FINLAND FEST 2007.


2007年5月25日: 恵比寿リキッドルーム

「FINNISH MUSIC DAYS IN TOKYO 2005」「FINLAND MUSIC DAYS 2006」と
二年連続開催された北欧フィンランドが世界に向けて発信する音楽イベント。
フィンランド・メタルシーンを代表する2アーティストとフィンランド・ロックシーン
を牽引する2アーティストが出演!2007年の第三回は「FINLAND FEST 2007」として
の開催が決定!
<出演>
 STRATOVARIUS / APOCALYPTICA / VON HERTZEN BROTHERS / THE CRASH


という紹介文を見て、「フィンランド・オンリー」というコンセプトにかなり興味
沸いてきたんで、とりあえず過去の出演者を調べてみたわけですよ。そしたら、

 ■FINNISH MUSIC DAYS IN TOKYO 2005
  5/12:恵比寿LIQUIDROOM 〜METAL SHOWCASE〜
   ・ENSIFERUM
   ・Kiuas
   ・TO/DIE/FOR
   ・TWILIGHTNING
  5/14:原宿アストロホール 〜ROCK SHOWCASE〜
   ・BOOMHAUER
   ・TIGERBOMBS
   ・DEEP INSIGHT
   ・THE 69 EYES

 ■FINLAND MUSIC DAYS 2006
  5/24:恵比寿LIQUIDROOM 〜METAL SHOWCASE〜
   ・PAIN CONFESSOR
   ・AMORAL
   ・NORTHER
  5/25:duo MUSIC EXCHANGE 〜POP/ROCK SHOWCASE〜
   ・SLOW
   ・DON JOHNSON BIG BAND
   ・MUMMYPOWDER
   ・PRIVATE LINE

と、ほぼ半分は知らない名前なものの、よくよく見てみりゃ「TWILIGHTNING」だとか、
「THE 69 EYES」だとか、畑違いだけど「PRIVATE LINE」とか、それなりに有望株が出演
してるんですよね。しかも今年はトリが北欧メロスピ系メタルの先駆者としてその名を
馳せた「STRATOVARIUS」な上に、チェロ4台による連奏とドラムのみでメタル表現すると
いう驚愕のクラシック集団「APOCALYPTICA」も参戦とのことで、こら面白そうだとばかり
急遽参戦してきました。


THE CRASH

オープニングアクトを務めたのはフィンランド第3の都市トゥルク出身の「THE CRASH」。
公式サイト紹介文によるとデビュー以降発売した3枚のアルバムは全てゴールドディスク、
2000人規模のツアーは全会場でソールドアウトになるなど既に本国ではかなり高い人気を
確立しているバンドとのことで、かなりワクテカしながら待ってたんですが、出だしで耳に
飛びこんできた音がメタルとはほぼ180度ベクトルを違える完全無欠なポップ臭、それも
ストーンローゼスを彷彿とさせるようなUK色濃いサウンドだったもんでいきなりズッコける羽目に。

とはいえ去年辺りよりなんとなくモテっぽいからという勘違いもはなただしい初期衝動のみで
プライマルなどのUK勢を聞き漁ったら実はわりかし気に入ってしまったという瓢箪から駒的な
背景もあったせいか、案外と素直にそのシャボン玉が弾けるようなリリカルサウンドを受け入れる
ことが出来ましたね。

音楽的にはローゼスやオアシスなどの直球UKから影響を受けているように感じましたが、
途中、ウェラーの、それもスタカン時代のソウルフルなコジャレっぽさを匂わせるような部分が
あったりで、その辺り鑑みると実はわりかし引き出しの多いバンドなのかなとも思ったり。
夏フェスとかでふと耳にしたらわりとハマりそうな音だとも感じましたね。
ただあの「THE CLASH」と一字違いというそのネーミングだけは先入観・イメージ戦略の両方から
考えても著しく損しているんじゃないかと思うんで早急に変えた方が吉かなと。


