THRASH DOMINATION 07.


2007年9月22日: 川崎クラブチッタ

さあ、今年もこの季節がやってまいりました。
夏フェスの疲れも癒えはじめ、と同時に気温も涼しくなって、暴れまわるには絶好の条件が
揃ったところで、9月のスラッシュ専門フェス「スラッシュ・ドミネーション」、10月の
「ラウドパーク」と、身も心もメタル一色に染まる「秋」がいよいよやってまいりましたよ。

というわけでまずは「スラッシュ・ドミネーション」です。
なにせ過去のメンツ、コレモンですからね。

 ・04年:「FLOTSAM & JETSAM」「DEATH ANGEL」「OVERKILL」(「TESTAMENT」)
 ・05年:「KREATOR」「LAAZ ROCKIT」「DESTRACTION」「TESTAMENT」
 ・06年:「DRAGONLORD」「ONSLAUGHT]」「SODOM」「DEATH ANGEL」(「VENOM」)

スラッシャーなら垂涎ものの豪華ライナップと、隔年ごとのキャンセル祭りが特徴なスラドミ、
今年07のメンツは以下でした。

 ・07年:「NEVERMORE」「ANNIHILATOR」「DESTRUCTION」「NUCLER ASSAULT」

超大物とまではいかないけれども、中堅どころの重鎮はこれでもかというぐらい揃えまくって
くれた今年のこのメンツを見て喜ばないメタルもんはいないでしょう。
いやあチッタさん、今年もきっちりいい仕事してくれましたね。
ともすれば、呼びやすくて人気も高いメロデス勢に頼ってしまいそうな危険性をも併せもって
いるイベなだけに、その主旨をきっちり「分かってる」その姿勢と、軸をズラさない選択眼は、
毎年のことながら賞賛に値するかなと。


NEVERMORE

まずオープニングアクトを飾ったのは「NEVERMORE」。
マイケル・アモットいわく「ねじれたメロディの金塊」と評されるインテリジェントなメロと、
それに絡むジェフ・ルーミスの超絶ギターワークが売りのエクストリーム・メタル系バンド。
海外での評価は軒並み高いもののここ日本での人気はいまいちなせいか、今回が初来日となる
そうで、これは一応、一昨年の「LAAZ ROCKIT」や昨年の「ONSLAUGHT」に続くサプライズ枠と
いうことなんですかね。

でもってプレイの方はというと、いや、噂に違わぬ凄腕っぷりでした。
フレット上を往復する指が蜘蛛の足を思わせるジェフの人間離れしたテクのみならず、
もう1人のギタリストも彼に劣らぬ鬼弾きプレイヤーなもんだから、まあツイン・パートの
映えること映えること。
そしてバッキングがそこまで超速なのに曲全体から受ける印象はむしろスローというこの
矛盾っぷり、速さと遅さの融合というこの独自性を生み出すリフの多用さ、メロの複雑さと
そしてゴシック的な歌唱法が、彼等の音をここまでオリジナルたらしめている理由にして、
一番面白さを感じさせてくれた部分かなと。

一番のハイライトはおそらく新譜からの"Born"。
ラストの"Enemies Of Reality"も良かったけれど、疾走感と荘厳さの同居とサビにおける
急激な曲調変化が演出する展開の面白さは、この日演奏されたセットの中でも抜けていたん
じゃないかなと。

あえて難をあげるなら、バンド全体から発散されるオーラがいまいち薄かったような。
特にVoのウォーレンですね。インパクト抜群なその声に比べ、佇まいとアクションがあまりに
地味すぎたような。やっぱしシンガーはバンド一番の華だし、もう少し元気よくはっちゃけて
もらいたかったかも。

 01:Medicated Nation
 02:I, Voyager
 03:The River Dragon Has Come
 04:Inside Four Walls
 05:My Acid Words
 06:Guitar Solo〜Final Product
 07:Born
 08:Narcosynthesis
 09:This Godless Endeavor
 10:Enemies Of Reality


ANNIHILATOR

2番手に登場したのは、カナダの技巧派スラッシャー「ANNIHILATOR」。
何気に今日一番のお目当てでした。

"Operation Annihilation"にてパンテラ風の中速ヘヴィリフを名刺代わりにまずガツン、
その流れを汲んだまま速度を一段引き上げた"King Of The Kill"により場内を大爆発させた後、
ルーミスを飛び入りさせての"Clown Parade"を繰り出して、その流れを更に増幅させたまま、
曲後半のシンガロングへと繋げた出だしの展開はメチャ最高でした。

が、次曲でジェフのギターがトラブって演奏中断… まあ、これはライブじゃよく見られる
アクシデントの一つなんで仕方ないとは思うんですが、その間を繋ぐためのMCが一切なし
ってのは、ちょっといただけなかったんじゃないかと。ジェフのワンマン体制であるが故の
弊害がもろに露呈しちゃった感じですかね。その後、5分程の中断を経てどうにか再開した
ものの、今度はチューニング狂いのせいで、ずっと半音ズレてる"Fun Palace"を聞かされる
という顛末。このトラブルに次ぐトラブルにより、せっかく温まってた場内の空気もすっかり
冷めちゃうし。

