混沌の廃墟にて -240-

灰色の電子世界

1995-12-08 (最終更新: 1996-02-06)

[↑一覧] [新着] [ホームページ]


 Windows95のフィーバーぶりは、おそらくここFPROGの皆さんが想像しているよ りも世間に影響しているようである。私の聞いた話では、それこそ今までパソコ ンのパの字も知らなかった人が、Windows95を買ってみようかな、という気になっ ているというのだ。マウスボタンのクリックとは何か分からないような人達が、 Windows95でインターネットを見よう、と考えてパソコンを買おうと思っているそ うだ。信じられないような話かもしれないが、私自身、その種の話を複数の人か ら聞いているのである。

 やはり、マイクロソフトの宣伝力の効果が絶大だというべきだろう。そして、 それに便乗しようというマスコミや出版社、書店のパワーがすごい。さらに、そ の追い風となっているのが、ハードウェアの低価格化である。最近の売れ筋パソ コンとして、CRT、CD-ROMも付いたフルセットで15万円程度、しかもWindows95プ リインストールのDOS/Vパソコン(どこがDOS/Vなのだ?)というのがあって、これら は秋葉原ではなく、もっと身近な電気屋で買えたりするので、あれだけ大宣伝し ていると、ボーナスを奮発して、つい買ってみようか、という気分になるらしい のだ。

 フルセット15万というのは、デスクトップのローエンドといった所で、最近は ローエンドといってもP5なのだそうだ。もし秋葉原で即売の型落ちモデルを買う 勇気があれば、カラーノートパソコンが10万を切る値段で買える。これがWindows95 プリインストールか、3.1が入った状態で、無料引換券付きだから、これからパソ コンを買おうという人には、このあたりがお得なのではないか。実は最近私が使 っているのがTP230Csというもので、メモリを増設したので消費税を足した状態で ちょっと10万から足が出てしまったのだが、これでWindows95まで付いてくるよう である(まだ送ってこない)。メモリを増設しないと9万円程度で買える。

 ここを読んでいる人には蛇足と思うが、念のため書いておく。TP230Csで Windows95を使おうなどと決して考えてはならないはずだ。メモリが24MB以上あれ ばともかく、16MBだと苦しいという話だ。P5-90のマシンでも。

 実は、このフィーバーに感染したのか、買おうという人が本当にいて、その人 の知り合いから、何とアドバイスすればよいだろうかという相談があったのであ る。で、買うなというのもあまり面白くないので、もし買った後で使えなかった ら、二万〜三万で引取りましょう、というのはどうだろう、という話にしておい た…(^^;)。うまくいけばP5マシンがこの値段で手に入るかも。ちなみに私の持っ ているパソコンで一番速いのは486/66MHzなのだが、遅くて困ったことは今のとこ ろないのだ。ただ、Free UNIX上のXを本格的に使う予定なので、これから困るか もしれない。

 Windows95の操作は、Windowns3.1と大して変わらないのである。だから、早い 話が、Windows 3.1が難しくて使えない人がWindows95だと使える、ということは まずないのだ。現にWindows 3.1が使えない人達がWindows95を買って一体どうす るのだろう。今、書店に足を運べば、Windows95の初心者向け本は、何冊も平積み になっていることがすぐに分かるが、こんな本を読んで理解できる人なら、 Windows3.1をバリバリ使いこなしているはずである。

    *
 先日のリアルタイム会議で一つ面白かったのは、Windows95とプリエンプティブ なマルチタスクの話題で、この種の話題は決して記録タイムには出てこない傾向 があるので、午前2:00頃を狙ってアクセスすると運がよければ遭遇できるようだ。

 その時も話題にしたのだが、プリエンプティブなマルチタスクといえば、本家 UNIXが最近ではPCでちゃんと動いている。私がちと注目しているのが、Solaris x86で、かなり値下げの動きがあるのは、やはりWindows95やNTを警戒しているの かもしれない。もちろん、個人的に一番注目しているのは今やFreeBSDやLINUXの 二大勢力となったフリーUNIXである。

