A S I A.


<2007年3月7日: 新宿厚生年金会館

音楽的ルーツ上の都合により、ミーがほぼ4ヶ月に1回の割合で罹患してしまう80年代回帰
症候群に合わせて、これまたドンピシャのタイミングで、その頃のノスタルジック・フレヴァー
芳しきアーティストが来日してくるってな、こりゃ一体どういった因果関係があるんでしょうね?
というわけで、
 04年:ジャーニー
 05年:ヨーロッパ、スティング、アクセプト
 06年:ボン・ジョビ、TOTO、ビリージョエル
に引き続き、三十路メタラーとして、「ベストヒットUSA」直撃世代として、このどうにも
抑えきれないライブ観戦欲求(フォリナーは何とか我慢)を解消すべく、元キング・クリムゾンの
ジョン・ウェットン、現イエスのスティーヴ・ハウ、元EL&Pのカール・パーマー、そしてバグルス
のジェフ・ダウンズ等、当時のプログレ・セレブ達が集まって82年に結成されたスーパーユニット
「エイジア」の再結成ライブを見に、新宿は厚生年金会館まで行ってまいりました。

で、いざ場内に入ってみたら案の定、構成年齢層が高い高い。加えて立ち見まで出るほどの
大盛況っぷりという。いや、確かに当時をその話題一色で染めあげたスーパーグループであった
ことは紛れもない事実ですけども、よもやそれから20年あまりが過ぎた今もなお、ここまでの
人気を誇っていようとは正直思ってもいませんでした。まあこの大入り度合いにゃ当時アルコール
中毒をこじらせて来日直前でクビになったウェットンと、偏屈なことにかけては他の追随を許さ
ないハウ爺を加えての、結局実現しなかった完全オリメンによる再結成ってことが大きく起因
しているとも思うんですが。

それから程なくして始まったライブ内容の方ですが、いや、これが思ってたよりも全然良くて
序盤からわりと圧倒されっ放し。多少は衰えてるだろうと思ってたウェットンさんの声がその
当時とほぼ遜色ないくらいメチャ伸びしてて、まずそこに度肝抜かれたのを皮切りに、体力面が
心配されてたカールさんのドラムもむしろ走りすぎ?ってくらい躍動感に満ち溢れてたし
(EL&P時代からお馴染みのドラ鳴らしもちゃんとありました)、周囲をずらっと取り囲むキーボード
やシンセ等の各機材をイエスのリック・ウェイクマンばりに両手弾きで使いこなしてるジェフさん
の鍵盤ワークは眺めてるだけで楽しいしと、いきなり見どころがめじろ押しすぎて、その華やかさ
具合ときたら正直ステージ上のどこを見ればいいのか悩むほど。

そんな三人のカリスマよりも一際高いオーラを放っていたのがギターのハウ爺でして、
バックトゥザフューチャーに出てくるおいぼれ博士みたいな風貌してる割にゃ、片足をいきなり
上げたり、脈絡なくピョン跳ねしたり、唐突に客席をビックリ顔で睨んだりとコミカル・アクション
を色々かましまくり。その仕草がこれまた妙に可愛いいところへ加えて、偏屈爺まるだしなその
外見とのギャップもツボっちゃって危うく60近い爺いに本気で萌えかけました。もちろんその
萌え要素のみならずプレイの方もメチャ巧。それも決められたフレーズを正確に弾きこなしてます
って類の巧さじゃなくて、あるパートではいきなり突っ走ったり、と思えば別のパートでは妙に
抜いたりと、ところどころアラとかムラが目立つ感じなんだけど、ここぞっていう見せ場や
タイミングだけは絶対はずさない、みたいな「味」要素の色濃い巧さとでも言うか、ほっとけ
ない感じの危うさが魅力とでも言うか… あ、やっぱし萌えキャラじゃん。ハウ=アキバ系説、
いや、こりゃ新しい発見でした。

20年以上前にリアルタイムでさんざ聞き倒したその楽曲群に関しても、もっとシンプルで
キャッチーな感じのポップ調メロディーなイメージが強かった筈なのに、いざこうしてライブ
で聴いてみると実はわりと複雑怪奇なプログレ調リズム?といった新しい発見があったり。
まあカール先生のビートがわりと周囲を無視して突っ走り気味なところへハウ爺がわざわざ
難しいアレンジを加えていたみたいなので、そう聞こえたのかも知れないですけど。