後日ジェフをして「あのライブは最悪だった」と言わしめたほど散々だった中盤でしたが、
ドラマティズム溢れる展開力と強弱のコントラスト美が秀逸な"Never,Never Land"により
場を再びじわじわと高揚させたところで、貫通力及び破壊力に満ち満ちた"W.T.Y.D."を投入、
そこから"Alison Hell"とたたみかけて、アナイア最大の武器たる複雑怪奇・奇想天外なリフ
をいかんなく炸裂させまくった後半の流れは、序盤に勝るとも劣らない出来具合。なによりも
中盤の失点を取り返すんだという気概がプレイの中に感じられたのが良かったですね。
その最中に時折見られたジェフのすっごく人懐っこい犬みたいな笑顔も印象的でした。

 01:Operation Annihilation
 02:King Of The Kill
 03:Clown Parade
 04:Set The World On Fire
 05:The Fun Palace
 06:Never,Never Land
 07:W.T.Y.D.
 08:Reflesh The Demon
 09:Crystal Ann
 09:Alison Hell


DESTRUCTION

三番手に出てきたのはドイツ・スラッシュ三羽烏の一角を占める「DESTRUCTION」。
スラッシュ一筋20年、「これしかできない、これしかやらない」を合言葉に、
世界一ヘドバンするのに適しているといっても過言ではない究極的リフと圧倒的ビートを
どこまでも刻み続ける、偉大なるスラッシュ馬鹿トリオ。
それまでの若干陽気じみた空気を登場と同時に「陰」へと変えてしまったのみならず、
オープニング"Curse The Gods"の出だしのリフ一発で、場内を自分たちの世界へと
完全に染めあげてしまった途方もない瞬発力は「流石」を越えて「凄まじい」の一言。

そのオーラの主発生源たるシュミーアのカリスマ性がこれまた半端ないときたもんで、
スラっとしたその長身をゆすらせつつ、彼独特の金切りヴォイスをはりあげながら、
ステージ上に等間隔で並べてある3本のマイクを歌い歩くその姿は素晴らしく見映えきいて
ました。表情が分からないくらいの薄暗い赤に照明を統一してアングラ的な不穏さを煽って
いた演出もシュミーアのキャラにぴったりマッチしていてなかなかいい感じでしたね。
それだけ畏怖堂々たるキャラ作りしてるわりに今流行の「オッパッピ!」コールとかやって
くれちゃうそのギャップ感と合わせて好感もてまくりでした。

そんなシュミーアとは対照的に小男・なで肩・チョビ髭とそのルックス自体はイケてない
ものの、手元から放たれる強烈無比なリフと「背骨をヤスリでゴリゴリ削られているかの
ごとき」不協和音ソロがそれを補ってあまりあるレベルでイケすぎてたマイクのプレイも
もちろん格別。2年前はフロント二人のパワーに圧され気味で目立ってなかったマークの
ドラムも今回はちゃんと前に出る感じで暴走しまくってたし。いや、スラドミ05の時も
思いましたけど、トリオ編成でこのパワーはやっぱ凄すぎますわ。

個人的ハイライトは"Nailed To The Cross"での、今日の客ちょっと分かりすぎじゃね?
って思うくらい息がピッタリだったサビ大合唱と、そこから代表曲の"Mad Butcher"へと
繋げてその熱狂密度を更に濃くしたところで、とどめとばかり放たれた"Eternal Ban"。
もうイントロ聞いただけで即発狂してヘドバンしまくりですよ。
で、頭振りすぎて意識が朦朧としてきたところでふと前方を見れば、狂乱モッシュの中を
縦横無尽に暴れ泳いでたマーシー崩れのバンダナ野郎がやりすぎのツケくらって周囲から
フルボッコ、更に後ろを顧みれば地肌に皮の迷彩ベストを直接着用、肩からランボーよろしく
弾丸たすきをブラさげエアギターしまくってる小デブと、それにドン引いて彼の周囲から
次々といなくなっていく人々、その結果、彼を中心点に出来上がった半径1mの絶対領域
という、カオスにも程があるすぎる光景を目の当たりにしてしまい、ミーは「DESTRUCTION」
というそのバンド名が示す通りの破壊力を、その身をもって知ることになるのでした。

 01:Curse The Gods
 02:Naild To The Cross
 03:Mad Butcher
 04:Eternal Ban
 05:Life Without Sense
 06:The Defiance Will Remain
 07:Death Trap
 08:Cracked Brain
 09:Thrash Till Death
 10:〜 Drum Solo 〜
 11:Invisible Force
 12:Soul Collector
 13:Total Desaster
 14:Bestial Invasion
 15:Butcher Strikes Back


NUCLEAR ASSAULT

そしてトリを飾るは、スラッシュにハードコアをミックスさせたクロスオーヴァーシーンの
先駆者、「NUCLEAR ASSAULT」。初期「Anthrax」に「S.O.D.」、そして「Brutal Truth」と、
常にメタル路地裏シーンのフロンティア的役割を担ってきたダン・リルカを加えての、ほぼ
オリジナル構成で10年ぶりの再結成とあって、その注目度はかなり高かったですね。

