混沌の廃墟にて -248-

RULES (1)

1996-03-31 (最終更新: 1996-04-09)

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 NIFTY-Serveの会員規約が4/1から改正される。

 ニフティのアナウンスでは、まず、料金体系の変更やインターネットの普及な どの変化に対応するためということだそうである。であるのに、一体どこが料金 体系の変更に対応しているのだろうか。何度見てもよく分からなかった。私は課 金を滞納したことのない、一応、所謂「優良利用者」のはずだから、とりあえず あまり関係ないのかもしれない。

 ちなみに、4月からは、ニュース速報等のサーチャージが、高速料金の場合はか なり値下げになる。これは結構ありがたい。課金が減りそうだ。その分、RIMNET に食われているような気がしないでもないが。

なお、電話代だと、銀行引き落しとかでなく、毎月請求書が来るようになって いて、こちらはうっかり納期限を忘れてしまうことがある。最近はコンビニでも 期限後に受け付けてくれるので助かる。

 もう一つは、マナーやルールを明文化し、翻訳調で読みづらかった文言を読み やすいものにすることを目的とする、というのだが、これはもう分かる分からな いという範囲を超えて、「???」というレベルである。どこが読みやすくなったの か、さっぱり分からないし、むしろ読みにくくなっているような気がするし、頑 張って読んでも分からない所まである。

    *
 ところで、会員規約の変更は、旧規約では、会員に発表することになっていた。
 >   第1条 (本規約の範囲および変更) 
    (略)
 >  この変更はNIFTY-Serveのオンラインまたはニフティが提供する手段を通じて
 >  随時会員に発表します。
 これは、新規約では、次のようになった。
 >  第3条(本規約の変更)
    (略)
 >  2. 前項変更については、 NIFTY-Serve上に1ヶ月表示した時点でに全ての
 >     会員が了承したものとみなします。
 この新規約だが、私の知る限りでは、最初に発表された時点の内容と、3月28日 現在に発表されている内容とでは、一か所変更があった。皆さんは気が付いただ ろうか。この変更個所については、変更時点から一か月後に会員が了承したこと になるのだろうか。(*1)
    *
 >  第12条(フォーラム)
 >  1.会員は NIFTY-Serve内のフォーラム(以下フォーラムといいます)に参
 >  加し、閲覧      文章の登録、データライブラリの検索等をすることができ
 >  ます。
 改行位置の変更を除いて、そのまま引用した。空白も含めて。
 >  「閲覧      文章」
というのは、このコラムをWWWから見ている人はなじみがないかもしれないが、 これがもしかすると例の「NIFTY-Serveの致命的欠陥」というヤツかもしれない。

 NIFTY-Serveでは、1行の長さが80バイトちょうどの時には、改行コードが消滅 する。

 もしかすると、改行コードは初めからなく、

 >  「閲覧      文章」
というのは書いた人の意図した通りなのかもしれない。しかし、これが意図した通 りなのか、あるいはNIFTY-Serveの欠陥で改行が消滅してつながったのか、見ただ けでは区別不可能なのである。今回はそれを議論するつもりではないので、先に 進もう。

 ただ、この文章は、意味としては「…参加し、閲覧、文章の登録、データライ ブラリの検索等を…」と書きたかったのではないかと思う。「閲覧文章の登録」 だと意味不明だから。あ、それとも意味を明確にするために

 >  「閲覧      文章」
としたのだろうか。

 新規約は、この種の「?」が山盛りなのである。これで「読みやすくなった」と いうのは、少なくとも私の感性とはマッチしないことは確かである。

    *
 さて、第12条の2に、フォーラム参加時にSYSOPの定める入会手続きを経るもの とすると書かれている。
 >  2. 会員はフォーラムに参加しようとする場合、当該フォーラムの取りまと
 >     め役であるシステムオペレーター(以下 SYSOPといいます)の定める入
 >     会手続を経るものとします。入会手続に審査を伴う場合もあり、審査の
 >     結果、当該フォーラムへの入会を拒否されることもあります。   
 FPROGの入会手続きって何だろう? 分からない(^^;)。まあいいや。いや、よく ないか。FPROGの場合、入会希望者は、入会して数時間〜数日以内に、入会案内メー ルが送られて来ることになっている。この文面に目を通してもらう、という程度 でどうだ(なにが?)。

 で、どこが読みやすいのかという問題なのである。例えば、会員はフォーラム に参加できるのかできないのか。1には「できます」とかいてあるし、2には入会 を拒否されることもある、と書いてあるのだ。矛盾ではないのか? いやいや、入 会できるができないこともあるのだ。何のことだ。