VON HERTZEN BROTHERS

2番目がこれまた名前を聞いたことのないバンドだったんですが、公式サイト紹介によると、
地元じゃフィンランド版グラミー賞なるものにノミネートされ、更にはゴールド・ディスクまで
獲得するという、なかなかの地力と人気を誇るバンドだそうで、その売りはクイーンやフロイド
を彷彿させる、メロディァスでドラマチックなサウンドとのこと。

で、実際に聞いてみたその印象ですが、あえて他のバンドに例えるならラッシュを粗雑にした
ような…うーん、野趣溢れるプログレロックといった感じ?どこか乱暴でいてしっかりと厚み
のあるリフをジャムっぽい進行で次から次へと繋ぎあわせて大曲に仕立て上げるそのやり方は、
確かに面白い切り口だなと感じました。

めぼしい鉱脈は既に掘りつくされた感のある古来からのスタイルを独自のやり方で新たに開拓
していこうというそのフロンティア精神が、相当の長身な上にワイルド臭満点というフロント三人
のルックスと相まって音的にもステージング的にもかなり見映え効いてたんで、こりゃ抑えとこうと
終了後CD買いにはしったらそもそも売ってませんでした。うーん、日本でプロモしていこうという
気があるなら。もうちっと売り込みに貪欲な姿勢を見えてほしいかなと。


APOCALYPTICA

さあ、いよいよ本日最大のお目当てバンドの登場です。
メタリカの楽曲をチェロ4重奏でカヴァーしたことが話題となり、実際にメタリカの前座として
起用されたことまであるという異色のクラシック・ロック・ユニット「アポカリプティカ」。

何せ、背もたれに何本ものスリットが入った特殊な椅子がセンターのドラムを中心に左右へ
2つずつ配されたセットチェンジの段階からして、場内からひしひしと立ち昇る熱気と期待感
はかなりのもんでしたからね。唐突に客電が落ち、バックライトが光り、椅子のスリットから
漏れ出る光とそれが描く模様がステージ上に仁王立ちするメンバー達を幻想的に浮かび上がら
せるという視覚効果抜群のオープニングから、とてつもない指捌きとともにいざ4台のチェロが
掻き鳴らされ始めたその瞬間の盛り上がりたるや、ちょっと尋常ならざるものがありましたね。

そして1曲目が終わるや否や、今まで椅子に腰を落ち着けて演奏していた4人中の3人が
いきなり立ち上がってチェロを猛然と弾きこなしつつヘドバンしまくるという凄まじき光景が
展開されることに。そのリフが"Master Of Puppets"であることに気づいた場内の反応にも
かなりのものがありましたが、それ以上にメンバーの弾きっぷりが凄い。いや、もう「弾く」
というよりは「叩きつける」といった表現の方が正しいかもしれません。よもやチェロのみで
ここまで攻撃色の濃いリフ音が聞けるとは思ってもいませんでした。もっとクラシックぽいイメージ
を想像していたんだけど、これは全然違いますね。もう完璧なるメタルですよ。

そしてこれまた実に興味深いなと思ったのがその驚異的コンビネーションの分担範囲。
ここまで見事な連携を見せるからには、メインリフを刻む人、ソロパートを弾く人、バッキング
を叩きだす人と、それぞれがどこどこのパートといったような分担分けが最初からきっちり
決まっているに違いないと思い込んでいたら、実際には全然そんなことないというね。
それぞれがその場その時の雰囲気に合わせて、今、自分がやるべきことを即興で選択してるっ
ぽいというか、今はあいつがソロを弾いているから、じゃ俺はその裏でリフるよ的な空気が
垣間見えるとでもいうか。またそこが全体の演奏に「伸び」や「張り」を与えているようにも
思えましたね。もちろん最低限のルールは決まっているんだろうけど、そこにクラシック的な
厳密さを感じさせないフリーダムな空気が「メタル」っぽくていいなあって。

