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#8:絶望


暗黒魔王ヘルのもとへ向かうボクの前に、次々と立ちはだかる最終防衛ラインの精鋭達。



嗚呼、彼等は明日を見ていません。
彼等の目に未来は映っていません。

ただただ、魔王ヘルを守ろうと、自らの体を投げ出すだけなのです。

そンな彼等の姿に心打たれつつも、ボクは心を鬼にして、前へ前へと進んでいくのでした。




狭い通路を埋め尽くすコウモリ軍団。
剣がギリギリ届かない位置から容赦なく急降下して、ボクの体力を奪っていきます。

まさに地獄と称するしかない最難関ポイントに、ボクは血を吐くような思いで挑んでいきます。










途中で力尽きること15回。時間にして約360分。

繰り返し、繰り返し、同じことの繰りかえし。
そして、その記憶すらもあやふやになってきた頃・・・



突如、重厚な扉がボクの前を遮りました。

ン? 鍵は?

・・・やだなあ、あるに決まってるじゃないですか。
レリクスに費やした時間は伊達じゃないッ!
こンな意地悪な展開だって、もちろン既に予想済みさ。

鍵を使用して前へと進みます。




おっと。またもや扉です。

あれ? 鍵は?

・・・やだなあ、あるに決まってるじゃないですか。

「備えよ常に」 

ボーイスカウト連盟東京地区182団から受け継がれた崇高なる意思。
今も脈々とボクの心の中に息づいているのです。

鍵を使用して前へと進みます。




ええっ? またもや扉です。

あれ? 鍵は?

・・・やだなあ、あるに決まってるじゃないですか。
ワイルドギースたる我々傭兵の準備は、何処でだって常に完璧です。

「見上げれば天。我の足、地に着きて。背に羽はなし」

思いだすのです。エリア88で過ごしたあの地獄の日々を。思いだすのであります。




突然ボクの前の視界が開けました。

こ、こは・・・一体?

・・・・・・・・

た・・・し、か。 どこ・・かで・・・

・・・そう、ボ、クはこの場所を、知っている・・・

15年前の、まだ純真で、汚れを知らなかったあの頃。
そう・・ボクはこの地で敗北を知った・・・「諦める」ということを知ってしまった・・・

幼き頃の挫折。その2文字とともに奪われた夢、そして希望。

「この先の人生も、今までと同じように、足のつま先だけを見つめて生きていくつもりなのかい?」
幼き頃の自分が今の自分に語りかけます。

・・・そうだね、取りかえさなきゃ・・・
ずっと中途半端なままだったこの体から抜け出さなきゃ。
本当の自分を取り戻さなきゃ。

だって・・・ボクはあの時からずうっと、この暗黒要塞の中を彷徨い続けてきたンだから。
自分を嫌いになる度に、その場しのぎで都合のいい体に乗り移って、
本当の自分から目をそむけて、
ずっと自らを誤魔化して生き続けてきたンだから・・・

レリクス・・・今までのボクの人生そのものだったンだね。ようやく思いだしたよ・・






今ここで! 全てを精算するためにも! ボクは前へと進まなければいけないンだねっ!




そしてっ!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!

遂に、遂にッ・・ この時をどれほど待ったことか・・・
1987年のあのときから止まっていた時間が再び動き出すっ!

15年間の重みを・・・ ボクが歩んできた人生を・・・
今この瞬間! この場所でっ!

すべてお前に叩きつけてやるゥゥゥゥゥゥゥ!




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

おおおおおおおっ・・・・オォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!

やった!やったンだ! ボクはやったンだッ遂に自分に打ち勝ったンだッ!!




この扉の先に・・・
そう、この扉の先に。 夢にまで見た結末の全てがあるンだ・・

震える手を抑えながらカギを取り出し・・・
震える手を抑えながらカギを・・・
震える・・・カギを・・・
カギを・・・
カギ・・・
カ・・
ギ?

・・・・アギっ?










その場にしゃがみこみ。

アギアギ? アギアギ? って。

つぶやいてました。


いつまでもいつまでも。

つぶやいてました。








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