MUSE.


2007年3月12日: 東京国際フォーラム

昨年「プライマル」や「モグワイ」のライブにとんでもなく間違ったモテ願望のみで参戦して
以来、多少なりともUKロックなるものに興味を持ち始めた生粋のキモスパーことミー、本日は
サマソニの感動よ再びとばかり、デビュー8年目にして今やUKロックの堂々たる代表格にまで
登りつめた感のある「過剰の美学」ことミューズのライブを見に、有楽町は国際フォーラムまで
行ってまいりました。

で、いざ会場入りして自分の座席位置を確認してみたら、これが気絶するほど後ろのほうでまず
げんなり。フォーラムって音が良いことにかけては定評のある良会場なんですけど、そこだけは
超えちゃいけないという境界線があることでも有名で、1Fの35列以下からはただでさえ後方
で見にくいところへ、2Fの天井がもろかぶりになるせいで音量が減衰する上に音質までこもり
がちになるという、とんだ三重苦を背負わされることになっちゃうんですよね。しかも僕の席、
1F47列というほぼ最後方位置(フォーラム1Fは49列まで)。おいおい、プレリザーブで
抑えたのにこれかよ、ぴあー

と、出だしから文句ブーブーだったところに加え、いざライブが始まった途端、興奮しすぎて
頭のネジが全て弾け飛んでしまったらしき右座席の女子からカウンター気味のバックナックルを
もろ浴びていきなり眼鏡とばすという、しかも客電落ちてるんでどこに飛んでいったか皆目わか
らないという、考えられる限りほぼ最悪のアクシデントにいきなり直面。その後、轟音鳴り響く
中にてやりたくもない横山やすしの物真似に無理やり興じさせられる羽目となり、結果として
非常に残念ながらライブが終わるまで回収はまず不可能という結論が導かれてしまったその刹那、
ヤバすぎて!とか熱すぎて!とかそういった本来のライブ観戦から途方もなくかけ離れた意味で
僕は軽々と死にたくなるのでありました。といったわけで裸眼視力コンマ以下であるが故、メンバー
個々の細かいステージアクションを見ることがまったく適わなくなってしまった僕としては、
ぼんやりと見える大型スクリーンに目をこらしつつ、せめて耳から入ってくる音に全神経を注ぎ
込むしかあるまいと完全に覚悟を決めることに。

と、図らずともそんな座頭一状態でライブ観戦することになってしまった僕の前半ハイライト
は3曲目の"Map of the‥"から"Butterflies and‥"へと繋げた、ムード歌謡や演歌と聞き
間違えんばかりの、こうねっとりと肌にまとわりついてくる彼ら独特のヴァイブ感。
そりゃね、もはや淫靡とか耽美とかいった形容詞すら飛び交いかねない程の、この濃厚極まり
ない湿度に晒されてりゃ、周囲の小娘どももジャニヲタばりに叫び始めるって話ですわ。
だってキラキラズボンのマシューを見ただけで「キャー」、お得意のカニ歩きし始めた途端
「ギャーッ!」、"Feeling Good"で自作紙吹雪バラまこうもんなら「ハァァァァァーッ!」。
よもや洋楽のライブでここまで黄色い声援を聞くことになろうとは思いもしませんでしたよ。
そんな女子一同皆様方の度を越したドリーマーっぷりにアテられすぎたところへ、スクリーン
及び照明効果が作り出すそのヴィジュアルの凄さに目がチカチカしだすという事象が加わって、
中盤辺り、わりと本気で頭がグルグルしてくるという酩酊状態に苦しむことに。眼鏡はなくすわ、
頭回るわで我ながらかなりいいザマだと思いました。でも楽すぃ〜(負け惜しみ半分)

そんな状態から多少復活しかけて以降の後半はハイライト目白押し。
軽快なリズムのわりにぐいぐいと引っ張られていくような音の膨張度合いと、宇宙を航行して
いるかのようなVJ効果が相まって、まさに「フリーダムー!」ってな感じの解放テンション
を存分に味わえた"Starlight"から、"TIRO"へと繋げられて、そこで悲哀感たっぷりのサビと
それに続く「ウォウウォウウォウ」のファルセットが涙腺にジワっと直撃してきやがった辺りで、
こうグワッと「入った」感じになりましたね。そこへ畳み掛けるように"New Born"ときた日
にゃね、緊迫感漲るイントロとじわじわと抑圧感を煽る陰鬱ストロークが、一気に「陽」へと
転じるサビ部分にきた時点で完全に「どうにでもしてー」なスレイブ状態と成り果てる事に。

