混沌の廃墟にて -209-

もうコメントなんかいらない

1994-01-07 (最終更新: 1996-05-06)

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 ネットのような双方向のコミュニケーションは、利用者が常に使える状態であ ることが、社会的に認知される不可欠な条件である。「電子メールは受信者がい つでも読みたい時に読めるのが利点だ」ということを裏返せば、いつでも出した い時に出せる必要があるのだ。電話は、今あるメディアの中でこの条件を満たす 最大のメディアである。FAXを併用すれば、図面を送れるという付加価値が生まれ る。特にFAXは価格が低くなるにつれ、ますますに家庭に浸透するだろう。

 特に緊急な要件や、重要な要件のやりとりには、フルタイム稼動であるかどう かが物を言う。さもなければ、一斉に全国民が祈りに付き、全てが沈黙するしか ない。先日アスキーネットが長時間センターダウンした時に、「これだからアス キーネットを連絡に使えない」という発言が早速出ていた。

 NIFTY-Serveも立ち上がり当時は頻繁に落ちていたのだが、最近はやや落ち着い てきたようだ。とはいえ、年が変わる時刻には、リアルタイム会議が使えなかっ たり、混信したりして大変だった。会話が混信するという障害は未だに直ってい ないようだ。リアルタイム会議に参加するときは、思いもよらぬ誰かがそれを見 ている可能性を頭に入れておいた方がよい。

 年賀メールも大きなトラブルがあったそうだ。システムの説明では、過負荷に よるシステム異常で年賀メールの本文が正しく表示されない状態になったのだそ うである。この程度でよかったが、もし関係ない人にメールが配達されたりでも していたら、大変なことだ。氏名というプライバシー情報がシステムの障害で勝 手に漏洩したことになりかねないからである。しかし「過負荷」と簡単に言われ ても、何か釈然としない気分だ。過負荷になれば何が起きてもいい、ということ はないのだ。

 いつでも使えるという意味では、NIFTY-Serveもまだ実験的な段階を抜けきって いない。「え、NIFTY-Serveは24時間サービスじゃないの?」という声もあろう。 残念ながら、1994年になってから既に一度サービスが停止している。元旦の午前 3時からの保守である。

 もちろん、こちらもコンピュータのプロだから、保守が必要であることは認め る。しかし、余程のことがなければ全サービスを停止しなくても保守は可能であ る。ただし、システムの設計が下手だったり、最初から全部止めないと保守でき ないようなシステムのつもりで作れば不可能になるのだが。

 単純に考えれば、緊急時にもサービスを止めないためには、少なくとも2重の系 を用意する必要がある。片方を完全に停止させた状態でもう片方を使ってサービ スできるシステムなら、サービスを止めずに片方ずつ保守することが理論的にで きるはずだ。もちろん、話はそう簡単ではない。だが、実際にどのように運用す ればサービスを止めずに保守できるかは、SEの腕の見せ所だ。

    *
 新年のオープニングメッセージを何度も読まされた。恐縮だがもう一度読んで いただく。
今後とも新しいサービスの開発とアクセス環境の向上に努めて参りますので、 引き続きご利用のほど、よろしくお願い申しあげます。
 一度読めば十分なのにアクセス毎に表示されるのが不思議である。利用者の無 駄なアクセスを少なくなるようなサービスの開発を検討して欲しい。ただし、毎 回表示されたからといって、ただちに課金に響くとは限らない。表示はほんの数 秒の出来事だし、NIFTY-Serveは分単位で課金されるのだから。

 さて、電子会議の仕様が変更されるという。しかも良い所がない。

 NIFTY-Serveが始まった頃は、ユーザーの声が割とよくフィードバックされてい たと思う。ニフティに対して直接意見や質問を書く電子会議もあった。当然、こ のような会議室には、苦情どころか場合によっては罵詈雑言が集中する。特にニ フティに責任のあるトラブルの場合は当然そうなる。このような意見こそが、実 は最も大切だ。罵倒されなくなったサービスというのは、完璧なサービスである か、あるいは見捨てられたサービスのいずれかなのである。

