないステージ内容だったように
思えちゃいましたね。音楽的指向性をメロスピ側へと傾けた同バンドによる別プロジェクト
「Amazing Maze」の曲もどうせなら聴きたかったなァとも。

 01:Crossroads
 02:Livin' In A Maze
 03:Deserter
 04:Out Of Control
 05:Lady Lost In Time
 06:Mother Earth
 07:Overkill(Motorhead)
 08:Minkions(Bulldozer)
 09:Moonlight
 10:L.Y.A.F.H.
 11:Lost
 12:Slave To The Night
 13:What???
 14:There Is A Way


<PRIMAL FEAR>

で、20分ぐらいのセットチェンジを経て今度は「PRIMAL FEAR」の登場と相成ったわけですが、
いや、これ凄かったです。開口一番からひたすら圧倒されまくりなステージでした。

まず何が凄いかってとにかくラルフのシャウトが!可聴領域ギリなんじゃないかと思うような
高音が全盛期のロブばりに次から次へと伸びてくる上、そのルックスもダサさ爆発を通り越して
カッコよさ炸裂のファイヤーパターン入りラバーズボン着装、それに加えスキンヘッド左側に
刺青という完全ロブ仕様を見せられた日にゃ、こりゃ盛り上がらない方がおかしいってもんで、
いや、先程の「LABYRINTH」しかり、このラルフしかり、この日はシンガーの当たり日でしたね。

そんなラルフの強烈スクリームにいきなり度肝抜かれたのを皮切りに、ジューダス色全開な初曲の
"Sign Of Fear"からゴリゴリのメタルアンセム"Nuclear Fire"に至るまで、序盤からひたすら
圧倒されまくるミー。その硬質感溢れるリフに強力無比なフック、そしてジャーマン臭沸き立つ
メロディックなサビはどこを切っても「ド」メタルそのものでした。いやあ、久々に心の底から
「ヘヴィメタル聴いてるわー」って気分にさせられたインパクト絶大の序盤でしたね。

そのパフォーマンスにおいても、ギタリスト二人にリーダー格のマットと前述のラルフを含めた
4人がズラっと狭いステージ上に横並ぶ姿は壮観の一言、頻繁にポジションチェンジを繰り返して
「動きあるステージ」を積極的に演出しようとしている点も好印象。演奏面においてはランディの
パワー押しなドラミングとその派手なプレイをより光らせていたジャグリングの数々に一際目を
奪われました。あんなにスティック回しが上手なドラマーってジューダスのスコット以来かも。
そして何よりもマットの笑顔がね。ジャーマンメタルきっての好メロディメイカーとして、その
文化を長年にわたり支え続けてきた功労者の1人でありながら、何故か商業的成功には恵まれず、
常にメタルの裏街道を流離っているようなイメージが強かった、そんな屈指の苦労人である彼が
終始見せていた満面の笑顔、それがささやかながらも艶やかな遅咲きの華を今ようやく開かせた
風にも見えて、なんとも印象的に映りましたね。

ちなみにこの日の最大ハイライトは、ミドルテンポ調の哀愁メロが荘厳かつ雄大なるスケール感を
味わせてくれた"Fighting The Darkness"〜"Final Embrace"の流れと、本編の締めに使われた
「メタルの中のメタル」曲"Metal Is Forever"のソロパートで巻き起こった、血沸き拳踊る
「オ〜オ〜オ〜」の大合唱、そしてラストの"Chainbreaker"から放たれた全身を塗り固められる
ような硬質感と、そこに至るまでのダレの無さも含め「ここまでいいバンドだったとは…!」と
ミーを思いきり目からウロコ気分にさせてくれた全体を通してのテンションの高さだったかなと。

いや、正統派メタルのカッコよさというものを骨の髄から遺伝子の核に染み渡るまで堪能しまくれた
80分だったと思います。

 01:Sign Of Fear
 02:Rollercoaster
 03:Running In The Dust
 04:Nuclear Fire
 05:Face The Emptiness
 06:Seven Seals
 07:Angel In Black
 08:Iron Fist In A Velvet Glove
 09:New Religion
 10:Battalions Of Hate
 11:Demons & Angels
 12:Fighting The Darkness
 13:Final Embrace
 14:朧月夜
 15:Metal Is Forever

 15:Blood On Your Hands
 16:Chainbreaker


<今日の一枚>

 「New Religion」 / Primal Fear

うなりをあげるリフ、メロディアスなサビ、それを際立たせるラルフの高音シャウト。
ホント気持ちいいくらいのド直球メタルゆえ、その正当性がかえって「メタル冬の時代」な
今の風潮と合わせて仇となってしまっている感も否めなくもないんだけど… 
でも生粋のメタラーにとっちゃそんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!はいメッタッル〜
実際、「こんなにいいバンドとは思わなかった」と目からウロコが落ちること請け合いの
超力作なので、メタルもんは死んでも聴くべし。


<今日の無駄T>



#これまた実にメタル系らしいバンドT。
 どことなく中2的な感性を匂わせる背面の十字架マークがあまりにコジャレすぎると思いました。


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