混沌の廃墟にて -192-

なんてありふれたハンドルを…

1992-12-14 (最終更新: 1996-03-25)

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かなり以前の話だが、今はなきBFREEで珍事があった。ハンドルが衝突したので ある。これだけなら、よくある話なのだが、衝突したうちの片方の当事者がもう 一人に対してこのハンドルの使用中止を要求したため話がこじれた。こじれたと 言っても、使用中止を要求した人と、その他の人との激論になった時点で、勝 負は見えているのだが、要求した人が全然折れないので、こじれたのである。

ネット人口はいまや百万人と言われるが、これは多分ハッタリである。しかし ハッタリとしても、ハンドルのネーミング等は、あまりボキャブラリがないので、 付けるのに困るものである。強いて言えば、ハンドルが衝突する位は当然の事故 だと考えておいた方がいい。一つの傾向として、非常に多くの衝突する名前と、 殆ど衝突しそうにない名前の差が、あまりにも顕著であることを指摘しておきた い。以前にも書いたように、以下のようなハンドルは衝突してくれと言っている ようなものだ。

  ・実名の一部を取り出したハンドル、
        例:HIRO、SHOW、YOSHI
  ・有名な小説、映画、マンガの主人公を借用したハンドル
        例:(書くまでもないだろう)
もちろん、私はとうの昔にHIROさん、SHOWさん、YOSHIさん達を識別することは 諦めている。そのうち、ネットに参加する人がのべ何千万という時代になるだろ う。こうなると、極めて多数の同名者が同居するという摩訶不思議な世界に身を 置くことになるかもしれないのだ。

そんな先の話をしなくても、実際千人、二千人が好き勝手な名前を付ければ必 ず衝突するものである。

もっとも、ネットの外の世界においても、実名がぶつかるという事はありがち である。特に、日本の場合は姓を変更するのは大変なことで、世代が続く限り同 じ姓の人がどんどん増えてゆくかもしれない。名はどうかというと、流行みたい なものがあって、例えばタレントと似たような名を付けてしまう親とかが多いと、 同じ世代の人ほどぶつかる確率が高くなるのである。ただ、この世界においてそ れがあまり問題にならないのは、ネットのように極めて多くの人が同居するよう な環境は殆どないからである。

    *
主張を述べる前に明確にしておきたいが、もちろん一方のハンドルを見てから 真似をするのは論外である。悪質な場合は、こういうのは騙りという。悪意の有 無にかかわらず、モラルが問われるのが当然だろう。仕方がないというのは、知 らずに同じハンドルになってしまった場合や、都合によりハンドルの衝突が不可 避な、例えば実名が一致したような場合である。

例えば、私のハンドルを見て、フィンローダというハンドルを付けた、という 人がいたとしたらどうか。これだけでは問題でないかもしれないが、その人があ たかも私のごとくふるまい始めたら事態は深刻である。ただし、このような行為 はモラルには反するという共通理解があると思われるから、よほど悪質な人でな ければ、あえて騙ろうとはしないと思う。

じゃあ、私がフィンローダというハンドルを付けたのと同じ理由で、偶然ある 人がフィンローダという名前を付けてしまったらどうするべきか。現実には、フ ィンローダとは何かを知っている人がものすごく少ない。さらに、もし知ってい ても、あえてこれをハンドルにしてしまおうという酔狂な人がいるとは思えない ので、難を逃れているのだろう。ともかく今までにフィンローダの由来を説明し ないうちに看破したのは、いきなり名前を出しては失礼かもしれないから伏せて おくが、たった一人だけしかいない。(*1)

    *
BFREEで混乱した原因は何だったか。ハンドルだと区別できないので仮にAさん、 Bさんと呼ばせていただく。事件は要するに次のような経緯をたどったのである。 AさんとBさんのハンドルが衝突した。AさんはBさんに対して、ハンドルを盗 用したと主張し、Bさんにハンドルを変更するよう要求した。BFREEの参加者は完 全にBさん擁後に回り、Aさんを非難した。これは当然である。なぜなら、Bさ んはBFREEで、過去にこのハンドルで何度か発言していたが、Aさんは一度も発言 していなかったのだ。

つまり、その他大勢から見ると、Bさんという先にそのハンドルを使っている 発言者がいる所へ、後から同じハンドルを使った見たこともない人が突然やって きて、「そのハンドルは私が使っているからBは使ってはいけない」と言ったの である。これはAさんにとっては場所が悪すぎる。BFREEではそのハンドル=Bさ んであって、決してAさんではないのだ。