加えてどんなに激しくても基本インストゥメンタルであるが故、客側がVo役をこなすことにより
「参加することの楽しさ」をふんだんに味わえるというもう一つの長所が更なる場の盛り上げに
一役買っていましたね。そりゃね、"Seek And Destroy"や"Enter Sandman"のリフを目の前で
こんだけ熱く演奏されりゃ歌いたくもなりますわな実際。

そんなこんな完全満足、恐悦至極な1時間だったわけですが、帰宅後、この余韻を反復させるべく
CDかけて聞いてみたら、これがどうにも薄っぺらくしか聞こえないという不整合が発生。
やっぱし「生」で聞いてこそのバンドなのかも知れませんね、このアポカリプティカは。

 01:Intro〜Path
 02:Master Of Puppets
 03:Somewhere Around Nothing
 04:Refuse/Resist
 05:Betrayal
 06:Bittersweet
 07:Seek And Destroy
 08:Inquisition Symphony
 09:Enter Sandman
 10:Hall Of The Mountain King


STRATOVARIUS

トリを飾るはフィンランドの国民的英雄にしてメロスピ・マイスターこと「STRATOVARIUS」。
だけどこの時点で既に22時近く、18時半からほぼ3時間立ちっ放しだったということもあり、
ここら辺りで大きく後ろに退いて、流し気味モードで観戦することに。

それにしてもアレですわ、落ち着きなくマイクを左右に持ち変える小ティモの仕草といい、
わりかし適当弾いていながら逆手モーションとかライトハンドを多用する大ティモの指捌きといい、
どれもれこも進行パターンが似通っていて、かつサビは必ず皆でシンガロング出来るように作ら
れている聴き心地の良さ抜群の楽曲群といい、もはやこのバンドのダサ格好良さは国宝レベルもん
だと改めて実感しましたよ(褒めてます)。
こういう音はね、後方で腕組みとかして斜に構えちゃってると確実にノリ遅れるんですよね、
いわば参加したもん勝ち的な要素がライブの合否を大きく占めているが故、開始15分で思いきり
素に戻りかけてたミーは、そのルールを思い出したところで慌てて前方へ突貫開始することに。

前半の「これぞメロスピ!」的な疾走感抜群の流れから、中速でのメロ重視曲へと切り替えて
サビをコールさせることで観客参加による一体感を煽った中盤、激しい曲と曲の間にバラードを
挿入し、それまでのノリを一旦収束させてラストへ向けての溜めを作った後半と、押し退きどころを
きっちり見極めたその展開力はやはり貫禄の一言でしたね。ただ巧みっぷりが増した分、メタルっぽい
毒とでもいうか、ステージ上におけるけれん味みたいなものが年々薄れてきているんじゃないかなとも。
そこだけは今後ちょっと心配かもですね。

 01:Hunting High And Low
 02:Paradise
 03:Speed of Light
 04:S・O・S
 05:A Million Light Years Away
 06:Father Time
 07:Hold On To Your Dream
 08:Coming Home
 09:Phoenix
 10:Forever
 11:Eagleheart
 12:Black Diamond


<今日の一枚>

 「EPISODE」 / STRATOVARIUS

「メロスピとはなにか?」という命題に対する一つの解を実に分かりやすく示して
くれた1996年リリースの5TH。"Speed Of Light"・"Father Time"をはじめとする、
これぞメロスピと言わんばかりな超絶疾走ナンバーの数々、そこから感じる陶酔感と
カタルシスはメロスパーにとっちゃもはやネコに対するマタタビとほぼ同義レベル。
伝説のキーボード職人イエンス紡ぎだす美旋律の数々にも注目したいところ。
合わない人にはとことん合わないと思われるその音楽的特性上から、かなり精度の
高い踏み絵としての役割をも果たしてくれる逸品でもあります。


<今日の無駄T>

.

「アポカリプティカ」のTシャツ。これ、わりかしレアなんじゃないでしょうか?
 たぶん着ないだろうけど、でも、なんとなく持ってるだけで嬉しい一品です。


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