 他ネットを使っていて「NIFTY-Serveは使いにくい」という声を聞く。詳しく尋 ねてみても、それもそうだと思う所がたくさんある。このような意見があること 自体、運営者は把握しているのだろうか。会議室を閉鎖しても、人の心はなくな らないし、使いにくい仕様があればそれは使いにくいのである。そうなると他の 書ける所に書く人もいるし、言うこともできないのなら相手にするのを止めてし まう人もいる。こうやって、貴重な声を無視した結果が、今回のような仕様改悪 につながったのではないか。

 私はNIFTY-Serve全体の仕様について特別にあれこれ言える立場でもない。皆さ んと同じように、誰でも権利を持っているはずの、一会員としての声があるのみ である。使いづらい仕様になるのを黙って見ているか、一言いうか、それは会員 が判断して行動してよいことである。皆さんも何か問題だと思えば、GO CENTERで センター宛メールを出してみるとよい。この間は課金もかからない。

    *
 今回の仕様変更で使いにくくなる機能は2つ。削除発言のヘッダーが表示されな くなること。削除発言へのコメント登録ができなくなること。

 削除発言のヘッダーが表示されないと、どのような不都合があるか。その発言 が削除されたという重要な情報が、利用者には分からなくなるのだ。

 例えば私の場合、現在2種類のログを取っている。一つはデスクトップでハード ディスク上に保存しているもの、もう一つはブックパソコンを使って外部からア クセスした時にできるものだ。これらをマージする時、抜け落ちた発言番号があ ったら、何か忘れているということが分かるのだ。頻度は少ないが、トラブルで ログの一部を紛失してしまうこともあった。最近では、12/16に作成したログが、 ディスクエラーで読めなくなった。この場合、残ったファイルに含まれている発 言のヘッダーを調べ、欠けた発言だけ再度読み出すしかない。

 ところが、削除発言のヘッダーが表示されないと、トラブルでログを失ったの か、それとも発言が削除されたのか、区別ができない。事実を確認するために、 余計な手間をかけて再度アクセスしなければならないのだ。これは大変な無駄に なる。

 弁護しておくが、ニフティは「あこぎな商売」で汚く稼ごうなどとは夢にも思 っていない。正当なサービスで利益を得ようとするはずで、このような無駄なア クセスで課金が増えることは望んではいない。このことは間違いない。では、一 体何のためにこのような仕様変更をするのだろうか。これがわからない。仕様変 更の理由は何か問い合わせたが、一ヶ月待っても返事がこないのである。無視さ れたのだろうか。もしかしたら単に読み損ねたのか回答を忘れたのかもしれない。 そこで、昨年末に再度問い合わせてみたが、まだ返事はこない。(*1)

    *
 もう一つの仕様変更が、削除された発言へのコメントができなくなる、という ものだ。しかし実はこれは個人的には大賛成なのだ。ともかく、どのような仕様 変更されるか確認しておこう。
  1. REコマンドを使った場合は、ただちに「◆既に削除されています◆」と表 示され、プロンプトに戻る。

  2. COMコマンドを使った場合は、「−XXXXX 番は削除されたため、メッセージ の登録になります−」と表示して、メッセージとして登録される。

  3. 本文中にRE:でコメント先を指定した場合。これは私にも分からないので、 掲示より引用しておこう。
     >3)文中"RE:"でコメント先発言番号を指定した場合
     >  文中指定の"RE:"は、本文として登録されます。
     >  また、システム側で自動的に発言にタイトル'Unsuccessful comment'をつけ、
     >  オリジナルメッセージとして登録します。
    
 「タイトル」という言葉は何だろう。題名のことだろうか? 会議室のRTコマン ドで表示されるものが「タイトル」で、SUB:で指定するのが「題名」だと、ずっ と思っていたのだが、どうもニフティはそう解釈していないようだ。これもメー ルで問い合わせている。回答は来ない。