Aさんの失敗は2つある。まず、自分が有名だと思ってしまったことである。 特にBFREEという場にAさんを知っている人がいないのが問題だ。もしAさんが何 かBFREEに書いたのに対して、Bさんが「私の方が先に使っているので、ハンドル を変えてくれ」と主張したら、どうなるだろうか。今度は意見が分かれると思う。 なぜなら、Bさんはその場において、実際にハンドルを使い続けてきたからだ。

もう一つの失敗は、誰でも思い付きそうなハンドルに対して、「このハンドル は自分しか思い付かない」と思い込んでいたのではないか、という点にある。実 際本人がそう思っているかどうかは、直接尋ねてみないとわからないかもしれな い。しかし、少なくともAさんは「Bさんが盗用した」と主張したのであるから 「Bさんがそのハンドルを独力で思い付いたのではない」と判断していたと解釈 せざるを得ない。自分で思い付いたものを盗用とは言わないのである。

    *
フォーラムの中では、システム設計者がその能力を持っていれば、これを回避 するシステムを作ることは難しくない。一つのアイデアは、既にあるハンドルは 重複して登録できないようにするというものである。システムとしては、単純に 検索してから登録すればよいだけだ。処理は全然難しくない。ただ、下手に処理 すると、やたら処理時間がかかるかもしれない。これだけは問題である。

間接的に回避する案もある。登録時に検索するのではなく、ハンドルが検索で きるような機能を用意しておくのである。新たに参加しようとする人が、あらか じめ同ハンドルの人のいないことを確認してから入会すればいいのだ。現時点の NIFTY-Serveのフォーラムの機能でそれをやろうとすると、会員一覧を全部表示し て、自分で検索しないといけない。そんなことはやってられないのである。でき るだろう、という人はやってみればわかる。なお、FPROG は、毎日10〜20名が入 会し、1〜2名が自主的に退会しているので、参考のため。さらに、ちょっと気分 が変わったのでハンドルを変えた、という人がいない保証はない。(*2)

ハンドルからIDが検索できるようなシステムにしておけば、何かと便利だとは 思うのだが、そういうサービスが一向に機能追加される気配がないのも不思議で ある。実際、そのようなニーズが全くないということか。もっとも、その機能が あっても、全然使わないかもしれない。なぜなら、大抵の場合は、手元にハンド ルもIDもあるからである。

とにかく、全員のハンドルを検索することがシステムで不可能な以上、偶然ハ ンドルが衝突するという事故は避けられないと結論するのが妥当だ。しかし、衝 突率を低くすることは可能である。

私の場合、他のネットでは他のハンドルを使っている。これは衝突したことが あるのだが、そのまま使っている。先に使ったのは、IDの番号から想像して私の 方なのだが、お互い全然気にしていなかったのと、文体の個性と話題の守備範囲 にかなり差があって、読めばたいていどちらか区別できるため、何の問題も起き なかったようである。もっとも、読む人は、結構混乱していたのかもしれない。 なお、そちらのハンドルは、実はネットではなくゲームセンター通いで暮らして いた時代のハイスコアネームだから(*3)、元をたどればもう十数年前からそれを 使っているのだ。

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ところで、NIFTY-Serveの表記は「ハンドル」と「ハンドルネーム」が入り乱れ ている。私の解釈は「ハンドル=ニックネーム」だから、「ハンドルネーム」は 「ニックネームネーム」で変だ。というのはどうでもよろしいが、とにかくどっ ちかに統一してもらえないもいだろうか。こんな所に書くなら、ニフティに提案 すればいいじゃないかって? そうでもない。ハンドルネームに統一されそうで、 ちょっと怖いのである。だから黙っているのだ。(*4)


補足

(*1) 1996年3月の時点で、名付け親(?)のご本人様を含めて3人か4人位だと思われる。まさかこのハンドルがそこまで到達するとは思っていなかったのだが。

(*2) 現在、会員一覧はほとんどのフォーラムでサービスを閉鎖している。

(*3) 一度だけ、ベーマガにハイスコアが載ったことがある。

(*4) 「ハンドルネームって何?」って尋ねられたら、「ハンドルの名前でしょ」と答えるといい。ネストしているが、一応筋は通っている。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -192-
    1992-12-14, NIFTY-Serve FPROG mes(6)-288
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1992, 1996