 SYSOPという表現が出てくる。これは旧規約では「システムオペレーター」とい う表現だった。SYSOPとすることにより、見やすくなったようである。これはいい。 分かる。しかし、「当該フォーラムの取りまとめ役」って何? 思わず「ふむ、そ うだったのか」と思ったりするのだが、ここは「フォーラムの責任者」のような 表現を出して欲しかったものだ。俗にはSYSOPは特権機能を使うことができる暴君 :-)のようなイメージを持っている人が多くて、重い責任までイメージしてくれな いものだから。まあいいけど。

 もしかすると、中には無責任なSYSOPもいる、という含みを持たせたのだろうか。

    *
 第13条には、フォーラム内ではSYSOPの指示に従う他、ローカルルールを守るよ うに、という内容である。これがマナーの規約化の一つであろう。早速ローカル ルールに「会員規約を守ってはならない」という一文を追加し… :-)

 第14条は重要である。フォーラムの文章の変更、複写等の規則だ。ネットに掲 示された文章は著作物とみなされるという慣習があり、従って勝手に複写すれば 複製権の侵害となるおそれがある。他のフォーラムでは、「勝手にデータライブ ラリに移動した」とクレームを付けた会員が実際にいるそうだ。だから、この種 の操作が正当化できる根拠が欲しい。規約を引用する。

 >  第14条(フォーラムにおける登録内容の変更、複写、移動等)
 >    会員がフォーラムに登録した文章等は、 SYSOPの判断により当該会員に事
 >  前に通知することなく、当該フォーラム内において、題名の変更、複写、移
 >  動等が行われる場合があります。
 これは、フォーラムの電子会議の発言をデータライブラリに移動する時に、い ちいち会員に断らなくてもよい根拠となる。なお、条文にあるように、これは 「当該フォーラム内において」のみ有効だから、別フォーラムに複写、移動する 時には、著作権者の許可が必要となるはずである。

 ところで、これは以前は次のような内容だった。

  (旧規約)
 >  第17条(フォーラムにおける登録内容の変更、複写、移動など)
 >  フォーラムに登録された文章などは、必要に応じて、ニフティまたは
 >  NIFTY-Serveのフォーラムのシステムオペレーターにより会員へ事前に通知
 >  することなく、題名の変更、またはフォーラム内での複写、移動などが行わ
 >  れる場合があります。
 差は次の通りである。 最後が重要である。FPROGでは、会員規約以外にローカルルールで次の行為を定 めている。
 ・SYSOP以外が会議室に発言された内容をデータライブラリに転載することがで き、これはSYSOPまたはSUBSYSOPが内容を確認した上で公開する。
 旧会員規約では、会員規約により複製の承諾を得ているのはニフティとSYSOPだ けなので、SUBSYSOPや、それ以外のスタッフ、例えばBL(ボードリーダー)が転載 を行うことについては、会員は何も承諾していない状況だった。そのまま転載す ると、複製権の侵害となるおそれがある。従って、FPROGはわざわざローカルルー ルでスタッフが転載できることを明記したのだ。規約変更により、このようなこ とをローカルルールに記述しなくてもSYSOPが判断した場合は、スタッフに指示し て実際の処理を行ってもらうことが、可能になると思われる。

 もちろん、このあたりは些事なのだ。慣習的には何の問題もないからである。 暗黙の了解というやつだ。

    *
 第15条も面白い。空白も含めて引用する。
 >  第15条(フォーラムへの登録文章等の削除)
 >    ニフティ又は SYSOPは、会員がフォーラムに登録した文章等の内容が、第
 >  43条第1項各号の何れかに該当し若しくはその恐れがあると判断し、或は
 >  その他の理由で不適当と判断する場合、当該会員に事前に通知することなく
 >  当該文章等を削除することがあります。                                
                                       123456789012345678901234567890123
 数字は、最後の行末の空白を数えるために付けてみた。フォントの実装によっ ては訳がわからないかもしれないが、手元の環境ならこれで行末に33個の空白が 付加されていることが分かる。もちろん、空白も会員規約の一部に違いないのだ から、会員はこれを遵守する必要がある。とはいえ、残念なことに、行末の空白 の意味は私には読み取れない。裸の王様なのかもしれない。

 それにしても、「虞がある」ならともかく、「恐れ」があったと判断したら無 断で削除できるというのは、まさに恐怖政治である。でも便利かもしれない。SYSOP は、43条に該当すると断言できなくても、恐怖を感じたなら削除しても構わない のだ。