が、一流にはまだこの先がありました。その後に続いた"Forced In"における、その静寂かつ
優しげなフィールにより、それまで色々与えられすぎてもはや混濁としていた感のある頭の中身
が綺麗さっぱり平坦にされた後の"Bliss"が凄まじく神。曲開始と同時に天井付近からボワっと
飛び出てきた巨大風船群が客席前列辺りをポンポン跳ねてる中、どこまでも情感的に伸びていく
音の広がりは本当に只事じゃなかったなと。大仰に言うなれば、それにより支配されていく空間
の侵食度合が肌で感じられるぐらい。

しかし超一流には更にこの先がありました。サマソニに引き続きカオスパッド内臓ギターによる
多彩な表現力をまざまざと魅せつけてくれた"Invincible"にて、場内一帯に水を打ったような
静寂感が凛と浸透した後のミューズ流テクノ"Supermassive Blackhole"がまた実にエクセレント。
この静から動へのコントラスト美と、途端にダンスホールと化した場内の熱狂っぷりを全身で
味わいつつ、狂ったように腰をクネクネさせてる前のお姉ちゃんに習って、僕もブルンブルンと
その小太った贅肉を揺らしたのでありました。

が、しかし超々一流には、まだ更に、エアマスター的に言うなれば無理のしすぎの前のめりの
全開の一番先っぽまで出し惜しみしないぞー的な先がありました。そう、まさかのアンコール
2回目! そしてこの特徴あるイントロ、サビのシンガロングにおける比肩なき一体感、この
絶対的煽情力は…よもやの"Plug in Baby"キター!いや、何気に1回目のアンコール終了時点
で無性にウンコしたくなってきちゃって正直どうしようかと困ってたんですがこの瞬間、便意
は完全に吹き飛びました。アドレナリンはウンコを凌駕しうると確信した瞬間。そしてフィナーレ
を飾った"knights of Cydonia"にて、その過剰かつ大仰極まりないスケール感の前に、これ
以上ないというくらい完璧に仕上げられたところが僕にとっての終着駅、その名は「至福」。

いや、前半の眼鏡ロストによる視聴環境不備はともかく、そのハンデをまるで感じさせない
くらい入りこめたラスト30分における展開、特に延髄辺りの神経網わし掴まれてグイグイやら
れてるような錯覚まで覚えたその感化力にゃ、ただただ「感服」の一言でしたね。
こりゃますます今年の「フジロック」が楽しみになってきました。


<今日の一枚>

 Origin of Symmetry / MUSE

出来る限りの無駄を排除した先にある本質を模索しようとしたオルタナ系とは
まったく逆のアプローチでもってまた本質の、それも「一歩先」の追求を試みた
UKロック史に残る一大傑作。どこまでも「極端」「過剰」「誇張」かつ、
狂おしいほど「艶やか」「華やか」「煌びやか」でありながら、しかしその
文明的要素とは真逆な筈の原始的衝動にこそ、彼ら真の魅力があると思われ。
絢爛豪華な鞘の中にある抜き身の凄まじさをこそじっくり味わってほしい一枚。


<今日の無駄T>



#デザインはともかく、生地がペラッペラな上、Lサイズにしちゃ若干小さめ。
 メタルT系ってセンス皆無だけど生地だけは無駄にしっかりとしてて、そこだけは
 いいんだよね。



<セット・リスト>

01:Take a Bow
02:Hysteria
03:Map of the Problematique
04:Butterflies and Hurricanes
05:Assassin
06:Sing for Absolution
07:Citizen Erased
08:Hoodoo
09:Apocalypse Please
10:Feeling Good
11:Sunburn
12:Starlight
13:Time is Running Out
14:New Born
15:Forced In
16:Bliss

17:Soldiers Poem
18:Invincible
19:Supermassive Blackhole
20:Stockholm Syndrome

21:City of Delusion
22:Plug in Baby
23:Knights of Cydonia


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