混沌の廃墟にて -201-

光磁気ディスク導入大騒動

1992-12-31 (最終更新: 1996-06-05)

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今年を振り返ると、いろいろ大変なことがあったが、個人的に大変なこととい えば、初夏にハードディスク上のファイルシステムが壊れたことである。

現在なお原因不明としておくが、およその見当は付いている。おそらくかなり の確率で、あるソフトウェアを実行した時に、ファイルシステムを破壊するよう なディスク書き込みが行なわれたらしい。症状は、ハードディスクが物理的に読 めなくなったのではなく、FAT およびファイルの一部に変なデータが書き込まれ たのである。再現テストをする暇がないので、まだ確証は得ていないのだが、状 況から考えて、それ以外の原因がないのはほぼ確実と思われる。

この時に、たまたま壊れたパーティションには、ネットの過去のログが入って いた。特にFPROG のログが入っていたのが痛い。FPROG の方は、一部はデータラ イブラリに登録されているが、完全なログはあまり登録されていないので、復元 できなければ消滅という最悪の結果になる。実は、次の理由により、それ以外の ログの方が被害が大きかったのだが。

というのは、FPROG のログは、捜せば大部分がフロッピーにも同じものが入っ ていたのだ。ログをフロッピーに取る習慣があったのである。ハードディスクや RAM ディスクに取ると、なぜだかわからないが、データがぽろぽろ欠けてしまう ので、そうしていたのだ。ある人にこれを言うと、おそらくキャッシュの影響だ ろうと原因を推測していた。

春に、FPROG に対する要望の会議があった。これはまとめて結果を報告すると 宣言したが、かなり時間がかかってしまった。これを最初まとめるのに、約1週間 かかったのだが、その結果のファイルが事故の副作用で消滅したのである。しか し、運のいいことに、これと全く同じ原稿が、フロッピーに入っている筈だ。 DynaBook も使いながら文章を作成したからである。PC386 と DynaBook で、殆ど 同じ文章作成環境があるというのは非常に便利なものだ。

ところが、このフロッピーが見つからないのだ(その後かなりたって見つかっ た)。

もちろん捜したのだが、50枚位フロッピーを入れ替えて内容をチェックした所 で挫折した。この作業で土曜日が潰れている。Weekday はこのような作業に使え ないから、土・日勝負になるのだが、当時の土・日はフロッピーからファイルを 捜すために使っていたようなものだ。これでは人生がもったいなくはないか。

    *
それで光磁気ディスク(MO)を購入することにしたのである。予算は全くないの で、いかにも無謀な行為だ。1枚のディスクにログが入っていれば、時間はかかる かもしれないが、find や grep で検索すれば一発である。それに、MOはフロッピー よりは保存がききそうな気がする。そろそろ最初に作成したログは5年になるが、 読めないものが出てきている。一度リフレッシュしなければいけないと、かねて から考えていたのだ。

その日のうちに買ってしまう気だったので、銀行に行って一応現金を下ろして、 渋谷のJ&Pにまず行った。J&Pだとカードで買えばいいのだが、他の某店で買うこ とになると、現金の方が安く買える。一応、カードの場合に手数料を加算しては いけない規則らしいので、店員と喧嘩する覚悟があればカードでも安く買えるそ うだが(その場でカード会社に電話するとか)、体力はあまり消耗したくない。

店員に勧められたのは Logitec のドライブである。定価は高いのだが、他のメー カーが安いものを売り始めていたので、実売価格はそれほど変わらず、当時で20 万円以内で購入できる程度だった。

ところで、ここで困ったのは、MOドライブに手持ちの HDD が接続できるかどう かだ。店員の説明では、MO と HDD のメーカーが異なると、接続は保証できない というのである。最近の HDD は、高速化のために、いろいろややこしい処理をし ているので、相性が悪いと動かないというのだ。これではSCSI という規格は半分 死んでいるようなものじゃないか。

さらに困ったことに、私の持っている HDD は itec という今はなきメーカー製 のもので、従って同じメーカーの MO ドライブが存在しないのである。HDDを買う 時にはすでに、光磁気ディスクを後で購入する予定であり、HDD はそれまでのつ なぎ、という発想だった。HDD を購入した頃は3.5インチの MO がまだ販売されて いなかった。5インチのものは発売されていたが、50万円程度するのでは手が出せ ない。しかし、HDD を買った時にはメーカーが倒産する所までは読めなかったの である。