 ところで、「お知らせ」でニフティが例示したものは、

 > >COM
 > 本文(300 行まで 終了は行頭で/E)
 >  RE:1
 >  SUB:TEST
 >   #1に対するコメントです。
 のようになっていた。FPROGの皆さんなら、RE-SUBの順ではなく、SUB-REの順で 書いた方がよい、ということを経験的に御存じかもしれない。この順にしておけ ば、元発言が消えている時に自動的にSUBで指定したタイトルのメッセージになる からである。RE-SUBの順で文章を書くと、"/E"を入力した所で「題名」を入力す るというインタラクティブな操作に突入してしまうので、オートパイロットがそ こまで見切っていなければ大変だ。では、この順で書いたら、仕様変更後どうな るのか。これも問い合わせているが、回答がない。(*2)
    *
 仕様が改悪と言ったが、一体どこが悪いのだ、という点についてはっきりさせ ておく。

 まず、REコマンドだと発言できないが、COMコマンドだと発言できるという、ち ぐはぐな仕様。REコマンドを使った時に、なぜ「−XXXXX 番は削除されたため、 メッセージの登録になります−」と表示しないのか。あるいは、COMコマンドを使 った時に「◆既に削除されています◆」と表示してプロンプトに戻さないのはな ぜか。理由が理解できないし、センスもない。

 'Unsuccessful comment'という表現にも呆然とした。多分「失敗コメント」程 度の意味なのだろうが…仮にも少しでもUIの勉強をした人なら、利用者が理解で きる言葉でメッセージを表現する、というのは基礎の基礎の基礎であり、さらに 駄目押ししておけば、こんなの常識である。何かの都合で素人が仕様を設計した のか、もしかすると、NIFTY-Serveは英語が堪能な人が利用する、という前提でも できたのかもしれない。

 しかし、最も悪いのは「削除された発言へコメントできない」という仕様その ものである。簡単に言えば、2月からNIFTY-Serveは、ある発言にコメントできる かどうかが発言する時点まで分からない、というシステムになるのである。

 電子会議は、タイムラグのあるメディアだ。ある人が発言を見てその場で考え て即興でコメントする、という人がいても当然構わないが、それと同時に、ある 発言をじっくり読んで考え、それから文章を練り、コメントする、というアプロー チであっても当然構わないのである。

 じっくり読んで考え、文章を練って、コメントしようとした時に「◆既に削除 されています◆」の一言で納得できるものだろうか? これが元で激昂し、「なぜ 発言を削除するのだ、訳をいえ、訳を」のように、余計なトラブルの元になって は大変だと思うのだが。

 発言を削除する側にも責任がある。一旦発言した内容は、誰も読まないうちに 削除した場合を除けば、誰かが読んでいるのだ。FPROGなら、一日に数百名がフォー ラムを利用する。一日置いておけば、多分百名はそれを読むだろう。それから削 除しても、発言したという事実は何ら変わらない。ここを誤解している人はよも やいないと思うが、念のために強調しておきたい。一旦公開した発言は、たとえ 削除しても、「発言した」という事実がしっかり残るのだ。それを読んだ人が何 か感じてコメントするのはオンラインコミュニケーションの当然の姿だ。

 もしある発言が削除された場合、削除前に偶然それを読んだ人が一部を引用し てコメントすることは可か否か。一旦公開してしまったものは、公開されたので ある。公開したものを引用されたからと言って、文句を付ける筋合いはない。引 用されるのが嫌なら最初から公開しなければいい。だいたい引用されて困ること を発言する方に大きな責任があるのだ。文章を公開するということは、よほどの 覚悟が必要なのである。削除された発言へのコメントは避けるべき、などという コンセンサスはどこにもないのだ。

 削除された発言にコメントできなくすることによって「コメントで書こうとし て失敗する」という不便な状況が追加されるにもかかわらず、その見返りとして は何の利益も想像できない。仕様変更の理由を問い合わせているが、まだ返事は 来ない。

