混沌の廃墟にて -179-

この木なんの木? (1)

1992-07-06 (最終更新: 1996-07-25)

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ペアレントリンク機能が持っている根本的な欠点については、既に「混沌の廃 墟にて -174-」の「縁による発言」で指摘した。なぜこのような機能が追加され たのだろうか? 考えてみた。

既に、NIFTY-Serve 全フォーラムの発言を読むのは実行不可能である。 人間が読む速度より、発言の増える速度の方が、はるかに速いからだ。 全フォーラムどころか、フォーラムによっては、その中の発言だけでも、全 て読むのはもはや不可能である。なにしろ会員が多いのである。

そこで、読者の要求としては、当然興味のある話題だけを拾い読みしたいとい うことになるだろう。

これを実現する一つの方法として、ペアレントリンクというアイデアになった のだろうか。コメントという既存の関係を、興味のある話題を選択するために利 用するということか? これは違う。なぜなら、ペアレントリンクを指定したとし ても、よほどうまくコマンドを使わない限り、結局未読の発言はすべて表示され てしまうのだ。特定のリンクのみ表示する機能がなければ、あまり意味はないの ではないか。結局話題ごとに表示されるだけで、読みたくないものも表示される のではたまらない。

既に、ペアレントリンクを効率よく使うために、コメントをもっと活用してく ださいとか、まとコメは止めましょう、といったお願いが出されているフォーラ ムがあるかもしれない。正論である。しかしこれは無茶だ。複数の発言と関係の あることを書きたい場合は頻繁にある。わざわざ「まとコメ」(*1)の形式にする ような場合は分解すればよいだけだが、そう出来ない場合が問題である。分解で きないような場合も多いのだ。例えば、AさんとBさんの発言を比較した意見をど うやって対応させればよいか考えてみれば一目瞭然である。

 発言の自然な関係を無視して、このように機能的制限で発言の方法まで制限す ることには納得できない。読者の都合のために発言者が必要以上に気を配らない といけないというのがおかしい。気を配るのはむしろシステムの仕事なのではな いか。コンピュータはそのためにあるのである。NIFTY-Serveでは、結局コンピュ ータに人間が使われてしまっているのだ。

    *
現実的には、関心のある話題だけを読みたいという希望は、NIFTY-Serve のほ ぼ全会員が持っている。だからこの期待に応えるべきだ。どうすれば実現できる か。 「会議室を全部表示してしまうから、関心のない発言も含まれてしまうのだ。」
「だからペアレントリンクで一部の発言だけを取り出そう。」
まあ一応そういう考え方もあるかもしれないが、ちょっと待ってくれ。なぜ会 議室の中に関心のない発言が混在するのだろうか。

発言と発言の関係が、単純に「関係ある」「関係ない」の2つに分類できない ことは何度も指摘した。だから、会議室内に「あまり関係ないが、多少は関係ある」 程度の発言が混在するのは仕方がない。そのような混在は、必然性があり、あえ て分ける必要はない。だが、現在の NIFTY-Serve では、無関係すぎる発言が、1 つの会議室に必要以上に混在すぎている。なぜだろうか?

その理由は極めて単純だ。会議室が、最大「たった20個」しか作れな いからである。

この理由はあまりにも当たり前なので、かなりの人が見過ごしているのである。 想像してみればわかる。もし、1つのフォーラムに会議室が256個、999個、ある いは無制限に作れるようになっていれば、話題ごとに会議室を作るのが最初から あたりまえになっていたのではないか? これが実現できないという前提になっ てしまっているのは、システムの根本的な欠点と言わざるを得ない。

いや待て、会議室が無制限に作れるようにすると、資源が足りなくなるじゃな いか? 多分、ニフティにこの要望を提案すると、「資源の問題があるため実現 できません」といった回答が得られると想像する(*2)。当然これはシステムの仕 様の問題であって、資源の問題ではない。現に、実用上無制限に会議室が作れる システムもあるのだから。

例えば会議室に含まれる発言は512と制限されているが、これを会議室ごとに制 限するからいけない。32日ステージのような短期会議なら、512の発言が揃うこと はまずない。128個で十分なのである。だから、512発言の会議室が10個あるより は、128発言の会議室が40個ある方がいい。そうすれば、同時に多くのテーマの会 議を行うことができて、参加者は興味のある話題だけに注目することができる。

もっと自由度を持たせて、フォーラムに保存できる発言の数だけを制限する手 もある。例えば、FPROG には 10240 発言が保存できることにして、それをどの会 議室にどう割り当てるかは、SYSOP が決めるという仕様も考えられる。

場合によっては、300行の発言512個ではなく、30行の発言を5120個格納したい こともあるだろう。このような自由度を持たせても、発言の内容を保存するため の資源は、ほとんど増えないはずだ。発言が増えるために必要な情報を保存する ための領域は増えるかもしれないが、大きな影響はないだろう。5120個の発言が 4000個でも構わないのである。

はっきり言ってしまえば、問題は、多分システムの仕様設計を最初からやり直 さなければいけないが、そうする手間が大変だということであり、さらにはそれ を実行することのできる技術者がいないということなのだ。

利用者の可能性を制限してしまう仕様は、悪い仕様である。

    *
会議室数を無制限にすることにより、参加者は興味のある会議室を選択するよ うになるだろう。その結果発言しやすくなることに注目すべきである。今でも、 特定の会議室だけ読んでいる人が多い。1つの会議室で会話できる人の数は限ら れてしまう。あまり人数が多いと、発言が増えるペースが速くて追い付けなくな るのだ。(*3)

百人程度が参加している会議室が数百個ある、という状態は、双方向のコミュ ニケーションを実現するための、一つの解ではないかと思う。会議室の分散化は 面白いアイデアだ。が、私見としては、現在 NIFTY-Serve でこれを実現すること はほぼ絶望的だと思う。

さて、会議室を無制限に増やすと、別の問題も出てくるのである。数百個も会 議室が出来てしまうと、その中から興味のある話題について議論されている会議 室を探すのが大変だ。

(つづく)


補足

(*1) 複数の発言に対して一つの発言でまとめてコメントすること。

(*2) 最初、NIFTY-Serveはフォーラムの会議室が10個だったのである。それが20個に拡張された。データライブラリも同様だ。ところが、拡張する場合には申請して欲しいというのだ。全て一斉に拡張しない理由は? 資源を節約するため、というのである。

(*3) ときめきメモリアルSS版が発売された。専用会議室は「あっ」という間に1,000発言を突破して、今気付いた人は、もう最初の方の発言は会議室のコマンドだけでは読めなくなっている。NIFTY-Serve FCGAMEM


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -179-
    1992-07-06, NIFTY-Serve FPROG mes(3)-364
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1992, 1996