混沌の廃墟にて -121-

フィンガートップ

1990-05-29 (最終更新: 1996-04-06)

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ようやく、かなりリーズナブルな価格になってきたので、DynaBook に2MBのRAM を増設する決心をした。定価は5万円を割ったし、さらに1割引で買うことができ る。店員に品物があるかどうか尋ねたら、最初、値下げ前の価格を要求してきた ので、最近値下げになっただろうと追求してみた。確認してその通りであると納 得いったので、結局、品物がなかったのがネックになり、入荷したら連絡すると いうことになった。

これで、おおざっぱに計算してみると、DynaBook 本体とモデムと2MBのRAM増設、 これに約束違反で買ってしまった(一応、名目上は PC286U のソフトとして買っ たことになっているが)VZ Editor を加えると、ちょうど 30 万円程度になる。 これで、オンライン・コミュニケーションを行うには完全な環境ができるという のは、高いか安いか? もしこれが 10 万円程度の価格で揃えば、ネットワーカ ー人口が百万人(*1)も夢ではないかもしれない。もっとも、ホスト局にそれだけ の会員を扱う能力があれば、の話であるが。そして、もう一つ重要な問題がある かもしれないが…これはまたの機会に。

とりあえず何か始めようか、という人にとっては、30 万円というのは、かなり ためらう金額だと思う。せめて、20 万円を切らなくてはいけない。10 万円を切 ってくると、爆発的な効果があるかもしれない。

もう一つ、DynaBook で有名なのだが、技術者がもうこれ以上小さくできないと 言った時に、水を入れてみて、水が入るということは、隙間があるということだ、 それを詰めることを考えよう、と返事したという逸話がある。なかなか上手いこ とを言うじゃありませんか。なら私も一言いいたい。まだ DynaBook は持ち運び に、若干気がかりな大きさだと思う。また実際に入れてみたわけではないが、ど うも私の DynaBook に水を入れてみると、まだまだ水が入るような気がするのだ が…。東芝さん、もっと小さくしてください。(^_^) (*2)

    *
日経エレクトロニクスの '90 5/28 号に、東芝の溝口氏がパネルディスカッシ ョンに登場されている。氏は、DynaBook に関わった人として有名であるが、ソフ トウェアに関して、共有財産とすべきだと述べている。これは、米国で作ったソ フトが日本ですぐ使えて、逆に日本で作ったソフトが米国ですぐ使えるようにす べきだという主張で、私も全く同感である。

驚いたことに、これに対して非常に危険だと評した方もいらっしゃる。日本の ソフトが米国ですぐ使えるということは、日本人が漢字を使うのをやめろという ことだ、と主張するのである。こういう考え方があること自体に、ソフトウェア の将来への強い危惧を感じた。このような方々は、日本からソフトウェアを輸出 しようという考えは思いもよらないのかもしれない。

もちろん、私の感覚では、米国で作ったソフトが日本でも使え、日本で作った ソフトが米国で使える、というのは、漢字も使えるし英語だけでも性能を落とす ことなく動作することを意味する。

だいいち、日本語と英語だけでよいという発想が不思議だ。というのは、現時 点でもすでに言えるかもしれないが、これからのパソコンのマーケットとして、 非英語文化圏の影響は非常に大きいと思うからだ。ヨーロッパ・ソ連などの動向 も気になるが、私がもっと気になっているのが韓国である。韓国が日本をテクノ ロジーで圧倒する時代が、そのうちくるような予感がするのだ。(*3)

で、何を考えたかと言うと、韓国はそのうち日本よりも良質なソフトウェアを 作るようになるだろうから、そのようなソフトを期待したいし、日本語化が簡単 に可能なように工夫していただければありがたい、とか…。:-)

どうせ書きたい放題だから無茶を書かせてもらえば、これからは宇宙人でも使 えるパソコンを設計すべきである。宇宙人はちょっと極端で検証のしようがない から、「猫でも使えるパソコン」ならどうか。人間を猫レベルにするのは気に入 らない? これは失礼。