    *
 さて、今回の仕様変更は、もはやニフティも考え直す気がないようだ。そこで、 会員の皆さんの取る行動としては、NIFTY-Serveから他のネットへ乗り換え…など とは夢にも考えないでください(^^;)。折角集まったこの場を大切にしよう。

 「折角コメントを書いたのに、登録しようと思ったら出来ないなんて…」とい う気持ちはわかります。しかし、既に一部の人が行っているような、所謂「止め レス」を実行するというのも無作法かと思う。止めレス?

 説明しよう。(*3)「止めレス」というのは、アスキーネットでは割とよく使わ れている技である。その後NIFTY-Serveにも伝わったという説もあるが、発想は 単純だから、ある程度は独立して発明されたと思われる。

 アスキーネットでは、NIFTY-Serveのコメント・発言に相当するものをレスポン ス、略してレスという(厳密には違うかもしれないが、とりあえずそんな感じ)。 自分の発言の後に別のレスがなければ、発言者はいつでも発言を削除することが できる。しかし、その後にレスが付いたら、もう削除できない。誰かの発言を読 んでレスを書いているうちに元発言が消されると、がっかりするものだ。そこで、 レスを付けたい発言があったら、ただちにレスを付けるのである。内容はいらな い。「とりあえず、とめ」とでも書いておく。これでその発言が削除される心配 はない。このレスのことを「止めレス」というのだ。あとは落ち着いてゆっくり 文章を書いて発言すればよい。

 NIFTY-Serveでも、コメントが一旦付いた発言は、発言者削除できない。とりあ えずコメントを付けるという技が有効である。これも何故か「止めコメ」ではな く「止めレス」と呼ばれるらしい。本文が「とりあえず、とめ」だけならともか く、「あなたのご意見には賛成できません。意見をまとめて後日反論いたします ので、しばらく時間をください。」なんて書いてあったら、もう仕方ないとしか 言い様が無い。

 余談だが、今回の仕様変更によって、こういう技が可能になる。一旦コメント が付くと、それが削除されても元発言は削除できないままだ。そこで、止めレス を書いたらすぐにそれを発言者削除してしまう。すると、MREADで読んでいる人に は、止めレスのヘッダーは表示されないから、誰が止めたのかわからない。しか も止めレスは削除されているから文句のコメントも付けられない。この点だけは 仕様が改良された、ということになるか:-)。

 コメントできるかどうか発言時までわからないなんて、一体どうすればいいん だ。簡単である。コメントではなくメッセージとして書けばいい。常にメッセー ジとして発言すれば、確実に登録される。内容は読めばわかるし、読まなければ 分からない。今とあまり変わらないではないか。ペアレントリンク? そういう機 能もあったっけ。しかし、削除発言にコメントできなければ、どっちみち発言間 の関連は、何か削除された所で破壊されるのだ。仕様変更自体が、ペアレントリ ンクに反逆するような方向の変更なのである(だから私は賛成なのだ)。だいいち、 発言する直前までそれが登録できるかどうか分からないような機能を使う気にな れますか? 不安だったらためらうことはない。メッセージで書こう。もうコメン トはいらない。


補足

(*1) とにかく回答が来ないのは当たり前という経験則がある。数日で返事があったら「おい、何があったんだ」と心配してしまう。1か月で返事が来ればラッキー。

(*2) SUB,REの順で書いておけば、コメント元発言がなくなっている場合にはSUBで指定したタイトルが有効になって、REの行は本文に表示される。従って、現状でもこの順に書いた方が発言者の意図は反映される。

(*3) 「説明しよう」というセリフは某アニメの影響かもしれない。

(*?) ところで、このタイトル「もう○○なんていらない」という何かのパロディのつもりで付けたような気がするのだが、何でしたっけ?


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -209-
    1994-01-07, NIFTY-Serve FPROG mes(6)-071
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1994, 1996