 サンは以前386ベースのWSを出して失敗しているが、SolarisはPC上で動作する という思い切った戦略にもかかわらず、x86版は、いま一つぱっとしないような気 がする。というのも、LINUXとかFreeBSDというフリーUNIXが大健闘している影響 が大きいのだが、企業ベースで導入する場合は、やはりユーザーサポートが用意 されている製品という点が大きな魅力になるから、後は価格設定の問題だろう。 もちろん、サンはボランティアではなくビジネスでサポートしているのだから、 ちゃんとアドバイスを受けるには個人ユーザーの手が出ない程度には十分に支払 わなければならないし、実際、送られてくるパッチと修正バグリストを見ると、 何でこんなものすごいバグが…というのが山盛りなので、製品が安定しているか どうかはいま一つ不安になるかもしれない。もちろん、他のOSのバグリストを見 たことがないのであれば、それは単にリストがないだけであって、バグがないわ けではないのだが。

 有料サポートを受けなくても、ある程度UNIXの知識があるなら、それなりのNG を見てFAQを追いかけるだけでも、運用は十分可能である。とはいっても、UNIXと いうと、今でもやはりadminがいないと身動きの取れない世界であることは確かで、 その壁は高い。最近NGで見たのでは、ファイルを連結したいのだがviで読み込ん で処理すると/tmpが一杯になって出来ない、という質問で、catを使えばよいので は、という回答が付いて、それで出来た、というのが面白かった。これは、結構 すごい質問ではないのかな※。私はUNIXで一番最初に教えてもらったコマンドが 多分lsで、次がcatだったような気がする。kill -1 1を知らない人とか、fstabの 内容が分からない人とか、結構出てきて頭が痛い話である。ちなみに、全部admin 向けのマニュアルに書いてある通りのことである。fjでは昔は「マニュアルを読 んでから質問しろ」という原則があったような気がするのだが、幻想だったのか もしれない。

※私の感覚だと、「この車、どうすれば走るのでしょう?」「アクセルを踏むの です」と同値。

 Windowsはどうかというと、確かにadminはいらないのだが、動かなくなってし まったら、もうどうしようもない、という感じで、身動きが取れないことには違 いないみたいだ。最近も仕事場でどうしても動かないソフトがあって、ユーザー サポートに何度が連絡して応対していただいたのだが、結局駄目。あちらの環境 では動くのだそうである。なぜこちらで動かないのか、全然分からない。ビデオ カードあたりが怪しいかな、という所で挫折して、他の環境を使うことにした。 Windowsと心中する気はない。

    *
Windows95に限らないのだが、前から何度も書いたように、どうもあのボタンデ ザインは気に入らない。押すと右下にへこむボタンである。で、少し気付いたこ とがある。

 最近はWWWのHome Pageの画面がたくさん雑誌で紹介されているようだから、ま だ直接見たことがなくても、どんな雰囲気か御存じの方は多いと思う。テレビで もインターネットをターゲットにした番組があるそうだし。PC-VANからは直接Home Pageをアクセスするサービスが既に始まっているし、NIFTY-Serveでも年内に何か サービスを始めるという噂だから、テキストベースのパソコン通信と同様の手軽 さでHome Pageを見る時代はもう間近なのだろう。私の場合、「この裏切り者!」 モードなのだが、なぜかRIMNETに入っている。なぜRIMNETなのだというと、ホー ムページ開設が無料だったというのと、何となくそこらの噂を聞いたら、RIMNET 派の人が多いようなので。ちなみに、どことは言わないが「ここだけはやめとけ」 と大勢がアドバイスしたプロバイダが一つだけあった。想像できた人は、多分そ れだ:-)。

 ただ、RIMNETは会員一万人限定という制限があって、東京の場合、この制限に 既に到達しているため、簡単には入会できない。退会者が出るのを待って、入れ 代わりに入るしかなさそうである。最近は、地方にAPを増設したり、東京でもも う一つホストを用意して、さらに一万人の会員を募集するという噂も聞いている が、私の場合、既に入会制限モードになった状態だった時に応募したので、まず 入会処理にトライするオートパイロットを組んで、これを使って毎日どんどん電 話をかけた。つまり、電話をかける度に満員なのでまた次回、というメッセージ になるのだが、そのうちチャンスが来るだろう、と甘く考えたのである。これは 実際うまく行った。だからメールアドレスはphinloda@st.rim.or.jpである。待ち きれない人は、横浜から入会するという手があって、その場合はstではないアド レスになった筈。

