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#9:続・ドカコック 

…覚えていますか、ランマー

そう、皆さんはまだ覚えているでしょうか、
あの衝撃を。

今年の春、全国10万人の漫画ゴラク愛読者を驚愕の渦へと巻き込んだ、
あの伝説の読みきり漫画が、今、再び返ってきました…!

その名も…

 ドカコック! 
BY 渡辺保裕先生


今回も、
とある建築現場が、その舞台。



そこに、遅々として進まない工事状況に頭を悩ませる1人の老ドカチンが。
その無理やり感の滲み出てる横文字駆使の愚痴によりますと、
先代からその娘が頭領を受け継いで以来、組内の雰囲気があまりよろしくない、とのこと。

かつては先代を中心に、組全体が家族のごとくまとまっていたそうです。
んー、どんな家族だったんでしょうかね? え、写真、あるんですか?

 アッチャー 見るんじゃなかったわー


 

とりあえずそこのお父さん。
アンタ、死ぬ前から早々と瞳孔が開き過ぎ。ついでにいくら何でも鼻腔デカすぎ。
それでいて、このメチャクチャいい笑顔。

場所が場所ならなら即刻、麻薬犬を呼ばれてるところです。



あと、背後のお前らは自身の行動に、もう少し疑問というものを抱け。
これまた嬉しそうにブタを丸焼きやがって。




と、そんな素晴らしかった一家も、今や人間関係バラバラ。

それでも、それでも、この京橋建策なら… 京橋ならきっと何とかしてくれる…!
とばかり、ありとあらゆる熱意をその横文字に込めて、主人公にその旨を託そうとします。

 ユーアー マーベラス ドカ!

その返事や如何に…!?




あ、そうスか…


 秋風が身に染みる季節になりましたね…




そしてせっかくの昼飯時だと言うのに、さっそくケンカを始める女頭領と職人達。
本当に空気悪いですねこの現場は。まったく飯も落ち着いて喰えやしない。



そんな事態に食堂全体が騒然とする中、我関せずと、ただもくもくと飯を食う男が1人。
そう、この「ドカコック」の主人公、京橋建策その人です。

そして何ごともなかったがごとく飯を完食し終わり、やおら立ち上がったかと思ったら。



「さて 厨房を拝借しよう」

さっそく出ました、脈絡なき厨房拝借が。
ドカコック基本三原則の一つ、サドンリーこの上ない厨房拝借が。
とくれば、お次は、もちろん…



そう、皆さん、お待ちかね。
古今東西ありとあらゆる料理マンガの基本概念を根底から覆したと言われる、あの変身フェーズが…


 満を持して登場! そう、これが「DOKACOOK」!

 ちなみに前登場時はコレモンでした。

「思い出してもらおう」とか言ってますけど、忘れるわけないです、
こんなにもインパンクト度の高い料理マンガ。

そして何度でも言います。
この場面だけを見て、料理マンガと言い当てることの出来る人は、この世に存在しないと。




さて、いよいよこのマンガのキモである調理が展開されることに。

ちなみに前回は包丁を「ドドドドドドドド」でしたが、
今回はいきなりスリコギを「ゴリゴリゴリゴリ」やりはじめました。

しかも「ベリーファスト」? 更には「キュルルルルルル」?



なんだ、何が起こっているんだ? 
そのスピードが、そしてこの回転が、一体なんだというのだ!?

更に速く、よりファストに、「ギュルルルルルルルルルル

少なくとも普通の料理マンガには絶対出てきそうにない擬音が飛び出したところで。

 はい。オーガスクリュー、はいりましたー

っていうか、それ何? オーガスクリューなに?




あ、これね。 勉強になりますね。
覚えていてこんなにも得にならない豆知識も、そうはないと思いますね。




さて、お次に懐より取り出したるは、通常の倍はありそうなオタマ。
それを斜めにかざしもって、今度はなにをするのかと思いきや



唐突に中華鍋の中を耕しはじめました。

 ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ

うむ、この手首の返し方、そしてこのリズミカルな動き、
エクストリーム感溢れるその上腕二頭筋から放たれる、この比類なきアグレッションが、
日本が世界に誇るセイントマッスラー、ドカ野郎達の熱きパトスを今ここに迸らせるゥー



「おお、あん動きはッ!?」
「あんおタマの動きいうたらーーッ!」


どこからともなく沸いてきたギャラリーさん達も、固唾をのんでその様子を見守っています。
なんだ、今度は一体、なにが出てくるんだ!?




「スコップばいッ」.
「掘り下げろ ドカモーション」.

部屋中を転げ回りました。

遂に炸裂、ドカモーション! 
ドカコック基本三原則の一つ「ソウルフル溢れる調理」によって、ドカの激情、今ここに決壊!



あと、ドサクサにまぎれて、それ眺めてる女が体火照らせてました

スコップ一つで女も濡らす、漢気一発アクメに達す…! そう、これがドカコック!
とりあえずモテる為の基本はスコップだということがようく分かりました。




そして竣工、ドカルビ焼飯丼! うおおおおおお!