そこで、さらに無謀な話だが、HDD をまず新規購入することにした。HDD も 135M では今は若干手狭になってきたので、少し容量の多いものを買って、そして、同 じメーカーの MO を買うことにする。今度は MO が既に販売されているから、メー カーが倒産して MO が手に入らないという心配はない。(*1)

で、話は戻る。店員は Logitec のドライブを勧めたのである。ということは、 MO と HDD を、同じ Logitec 製にするのがよいことになる。しかし、実は私は ICM の MO を買おうと思っていた。なぜなら、NIFTY-Serve の電子会議を見てい ると、そのユーザーが結構多そうだったのだ。ということは、何かあった時に情 報が入手しやすいのではないかと考えたからである。値段も安い。ただ、ICM の MO はその時に在庫がなかったのである。

ここで買っておけばあまり問題はなかったかもしれない。しかし、この日に、 ちょっとした用事もあったので、一応考えてから後で来るということにして、一旦 店を出たのである。これが運命の分かれ目となった。

    *
渋谷まではS氏に送ってもらった。S氏はこれからオフだと言っていた。タフ である。で、J&Pに戻ってその場で買ってしまおうと思ったら、HDD が丁度売れて しまいました、というのだ。じゃあ注文を入れたらどの位かかりますか? 「実 は明日から店内改装なので、10日程休業になります」 ぐわ〜。

という話になったので、某店に行くことにした。この店は itec の HDD を買っ た店なので、信用できる(なにがだ)。なお、渋谷では、「他より高ければ必ず お安くします」のビッグカメラよりも安く買えることが多いので、経済的に諸問 題を抱えている私向けの店でもある。

ただし、店員が外れというか何というか、MOはどうなのか尋ねようとしたら、 専門知識がまるでない。しかし、はっきりと「何がいいかわからない」と言われ てしまった。逆に、そこまで明確に言ってくれればこちらにも対処のしようがあ るので助かる。カタログをバインダーに綴じたものを見てスペックを確認し、や はり ICM のが無難かなと思ったわけである。当時、雑誌にも3.5インチMOの比較 記事がよく載っているのでチェックしているし、だいいち私の場合まだ1機種も販 売されていない頃から3.5インチMOを買うつもりだったので、その手の情報は一応 吟味してあるわけだ。

さて、これで注文したら、納期が最低1か月、多分1か月半と言われた。MOって そんなに貴重品だったのか…。今年の初夏の話である。

    *
それから1か月程たった所で、納期はどうなったか尋ねてみたら、わからないの でメーカーに問い合わせてみるということだった。折り返し連絡するというのだ が、たいていこの手の電話は昼休みに公衆電話から掛けるので、折り返せるもの なら折り返してみなさい。とは言わないで、とにかく結果を自宅の留守番電話に 入れてくれといっておいた。

しかしさらに1週間たってまだ連絡がない。もう一度連絡する。また問い合わせ ると言われる。前回は問い合わせ忘れたのだろうか。すぐ調べますので、30分程 で折り返し連絡するという。ふむ。

これが延々と続けばいくらでも長く書けるので楽だが、残念なことに今度はち ゃんと留守番電話にメッセージが入っていて、納期はあと1か月というのだ。1か 月半程度という話が、一気に2か月半になってしまうのである。

ここで1つ問題が増えていた。この1ヶ月半の間に、MOドライブの実売価格が1万 円程度下がってしまったということだ。他でもっと安く買える状況にあるのだ。 なら、1ヶ月待って高いものを買う必要はない。念のため価格を尋ねると、変わら ずという。おなじ店が雑誌に載せている広告には、もっと安い値段で3.5インチMO を売っているので、これは何か尋ねてみたら、別のメーカーのものだと言われた。

とりあえず、予約を入れた状態で考えさせてもらうということにして、もしか するとキャンセルするかもしれない、と言う。

    *
で、もっと安い値段の付いている店はどうだろう。通信販売というのはあまり 経験がないのだが、この際手段を選んでられないので、とりあえず電話をかけて みることにした。ちなみに、当時のICM の光磁気ディスクの安売り価格は、接続 キット込みで16万円程度だった(消費税別)。

それが、最初にかけた所では何と「ICMのMOの納期は3か月です」というのであ る。これには呆然とするしかない。本当に製造しているのだろうか?