 ところが、ここまでやっておいて、まだHome Pageは公開していない、というか その片鱗もない。実は自宅のLINUXのバージョンアップに失敗して、全然先に進ま ない状況になっているのだ。単に解決の時間がないということだから、暇さえあ れば何とかなると思うのだが。とかいっているうちに、Slackwareのバージョンは どんどん上がってゆく。で、RIMNETは最近はニュースを読むのと、ときメモMailing Listの受信に専ら使っているのである。

 話をHome Pageの画面に戻そう。ちょっと変だと思わないだろうか。殆どの画面 デザインは、背景が灰色なのである。

 ペーパーメディアの場合、白地に黒の字、というのが最も多い。コントラスト を考えると、これは当然である。背景が灰色だと、コントラストが弱くなって、 その分見にくくなる。にもかかわらず、なぜHome Pageの多くは灰色を背景にした がるのだろうか。ネットワーカーは灰色がお好き?

 そこで一つ思い出したのが、ボタンのデザインなのである。Windowsのデザイン では、ボタンの左と上のふちの部分が白、もしくは明るい灰色になっている。そ して、ボタンの正面は灰色なのである。これは何を意味しているのか。光が画面 の左上方向から当たっているということである。しかも、ボタン横の方が、ボタ ン正面とか、画面全体の灰色より明るいということは、光源が、相当斜め方向か ら当たっているということではないか。例えば、普通の机で想像してみると、蛍 光灯を机の左奥の机面に直接置いたような、そのような状況に近い。こうすると、 Windwosのデザインのような状況になる。

 しかし、私なら、机で作業する場合は、光源は机の上方向から照らすように配 置する。こうすると、平面上に置いた紙面などが最も明るくなり、ボタンの横な どの角度の付いた個所は、その次に明るい部分となるはずだ。

 ということは、Windowsの想定している画面というのは、実は机に対してすごく 低い位置に光源を配置し、かつ、作業する人は、机の面に対して、目の位置は、 45度とか、そんな感じでものすごく斜めから見ている、というものではないか。 だとすると、ボタンを押すと右下にへこむことが説明できるのだ。ボタンを真上 から見ていれば、押してもボタンは奥に入るだけで、右下にはずれない。しかし、 ボタンをかなり斜めの方向から見ていれば、押した時に右下にずれるはずである。 まっすぐ押し込んでも右下にずれるように設計されたボタン(見たこともないが) を想定したというより、この方が解釈としては合理的のような気がする。

 月面の写真を撮る時に、半月の時が立体感があっていい。クレーターの影が出 来るからである。満月の時には、正面から光が当たっているので、影があまり出 ないのだ。Windowsのデザインは、この発想か。立体感を出すために、机の斜め方 向に光源を置いたのではないか。

 で、そういう想像を総合して納得できないのは、もし目の位置が45度なんて角 度だったら、ドキュメントがあのように表示されるのは変なのでは、ということ である。向こうに行くほど横幅が狭くなっていないとおかしい(ちょっと大袈裟か?) 。それに、ユーザーはCRTに対して垂直方向から見て作業することが多いと思うか ら、それにもかかわらず目の位置が45度から、という想定はどこか違和感がある。 CRTでなく、液晶を相手にしていると、より垂直から見る傾向は高くなる。

 Windowsの想定しているデスクトップの世界は、どうも私の想定している現実世 界とはかけ離れた、空間の歪んだ異次元世界らしい。そう考えてみると、割と親 しみあるようなデザインであるような気もしてきたが、一つだけちょっと面白く ないのは、やはり、Home Pageの背景は白にしたいということである。さて、どう すればいいのだっけ?


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -240-
    1995-12-08, NIFTY-Serve FPROG mes(6)-122
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1995, 1996