LORDI.


2007年4月11日: 渋谷O−EAST>

キッスの正統なる後継者、いや、そのポテンシャルはキッス以上との噂が噂を呼び、
メジャーデビュー5年目にしてユーロビジョン制覇、凱旋ライヴでは10万人を集客するなど
今や飛ぶ鳥を落とす勢いを誇るフィンランドの怪物ハードロックバンド「ローディ」。
その初来日ライブを見に、渋谷はO−EASTまで行ってまいりました。

まずは、野太いトーンの中に時折甲高いシャウトを交えて、更には80年テイスト全開な
両腕を真上に高々と上げてのクラップによる煽りで、場の空気をグイグイと力強く牽引して
いく「Mr.Lordi」の姿にひたすら見入ることに。

 (ROCKCITYより)

ね、こちらの期待を損なうことのない、噂にたがわぬ奇態でしょ。この格好眺めてるだけで、
モトリーやラットが全盛だった頃の、つまりはメタルがわりかしおバカな方向へそのベクトル
を向けていた頃の古き良き時代を思い出して、ついつい顔をほころばす客達。ハードコアや
スラッシュ系などの張りつめるような緊迫感とは対極を成す、このユルくてヌルくてコミカルな
空気こそが80年メロディック・ハード系の醍醐味ってもんでしょとばかり、僕自身、2曲目
"Get Heavy"辺りでもうすっかりユルユルのノリノリに。

そしてふと視線を右に向ければ、そこにはこっち以上にノリノリと化してる恐怖のミイラ君こと
「AMEN」さんの姿があったというわけで、1人だけロンドンブーツ履いていないのをいいことに
ステージ上をところ狭しとさんざ走り回ったり、チャックベリーばりのダックウォークまで繰り出した
末に自らのコーラスパートで慌ててマイクのところへ戻ろうとし、勢いあまって袖の部分へ転倒
ブチかますというそのドジっ子っぷりに激しく萌えることに。



で、上手側にドデンと控えるはベース担当「OX」さん。
Mr.Lordiさんがその重装備の負荷により単なる駄目な人と化してる間の時間稼ぎとして曲間
MCを担当したまでは良かったものの、キャラ作りの為かわざわざエフェクトかけて喋るもん
だから何言ってんのか全然分かんなくてさんざ野次られるというアホの子っぷりから始まって、
途中の小芝居(子供をさらおうとしたワルモノをOXが格好よくやっつけるという設定?)の際、
ワルモノを殴るために使ったベースがあまりにフニャフニャで場内から愛溢れる苦笑続出という
マヌっぷりまでを通して、AMENさん同様、間違った萌え対象として客側に終始、有効活用
されていました。



でもって今度は、男塾に例えるならおそらく虎丸的ポジションであろうと思われるドラム
の「KITA」さんがその巨体と豪腕を駆使してなんとイントロ付きのドラムソロを敢行ですよ。
往年の名曲の数々に合わせてオレサマドラムマルカジリー、ってよくよく考えたらアンタそれ
単なるなりきりプレイ?俺、トミーリーやるー!的な。案の定、際立って目立ってるけども、
でもベクトル的にはどう考えてもアホ丸出しという、これまた実に80年代らしいテイストを
醸し出してくれ、会場全体の空気もますます香ばしくなっていくことに。ちなみにイントロの
選曲自体も、
 ・Wild Side / MOTLEY CRUE
 ・Youth Gone Wild / SKID ROW
 ・You Can't Stop RockNRoll / TWISTED SISTER
 ・Billion Dollar Babies / ALICE COOPER
 ・Balls To The Wall / ACCEPT
 ・The Beautiful People / MARILYN MANSON
 ・Wild Child / W.A.S.P.
 ・Burn / DEEP PURPLE
 ・Love Gun / KISS
と、こんな感じで、どこを切っても80年代ラブ!的なこのテイストがその層のファンの心を
すっかり鷲掴み状態に。



そしてローディといえばシアトリカルなステージを演出する数々の小道具も魅力の一つ。
まず"Pet The Destroyer"にて登場したのはおもちゃのチェーンソー、先っぽから無気力に
ピヨピヨっと飛び出る水流が場内の乾いた笑いを誘ったのを皮切りに、"Blood Red Sandman"
での「人の手足入りバケツ」から始まって、"Biomechanic Man"ではアックス型マイクスタンド
(ジーン・シモンズの影響ありあり)、はたまた"I't snows in hell"じゃモクモクと煙を吐く
ドクロ登場(ドライアイスの出が良すぎてステージ上は真っ白に)とまあ次から次へとベタ度
満点のギミックが出るわ出るわ。本編最後の"Devil Is A Loser"では駄目押しとばかりMr.Lordi
の背中から巨大な羽まで飛び出てくるときたもんで、なるほど、こりゃ確かに見てて楽しいなと。
(逆に言うなれば、構成やリフが似通っている曲が多いだけにこういった演出がないとステージ
だれしちゃうかも) ついでにおまいら本当にキッスが心の底から好きなんスねということをも
強く伺わせてもくれていました。ただそのキッスをも上回ると言われるパイロがまったく抜きな
ところはかなり残念だったかなと。

総括として今ライブ一番の盛り上がりどころをあげるなら、曲メロ・PVのインパクトともに
抜群、世界に彼らの名を知らしめるきっかけとなった"Would You Love A Monsterman?"
でのサビ大合唱と、本国における出世曲であるとともにユーロビジョン優勝の原動力、また
今年のオズフェスト出演のきっかけとなった"Hard Rock Hallelujah"かなと。
曲の出だしイントロで拍手をさんざ煽っといて「まだ足りない!」ってな感じで何度も演奏
止めてプイっと後ろ向いちゃう紅一点「AVA」たんの焦らしプレイから始まって、Mr.Lordiの
手拍子による煽動とそれによる会場全体を揺るがすようなジャンプ連発が与えてくれた一体感は、
今ライブのフィナーレに相応しい締めくくりだったと思います。初来日としては余裕で合格点
でしょう。次回来日は是非ともフルプロダクション(特にパイロ必須!)でよろしく。

紅一点の「AVA」たん)


<今日の一枚>

 The Arockalypse / Lordi

彼等の日本デビュー作にして、北欧を中心に世界への足掛かりを掴んだサード作。
80年代王道のメロディックハード路線を忠実になぞるようなその音楽性はとにかく
聞き易くて、でも飽きやすいという欠点をも同時に内包する諸刃の剣。
それを解消しうる曲ごとの輪郭付けがいまいちボヤけてる感はあるものの、キッス
初期程のクオリティを求めなければ存分に視聴する価値のある一枚。とはいえあの
猟奇的ルックスとペアで考えてこそ活きるバンドであることは否めない事実なので、
その辺りの割り切りは少し必要かも。


<今日の無駄T>



#表にメンバー全員の集合プリントという、これまたベタ丸出しのデザイン。
 彼等の再来日時かキッスのライブ以外、出番は永遠にないと思われ。



<セット・リスト>

00:SCG3 Special Report
01:Bringing Back The Balls To Rock
02:Get Heavy
03:Who's Your Daddy?
04:Supermonstars(The Anthem Of The Phantoms)
05:Pet The Destroyer
06:The Kids Who Wanna Play With The Dead
07:Blood Red Sandman
08:Biomechanic Man
09:Good To Be Bad
10:It Snows In Hell 
11:〜 Drum Solo 〜
12:The Deadite Girls Gone Wild
13:Devil Is A Loser

14:They Only Come Out At Night
15:Would You Love A Monsterman?

16:Hard Rock Hallelujah


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