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地獄の館:スティーブ・ジャクソン



暗い嵐の中、君は人里離れたところで立ち往生した。望みといえば、遠くに見える妙な館だ。
だが、この悪名高い”地獄の館”の扉を開けば、血も凍り、ゾッとするような冒険へと踏み出す
ことになるのだ。
君にとりつく悪夢のような住人たち。
これまでにも、”地獄の館”に足跡をしるした者がいたが、生きて帰った者はいない。
それでも君は・・・・


ここのところ連続で続いていた中世ファンタジーものから一転して、近世代ホラーものという
新ジャンルに、アイデアの鬼:S・ジャクソンが取り組んだこの「地獄の館」ですが、実にその
辺りの”らしさ”が出ていて、いままでのシリーズとは一風毛色の違った作品として楽しめる
ものに仕上がっています。

その”らしさ”の中でも一番の目玉が新設定の「恐怖点」でして、ホラー的心臓バクバク状況に
でくわした時に少しずつ加算されていき、サイコロで決められた閾値を超えると、どんなに体力点
が残っていても心臓ショックで一発死!
冒険を盛り上げるにしては多少凶悪すぎるファクターとなって、読者を大いに悩ませてくれます

他の特徴としては、謎とき要素が比較的多く かつ それらが難解であることがあげられます。
”隔離された屋敷の中”という冒険の舞台が、大きな場所転換を伴わないスケールの小さなものに
なっていることへの打開策なのかも知れません。
不条理な難しさではない上にきっちりと仕掛けが錬られている、その辺りの工夫は、
シナリオ全体のスパイスとなって、冒険の盛り上げに一役買っています。
常に圧迫されているような感覚を覚える屋敷のつくりも、ソレ系の雰囲気を醸しだしていて実にグー。
でも隠し小部屋はともかく祭壇とか拷問部屋まである屋敷って一体・・・・

実にホラーものらしい描写に仕上がっている挿し絵とか、最後のドンでん返しシナリオも手伝って、
私の中ではかなりお気に入りの一作となっています。




ギャラリー



ドアの把手をつかみ、それをあけはなつ。
しかし君はそこで出会った光景に仰天して、うしろにとびすさった。
食料準備室の中には、ボロボロの衣を身にまとったおぞましい姿が、じっと動かずに立っていたのだ。
そいつの顔と手はなかば腐っており、死の臭いが君の鼻をうつ。
長い舌をちろちろと見せて、そいつは君の方へ向かってくる。

恐怖点+2。
服から垣間見えるあばら骨とか半分溶けた頭蓋骨がチャーム・ポイント。
こんなのに向かってこられたら堪らない。




低い声が君を呼んでいる! 君は声のする壁のほうから跳びすさった。
部屋に奇妙な形が現れはじめた。人間の姿が壁そのものを通り抜けて、部屋に入ってきたのだ。
いや、ほとんど人間の、といったほうがよいかもしれない。そいつには首がなかった。
実体化すると、声はもっとはっきりと聞こえた。
亡霊の首は肩の上にはなく、わきにかかえられており、その首がしゃべっている!

恐怖点+2。
ちょっとリアルな死神の騎士とかそンな感じ。
こんなのに「死ぬ用意をせよ、哀れな生き物よ!」とか言われる。
おまえのほうが哀れだっつの。




なかは書斎だった。
壁には古い革装丁の本が並び、ただ一つの照明は年代物の机の上で燃えさかっている1本のロウソクだ。
机は歩み寄って調べてみると、美しい木製で、引き出しには真鍮の把手がついていた。
机の上には、吸取紙にのった紙切れが一枚ある。
なにげなくそれを見ていた君は、急に奇妙なことが起こるのに気がついた。
上の左端に茶色い大文字のFが形作られていくではないか!
あんぐりと口をあけているあいだに、上辺に子供っぽい手書きで”FIND”と書かれた。

いわゆるTRPG的状況。シナリオ・ライターの腕のみせどころ。
こういうシチュエーションは好きだなあ。いかにもって感じで。




床から煙が立ち昇り、執事をのみこんだ。
悲鳴をあげる表情が悪意にみちたどう猛なものに変わり、目が大きく見開かれた。
変身が起こっている!
君の眼前でフランクリンズの体は溶けさり、おぞましい悪魔のような獣の姿となった。
口からは蒸気がしゅうしゅうと吐き出される。鱗のある肌は黒い。
手にはおぞましい鈎爪がのび、それが空気を切って、君のほうにのばされる。足にはひづめがあった。

ラスボス。
恐怖点+3。ただの牛なのに?
ここまで来て恐怖点オーバーになったら泣くに泣けない。
ちなみにコイツは過去のラスボスの中でも最強の攻撃力+14を持ち、
あるアイテムがないと絶対攻略不可のひどいヤツ。



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