そんな強力無比な自我と卓越した演奏力を併せもつこの二人に負けじと"ラジオスターの悲劇"
じゃ今度はウェットン&ジェフのコンビが大活躍。まずウェットン御大が「UK」来日時に披露して
以来のお約束となっている「キミタチ、サイコ、ダヨ」で拍手喝采を呼んでまず勢いをつけた
ところで、次はジェフがおもむろにサングラスとギラギラのジャケを羽織り出し、その当時の
トレヴァーホーンを彷彿とさせるような雰囲気を醸し出すというね。これ濃いプログレファン
であればあるほどツボを突かれる演出なんじゃないでしょうか。そんな格別の導入部から流れ
出すあの耳障りのよいイントロにすっかり気分をアゲさせられたところで、ここぞとばかり電気
メガホン越しに熱唱する御大の声と観客のハモりコールがものの見事に絡んだ瞬間が、たぶん
今日の最大ハイライト。老いも若きも総立ちで大合唱していたラストの"Heat Of The Moment"
と並んで心温まったシーンでしたね。

ドラマティズム溢れる展開力にかけては元から定評のあるエイジア持ち曲の中でも特に雄大
なスペクタクル感を感じさせてくれる2曲"Heat Goes On"・"Only Time Will Tell"を
繋げてプレイしたところが個人的には一番胸に響きました。間に挟んだドラムソロの折に気合
が空回りしたか、スティック取り落として「はわわー」って顔になってるカール先生のお茶目
っぷりも合わせて実にグーでしたね。これで"Open Your Eyes"を演ってくれてたらセット・
リスト的にはもう完璧だったのに。(願わくば"Go"も)

他に良かったポイントとしては、やっぱ席ですかね。いや、厚生年金会館の2階席って、元々
縦の奥行がない構造上の都合からステージへ向かってかなりせり出している上に、座席毎の
段差がかなり大きいんで、本当にほぼ真上から見下ろしているような気分になれるんですよね。
逆に難をあげるなら"Don,t Cry"がアコス調だったけどこれはやっぱしオリジナルで聞きたかった
かなと。その際、ハウがシタールみたいな楽器使ってたんですが、こればっかはお前それ使いたい
だけだろと突っ込まざるをえなかったり。あと輝度が低い上に妙なエフェクトかけまくりだった
バック・スクリーンに関しては、むしろない方がマシだったかも。


<今日の一枚>

 ALPHA / ASIA

「プログレ」という本来なら難解と思われがちなジャンルをとことんキャッチーな方向
へ突き詰めたらどうなるか?ということへの明確な回答を如実に示した一枚。メロディー
の良さにかけては紛れもない超一級品。まあ多少やりすぎた感もあり、1枚目に比べると
プログレのプの字もなくなってしまったとか、ハウ爺の放られっぷりに萎えるとか、これ
なんていうジャーニー?とか、その筋の方にはメチャ叩かれまくった作品でもあるけど、
この一枚により結果的にプログレ畑の間口が広まったこともまた確かなる事実だと思うのです。
故に「プログレ?ウエ〜」という顔をする人にこそ聞いてみてほしい一枚です。


<今日の無駄T>



#30過ぎてなおファンタジック・チルドレンであることを露呈してしまうかのような
 危険極まりないデザイン。ある意味、ラムちゃんプリントT以上に危険な匂いがします。



<セット・リスト>

01:Time Again
02:Wildest Dreams
03:One Step Closer
04:Roundabout(Yes)
05:Without You
06:Cutting It Fine
07:Clap 〜Steve Howe Solo〜
08:Fanfare For The Common Man(EL&P)
09:The Smile Has Left Your Eyes
10:Don,t Cry
11:The Court of the Crimson King(King Crimson)
12:Here Comes The Feeling
13:Video Killed The Radio Star(The Bangles)
14:Heat Goes On
15:Only Time Will Tell
16:Sole Survivor

17;Ride Easy
18:Heat Of The Moment


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