3か月も待っていると老人になってしまうような気がしたので、他の店に電話し てみた。すると、ある店で納期1週間というのである。えらい違いである。ちょっ と信じられないので「本当に1週間ですか?」と念を押してしまった位だ。1週間 なら「買い」なのだが、1か月半と言われて2か月半かかり、他の店では3か月と いう製品なのだ。ほんとうに手に入るのだろうか。

現金振込を確認してから発送というシステムなので、とりあえず注文という訳 にもいかない。広告にはしっかり、「お客様の都合によるキャンセル・交換は不 可」と書いてある。しかし、1週間で駄目ならどうなるのだろうか。これが一番気 になる所なので、かなりくどく尋ねたが、時間が掛かるようなら改めて連絡して、 そのときに解約できるということだった。1週間という条件で買うのだから、向こ うの都合で遅れるのならキャンセル可というのは当然だろう。

そこで、あと1か月という方との調整が問題である。両方買うつもりはない。そ こで、1か月の方に、キャンセルするかどうか、あと1週間程度考えてよいか尋ね てみると、全く問題ないと言われた。それなら、とりあえず他に注文して1週間以 内に来ればキャンセルという手がよかろう。今から考えてみれば結構無謀の連続 だったような気もする。

    *
さくら銀行に行って、自動振込機というのを使った。この機械、この前使った 時には、最初から延々と手順通りに処理して、最後に確認して、それ振り込めと いう所で「暗証番号が違います」になって最初からやり直したという代物である。 そういうのは、最初に確認してくれよ〜。

今度は、暗証番号を念には念を入れてきっちり打ち込み、確認に確認を重ね、 これで絶対大丈夫、と自信をもって入力した。いつも思うのは、自動振込機のユー ザーインターフェースの悪さである。特に、文字を入力する時に、画面がタッチ パネルになっているのだが、50音を画面に全部出そうとするとどうしても各ボタ ンが小さくなるので、間違って隣の文字を押してしまいそうになる。

ペン入力とまでは言わないが(将来はそうなるのだろうか)、せめて指を近付 けた位置、あるいは感圧を検出して、軽く触った時にどのキーを押すことになる か反転表示なり音声合成なりで確認できるようにしてほしいものだ。

さて、全ての手順が終わったら、「しばらくお待ちください」という表示にな ったので、素直に待っていたら、画面がいきなり消えて真っ暗になって、しばら くするとパネルに「停止」と表示された。

店員がかなり恐縮して、機械の調子が悪いので(それは見ればわかる)申し分 けないが窓口で振り込んでくれという。この店、振込機は1台しかないので、言わ れなくても機械が停止していれば窓口で振り込むしかない。用紙を貰って書くの だが、入金はカードではできないから一旦下ろしてくれという。このあたりの詰 めが甘い。確か、条件が揃っていれば、窓口でもカードからの出金ができるはず だ。連携させることは可能だろう。もっとも、それは相当希なケースになるかも しれないが。

んで、MOの代金を下ろそうとしたら、「残高が足りません」ときた。…なんで だ? つまり、振込の途中で端末が停止したわけだが、少なくとも現金を引き出 す処理までは終了していたということか…なるほど、理解すれば分かる(なにが だ)。

こうなったら、文句を言えばこっちの勝ちである。預金残高だけが減って振込 はキャンセルというのは誰が考えても無茶苦茶すぎる。言い合いになれば負ける 気がしない。もちろん、いくら何でもオンラインのシステムがそんな仕様になっ ている訳がない(甘いかもしれない)。という訳で、結局この場合は振込も正常 に終了していて、トラブルは、その結果を明細書に印字するあたりで発生したの だろう。

とりあえず一部手書きの明細書をもらってよしとするが、いきなり不吉である。

    *
さて、結局驚いたことに、1週間丁度で無事MOが届いたのである。FPROGの過去 のログはMOに移動した。実はこれを動かすまでも一騒動だったが、それについて は、またの機会があれば書く。とにかく、MOの導入により、少しは混沌が整頓に 近づいたと思う。

そして、新たな恐怖も感じている。そのうち「どのMOに入れたっけ?」というこ とになりそうなのだ。もうなっているのかもしれない。(*2)


補足

(*1) だからメジャーなICMを選択したのだ。まさかICMまで倒産するとは思わなか った。私が買うと倒産することになっているのだろうか。私が行く喫茶店は潰れ るというジンクスがあるのだが、パワーアップしたのかもしれない。次はどこの メーカーのを買おうかな。:-)

(*2) この予想だけは完璧に当たった。MOの山。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -201-
    1992-12-31, NIFTY-Serve FPROG mes(6)-356
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1992, 1996