    *
パームトップ(*4)のカタログを見た。なかなかよさそうだ、しかし高い。値段 はさておき、やはり気になるのが入力速度である。確か、1 分に 30 文字だった と思う(10 分に 300 文字?)。つまり、2 秒に 1 文字である。「混沌の廃墟に て」が、30 文字×150 行とすると、4500 文字。これを入力するのに 2 時間半か かる計算になるが…。しかも、誤認識か、認識不可能な場合もあるのだから、も っと時間がかかりそうだ。

少し慣れれば、手書きよりはキーボードから入力する方が断然早い。これは多 分異論がない所である。速記パームトップ、が開発されても? 多分キーボード の方がまだ早いと思うのだが…。

会議中に、パームトップでメモを取っていて追いつかない、「ちょっと待って くれ、今認識中だから」というのは、かなり面白くない。しかし、現状ではキー ボードが付いたノートブック型パソコンは、割と大きいものだし、もう少したて ば 1kg 程度のものが、もしかすると実用化されるかもしれないが…やはりパーム トップよりは負けそうである。それに、会議に持ち込むのに最も気になっている のが、キーを叩くときの音である。これは技術的に改善できそうな気がするのだ が、どうだろうか。

そこで、私が考えたのが、指輪型のコンピュータ入力装置だ。とりあえず、フ ィンガートップとでも呼ぼう。フィンガートップは指にはめて、指の動きから加 速度を検出することにより文字コードに変換する。結果は微弱な電波になり、ワ イヤレスで CPU の組み込まれた超薄型の表示ボードに伝わる。フィンガートップ には、キーボードに熟練した人なら、キーボードを叩いている気分で指を動かす ことにより、全く再学習を必要とせず(?)移行可能であるという、強烈なメリ ットがある。


  2つの指輪は、シフトとコントロールに、
    8つの指輪は、文章入力のために、
  一つは、仮名漢字変換のため、
    一つは、異常時の緊急停止のために、
        …
さて、数名が会議室に集まった所を想像してみよう。まず、誰かが、全員集ま ったようだから、そろそろ始めようかと言う。うすっぺらな下敷きのような、表 示パネルを机に置いて、おもむろに全員が指輪をはめ始める。セットアップが終 わると、議事進行役がいきなり両手を前に出して、ぱたぱたぱた…と指を動かし ながら、「では、今日は例のプロジェクトの進捗状況について」…と話を始める。 他の人は両手を机の上、空中十センチあたりの所に、ほいっと掲げて、ぱたぱた ぱた…と指が空を切る。

笑っちゃいけない、会議をしている人達は真面目だったりする。魔法使いの集 団ではない。

ふと気づくと、町を歩いている人は、皆が皆、両手をキョンシーのように前に 出して、ぱたぱたぱた…と不気味なしぐさで歩いている。信号を待っている人た ち、駅で電車を待つ人たち、特にビジネスマン風の人物にこのしぐさが見られる。 このまま満員電車に乗ってしまうと、変な所で指を動かすと痴漢にされてしまう かもしれないので、両手をホールドアップしてぱたぱたぱた…と。

え、歩きながらどうやって入力を確認するのかって? 当然ウオークマンのよ うな機械があって、入力した文字を音声変換することにより、フィードバックす るわけだ。

とりあえず、日本の未来はキョンシーであるという、訳のわからない結論にな った。


補足

(*1) もはや100万人は超えている。次は1,000万人か。

(*2) これも、実現したようだが。

(*3) これも、そうなっていたりして。

(*4) ソニーの製品。あまりヒットしなかったような気がする。なぜだろう。な ぜザウルスは売れたのだろう。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -121-
    1990-05-29, NIFTY-Serve FPROG mes(5)-365
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1990, 1996