 もっとも、これは現在の条文通りなので、今更議論するような内容ではないが。

 それはさておき、実は第43条というのは退会処分になる例を示したものである。

 >  (1) 入会時に虚偽の申告をした場合
 >  (2) 入力されている情報の改竄を行った場合
 >  (3) ID又はパスワードを不正に使用した場合
 >  (4) NIFTY-Serve の運営を妨害した場合
 >  (5) NIFTY-Serve の利用料等その他の債務の履行を遅滞し、または支払を拒
 >      否した場合
 >  (6) クレジットカード会社、立替代行業者等により会員の指定したクレジッ
 >      トカードや支払口座の利用が停止させられた場合
 >  (7) 会員に対する破産の申立があった場合又は会員が準禁治産宣告若しくは
 >      禁治産宣告を受けた場合
 >  (8) 本規約の何れかに違反した場合
 >  (9) ニフティの名誉を著しく毀損した場合
 > (10)その他ニフティが会員として不適当と判断した場合
 (9)が、さりげなく追加されているあたりが流石だ。言うまでもないが、文面通 りに解釈させていただけば、4月1日からは、ニフティの名誉を毀損しても、著し くなければ、規約違反にはならないことになるのだ。

 とかいって調子に乗っているといきなり(10)に該当するとか言われて会員資格 停止になったりしても私は関知しないので、そのつもりでお願いしたい。

 さて、文章の削除の根拠となりそうなケースとしては、(3)(4)(8)あたりか。特 に、(8)は、規約の他の条文全てにかかってくるため、応用範囲が広い。特に関連 しそうなのが、第40条(自己責任の原則)である。

 >  第40条(自己責任の原則)
 >  1. 会員は自己のIDにより NIFTY-Serve上でなされた一切の行為およびその
 >     結果について、当該行為を自己がしたか否かを問わず、責任を負います。
 >  2. 会員は NIFTY-Serve上で以下の行為をしないものとします。
 >     (1) 公序良俗に反する行為
 >     (2) 犯罪的行為に結びつく行為
 >     (3) 他の会員又は第三者の著作権を侵害する行為
 >     (4) 他の会員又は第三者の財産、プライバシー等を侵害する行為
 >     (5) その他、法律に反する行為
 >     (6) 他の会員又は第三者を誹謗中傷する行為
 >     (7) 選挙の事前運動、選挙運動又はこれらに類似する行為及び公職選挙
 >         法に抵触する行為
 >     (8) NIFTY-Serve の運営を妨げ、或はニフティの信頼を毀損するような行
 >         為
(7)については、以前事件があったのだ。これはFPROG年表(*2)を見てもらえば 分かるかもしれない。公職選挙法なんて、NIFTY-Serve会員150万人のうち、145万 人程は読んだことがないのではないかと想像するが。しかし、これは(5)に含まれ るのではないか。よくわからない。私なら、5を「法律に反する行為」として、 (3)と(7)は(5)の下に入れて、(5.1)(5.2)のようにしたい。ニフティには私と違っ て法律の専門家がフォローするために存在するはずだから、こう書いてあるのは 何か理由があるのだろう。

 40条の1は、最近C言語フォーラムで少し議論に参加した時に関連する内容だ。 議論のテーマは一言でいうと「代理発言は是か非か」だった。議論の詳細は省略 するが、その時、私は「IDの取得者以外の第三者がそのIDを使って発言した場合、 発言者は、会員規約違反にはなりません」と主張した。

 この点は、旧規約も新規約も同様である。つまり、会員規約は“会員とニフテ ィとの関係”について適用される。IDを借りて発言した場合、発言者は会員では ない(と仮定する…会員なら代理発言する必要はないのだから)。従って、会員規 約はこの発言者に対しては適用できない。そして、発言者は、会員規約違反にな らない。我ながら明快な論法である。非会員は会員規約のスコープの外にいるた め規約に拘束されることはない。

 では無責任で済むかというと、そうではない。責任はIDの取得者に全て転嫁さ れるのだ。発言者は間接的に責任を取らされるはずである。

(つづく)


補足

(*1) 明白な誤記の訂正。

(*2) パソコン通信で宣伝することが選挙運動に該当するかどうかが問題になっ た。パソコン通信という言葉が出てきた頃の話。FPROG年表は、プログラマーズ フォーラムのホームページから見ることができる。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -248-
    1996-03-31, NIFTY-Serve FPROG mes(6)-138
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1996