火吹山の魔法使い:スティーブ・ジャクソン&イアン・リビングストン
物語でもあり、ゲームでもある本。この本は多くの冒険を味わわせてくれるだろう。
どのページにも新たな挑戦があり、次に進む道を決めるのは君自身だ。
勇気と決断と幸運に恵まれれば、魔法使いの秘密の扉にたどり着くことができるかも知れない。
ここに登場する怪物は真に迫っていて、君を何時間もとりこにしてくれるだろう!
記念すべきファイティング・ファンタジー・ゲームブック・シリーズの第一作。
一作目だけあって、極めてルール 及び 背景を詳細に説明してくれているところが嬉しいです。
出てくるモンスターもゴブリン・トロール・オークにミノタウロス・吸血鬼など
実にオーソドックスなものばかり。でも当事はこれでも結構 目をひいたんだよなあ。
ストーリは、火吹山の奥深くに隠された魔法使いの宝を手にいれる、という
これまた実に基本に忠実なものなのですが、各種トラップを多種多様にちりばめることにより、
シナリオ全体に奥いきを持たせています。
なかでも後半に登場する迷路は、ゲーム・ブックの癖にマッピングしなければ脱出不可能なものに
仕上がってるだけでなく、ただエスケープするだけでは駄目で、この迷路の中をひたすら彷徨い、
宝箱を開けるのに必要な鍵を捜し回らなくてはいけないという、難度Aクラスのものになっています。
しかもゲーム・ブックだから辿ってきた道を戻るとかいう選択肢は当然ありえないのな。
たった一つの選択肢を間違えただけで、ゴール直前にして鍵が足りなくなって鬱死という、
悲惨きわまりない事態に陥り、何度この本を壁に叩きつけたことでしょう。
それでも再びプレイにひきずりこまれてしまう魅力の本質は、全体的な敵キャラの配置 及び
強度バランスの良さに加え、各トラップの文章的表現が秀逸であること、そして全体マップに
矛盾が見当たらないことにあります。
日本におけるゲーム・ブック・ブームの火付け役となった代表的な作品の一つに相応しい出来映え、
といえる一冊。