が、ステージが明るいままメンバーがゾロゾロ登場という、開始の予兆を何一つ感じさせない
立ち上がりから、単なるローディの1人だろうと信じて疑わなかった小太りさんがいきなり
歌いだしたのを見てまず唖然とさせられる羽目に。いや、だってそんぐらい普通のオッサン… 
あ、髪型は普通じゃないわ、出川ちっくであからさまにヘン…なんだけど極端にオーラ皆無な
小男さんなもんだから、どこの誰がどうみても10割方ローディって思うだろうという。

…と思いきや、そのキャラは普通どころか超特濃でした。
まず予想外の声量に驚嘆、今日見たシンガーの中じゃ一番凄かったんじゃないでしょうか。
あの小さな体でよくもここまで…!っていうくらい、ハリのある、いい声してましたね。
そしてその声量のみならず酒量の方も半端ないときたもんで、曲が終わるたびドラム台の隅
に行ってそこに置いてあるビールをゴクゴク、そのうち取りに行くのが面倒くさくなったか
ローディにビール缶持たせて、自分はギター弾きつつ歌いながらの両手塞がり状態で息継ぎ
のたびにまたゴクゴクという破天荒っぷりを、これでもかっていうくらい見せつけてくれて
いました。

あと曲間にちょくちょく入れてたMCがすごく特徴的。ただでさえ早口で甲高い声なのに、
その上まくしたてるような喋りでしかも内容が長いもんだから、本気でなに言ってるのか
意味不明なんですよね。しかも後で調べたところによるとその内容そのものが本当に意味
不明だったというオチまでついてたみたいで(下記に抜粋)、

 ・フランス語、ドイツ語、ロシア語などの色々な言葉で挨拶した後に、
  「あれ、ここは違う国でしたっけ?失礼しました」みたいな微妙ボケ。
  最後に「コンニチワ!ああそうか、ここは日本か」という、いま三ボケ。

 ・日本に来てからあるコリアンと知り合ったんだよ。俺はちょっと韓国語が出来るから
  話してみたら向こうは「おー、お前韓国語しゃべれるのか」って、友達になってな。
  それで一緒に韓国料理屋に行ってキムチを食べてたらその店に日本人のカップルが来て、
  男の方が「キムチ食べたことある?」と聞いて、女の方が「食べたことない」と返した。
  そうしたら男が「おいしいよ、食べてみなよ!」って、すごくデカい塊を彼女に食わせて、
  女があまりの辛さにヒーッと言って吐き出そうとしているのを見て大爆笑さ。
  それを見て俺はこう言ったね。「あいつ、今晩ヤラせてもらえないだろうな」(1人笑う)

って、これを早口言葉の英語で言われてもなー、しかも分かったところであまり面白くないし。
といったわけで場はそこそこ盛り上がっているのに、曲間MCの都度、その熱量が冷めてしまう
という本末転倒現象を目の当たりにしてしまうことに。

あとチューニングによる待ちがやたら多かったり、ドラムのハイハットが壊れて交換してたりと、
全体的なステージ運びがタルタルしいせいで、いまいち盛り上がりきれてないようにも見えました。
ベースの人も短パンにサンダルという、いま一つやる気の感じられない格好だったし。
ジョン・コネリー(Vo)の空回りながらも見ていてそれなりに面白い奇行と、1人ミュージシャン
らしいオーラを放っていたダン・リルカの格好よさがせめてもの救いだったかなと。

ちなみにジョン、今は現役の大学教授(歴史を教えてるらしい)らしく、今回は有給をつかって
日本に来たそうで、そういった諸事情を考えると今後の「NUCLEAR ASSAULT」来日は厳しいかもと
一部関係者が話しているのを聞きました。でもこの内容で最後というのはちょっと寂しいなー

 01:Rise From The Ashes
 02:Brainwashed
 03:F#
 04:Game Over
 05:Butt Fuck
 06:Justice
 07:Sin
 08:Betrayal
 09:Third World Genocide
 10:Price Of Freedom
 11:F(Wake Up)
 12:When Freedom Dies
 13:Trail Of Tears
 14:Stranded In Hell
 15:Radiation Sickness
 16:After The Holocaust
 17:My America 〜 Hang The Pope 〜 Lesbians

 18:Technology
 19:Critical Mas

というわけで、最後だけ尻つぼみ気味になってしまったものの、総合的には十分楽しめた今年の
スラドミでした。むしろここまで充実してると来年のメンツの方が心配になってきちゃったりも。
ちなみに来年の希望ですが、「OVERKILL」や「VOIVOD」、そして今度こその「VENOM」辺りでお願い
したいと思います。チッタさん、是非ともよろしくー


<今日の無駄T>



#¥2500という破格的値段設定に釣られて、思わず購入しちゃったものの、後で見直してみて、
 ちょっと後悔することになりました。いくらなんでも、このバックプリントはないわー


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