「ドカ」と「ドカルビ」をかけてる辺りの安易さに、作者である渡辺保裕先生の
可及的すみやかレベルな切羽詰ってきた臭がたちこめてきたところで、出来上がった
料理をよくよく見てみれば、これがチャーハンの上に炙った牛バラ肉をのっけただけという
40独身男の手料理ばりなお手軽さ。




にもかかわらず、それを眺めるドカ達の表情、もうメっチャメチャ満足げ。




なにせカルビ一つでこの喜びようですからね。
これが神戸牛とかなら、たぶん見ただけで嬉しさのあまり死ぬっぽい



もっと凄いのもいました。
肉以前に、こんもりと盛り上がったゴハンの山を眺めてるだけでもう大満足

うむ、潔し。 飯が山盛りならそれで良し!というこの潔さ。

工業哀歌バレーボーイズばりに突き抜けた「僕、あたまがわるいです!」臭が、
このマンガの魅力をよりいっそう引き立てているような気がしてなりません。

 あとお前、嬉しいのは分かるけど、歌うな歌うな。




次の瞬間、

 「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
 「ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

猛然とドカ喰いし始める職人達。



そこに今回のキーキャラクターである横文字親父の決めセリフが絡みます。

 こいつはまさに世界遺産級ッ

それを合図にこのマンガ最大のカタルシス、その瞬間が遂に訪れるッ!

「ドカうまーー!」.

うまさのあまり、男泣き。
うーむ、実に感動的。

この最大のクライマックスシーンを、前回のそれとちょっと比較してみました。



左が今回、右が前回のものです。

よくよく見なくても、あからさまに構図が同じ。
この辺りの描写に、先程の可及的すみやかレベルを越えて、作者である渡辺保裕先生の
もう完全にメンドくなっちゃったよ感が漂いまくってるような気がしてなりません。

うーん、渡辺先生、大丈夫かなあ。



そして、とってつけたように明るくなりはじめる職場。

チェストーッ 力がみなぎってくるばいーッ」
エブリバディ フレンドリー ランチ


はい料理一発!問題解決!実にイッツ・ソー・イージ〜♪イージ〜♪イージ〜♪



そんな中、盛り上がるみんなを背にして、1人静かに去っていくドカコック。
それを眺めて恋慕の念に身を焦がしつつも、引き止められないことを知り涙する女。
うーむ、実に情感的なシーンです。

よくよく考えてみりゃ、コイツは単に料理作っただけで本業のドカはほとんど無貢献
なんですが、そういうことには触れないでおくのが大人の対応というものなのでしょう。



「あん方に似合うんは……」
「さすらいでごわす」 
  ドドドドドドドドドドドド
(カコック)←確信犯

というわけで今回の「ドカコック」、いかがだったでしょうか。
このマンガの基本三原則たる「サドンリー」「ソウルフル」「イッツ・ソー・イージー」
の三つがいかんなく大炸裂、そこに「ドカエモーショナル」という情感までもが加わった、
前回に勝るとも劣らないクオリティの回だったと思います。

そして、こうして2回目があったということは、この作品にそれなりに反響があったということ
への証明でもあり、前回嬉々としてこの漫画を取り上げたミーとしては、自分の漫画センスという
ものが世間のそれとそんなにズレていなかったことを知り、少し嬉しく思っています。

そんな僕のセンスによりますと、主人公がエヴリタイム全裸坊主がそそりたった馬の
ペニスを馬体ごと抱えて女の股ぐらへ突っ込んでいく
、などのアバンギャルド描写が
フェイバリットなふくしま政美先生の「樹海マン」再掲載はおそらくないものと思われます。
うーん、非常に残念、レンジャー!(全裸で敬礼しつつ)

そしてこの「ドカコック」ですが、あえて懸念点をあげるなら、
そのワンパターン展開が面白さの一つではあるものの、これを毎週見せられてしまうと、
新しいものに飛びつきやすくそれでいて飽きやすさも抜群な現代っ子の特性に振り回された末、
しりつぼみになってしまう可能性もなくはないかなと。
何よりも読者以前に、作者である渡辺先生自身が飽きてしまった場合のモチベーション低下
が心配されるところです。

そういう意味では今の不定期連載というのは、この作風に実にマッチした好ポジションだと
思われます。下手に毎週連載へとペースアップさせてしまうと、その奇天烈テンションがおかしな
方向へと暴走しだした末、某H先生の「G道坊」のようにある日いきなり、

 


と、なってしまうようなことも考えられますからね。

ともあれこの「ドカコック」、長い目で大事に愛でていってほしい作品の一つだと思います。
そしてこの作品を不定期に長期連載させられるほど器がデカい編集部も漫画ゴラクだけだと
思いますので、なにとぞ一つ、ひとつよろしくお願いいたします…!

さあ、みんなも読もう「漫画ゴラク」!


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